映画館で本編前に流れるCMの中に、「映画館に行こう!」というのが在る。「NO MORE 映画泥棒。」というキャッチフレーズで御馴染みの「映画盗撮防止キャンペーン」だが、あのCMを観る度に思うのは「映画盗撮行為の量刑が『10年以下の懲役、若しくは1千万円以下の罰金、又は其の両方が科せられます。』(映画の盗撮の防止に関する法律)って、一寸厳し過ぎはしないか?」と。誤解しないで欲しいのは、「映画盗撮行為」自体は著作権侵害という許されない犯罪で、それなりに厳しく罰せられるべきで在る。」と自分も思っている事。唯、他の量刑とのバランスを考えると、この映画盗撮行為に関するそれは厳し過ぎる様に感じてしまうのだ。例えば「故意では無く、過失により人を死に到らしめた。」場合に適用される「過失致死罪」の場合、刑法第210条での法定刑は「50万円以下の罰金」という事になっている。詰り、故意では無いにせよ人を死に到らしめてても最高で50万円の罰金という訳で、その“最高刑”が「10年の懲役及び1千万円の罰金」となる映画盗撮行為と比べると、「量刑のバランスがおかしくない?」という思いが。
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「カンボジア:ポル・ポト大虐殺特別法廷 元収容所長禁固35年 元最高幹部審理焦点に」(7月27日、毎日新聞)
カンボジアの旧ポル・ポト政権(1975~1979年)時代の大量虐殺を裁く特別法廷は26日、人道に対する罪等に問われた元政治犯収容所所長カン・ケ・イウ被告(67歳)に禁固35年(求刑・禁固40年)の判決を言い渡した。元ポト派への初の法的な裁きで、今後の焦点は、拘束されているヌオン・チア元人民代表議会議長(84歳)等国民や国際社会の関心が高い他の4人の元最高幹部に移る。
4人は9月頃に起訴され、審理は来年から始まる見込み。判決は数年は掛ると見られ、何れもイウ被告より高齢で、時間との闘いとなる。
国民のほぼ4分の1に当たる約170万人を死亡させたとされるポト政権の崩壊から30年余。特別法廷は2006年にカンボジア政府と国連により設置された。
イウ被告が所長を務めたトゥールスレン政治犯収容所では、約2万人が拷問の末に殺害されたと見られる。被告は「命令に従っただけだ。」と主張する一方で、「子供や女性迄拷問し、許される行為では無かった。」と責任を認めた。被告が軍に違法に拘束された分の5年が軽減された。
裁判は二審制で、検察、弁護側双方が30日以内に控訴出来る。判決が確定すれば、未決拘置期間等を刑期に算入して収監は今後19年間になる。年齢的に被告が受刑後に出所出来る可能性が出て来た事に付いて、傍聴した生存者の一人、ブー・メインさん(69歳)は「(最高刑の)終身刑を望んでいた。彼の犯罪は出所を許される物では無い。」と断罪した。
ポル・ポト政権は都市住民を敵視し、大量殺害や強制労働で世界を震撼させた。特別法廷は、この国の負の歴史を清算して国民和解を図る事が目的だ。だが、国内では既にポト派時代を思い起こさせる殺伐とした雰囲気は消え、国民の関心は未来に向かっている。
カンボジア現政権は必ずしも裁判に積極的では無い。フン・セン首相を含め政権内にも元ポト派関係者が存在するからでも在る。それでも昨年2月に開始されたイウ被告の裁判には全国から3万人以上が傍聴に訪れた。判決公判の模様はテレビやラジオで数百万人が視聴したとされる。
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古今東西の歴史を顧みると、残虐な振る舞いを為した独裁者の存在は枚挙に遑が無いが、当時の自国民のほぼ4人に1人を殺害したポル・ポト元首相は、「20世紀に於ける残虐&非道な独裁者」の上位に挙げられるのは間違い無いだろう。何しろ今でもカンボジアの到る所で土地を掘り返すと、拷問の跡が残る人骨が次々に見付かると言うのだから。
大虐殺の影響も在り、カンボジアでは1989年に死刑制度が廃止された。従って元記事にも記されている様に、同国の最高刑は終身刑の様だ。イウ被告は「命令に従っただけだ。」と弁明している様だが、確かに命令に従わざるを得ない“異常な環境下”に在ったのかもしれない。でも、約2万人が拷問にて死に到らしめられた収容所のトップで在った以上、その罪は厳しく問われるべきだと思う。「現在67歳の身で禁固35年というのは、“実質的に”終身刑に近い。」と最初は思ったけれど、元記事にも在る様に「未決拘置期間等を刑期に算入されると、収監は今後19年間。」となり、それだと生きたまま“娑婆”に出て来られる可能性が在り、これでは大虐殺された者達の遺族としては「絶対に許せない!」という憤りが出るのは当然だろう。「そもそも『刑事施設に拘置して、“所定の作業”を行わせる。』という『懲役』では無く、『刑事施設に拘置する。』だけの『禁固』という事自体が、果たして適切なのか?」という気持ちも在る。
「復讐は、新たな復讐しか産み得ない。」とか、「過去を振り返らずに、未来を見据えた方が良い。」といった考え方が在るのは理解しているけれど、個人的には今回の判決は軽過ぎる気がするのだが・・・。
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「カンボジア:ポル・ポト大虐殺特別法廷 元収容所長禁固35年 元最高幹部審理焦点に」(7月27日、毎日新聞)
カンボジアの旧ポル・ポト政権(1975~1979年)時代の大量虐殺を裁く特別法廷は26日、人道に対する罪等に問われた元政治犯収容所所長カン・ケ・イウ被告(67歳)に禁固35年(求刑・禁固40年)の判決を言い渡した。元ポト派への初の法的な裁きで、今後の焦点は、拘束されているヌオン・チア元人民代表議会議長(84歳)等国民や国際社会の関心が高い他の4人の元最高幹部に移る。
4人は9月頃に起訴され、審理は来年から始まる見込み。判決は数年は掛ると見られ、何れもイウ被告より高齢で、時間との闘いとなる。
国民のほぼ4分の1に当たる約170万人を死亡させたとされるポト政権の崩壊から30年余。特別法廷は2006年にカンボジア政府と国連により設置された。
イウ被告が所長を務めたトゥールスレン政治犯収容所では、約2万人が拷問の末に殺害されたと見られる。被告は「命令に従っただけだ。」と主張する一方で、「子供や女性迄拷問し、許される行為では無かった。」と責任を認めた。被告が軍に違法に拘束された分の5年が軽減された。
裁判は二審制で、検察、弁護側双方が30日以内に控訴出来る。判決が確定すれば、未決拘置期間等を刑期に算入して収監は今後19年間になる。年齢的に被告が受刑後に出所出来る可能性が出て来た事に付いて、傍聴した生存者の一人、ブー・メインさん(69歳)は「(最高刑の)終身刑を望んでいた。彼の犯罪は出所を許される物では無い。」と断罪した。
ポル・ポト政権は都市住民を敵視し、大量殺害や強制労働で世界を震撼させた。特別法廷は、この国の負の歴史を清算して国民和解を図る事が目的だ。だが、国内では既にポト派時代を思い起こさせる殺伐とした雰囲気は消え、国民の関心は未来に向かっている。
カンボジア現政権は必ずしも裁判に積極的では無い。フン・セン首相を含め政権内にも元ポト派関係者が存在するからでも在る。それでも昨年2月に開始されたイウ被告の裁判には全国から3万人以上が傍聴に訪れた。判決公判の模様はテレビやラジオで数百万人が視聴したとされる。
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古今東西の歴史を顧みると、残虐な振る舞いを為した独裁者の存在は枚挙に遑が無いが、当時の自国民のほぼ4人に1人を殺害したポル・ポト元首相は、「20世紀に於ける残虐&非道な独裁者」の上位に挙げられるのは間違い無いだろう。何しろ今でもカンボジアの到る所で土地を掘り返すと、拷問の跡が残る人骨が次々に見付かると言うのだから。
大虐殺の影響も在り、カンボジアでは1989年に死刑制度が廃止された。従って元記事にも記されている様に、同国の最高刑は終身刑の様だ。イウ被告は「命令に従っただけだ。」と弁明している様だが、確かに命令に従わざるを得ない“異常な環境下”に在ったのかもしれない。でも、約2万人が拷問にて死に到らしめられた収容所のトップで在った以上、その罪は厳しく問われるべきだと思う。「現在67歳の身で禁固35年というのは、“実質的に”終身刑に近い。」と最初は思ったけれど、元記事にも在る様に「未決拘置期間等を刑期に算入されると、収監は今後19年間。」となり、それだと生きたまま“娑婆”に出て来られる可能性が在り、これでは大虐殺された者達の遺族としては「絶対に許せない!」という憤りが出るのは当然だろう。「そもそも『刑事施設に拘置して、“所定の作業”を行わせる。』という『懲役』では無く、『刑事施設に拘置する。』だけの『禁固』という事自体が、果たして適切なのか?」という気持ちも在る。
「復讐は、新たな復讐しか産み得ない。」とか、「過去を振り返らずに、未来を見据えた方が良い。」といった考え方が在るのは理解しているけれど、個人的には今回の判決は軽過ぎる気がするのだが・・・。