昨年暮れ、都内在住の大学2年生の女性Aさんが、百貨店で買い物をする為、其の百貨店のクレジット・カードを作ろうとした所、店員からこう告げられた。
「御客様、申し訳在りませんが、カードは御作り出来ません。理由は言えませんが。」。
そう告げられた瞬間、Aさんは未払いをしていた過去を思い出し、「“ブラックリスト”に、自分の名前が登録されているのではないか?」と直感したと言う。
AERA(6月8日号)の記事「私がブラックリストに ~携帯・スマホの代金未払いで失う経済的信用」で、紹介されていた事例だ。
クレジット・カード会社等、約980社が加盟し、会員企業が保有する信用情報(個人の属性・契約内容・支払状況・残債額等。)を集め、会員からの照会に応じて情報提供している、民間の信用情報機関「シー・アイ・シー(CIC)」。百貨店でカード作成を断られた後、Aさんは母親と共に同社を訪問。其処で自分の信用情報が印字された紙を見せられた彼女は、支払い状況の欄に「異動」の文字が在るのを目にした。
CICによると、此の場合の「異動」は「通常と異なる動き。」の意味で、所謂“ブラックリスト”を指しているのだとか。
「返済月から3ヶ月以上、支払いの遅れが在った場合、『異動』として登録されます。」(CIC担当者)
Aさんは高校2年生の時、3万円近い携帯電話を購入したが、其の際、毎月千円の24回分割払いを選択。毎月届く振込用紙に従って入金していたが、大学に入学した頃から、振り込みが滞り始めた。最終的には大学1年生の10月に残額を含め全てを入金し、完済した積りでいたのだが、7月にブラックリストに登録されていたのだ。携帯電話会社は未払いが在ると、督促状を郵送するが、Aさんの記憶は定かでは無い。
CICによると、こういった事例は珍しく無いそうだ。携帯電話やスマートフォンの購入時のクレジット契約に於ける「異動」の件数は、今年3月時点で約376万件で、3年前の2.34倍。多くは、若い世代と言う。
スマートフォンの端末は、高い物だと10万円近くするので、分割払いを選択する人が多い。支払総額は結構しても、月々の支払いは小さかったりするので、「自分が借金を背負っている。」という感覚が概して薄い。「支払いが遅れても、利用を止められるだけの基本料や通話料とは異なり、『クレジット契約』と見做される本体の分割払いは、滞納すると信用情報の毀損に直結する。」という事を知らない人も、結構多いだろう。
一旦、ブラックリストに登録されてしまうと、仮令完済しても5年間は記録が残る。記録が残っている間は、持っているクレジット・カードが利用出来なくなったり、新たにクレジット・カードを作れなくなったりする可能性が在る。アパートを借りる場合も、契約内容によっては借りられなくなる恐れも在る等、生活に様々な支障が出る事も。
2019年9月にならないと、ブラックリストから名前が消えないAさんは「毎月千円の支払いだからと思って、甘く考えていました。凄く後悔しています。」、「不安で一杯です。ブラックリストに載ったという理由で、就活の時、希望する会社に落とされるかも・・・。」と不安を口にしている。然し、幸いな事に就職への影響は無い様だ。
「就職への影響は、絶対に在りません。信用情報の利用は、飽く迄もクレジットやローン契約の審査に限れれます。其れ以外の目的での利用は、法律で禁じられています。」(CIC担当者)
とは言え、企業や官公庁等から個人情報流出が珍しく無い昨今では、「絶対に在り得ない。」と断言出来ない気もするが・・・。
携帯やスマートフォンを、複数台所有している若い人達を良く見掛けるが、彼等の少なからずは、分割払いを選択しているのではないだろうか。結構な値段の物を、安直にカード払いしている人も少なく無い。カード払いは便利だけれど、「飽く迄も“借金”なのだ。」という意識が薄れてしまったり、今回の様にブラックリストに載ってしまう危険性が在る事を意識する必要が在る。