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世の中に既に存在する写真に文を添える事で、全く新しい物語が生まれた・・・。
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直木賞作家・道尾秀介氏は、“新たな取り組み”を試みている。2019年に上梓された「いけない」、そして昨年上梓された「いけないⅡ」という所謂「『いけない』シリーズ」は、「各短編小説の最後に写真が載せられており、其の写真を見る事で読者は『著者によってミスリードされた事。』に気付かされる。」という内容。詰まり「道尾氏はミスリードさせる文章を態と書き、そして最後の写真で“真実の種明かし”をする。」という手法を講じているのだ。
今回読んだ「フォトミステリー ーPHOTO‐MYSTERYー」は、更なる高度なテクニックを駆使しているとも言える。「最初に1枚の写真が載せられており、其の後に短文(場合によっては1行だけ)が記されている。」というスタイル(最後の「旅立ち」という作品だけは、2枚の写真だけで構成されているが。)で、特徴的なのは「載せられた写真が“明るさを感じさせる物”が殆どなのに、記された短文は全く予想出来ない様な“不気味で暗い内容”というギャップが在る。」事。「えっ!どういう事?」と読者は戸惑い、そして自分の頭で色々考えた結果、“違った意味合い”を導き出す事を狙ったのだろう。導き出した“違った意味合い”は、読者によって其れ其れ異なる可能性も在る。
作品によっては、前の作品とリンクしている“様な”物も在ったりして、そういう関係性を導き出すのも面白さの1つなのだろうが、個人的には「全体的にピンと来なかった。」というのが正直な所。新たな取り組み自体は決して悪い事では無いけれど、「道尾氏には、“純粋な小説”で勝負して欲しい。」という思いが在る。申し訳無いが、此の手の作品は“邪道”。
総合評価は、星2つとする。