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埼玉県草加市で、男児の変死体が見付かった。現場付近で採取された体液の付いたティッシュが発見され、DNA鑑定をした所、16年前に同様の手口で男児を殺害した坂本一寛(さかもと かずひろ)だと判定された。しかし、坂本は現在、仙台の刑務所で服役中だった。
埼玉県警捜査一課・荒巻和夫(あらまき かずお)は捜査を進める内、坂本は捨て子で、児童養護施設で育った事を知る。
一方、16年前の被害者遺族・松原大輔(まつばら だいすけ)は坂本の再犯を疑い、独自捜査に乗り出す。松原は或る人物に出会うが、其の矢先、何者かに襲われ・・・。
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第12回(2013年)「このミステリーがすごい!」大賞にて“隠し玉作品”に選ばれ、上梓された小説「二万パーセントのアリバイ」(著者・越谷友華さん)。「二万パーセントのアリバイ」というのは「鉄壁で崩し様の無いアリバイ」という意味で付けたのだろうが、同時に「二万パーセント」とする事で、「『出馬は2万%在り得ない。』と断言し乍ら、何事も無かったかの様に大阪府知事選挙に出馬した橋下徹市長を思い出させる事で、『絶対に在り得ないアリバイなんか在り得ない。』という意味をも含ませた。」のだと思う。
男児に対する猟奇的な殺人事件が発生し、其の現場付近からは体液が付着したティッシュが採取され、其れをDNA鑑定した所、或る男性のDNA型と一致する。其の男性・坂本一寛は、16年前に同様の手口で男児を殺害していたが、16年前に逮捕され、以降ずっと刑務所にて服役中の身だった。「坂本が、刑務所から抜け出す事は不可能。」、「関係者の証言から、坂本は天涯孤独の身で、(DNA型が同じとされる)一卵性双生児の兄弟は存在しない。」等、坂本が今回の事件の犯人で在る事は絶対に不可能と思われたのだが・・・。
実に興味をそそられる設定。“真犯人”が判った際には「成る程。」と思う一方で、「此の設定、一寸狡くないか?」、「『容疑者Xの献身』の真犯人もそうだったが、“他人”の為に其処迄、自分自身を犠牲に出来る物か?」といった思いがどうしても残ってしまった。
「どういう展開になって行くのだろう?」と引き込まれる内容では在るが、「他人の犠牲になる。→其の他人と同じ経験をする。→其の他人と同じ思いを抱えてしまう。」という、実に後味の悪い結末。
総合評価は、星3つとする。