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外科医を辞め、内科医としての修業を積むべく、天医会総合病院の門を叩いた小鳥遊優(たかなし ゆう)は、其処で運命的な出会いを果たす。天久鷹央(あめく たかお)。空気を読めず、人とのコミュニケーションに難が在る彼女は、然し日本最高峰の頭脳を持つ天才女医だった。
宇宙人による洗脳を訴える患者。謎の宗教団体。そして、院内での殺人。鷹央と優、2人の出会いを描いた長編メディカル・ミステリー。
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現役の医師でも在る小説家・知念実希人氏の「天久鷹央の推理カルテ・シリーズ」は、現在迄に10弾上梓されている。先月、第2弾の「天久鷹央の推理カルテⅡ ファントムの病棟」(総合評価:星3つ)を初めて読み、続いて読んだのは第3弾の「天久鷹央の推理カルテⅢ 密室のパラノイア」(総合評価:星3.5個)。そして、今回読んだのは第4弾にして、同シリーズ初の長編小説で在る「スフィアの死天使 天久鷹央の事件カルテ」だ。
「『宇宙人に誘拐され、頭に何かを埋め込まれた。』と訴える患者が2人、天医会総合病院に現れ、1人は10階の窓から飛び降りて死に、もう1人は医師・沖田克也(おきた かつや)を刺し殺す。鷹央と優が調査を進める中で、或る宗教団体が“事件”に関係している疑いが出て来て・・・。」というストーリー。女医・鷹央がシャーロック・ホームズ、そして内科医見習いの優がジョン・H・ワトソン役だ。超変人の鷹央に振り回され乍らも、優が確りとサポートしているのは既に読んだ第2弾&第3弾と一緒だが、今回の作品は其れ等よりも以前、鷹央と優の初めての出会いを描いている。「優が外科医を辞め、内科医になる決意を固めた理由。」が明らかにされる等、同シリーズにとって重要な作品だと思う。
医療に関する記述は、相変わらず勉強になる。「事件を解く上で、重要な事柄だったりする。」のだけれど、現役医師ならではの記述で在る。
トリック的には“予想の範囲内”だったけれど、「宇宙人によって、頭に何かを埋め込まれた。」という点に関しては、関わった人間及び手法は「意外や意外。」という感じで、解き明かす事が出来なかった。でも、作品全体的に言えば、「まあまあかな。」という印象。
総合評価は、星3.5個とする。