ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「きこえる」

2024年01月30日 | 書籍関連

2009年に公開された叙事詩的SF映画アバター」は、現在でも「興行収入世界歴代1位」を誇る、大ヒット作となった。此の作品は所謂立体映画”だが、自分が子供の頃にも“3D作品のブーム”が在った。最も一生に残っているのはTVアニメ家なき子」(放送期間:1977年10月2日~1978年10月1日)【動画】で、「其れ以前の立体映像は、特殊眼鏡掛けないと映像が不鮮明だったが、此の作品の方式は特殊眼鏡が無くても普通に視聴出来るが、特殊眼鏡を掛けるとより立体感の在る映像が楽しめる。」というのが“売り”で、当時、結構話題になったっけ。

「家なき子」がそうだったかは忘れてしまったが、其れ以前に使われていた“3D作品用の特殊眼鏡”と言えば、「ペラペラの紙で作られた眼鏡枠に、青(右目)と赤(左目)のセロファンがレンズ部分に貼られた物。」が一般的で、少年雑誌の付録に付いていたりした。

で、「家なき子」は作品の質自体が高かったけれど、其の他の3D作品は「3D自体が唯一の売り。」みたいな所が在り、記憶に残っている物は無い。技術に走り過ぎ(頼り過ぎ)て、肝心の内容が駄目。という感じ。

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突然死んでしまったシンガーソングライターが残した「デモテープ」。家庭に問題を抱える少女の家の「生活音」。言えない過去を抱えた2人の男の「秘密の会話」。夫婦仲に悩む女性が、親友に託した「最後の証拠」。古い納屋から見付かったレコーダーに残されていた「カセット・テープ」。

私達の生活に欠かせない「音」。全て
の謎を解く鍵は、此処に在る。
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道尾秀介氏の小説きこえる」は、「音声と小説を融合させた『体験型ミステリー』。」を謳っている。「小説を読み進めると、作中の様々なタイミングで『二次元コード』が登場し、其の二次元コードをスマホで読み取ると、YouTube内で音声が再生される。」という仕組みになっている。

道尾氏と言えば、「小説『いけない』(総合評価:星3つ)及び『いけないⅡ』(総合評価:星3つ)では、『各を読み進めると、章末に写真が載っている。其の写真を見る事で読者は、著者が“意図的に”文章で仕掛けたミスリードに気付かされ、唖然とさせられる。』という手法用いた作品。そして『DETECTIVE X CASE FILE #1 御仏の殺人』は、『リアルな捜査資料を元に、未解決事件の謎を解く、本格犯罪捜査ゲーム。』というスタイルの作品。」等、“新形式の小説”を生み出す事に、最近は取り組んでいる感じが在る。

今回の「きこえる」もそんな一環で、「小説を、立体的に体感出来る。」という意味では面白い取り組みだと思う。YouTube内の“音声”が、文章だけでは気付き難かった“落ち”に気付かせてくれる。という面も在ったし。

とは言え、「音声が非常に聞き取り辛い。」という面が在り、何度か聞き直して漸く「そういう事か。」と判ったりしたし、「音声が無いと“真実”が判らない作品も在るが、音声が無くても文章だけで充分な作品も在るなあ。」という思いも。余計な御世話だが、「ずっと先、例えば10年後とかに此の作品を読んだ時、其の時点でYouTube内の音声はきちんと残っているのだろうか?残っていなかったら、文章だけでは“真実”が判らない作品はどうなるのだろうか?」という心配をしてしまった。

冒頭で“昔の3D作品”に付いて触れたのは、今回の「いけない」を読んだから。「“音声”という技術に走り過ぎ(頼り過ぎ)て、肝心の中身が駄目。」というのを、「いけない」でも感じたので。

総合評価は、星2.5個とする。


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3D作品の思い出 (Kei)
2024-01-30 11:45:41
3D作品、ありましたね。私の記憶にあるのは、1960年代初めの頃、漫画雑誌の付録で3Dの漫画をいくつか見ました。今でも覚えているのは、雑誌「少年」に連載された手塚治虫の「鉄腕アトム」にも3D作品がありました。忙しい方なのに、よくそんな複雑なもの手掛けましたね。

映画の方ではもっと歴史が古く、1952~54年頃に3D映画ブームが起きて、アメリカで数本の3D映画が作られました。有名なのはアルフレッド・ヒッチコック監督の「ダイヤルMを廻せ!」(1954)ですが、日本では2D版しか公開されなかったのでどんな映像なのかは不明です。
その後一時下火になりましたが、1962年頃にまた復活して、私はそれのうちの2本程を劇場で見ています。1本目は「骸骨面」。ホラー映画で、主人公が骸骨面を被ると、それまでモノクロ映像だったのがそこだけ赤と水色の映像が重なった画面に変わるので、その都度観客は眼鏡をかけるわけです。眼鏡は雑誌の付録とほぼ同じチャチなものです。
もう1本は「パラダイス」。これはいわゆるエロティック作品で、主人公が特殊な眼鏡をかけると、なんと服が透けて(つまりスッポンポンのヌード姿に)見えるのです(笑)。観客もそのシーンだけ2色眼鏡をかけます。無論主人公が見るのは全部女性。あるシーンでは女性が飼ってる羊までもが毛が刈られて見えるので大笑い。
いずれも全編にわたってではなく、主人公がお面や眼鏡をかけてるほんの数分だけなので、その都度眼鏡をかけたり外したりしないといけないので、面倒だと不評でこれもすぐに下火になりました。
giants-55さんが書かれている通り、どれも“立体的に見える”のだけが売りで、(ヒッチコックを除いて)キワモノ的な作品的に中身のないものばかりでしたから、廃れるのも当然ですね。でも懐かしいです。「パラダイス」の時は私は高校生でしたが、よく劇場に入らせてくれたものです(笑)。
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>Kei様 (giants-55)
2024-01-30 21:12:29
書き込み有難う御座いました。今回は、此方にレスを付けさせて貰います。

手塚治虫氏の大ファンなので、彼の作品は略100%近く読んでおり、件の3D作品も“資料として”読んだ記憶が在ります。記憶違いで無ければ、3D効果を考慮した為だと思いますけれど、「キャラクター等の輪郭線がダブっている様な、決して読み易い感じでは無い。」と感じました。でも、当時としては“斬新なトライ”ですよね。

ヒッチコック監督の「ダイヤルMを廻せ!」はTV放送時に何度か見ましたけれど、3D版が存在していたとは驚きです。どんな感じに見えるのか、是非見てみたいです。

で、「パラダイス」というタイトルの映画と言えば、個人的には1980年代に世の男性達の股間を熱くした女優の1人のフィービー・ケイツさん主演作が頭に思い浮かぶのですが、Kei様が書かれている方は全く知りませんでした。(何方も、エロチック系の作品という共通点が在るのは笑えますが。)企画として、凄く面白い作品ですね。男性の助平心を擽る作品と言えましょう。

「パラダイス」もそうですが、大昔に見た3Dアニメ(「家なき子」では在りません。タイトル等は、すっかり忘れてしまいました。)も、「此処で“飛び出す眼鏡”を掛けて下さい。」という指示が出ると、見ている側は慌てて飛び出す眼鏡を掛けるという感じでした。思っていた程の3D効果が得られず、「こんな物かあ・・・。」とガッカリしたっけ。
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