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我が家の嫁姑の争いは、米ソ冷戦よりも恐ろしい。 バブルに浮かれる昭和後期の日本。一見、何処にでも在る平凡な家庭の北山(きたやま)家だったが、或る日、嫁は姑の過去に大きな疑念を抱く様になり・・・。 「シーソーモンスター」
突然、僕は巻き込まれてしまった。時空を越えた争いに。舞台は2050年の日本。或る天才エンジニアが遺した手紙を握り締め、彼の旧友と配達人が、見えない敵の暴走を前に奮闘する。 「スピンモンスター」
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伊坂幸太郎氏の小説「シーソーモンスター」は、中央公論新社の創業130周年を記念して発刊された小説誌「小説BOC」の企画によって書かれた作品。「『人と人との対立』というキーワードで、『“海族”と“山族”の血筋を引く者同士は、ぶつかり合う運命に在る。』という設定等、幾つかの要素を共有した上で、8組の小説家達が、原始時代から未来迄の其れ其れの時代の物語を書く。」という企画で、伊坂氏は“昭和のバブル期”を舞台にした「シーソーモンスター」と、“近未来”を舞台にした「スピンモンスター」という2つの中編小説を担当している。
伊坂作品と言えば、格言等が多く盛り込まれている事に加え、“風吹けば桶屋が儲かる的意外な展開”が特徴。今回の作品でも格言等が多く盛り込まれているし、“風吹けば桶屋が儲かる的意外な展開も健在なのだが、「シーソーモンスター」に関して言えば、そんなに意外さを感じさせる展開では無く、“或る人物”の正体も早い段階で想像が付いた。
でも、「スピンモンスター」の方は想像が付かない意外さが在ったし、「シーソーモンスター」との関連性も、「そう来たか!」という驚きが在り、まあまあ満足出来る内容。
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「人工知能ってのは研究すればするほど、やばさが判ってくるんだよ。はじめは、なるほど、こういうロジックで結論を導き出しているんだな、と把握できるけどな、発達してくるとその思考の理屈が全く判らなくなってくる。高をくくってる研究者もいるけどな、冷静に考えれば、人工知能を開発するってのは、情報を食べて進化する化け物を作ってるようなもんなんだよ。だから、莫大な量の人の行動が全部、ログに残って、そいつが人工知能に供給され始めたら、もう何が起きるか判らない。」。
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6月1日に発生した「金沢シーサイドライン新杉田駅逆走事故」もそうだが、テクノロジーの過信は危うさを秘めている。そんな危険性を、伊坂氏は訴えたいのだろう。
総合評価は、星3つとする。