ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「最後の祈り」

2023年07月03日 | 書籍関連

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東京に住む保阪宗佑(ほさか そうすけ)は、娘・北川由亜(きたがわ ゆあ)を暴漢に殺された。妊娠中だった娘を含む4人を惨殺し、死刑判決に「サンキュー。」と高笑いした犯人・石原亮平(いしはら りょうへい)。牧師で在る宗佑は、「受刑者の精神的救済をする教誨師として、犯人と対面出来ないか?」と模索する。今は人を救うに祈って来たのに、犯人を地獄へ突き落としたい。煩悶する宗佑と、罪の意識の欠片も無い犯人。死刑執行の日が迫る中、2人の対話が始まる。
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薬丸岳氏の小説最後の祈り」は、実娘を無差別殺人犯に惨殺された父親・保阪宗佑と、其の殺人犯・石原亮平との姿を描いている。北川由亜は母子家庭で育ち、実父の名前も何も知ららない。実父・宗佑は、或る理由から実娘・由亜の父親と名乗る事無く、“優しい小父さん”として彼女と接して来た。そして、時は流れ、結婚を目前に控えた由亜は無差別殺人に巻き込まれてしまう。極悪非道な行為を働き乍ら、全く反省の色を示さないどころか、殺害行為自体を誇る様な亮平に激しい怒りを覚える宗佑は、死刑が確定し、そして死刑になる事を望む亮平に教誨師として近付く事を決意する。「生きる希望を生み出させた後、死刑執行となる事で、深い絶望を味わわせたい。」という“復讐”の思いからだ。・・・そんなストーリー。

ブログで何度も書いて来た事だが、自分は“死刑制度賛成派”で在る。「其れでは、『目には目を歯には歯を。』という“復讐”に過ぎないではないか。」と言われてしまうだろうが、「自分の近しい人間が殺害されたら、加害者を同様に殺して欲しい。」という思いが在るからだ。勿論永山則夫元死刑囚の様に情状酌量の余地が在るケースも中には存在するし、そういうケースは“死刑以外の道”が在っても良いとは思う。でも、情状酌量余地及び冤罪の可能性が全く無い場合は、殺めた人数に関係無く、加害者は死刑に処されるべきだと考えている。(人の死が関わる事なので、死刑制度に関して様々な意見が在って当然だと思うし、然る可き理由が存在するならば、死刑制度反対派の方々を否定する気は全く無い。)

「自分が宗佑の立場だったら、教誨師として亮平に接せられるだろうか?」と、読んでいる最中に何度も想像した。反省の色を全く示さない亮平が死刑に処される事を只管望むだろうけれど、だからと言って亮平を含む死刑囚達と接し続けるというのは、尋常では無い心的負担が在り、自分には無理だ。死刑に立ち会わなければならない刑務官も同様。「死刑制度には賛成なのに、死刑に関わる仕事に就くのは無理というのは、非常に身勝手では?」と言われてしまうのは判っているが・・・。

殺害行為に全く無反省だった者が、教誨師と接して行く中で深い反省の思いを持つ様になる。だが、実際に死刑に処せられる状況になると、変わった姿を見せる。そういう事も実際に在るだろうし、読んでいて複雑な思いになった。そして、亮平は最後の最後に、どういう姿を見せるのか?亮平から娘の“最後の様子”を聞かされた際の宗佑の心中を思うと、何とも言えなくなる。特に“彼女が最後に発した言葉”は堪らない

個人的にはモヤモヤが残る結末では在ったが、死刑制度の重みを再認識させられる作品だった。

総合評価は、星4つとする。


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