最初に此の記事のタイトルを目にした時、「老夫婦が違法行為、又は“グレー・ゾーンな遣り口”で大金を得た。」という事なのかと思った。でも・・・。
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「宝籤のルールの穴を突いて28億円以上を荒稼ぎした老夫婦の物語」(6月12日、GIGAZINE)
アメリカ・ミシガン州の片田舎でコンヴィニを経営していた老夫婦が、公営の宝籤に設けられたルールの穴を突いて2,600万ドル(約28億2,240万円)もの賞金を手にしていた事が判りました。一躍有名になった此の夫婦の元には、ハリウッドで映画化するという話迄持ち上がっているとの事です。
2018年にアメリカ人が購入した州営宝籤の合計金額は800億ドル(約8兆6,800億円)にも上り、此れはアメリカ人が1年間に購入するコンサートやスポーツ・イヴェント、映画館のチケット代の合計よりも多いとの事。此の御蔭で、アメリカの50在る州の内、25以上の州が法人税よりも多額の収入を宝籤から得ており、其の様子は「宝籤は、愚者に課せられた税金で在る。」と言われる事も在ります。其の一方で、数学の素養が在る人にとっては、旨味の在る投資先でも在った様です。
ミシガン州に在る人口1,900人の小さな町・エヴァートでコンヴィニを営んでいた、当時62歳のジェリー・シェルビー氏は或る朝、自分のコンヴィニの店頭で「Winfall」という州営宝籤のパンフレットを発見しました。此のWinfallには、「ロールダウン」というルールが在りました。
此れは、「1等の賞金が繰り越しにより500万ドル(約5億4,000万円)に達したが、1等の当選者が現れなかった場合、其の賞金が下位当選者に振り分けられる。」というルールです。
1歳年上のマージ夫人から「数学頭」と呼ばれており、実際に西ミシガン大学で学士号も持っていたシェルビー氏は、直ぐ様此のロールダウンを加味した期待値を計算。1等当選者が発生する確率は可成り低い為、繰り越し賞金が500万ドルを超えている場合、可成りの確率でロールダウンが発生します。其の結果、ロールダウンが発生しそうな時に1,100ドル(約12万円)分購入すれば1,900ドル(約20万円)返ってくる事が判明した為、実際に3,600ドル(約39万円)分のチケットを購入した所、6,300ドル(約68万円)の賞金を手にする事が出来たとの事。此れがビジネスになる事を確信したシェルビー氏は、17年間経営したコンヴィニを売却し、妻や友人等を集めて「GS Investment Strategies」という会社を設立。ミシガン州が2005年に、「売り上げ不足」を理由にWinfallを終了する迄の間、荒稼ぎしました。
シェルビー夫妻の物語は、此処で終わりません。ミシガン州がWinfallを終わらせた直後、今度はマサチューセッツ州が「Cash Winfall」という宝籤を開始しました。Cash Winfallにも同様に、「ロールダウン」が在る事を聞き付けたシェルビー夫妻は、其の後6年間に亘り、ロールダウンが発生する度に、ミシガン州の自宅から14時間ドライヴしてマサチューセッツ州に駆け付け、複数のコンヴィニで数十万ドル分のチケットを買い占めるという生活を続けました。
其の後、マサチューセッツ州ボストンに本社を構える新聞社「The Boston Globe」紙が2011年7月に、シェルビー夫妻がCあsh Winfallで大儲けしている事を突き止めた為、マサチューセッツ州は2012年1月にCash Winfallを終了させました。
Cash Winfallが終了する迄の9年間で、シェルビー夫妻の会社は延べ2,600万ドル(約28億2,000万円)もの賞金を稼ぎ、課税前所得として800万ドル(8億6,000万円)もの利益を上げたとの事。シェルビー夫妻は、2019年現在もエヴァートに住んでおり、賞金は自宅の改修と、6人の子供、14人の孫、10人の曾孫の教育費に充てているとの事。そんな2人の元には、ハリウッドから映画化の話も舞い込んでいるそうです。
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以前勤めていた会社には、京都出身で経済学部出身の後輩が居た。非常に優秀で、「凄いなあ。」と思わされる事が多かった。文系の学部を卒業しているとはいえ、元々は理系の学部を目指していたという事も在り、発想法に“理系の煌き”を感じる事が良く在り、典型的な文系の自分からすると羨ましくてならなかった。
今回のニュース、違法行為でも“グレー・ゾーンな遣り口”でも無く、確率論での分析によって大儲けを果たした訳で、こういう数学の素養が在る人が羨ましい。