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「貴方、五味佐登志(ごみ さとし)って知ってるか?」。
元刑事の河辺久則(かわべ ひさのり)の元に、或る日掛かって来た電話。其の瞬間、封印していた記憶が溢れ出す。真っ白な雪と、死体。彼の日、本当は何が在ったのか?
友が遺した暗号に導かれ、40年前の事件を洗い始めた河辺とチンピラの茂田斗夢(しげた とむ)は軈て、隠されて来た真実へと辿り着く。
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呉勝浩の小説「おれたちの歌をうたえ」は、「2021週刊文春ミステリーベスト10【国内編】」の10位に選ばれた作品。序章を含めると7つの章で構成されており、「昭和47年」、「昭和51年」、「平成11年」、「令和元年」、そして「令和2年」という5つの年を舞台にしている。
元刑事の河辺久則の元に、幼馴染み・五味佐登志の死を告げる電話が掛かって来る。電話の相手・茂田斗夢は、佐登志から「自分に何か在ったら、此処に電話しろ。」と河辺の電話番号を教えられていたと言う。茂田の指示された場所を訪れると、放置された儘の佐登志の死体と共に、彼が遺した“暗号”が存在し、茂田によると「暗号が解ければ、佐登志の隠し財産が手に入る。」のだと。茂田と共に謎を解いて行く過程で河辺は、40年前に発生した或る事件と幼馴染み達との関係を次々と知る事になり、そして危険な状況へと導かれて行く。
佐登志が遺した本に書き込まれた5行の謎の文章。其の意味合いを解明して行くのが、此の作品の醍醐味の筈なのだが、回りくどく、そして強引過ぎる解釈が目立ち、意味合いが解明されてもぴんと来ない。又、「だから、結局どういう事だったの?」と思ってしまう“結末”許りで、すっきりしない読後感だった。
登場させる意味合いを感じない人物が無駄に多いのも、読み進める気力を失わせる事だろう。
総合評価は、星2.5個とする。