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雨野隆治(あめの りゅうじ)は、30歳の外科医。受け持ち患者が増え、大きな手術も任される様になった。友人の癌患者・向日葵(むかい あおい)は、相変わらず明るく隆治を振り回すが、病状が進行しているのは明らかだった。或る夜、難しい手術を終えて後輩と飲みに行った隆治に、病院から緊急連絡が入り・・・。
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「1980年生まれの現役外科医で、37歳の年に病院長にもなった。」という経歴を持つ中山祐次郎氏。「医師で在り、作家でも在る。」という異能の人だ。
3年前、彼が上梓した小説「泣くな研修医」を読んだ。そして、此のシリーズを読み続け(記憶違いで無ければ、何故だか判らないけれど、第2弾は読み落としている。)、今回読了した「やめるな外科医 泣くな研修医4」は、同シリーズの第4弾。
第1弾の「泣くな研修医」では、「何も出来ず、何も判らず、先輩医師や上司から、唯怒られる許りの新米医師。」だった雨野隆治も、経験を積み重ね、医師として何とか動ける様になっている。そんな彼の前に、“生と死”という相反する現実が立ちはだかる。
年齢も病状も似ているが、見た目や言動は全く異なる2人の高齢女性が救急外来に運び込まれる。見た目や言動は全く異なるけれど、彼女達と接して行く中で、隆治は彼女達が抱えている“深い闇”を知る事に。結論から言えば、彼女達は共に死を迎えるのだけれど、「死によって、彼女達は何を得たのだろうか?」という事を考えると、余りにも大きな違いを感じてしまい、複雑な思いになってしまった。
又、今回の作品で、隆治は“2つの大きな存在”を失う事になる。外科医という職業に就いているからこそ、過敏に気付いてしまう事も在れば、其の激務さ故に失ってしまう物も。「自分だったらそういう状況を、果たして耐えられるだろうか?」と、自問自答してしまった。
現役の医師だからこそ、記述にリアリティーが在る。医師としての日常には「そういう感じなのか・・・。」と思い知らされる事が多く、特に“書類を書く作業”の余りの多さには「もっと改善出来ないのかなあ?」という疑問が。(隆治の場合、「書類を書く作業だけで、週に5時間程取られている。」と記されていた。)
人の命を預かる仕事だからこそ、どうしてもそういう作業が増えてしまうのだろうけれど、例えば「患者が加入している保険会社の書類への記載。」では、「フォーマットは保険会社毎に全て異なり、然も患者1人で複数の保険に加入している事も珍しく無い為、臨床医は年中此の書類に病状や癌のステージ、診断日や手術結果等を記入している。」と在った。「保険会社の書類形式を全て統一出来れば、書類記載の業務も、少しは楽になるのでは?」という思いが。
読ませる内容で、一気に読了してしまった。総合評価は、星4.5個とする。