ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「彷徨う者たち」

2024年05月01日 | 書籍関連

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災害公営住宅への移転に伴い、解体作業が進む仮設住宅の一室で見付かった他殺体。発見場所は出入り口が全て施錠された完全密室、被害者は町役場の仮設住民の担当者だった。

宮城県警の笘篠誠一郎(とましの せいいちろう)刑事と蓮田将悟(はすだ しょうご)刑事は、仮設住民と被害者とのトラブルの可能性を想定し、捜査に当たる其処遭遇したのは、蓮田にとって忘れ難い決別した過去に関わる人物だった。
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今回読んだ「彷徨う者たち」は、中山七里氏の小説。中山氏の文壇デビューは2010年で、彼が49歳の年と遅い部類に入るが、以降15年間で70冊を超える作品を上梓している、非常に多作作家で在る。

「彷徨う者たち」は、「宮城県警シリーズ」の第3弾。第1弾の「護られなかった者たちへ」は未読だけれど、原作映画化した「護られなかった者たちへ」(総合評価:星3つ)は観ている。そして、第2弾「境界線」(総合評価:星2.5個)は既読で、今回の「彷徨う者たち」に到る。3作共、東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県を舞台にしており、登場人物は大震災で家族を失った者が多い。

今回の作品の主人公は、殺人事件の捜査に当たる刑事・笘篠誠一郎と蓮田将悟の2人。笘篠は大震災で家族を失っているが、蓮田は幸いにも失っていない。良く見聞する話では在るが、此の手の大災害に於て同じ被災者の立場で在っても、家族を失っていない者は、家族を失った者に対して、肩身が狭い思いをしている事が多い。と言う。家族を失っていない者は運が良かっただけで、当たり前の事だが何も悪くは無いのだけれど、「自分達は生き残ってしまった。」という罪悪感を持ってしまうのだとか。蓮田も同様で、捜査に当たって“大震災で家族を失った者”に接する際は、どうしてもそういった罪悪感に苛まれてしまう。

蓮田には幼稚園から高校、ずっと一緒に過ごして来て、余りにも仲が良い事から、町内で“腹違い4兄妹”と迄呼ばれる3人の友人がた。大原知歌(おおはら ちか)、祝井貢(いわい みつぐ)、森見沙羅(もりみ さら)がそうだが、或る事件を切っ掛けに蓮田は祝井から“絶交”され、結果的に大原や森見とも疎遠な関係となってしまい、故郷を離れる事に。そして、14年の月日が流れ、故郷で発生した殺人事件の捜査に携わる中、蓮田は嘗ての友人3人と会う事に。

蓮田以外の3人は、大災害で家族を失っている。なので、彼は彼等に対して罪悪感を持っているのだが、祝井に対しては別の意味での罪悪感も持っており、“刑事”と“1人の人間”という立場で懊悩する。「自分が彼の立場で在ったとしたら、矢張り同じ様な気持ちになるだろうなあ。」と思う。嘗ては大親友の間柄だったのだから、彼等を疑うだけでもしんどいに違い無い。

“密室殺人”のトリックに関しては、凡そ想像が付いた。なので、驚きというのは無いが、真犯人少々意外な人物だった。又、其の人物を守るに動いた人物に付いて、そして守る為に“近しい人間”を利用したという事実には、「そうなのかあ・・・。」という遣り切れ無さが。

最後の最後に、或る人物が“本当に守りたかった人物”と“其の理由”が明らかになるのだが、其処漸く救われた気持ちに。其れが無かったら、救いを感じられない内容だったので。

総合評価は、星3つとする。


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