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ターミナルタウンとして、鉄道と共に発展して来た町「静原町」。しかし或る時、乗り換え路線の廃止により、殆ど全ての列車が、此の町を通過する事になった。
鉄道に忠誠を誓った町が、鉄道を失った時。其処には何が残るのか。凋落した此の町に、人を呼び戻す事は出来るのか。
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「『日常世界』の中に『非日常世界』を、するりと滑り込ませる絶妙さ。」が特徴の作家・三崎亜記氏。冒頭に記した梗概は、今年初めに刊行された同氏の作品「ターミナルタウン」に付いて。
「影を失った人々」、「存在しないのに、存在していると見做されているタワー。」、「育てられる事で成長する『隧道』(トンネルの様な物。)と、其れ等を育てる事を生業とする『隧道士』。」、『肉眼で通り過ぎた際の“光”だけは見られるものの、管理室内の線路の監視映像には何も映らない、幻の『451列車』。」等々、不可思議な存在が登場し、其れ等が実に尤もらしい設定で描かれているのには感心する。
其の一方で、「何故、影を失わなければならなかったのか?」等、今一つ良く判らない点が幾つか在ったのは残念だった。
又、最後の方で、或るミステリアスな人物(此の作品が映像化された際には、荒川良々氏に演じて貰いたい!)の両親が登場するのだけれど、此の設定も不要だったのではないだろうか。敢えて入れた作者の意図が、自分には判らなかった。
非日常世界の設定が微に入り細を穿っている事で、読者は不思議な世界に誘われる訳だが、微に入り細を穿っているが故に、頭の中が混乱したり、読み進めるのが億劫になったりする面が在る。此の手の作品は人によって、好き嫌いがはっきり分れそう。苦手な人は、「駄目よ~、駄目駄目っ。」【動画】という感じだろう。
総合評価は、星3つとする。
「ターミナルタウン」、確かに分厚いですね。読書スピードは可成り速い方の自分ですが、此の作品は読み終わる迄、結構時間を要しました。分厚さも然る事乍ら、記事でも触れた様に「微に入り細を穿っているが故に、頭の中が混乱したり、読み進めるのが億劫になったりする面が在る。」というのが在り、中々読み進められなかったからです。
マヌケ様が仰っているのは、三崎氏の「コロヨシ」(http://blog.goo.ne.jp/giants-55/e/646c6620d4d72cb12115fcd22869df71)ですね。「コロヨシ」は例外と言っても良いと思うのですが、三崎作品は「町」に拘った物が多い。そういう面に、ややマンネリ感を覚える人も居る事でしょうね。