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禍福は糾える縄の如し:禍が福になり、福が禍の元になったりして、此の世の幸不幸は縄を縒り合わせた様に、表裏を成す物で在るの意。
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大昔、言う事を聞かない子供に対して親が「そんなに言う事を聞かないと、サーカスに売っちゃうよ!」と脅す事が、結構在ったと言う。漫画「鉄腕アトム」でも、「主人公のアトムが、生みの親の天馬博士によってサーカスに売られてしまう。」という設定が在った。サーカスには“楽しい娯楽の場所”という面が在る一方で、“怪しげな場所”という全く無根拠なイメージが在った訳だ。
自分が子供の頃、流石に親から「そんなに言う事を聞かないと、サーカスに売っちゃうよ!」と脅される様な時代では無かったけれど、「サーカス=怪しげな場所」というイメージは在ったと思う。江戸川乱歩氏の「少年探偵団シリーズ」で、サーカスがそういう場所として描かれていた事が大きい。
サーカスを初めて見に行ったのは、小学校低学年の頃だった。家族で行ったのだが、確か木下大サーカスだったと思う。又、今は無くなってしまったが、キグレNewサーカスを見に行った事も在る。怪しげな場所というイメージは在ったものの、ショー自体はとても楽しかった。
昨日、BSプレミアムで「サーカス家族 世界一への挑戦 モンテカルロ サーカス国際大会 『日本人少年の超絶美技!』」というドキュメンタリーが放送された。初めて放送されたのは3年前の2021年で、今回は再放送という事になる。2021年に母が此の番組を見ていて、「凄く良かった。」と言っていたので、「再放送されたら、是非見たいな。」と思っていた物。
コロンビア人の父と日本人の母を持つ“嵐君”の姿を、2019年~2020年に掛けて追った内容。彼は日本全国を興行して回るサーカス一家の四男坊で、他に0歳から22歳迄の10人の兄弟が居る。11歳の彼は腹違いの兄と共に「イカリオス」【動画】という“足芸”を担当しているのだが、此れが正に“超絶美技”なのだ。2人はモンテカルロで行われるサーカスの国際大会で“優勝(=金)”する事を目指し、猛特訓を積んでいる。(父親は現役時代、此の大会に招待される事すら叶わなかった。)
結論から言えば、彼等は2019年にモンテカルロで開催されたサーカスの国際大会に招待され、見事に優勝するのだが、其処に到る迄、嵐君や家族には何度も苦しい状況が待ち構えている。でも、家族全員仲が良く、又、どんなに苦しい状況でも明るさを忘れない嵐君の健気さに胸を打たれた。だからこそ、嵐君が優勝を果たした際には、「本当に良かったなあ。」とウルウルしてしまった。
サーカスの国際大会で優勝を果たした事で、嵐君達には世界からオファーが殺到し、彼の父が新たに立ち上げたサーカス団にも“明るい未来”が待ち受けている様に思えたのだが・・・。
翌年の2020年、新型コロナウイルス感染症が世界中で猛威を振るい始めた事で、嵐君達に殺到したオファーは次々とキャンセルされ、父親が立ち上げたサーカス団も苦しい状況に陥る。「サーカスの国際大会で優勝を果たした。」という“箔の鮮度”が在る内に、更なる飛躍を見せたかっただろうに・・・「禍福は糾える縄の如し」という諺が頭に浮かんでしまった。
父親が立ち上げ、嵐君も所属する「さくらサーカス」は、新型コロナウイルス感染症に負けず、頑張っている様だ。実に素晴らしい芸なので、多くの方に見て貰いたい。