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風光明媚な瀬戸内の島に育った高校生の井上暁海(いのうえ あきみ)と、自由奔放な母の恋愛に振り回され島に転校して来た青埜櫂(あおの かい)。共に心に孤独と欠落を抱えた2人は、惹かれ合い、擦れ違い、そして成長して行く。
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2023年(第20回)本屋大賞を受賞した小説「汝、星のごとく」(著者:凪良ゆうさん)を読了。凪良さんは「流浪の月」(総合評価:星2.5個)で2020年(第17回)本屋大賞を受賞しており、2度目の快挙となる。
「汝、星のごとく」は、井上暁海と青埜櫂という同い年の2人が主人公。彼等が17歳の高校生だった春から物語は始まり、其れ其れの視点で交互に話は進んで行く。そして15年後、32歳になった暁海の夏で、話は終わる。
「愛人を作り、自宅には戻らなくなった父。」と「夫に対する執着が強過ぎた結果、娘への依存度が高まり過ぎた母。」を持つ暁と、「次々と男を作っては、息子を顧みない様な母。」を持つ櫂。「母親や父親で在る事よりも、“男”や“女”として生きる事を最優先している様な親を持つ。」という共通点を持つ2人は、軈て惹かれ合って行く。
「親=重荷」と感じ乍らも、そんな親を見捨てる事が出来ない彼等は、優しさを有しているという面が在る一方で、「親への依存度が高い。」とも言えるだろう。そして、「年齢を重ねる毎に、“嫌で嫌で堪らなかった筈の親”と、同じ様な事をしている事に気付かされる。」というのは、何とも皮肉だ。
「愛する人の為、人生を誤る。」。其れが決して良い事では無いと頭では理解していても、突き進んでしまう人達。自分(giants-55)には到底理解出来ない事では在るけれど、此の物語に登場する人達の姿には、同情してしまう部分も在る。
「悪気が在って生きている訳では無いのに、運命に翻弄されてしまう人々。」が、此の作品には目立つ。「どうしようも無いなあ。」と呆れ返ってしまうが、そういう形でしか生きられないというのは切なくも在り、又、哀れでも在る。
櫂が最後に残した小説のタイトルでも在る「汝、星のごとく」。17歳の時の2人も、32歳の時の2人も、同じ“純愛”に包まれていたとも言える。其の事が、何とも切なくは在るが・・・。
「本屋大賞」を受賞したのも、納得出来る内容。総合評価は、星4つとする。