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「第1話 鋼のモデリング」
風間公親(かざま きみちか)は、警察学校第94期初任科短期課程の教官となった。助教の尾凪尊彦(おなぎ たけひこ)は、気になる生徒として、人命救助で警察に表彰された事の在る矢代桔平(やしろ きっぺい)の名を挙げた。
「第2話 約束の指」
実家が町工場を営む笠原敦気(かさはら あつき)は、マル暴刑事を希望している。クラブ活動ではソフトボールに力を入れ、元高校球児の助教・尾凪から手解きを受けているが、スローイングに難が在った。
「第3話 殺意のデスマスク」
若槻栄斗(わかつき えいと)は、ブラジリアン柔術の有段者。交番実地研修中に、通り魔を逮捕した若槻に、風間は現場の再現を命じる。
「第4話 隻眼の解剖医」
警察学校では課外授業として、司法解剖を見学する。不快指数が高いと、犯罪が起き易い。7月に入り、生徒の大半が嘔吐する講習が近付いていた。
「第5話 冥い追跡」
星谷舞美(ほしたに まみ)は性格が明るく、成績もトップクラスで在る。星谷と大学同窓の石黒亘(いしぐろ わたる)は、下位から成績を上げて来た。卒配後は成績上位2名が、最重要署のA署に仮配属となる。
「第6話 カリギュラの犠牲」
氏原清純(うじはら きよすみ)は、反りの合わない同期・染谷将寿(そめや まさとし)と、卒業式のスライド上映担当を任された。当日、風間は祝辞の読み上げを止め、最終講義を始める。
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「日本の警察学校を舞台とした警察小説「『教場』シリーズ」は、長岡弘樹氏の代表作と言って良い。原作がTVドラマ化されているので、御存知の方も多いだろう。今回読んだ「新・教場」は、同シリーズの第6弾。
警察官として“不適格”と判断した“生徒”には、容赦無く“退校”に追い遣る教官・風間公親。生徒達の一挙手一投足を常に見張り、其の言動から彼等の“真の姿”を見抜いて行く。そんな冷徹な風間の“意外な面”を、今回の作品でも描き上げている。
「第2話 約束の指」、「第3話 殺意のデスマスク」、そして「第4話 隻眼の解剖医」に関しては、比較的早い段階で“其の後の展開”が読めた。特に「第4話 隻眼の解剖医」は、完璧に読み切った。
「そう来たか!」という意外性が在ったのは、「第1話 鋼のモデリング」と「第6話 カリギュラの犠牲」。「禁止される程、遣ってみたくなる心理現象。」を「カリギュラ効果」と呼ぶのを初めて知ったが、「確かに映画『カリギュラ』は公開当時、其の過激な内容が喧伝された事で、観客がどっと押し寄せた事が話題になった。」っけ。
生徒が退校に追い遣られても、“救い”を感じられる作品も「『教場』シリーズ」には在るけれど、「第5話 冥い追跡」は、タイトル通り“対校させられた生徒達の未来”に冥さを感じさせる話。「もう生徒では無いのだから、後はどうなろうと知らない。」という風に助教・尾凪は割り切れなかったろうし、恐らくは風間も同様だろう。
総合評価は、星3つとする。