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200X年、謎の航空機事故が相次ぎ、メーカーの担当者・春名高巳(はるな たかみ)と生き残った自衛隊のパイロット・武田光稀(たけだ みき)は、調査の為に高空へ飛んだ。高度2万m、事故に共通する其の空域で彼等が見付けた秘密とは?
一方地上では、高校生が海辺で不思議な生物を拾う。航空機事故で犠牲となった斉木敏郎(さいき としろう)三佐の息子・瞬(しゅん)と、其の幼馴染みの天野佳江(あまの かえ)の2人だ。
大人と子供が見付けた2つの秘密が出会う時、日本に、そして人類に前代未聞の奇妙な危機が降り掛かる。
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“恋愛小説の女王”として、其の作品が次々に映像化されている有川浩さん。幾つかのシリーズ物を著しているが、今回読了したのは所謂「自衛隊シリーズ」の第2弾に当たる「空の中」だ。(第1弾の「塩の街」は、彼女のデビュー作。)航空自衛隊を題材とし、謎の知的生命体を巡る人類の騒動を描いている。タイトルの「空の中」とは、「空の中から現れ出た生命体」という意味合いなのだろう。
「空飛ぶ広報室」、「図書館戦争」、「三匹のおっさん」、「三匹のおっさん ふたたび」、「阪急電車」、「植物図鑑」、「県庁おもてなし課」、そして「旅猫リポート」と、此れ迄に8つの有川作品を読んで来た。範疇で言えば「図書館戦争」なんかもSF小説に当該するのかもしれないが、「空の中」は間違い無くSF小説の範疇に在ると思う。
ネット上の評価は結構高いけれど、個人的には今一つだった。「瞬と佳江の関係」及び「高巳と光稀の関係」は「流石、恋愛小説の女王!」と思わせる良さが在った。特に「高巳と光稀の関係」は、徐々に“解れて行く感じ”が、何とも微笑ましかったし。でも、“読み物として”考えた時、「『SF小説』というのに固執してしまった為か、又は『解離性同一性障害』という概念を持ち込んでしまった為か、小難しい用語が多用されている上に、回りくどい記述(「私と私以外の我々は≪全き一つ≫に戻ることを希望する。」等。)が延々と繰り返される事で、読み難いったらありゃしなかった。
高巳と光稀を見守る“宮じい”事、宮田喜三郎(みやた きさぶろう)の素朴で大らかなキャラクターが良く、掌編として最後に載せられた「仁淀川の神様」(高巳達の其の後を描いた作品。)には、ホロッとさせられた。
総合評価は、星3つとする。