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アイネ・クライネ・ナハトムジーク:モーツァルトが作曲したセレナーデの1つ。日本語では「小夜曲」と訳される。
奥さんに愛想を尽かされたサラリーマン、他力本願で恋をしようとする青年、元苛めっ子への復讐を企てるOL・・・。情け無いけど、愛おしい。そんな登場人物達が紡ぎ出す、数々のサプライズ! !
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伊坂幸太郎氏の小説「アイネクライネナハトムジーク」。伊坂作品と言えば泥棒や死神等、変わったキャラクターが登場するのが特徴だが、此の作品に登場するのは“普通の人々”許り。そういう意味では、伊坂作品らしく無いのだが・・・。
「風が吹けば桶屋が儲かる」という諺が在るけれど、「全く無関係と思われた事柄や人物が、実は密接に関係し合っていた。」というのも、伊坂作品の特徴の1つ。そういう作品は他の作家も手掛けているけれど、“伏線の張り方の絶妙さ”や“意外性の強さ”という点で、伊坂作品は群を抜いている。
「運転免許証更新期限内の“最後の日曜日”に必ず、自動車免許センターへ更新に来る人間が2人居るとしたら。」という設定での話が在るのだが、「運転免許証の更新は、何も無ければ5年毎に遣って来る。だから、上記の設定なら、見ず知らずの2人が顔見知りになる事も。」という発想が浮かぶ伊坂氏というのは、「凄いなあ。」と思ってしまう。
「彼の人が此の人と、こういう形で関係していたのか・・・。」と、伏線の張り方の絶妙さと意外性の強さは、相変わらず冴えている。「伊坂氏の癖の在る文体が少々苦手。」だったりするのだが、「アイネクライネナハトムジーク」ではそういった部分が、稍抑えられている様なのも良い。
総合評価は、星4つとする。
「振込者の名前を、“メッセージ”として使う。」というのは、「上手いなあ。」と思いました。凡人だったら何とも思わずに見過ごしてしまう事を、伊坂氏の着眼点は凄い。又、意外な人と意外な人が繋がっている事等も、「書いていて、良く頭の中がゴチャゴチャにならないなあ。」と感心してしまいます。