当初は別の人間が出張する筈だったのだけれど、其の人間が出張当日に急病で倒れてしまい、代わりにA氏が東京に急遽出張する事になったとする。九州で働いている彼にとって、東京は初めて足を踏み入れる場所。何とか業務を終えて東京を離れる際、街中で偶然目にした宝籤売り場で年末ジャンボ宝籤を10枚購入。彼にとっては人生初の宝籤購入だったのだが、見事に3億円を引き当てる事に。其の賞金を元に人生初の海外旅行に行った彼が、旅先で偶然宝籤売り場を見付け「記念に買ってみるか。」と数枚購入した所、其れが何と数十億円の当選金を引き当ててしまう。考えられない偶然が重なり、途轍も無い幸運を手にするというケースだ。
此れとは逆に、考えられない偶然が重なった結果、途轍も無い災難に見舞われてしまうというケースも在るだろう。本来は会社で残業している筈だったのに、古くからの友人が亡くなった為、仕事を早く切り上げて通夜の席に向かう事に。参列後、徒歩で帰宅する積りだったのが、偶然出くわした知人から「車で送って遣る。」と言われたので言葉に甘え乗せて貰った所、途中で落下して来た巨大看板に直撃され、全員亡くなってしまう。そんな「考えられない偶然が重なった結果、途轍も無い災難に見舞われてしまう。」というケースが、実は全て“悪意を持った人間”が仕組んだ結果だったとしたら、「偶然の重なりが生んだ災難」なんぞでは無く、「必然の重なりが生んだ殺人」となる。
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「“死神”と呼ばれる殺し屋のターゲットになると、24時間以内に偶然の事故によって殺される。」。特ダネを追うライター・陣内は、或る暴力団の組長の死が、実は死神によるものだと聞く。事故として処理された彼の死を追う内に、陣内は破天荒な天才投資家・本宮や、組長の敵討ちを誓うヤクザと共に、死神の正体に迫って行く。一方、退官間近の窓際警部と新人刑事も又、独自に死神を追い始めていた・・・。
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第8回(2009年)「『このミステリーがすごい!』大賞」で最終候補作品の1つとなり、大賞には選ばれなかったものの著者の将来性見込んで“隠し玉作品”に選ばれた「死亡フラグが立ちました!」(著者:七尾与史氏)。近年は「デフォルト」等、コンピュータ関連の用語を多く目にして面喰う事が少なくないのだけれど、「フラグ」も元々はコンピュータ・プログラム用語で、「或る一定の条件を満たす事で、次々に新たなステージへと進む。」というプログラムを意味するらしい。で、「死亡フラグ」というのは、「映画や小説等フィクションの中のキャラクターが、『こういう状況でこういう台詞を言ったら(若しくはこういう行動を取ったら)大抵死んじゃうよね。』という様な(作劇上の御約束と化している)言動の事。」だ。「俺、退院したら、今度こそ彼女にプロポーズするんだ。」とか、「此処は俺に任せて、良いから御前達が先へ行け!」と言った人間が、其の後に亡くなってしまう・・・といったパターンがそうだ。
で、「死亡フラグが立ちました!」は一見「偶然」の重なりが引き起こした「人の死」が、“死神”なる殺し屋によって周到に準備された「必然」の出来事が生み出す「殺人」で在るのか否かが焦点になっている。陣内&本宮、そして窓際警部&新人刑事という2つのコンビが其れを追究して行く訳だが、ストーリーとしては面白かった。
唯、「必然の重なりが生んだ殺人」とするには無理を感じる、「偶然の産物」と言えなくも無い部分も在ったりして、そういった点では本格ミステリーを好む人には合わない作品と言えるかもしれない。最後の最後で“締まりの無さ”を感じなくも無かったし。又、或る少女が“父親”と初めて会って以降の描写が、もっと会っても良かった気がする。
総合評価は星3個。
此れとは逆に、考えられない偶然が重なった結果、途轍も無い災難に見舞われてしまうというケースも在るだろう。本来は会社で残業している筈だったのに、古くからの友人が亡くなった為、仕事を早く切り上げて通夜の席に向かう事に。参列後、徒歩で帰宅する積りだったのが、偶然出くわした知人から「車で送って遣る。」と言われたので言葉に甘え乗せて貰った所、途中で落下して来た巨大看板に直撃され、全員亡くなってしまう。そんな「考えられない偶然が重なった結果、途轍も無い災難に見舞われてしまう。」というケースが、実は全て“悪意を持った人間”が仕組んだ結果だったとしたら、「偶然の重なりが生んだ災難」なんぞでは無く、「必然の重なりが生んだ殺人」となる。
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「“死神”と呼ばれる殺し屋のターゲットになると、24時間以内に偶然の事故によって殺される。」。特ダネを追うライター・陣内は、或る暴力団の組長の死が、実は死神によるものだと聞く。事故として処理された彼の死を追う内に、陣内は破天荒な天才投資家・本宮や、組長の敵討ちを誓うヤクザと共に、死神の正体に迫って行く。一方、退官間近の窓際警部と新人刑事も又、独自に死神を追い始めていた・・・。
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第8回(2009年)「『このミステリーがすごい!』大賞」で最終候補作品の1つとなり、大賞には選ばれなかったものの著者の将来性見込んで“隠し玉作品”に選ばれた「死亡フラグが立ちました!」(著者:七尾与史氏)。近年は「デフォルト」等、コンピュータ関連の用語を多く目にして面喰う事が少なくないのだけれど、「フラグ」も元々はコンピュータ・プログラム用語で、「或る一定の条件を満たす事で、次々に新たなステージへと進む。」というプログラムを意味するらしい。で、「死亡フラグ」というのは、「映画や小説等フィクションの中のキャラクターが、『こういう状況でこういう台詞を言ったら(若しくはこういう行動を取ったら)大抵死んじゃうよね。』という様な(作劇上の御約束と化している)言動の事。」だ。「俺、退院したら、今度こそ彼女にプロポーズするんだ。」とか、「此処は俺に任せて、良いから御前達が先へ行け!」と言った人間が、其の後に亡くなってしまう・・・といったパターンがそうだ。
で、「死亡フラグが立ちました!」は一見「偶然」の重なりが引き起こした「人の死」が、“死神”なる殺し屋によって周到に準備された「必然」の出来事が生み出す「殺人」で在るのか否かが焦点になっている。陣内&本宮、そして窓際警部&新人刑事という2つのコンビが其れを追究して行く訳だが、ストーリーとしては面白かった。
唯、「必然の重なりが生んだ殺人」とするには無理を感じる、「偶然の産物」と言えなくも無い部分も在ったりして、そういった点では本格ミステリーを好む人には合わない作品と言えるかもしれない。最後の最後で“締まりの無さ”を感じなくも無かったし。又、或る少女が“父親”と初めて会って以降の描写が、もっと会っても良かった気がする。
総合評価は星3個。