「Ｉの悲劇」

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一度死んだ村に、人を呼び戻す。其れが「甦り課」の使命だ。

山間の小さな集落、簑石。６年前に滅びた此の場所に人を呼び戻す為、Ｉターン支援プロジェクトが実施される事になった。業務に当たるのは簑石地区を擁する、南はかま市「甦り課」の３人。「人当たりが良く、捌けた新人・観山遊香(かんざん　ゆか）。」、「出世が望みで、公務員らしい公務員・万願寺邦和（まんがんじ　くにかず）。兎に角、定時に退社。遣る気の薄い課長・西野秀嗣（にしの　ひでつぐ）。」。彼等が向き合う事になったのは、一癖在る“移住者”達と、彼等の間で次々と発生する“謎”だった。
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ミステリー・ランキングの常連となった米澤穂信氏の小説「Ｉの悲劇」。ミステリーが好きな方ならば、此のタイトルがエラリー・クイーン氏の有名な小説「Ｘの悲劇」、「Ｙの悲劇」、そして「Ｚの悲劇」を捩った物だと推測出来るだろう。「Ｉ」は「Ｉターン現象」、即ち「出身地とは別の地方に移り住む、特に都市部から田舎に移り住む事。」を表している。「一度は“死んだ村”に、人を呼び戻せ。」という現市長の厳命により設置された「甦り課」だが、所属する３人の内の１人・万願寺邦和が必死に業務に取り組めば取り組む程、何故か次々と問題が発生し、移住者達はどんどんと村を去ってしまう。そんなストーリーの作品。

読み進めて行く内に、「何かおかしいな。」という違和感が積み重なって行く。偶然にしては余りに不自然な程、問題が多発するからだ。「若しかしたら・・・。」という予感は在ったが、結末は当たっていた。実に嫌な感じの結末・・・イヤミスだ。

少々無理を感じるトリック、問題が多発した原因等、現実離れした様な設定が、ストーリーに没頭するのを妨げた。何とか読み終えたけれど、上記した“イヤミス感”にがっかり。ハッピー・エンドは無理にしても、もう少し違う結末で在って欲しかった。

総合評価は、星３つとする。