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先生、本当の事を教えて。何で私の前に現れたの?
研究者だった亡父の手帳を渡した直後、突然姿を消した先生。仄かに思いを寄せていた高校2年の水島悠奈は堪らず後を追う。ところが再会したのは穏やかな先生とは別人の様な鋭い眼差しの男。更に悠奈の前に、「御迎えに上がりました。」と謎の男達が現れ、彼女は“拉致”されてしまい・・・。
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似た様な作風の作品許りを著している作家も少なくないが、大崎梢さんの場合は積極果敢に“守備範囲”を広げようとしている1人だと思う。そういう心構えの作家は好きだし、応援もしたくなるのだが、此の程読み終えた小説「キミは知らない」からも、彼女の挑戦心が垣間見え、其の点では評価出来る。
30年程前に放送され、人気を博したドラマ「ヤヌスの鏡」(動画)。「普段は真面目で気弱な優等生の少女が、突然、別人格で在る凶悪な不良少女に変貌し、夜の繁華街で暴れる。」という、「ジキル博士とハイド氏」を思わせる設定が面白かったのだが、地味でださいと評判だった男性教師が、再会したら別人としか思えない雰囲気に変わっていたという此の小説も、一瞬「ヤヌスの鏡」を思い出させた。
「誰が本当に味方で、誰が本当に敵なのか?」というのが、最後迄判らない。読者による「人物評価」が、二転三転しそうなっ登場人物許りだから。ストーリー展開もジェット・コースターの如く激しい移り変わりで、「次はどうなるのか?」という好奇心をそそらせる。
唯、残念なのは余りに色んな要素を詰め込んだが為に、現実感に乏しく、且つ御都合主義的に感じられる部分が散見された事。又、中盤辺り迄と比べると、後半は内容的に端折った感じもした。
総合評価は星3つ。