児童文学作家を目指す日々 ver2

もう子供じゃない20代が作家を目指します。ちょっとしたお話しと日記をマイペースに更新する予定です。

もしもし、バカへ

2015-02-14 | 物語 (電車で読める程度)


「なんとなく就職に強そう。」という理由だけで工学部に入った俺はいろいろと間違っていた。単純に数学が得意というだけで理系を選択し、友達がみんな狙うからというだけで地元の大学を選び(あと通いやすいから)、なんやかんやで現役合格できた。しかし、そこで俺を待ち受けていたのは無気力、無関心の二大問題だった。何もしたくないし、授業も親には悪いけど正直あんまり興味なかった。課せられる実験やレポートなんかも一つ提出が間に合わなかっただけで雪崩れのように全てのやる気が消えていった。学部の友達とはだんだん疎遠になり、同じ大学に進学した高校の頃の友達もなんかボランティアとかサークルとかで忙しいっぽい。そういう俺は入部2日でバレーボールサークルに行かなくなり、夏休みが明けて学祭が終わっても実家→大学→ラーメン→バイト→実家のライフサイクルを永遠くり返していた。

だから俺にとって田辺ってヤツは最高に面白い存在だった。再履修の時たまたま隣り同士で喋った俺達は速攻で(あるいは即効?)で打ち解けあい、よくつるむようになった。田辺は下宿生だったが仕送りが少なく、けれどバイトが嫌で嫌でしょーがないらしく、ギリギリのビンボー生活をしていた。だから俺は田辺の下宿先にメシを差し入れするかわりに必修の課題とかやってもらう仲になっていた。田辺は勉強はできるくせに俺とはちがうベクトルで授業に関心がないらしく、単位も落としまくっていた。
が、田辺の部屋には山のように本とガラクタがあり、太陽光で鳴るオルゴールや0,01秒まで表せる針時計など比較的わかりやすいものから、棒の先についた小さなオッサンの人形がぐるぐるまわるだけのものやレバーを引けばシャーベット状のオニオンスープがでる消火器のようなものなど意味不明なものも多かった。


そんな田辺と俺は小学生の夏休みの自由研究よろしくひとつの工作をした。それはあえていうなら音声認識ダイヤルフォンみたいなものだ。1234567890にそれぞれア行、カ行、サ行…ラ行とワ+ンを割り振り、言葉を話すだけで電話がかけられるという代物だ。たとえば110番なら「アイーン」、119番なら「オイラ」0120は「ワイ、きゃわ☆」まぁ不正確なところもあったし、ぶっちゃけ数字で入力したほうが早いんだけど、ちょっとした洒落のつもりでつくったんだ、そのへんは気にしない。でも案外これが俺らふたりのなかでウケて、この電話番号は下ネタになるだとか、自分んちの番号が教授のあだ名になるだとか、どーでもいいことで爆笑してた。


そんなある日、いつものようにふたりでラーメンを食ってる時、田辺が「あのさ、大学やめるわ。」と唐突に言った。また何かの冗談かと思って「おい、それカノジョの番号か? w」と餃子をつまみながら笑うと「3人目のな、」と笑って返してきた。その日もやっぱり今までと変わらず、いつも通りだったと思う。でもその一週間後、田辺はマジで大学をやめた。


その後、俺はなんとか留年もなく進級でき、ゼミで少しだけ友達もできた。退屈だったけど平穏な学生生活を送った。卒業後の進路選択を迫られる頃、俺は大学院への進学か就職かの二者択一を決断しなければならなかった。大学院へ進学すれば大手企業への推薦もあるらしい。でも、そうかといって自分に研究者としての資質が本当にあるのかは大きな疑問であった。俺はひとりもんもんと頭を悩ませていると研究室のドアがバッと開けられ、同じゼミ生が困惑した表情で1枚の手紙を渡してきた。
「なんか、企業の社長さんからみたいだけど…」

一見果たし状とも受け取れる一文が裏に書かれているだけだ。
なるほど、俺はニヤリとした。
こりゃ意味わかんねーよな。

俺は驚く友人を横目に携帯をとりだし、いくつかの番号を打ち込んだ後、最後の4ケタを叫んだ。






「俺の親愛なる『おバカへ』!!!」







【おわり】

上も向いて歩こう

2015-02-14 | 日記


鼻×花を書いていたとき
何かないかなーと
近くの田んぼの畔道を探していたら

オオイヌノフグリ?
(もしかしたらイヌノフグリかも?)をみつけて

この青い花よくわからんけど
なんか好きだったなーと思い
この花をお話にだそう!
とか考えながら久しぶりに下をキョロキョロしてると
ポタっと音がして
なんだろうと右腕をみたら鳥の白いフンがついてました!
見上げたらギョッとするほど電柱にびっしり鳥がいて、まるでマンガみたいだなーとのんきに思いました(笑)


つまり、
上ばかりじゃなく下も見たほうがいいけれど、やっぱり上にも注意しよう!


そんなふうに考えさせられる
一日でした(笑)



ただ 上着のそれを洗っている時はちょっとへこみました。


あと 物語というより短編のようなものも少しずつ更新できたらと思っています。ボクは なかなかひとつの長いお話しを書ききれないので、短いものから始めようかと思います。

書き上げた時は嬉しくてそのまま投稿しちゃうので誤字脱字、その他表現の不適切などの修正は投稿後となります。そのため日記も含めて内容が予告なく変更する場合がありますのでどうかあしからず。

もし至らない部分などを指摘してくださる優しい方がいらっしゃれば、すごく勉強になります!


もちろん全てフィクションですが、どれもボクの大切な宝物なので、ひとつでも気に入ってもらえたらとっても嬉しいです。




ではでは!






鼻×花

2015-02-14 | 物語 (眠れない日に読める程度)


まだまだ寒い2月の休日、私は娘と二人でだだっぴろい畑の畔にいた。春になったらここはレンゲソウの花が辺り一面を埋めつくす。茶色い畑はやがてどこまでも薄紅紫に染まるのだ。ちっちゃな手を握り、私たちは畦道を歩く。
「去年ここに来たこと、覚えてる?」
私はあえて間延びした声で娘に聞いてみた。いや、ホントは聞いてなかったのかもしれない。この鉛色の空に向かって言ったのかもしれない。娘は仏頂面で畔の雑草なんかを探し物でもあるかのようにキョロキョロと足元をみていた。握った右手をぶらぶらさせながら「ここでレンゲソウを摘んで、写真をとったんだよ。」とまたひとりごとのように呟いた。

悪いことは、また別の悪いことを運んでくる。よくないこと、上手くいかないこと、不快なことが次から次へと数珠繋ぎになって、私を縛りつける。外見だってそう。私が気にしている団子っ鼻は見事に娘に遺伝しまった。きっとこの子が大きくなった頃、また私と同じように悩むのだろう。そう考えると堪らなく自分が憎かった。
「外見より中身が肝心よ」と言ってくれた私の母は結局のところ、要領がよかっただけのように思える。私は母ほど生きることが得意じゃなかった。それは甘えだったのか、もっと向上心があれば解決できたことなのか、今となってはわからないし、正直わかりたくもなかった。でも、

私はこの子になんて言ってあげればいいんだろう?

いつの間にか近くの小石を蹴っていた。小石はしばらく真っ直ぐ転がってゆき、やがて何かにぶつかったのか変な方向に跳ね、溝に落ちてしまった。娘がその小石を追いかけて私の手を振りほどく。その小さな背中がもっと小さくみえて、つい立ち止まってしまった。所詮そういうことなのだ。

深呼吸すると湿った土の臭いがした。やっぱりカメラはもって来なくてよかったかもしれない。ちょうど畔道から外れたところに自動販売機をみつけて、吸い寄せられるようにそちらへと向かった。お茶でも買ってわけて飲もうか。小銭をじゃらじゃら入れてボタンを押す。ガコンと落ちてきたお茶をとりだしながら娘の名前を呼んだ。返事はない。一瞬のうちに私の胸のなかに冷たいものが流れ込んだ。


「ねぇねぇ、お母さん。」

私の真後ろに娘は立っていた。

「もう、驚かさないでッ!」

そう声に出す前に娘が何かを突きだしていた。

「これ、なに?」

かがんでみると、そこにはちぃさな花が握られていた。ちぃさな握りこぶしからぴょんっと飛び出たちぃさな花。まだ咲ききっていないのか半分花びらが閉じている。私の小指にも満たない小ささで、けれどとっても綺麗なコバルトブルーの花びらをもっていた。

「さぁ… なんて名前の花なんだろうね。 どこでみつけてきたの?」

すると、「そこ。」と言って私が歩いてきた道端を指した。近づいてみれば、同じ花がいくつもかたまって咲いていた。全く気づかなかった。むしろ、何度同じ道を通ったところで私ひとりでは気づかなかっただろう。それほど小さな花だった。娘の手が肩に触れそっと振り返ると

そこには天使がいた。

まんまるな瞳をお星さまにさせて
ニコニコと笑うわが子がいた。

「このお花、どんなにおいがするの?」

そう言って私の答えも聞かずにそっと目を閉じ花を鼻にあてる。

モノクロの空を背景にこの子と名も知れぬ花の青だけが色彩を放っていた。山からそよ風が流れ、まだ薄い幼子の髪をゆらした。

その一瞬は触れられないほど繊細で、神聖なものであるように感じた。

そこで、あるひとつの情景が甦る。それは去年の春。一面 薄紅紫の花畑のなか、イタズラっぽく笑いながらレンゲソウに鼻を近づけそっと蜜をかぐこの子の姿だった。私はそこでも同じものを感じた。そして、取り憑かれたように一心不乱でシャッターを切ったんだ。

それは、 あなたが映る世界を残しておきたくて。たった今、この一瞬にいつまでも居たくて。でも なぜか、とっても痛くて。私がもう少しあなたの鼻を高くして生んであげればよかったのに。そんなドロリとした感情を
ファインダー越しに悟られないよう、何度も何度もシャッターを切り続けたのだ。

なにもかも忘れていた。
あの時の私はもうこの一瞬は二度とやってこないと確信していた。
でも、ちがう。
あの一瞬はやってこなくても、また新しい一瞬がやってくる。
上手く言えないけど、それはきっと悲しいことではないはずなんだ。

なぜか、そう 今思えた。




「なにも におい しない。」

ぽいっと花をなげると娘は喉が渇いたのか、さっき買ったお茶をねだった。

「そろそろ、おうちに帰ろっか。」




そして、私たちは来た道を手をつないで帰ったのだった。








【おわり】