6年1組はつまらない。
それはもう6年も似たような番組をローテーションしてるから。
チャンネルを変えるように人も、クラスも、学校そのものも変えれればいいのに。そう願ったことは少なくない。
けれど「新たな旅立ち」とか「夢をもった大人になる」とか、あんまり考えたくないし、たとえ大人になったって、この番組めいた人間関係の形は変わらないんだろうな。とか、そんな想像をしてまた気が滅入りそうになる。
卒業証書を受けとるまでの間
僕はそんなことを考えていた。
このクラスはサイコーに楽しい。
ホントにオレを笑わせてくれる。
だいちゃんも、さこちもマジでいい奴ばっか!これから中学にあがってバラバラになる奴がいるのがクソ辛い。
でもまぁ、イマドキ、ラインとかツイッターとかあるし? 大丈夫じゃね?
みんなサッカー部入ったら試合でまた会えるし!敵としてッ!絶対負けねー。
ミハルもいるし、オレらの入る中学最強じゃん! 一年だけでレギュラーいけるかもw
みんな、卒業なんだね。少しさみしいな。わたし、迷惑はかけてなかったかな? 心配です。左古矢さんは明るくてわたしには遠い存在です。4年生の時、保健委員の委員会会議に出席できなかった時、かわりに出てくれてありがとう。だいちゃん君はすごく面白い人です。中学校で給食の牛乳がないのがとっても残念(笑) ただ、テストの成績で出島君に勝てなかったのは悔しいです…中学校も一緒だから次は負けません!ミハル君には……結局言えなかったな。あんまり話せなかった人ばかりだったけど、楽しいクラスでした。ありがとう。
ボクの成績だったら、もしかしたら私立の中学校に受かったかもしれない。実際、塾の先生にもそういわれたし。ただ、やっぱりウチには無理だと思った。中学受験にはカネがかかるし、本気の人とかは3、4年生のころから進学塾に通ってる。これ以上親に無理してほしくない。だから塾の受験組にバカにされるのがウザかったから学校では絶対一番になるようにした。去年違うクラスの入海さんには夏休み明けの算数の小テストで負けてしまった。チッ。
いつも2、3点まで追い詰めてくる。中学になったら勉強も難しくなるらしいし絶対油断できない。
アタシ的にはまぁまぁよかったかな。
リョー や みっくん達、サッカーばか とは中学から別々……だけど………………うん。そう、別々。だからアタシは強くならなくちゃって思ってる!仲よかった他のみんなとも離れてばなれになっちゃうし………………ちょっと………ううん、すっごく不安だけど、アタシがんばらなきゃ!もっともっとがんばって、友達たくさんつくろう!………うん、………がんばらなきゃね。
あ、あと みっくんは ばかじゃないよ。頭もいいし、でもガリ勉って感じじゃないし、走るのはやいし。……………………うん……はぁグス。
オレとしては、中学でも同じ感じでやってきたい。今のクラスが一番ラクだったしな。 リョー や 大地が騒いで、それにみんながノルかんじはシンプルでいい。まぁ、勉強も出島ほどじゃなくても、そこそこやって、そこそこ部活やって、そこそこ恋愛できたらベストだろ。だから、大地みたいなキャラにはなりたくない。アイツはいつもへらへら笑ってるけど、なんかみてて痛々しいってか、あぁ必死なんだなぁーって思う。そういや、昨日左古矢に告られたけどフったわ。だって中学離れんじゃん。エンキョリとかめんどい。それに春になれば新しい出会いとかもあるだろーしな。
僕達はきっと6年1組という番組をやらされていたんだと思う。アイドル達がいて、芸人がいて、司会がいて、インテリがいて、スポーツマンがいて、ただ座ってるだけの観客がいた。授業中はクイズ番組。先生の質問に誰かがボケて観客が笑って最後はインテリが答える。休み時間はトークバラエティー。芸人を嘲笑って、みんなで笑った。放課後のドッヂボールはスポーツ中継。運動ができるやつはドッヂもそつなくこなした。華やかな役にはアイドル達が当然選ばれた。演劇の主役なんかにみんなから推薦される。
あぁ、本当ならこの番組の観客にもなれないはずなのに、なんとか食らいついてこの輪の中に入れている。けどそんなことを強いるこのクラス事態、僕にはヘンに思えた。
それから僕は少しだけ大きくなって何度か席換え、クラス換えをするうちに、もしかすると番組のような関係図は永遠に続くんじゃないかって思うようになった。
だから、中学生になったってこのくだらない番組は形をかえて、キャストをかえてどうせまた続くんだろう。
でも、とりあえず今日で6の1チャンネルはおしまい。
最終特番「卒業式」にて、
僕はとびきりの笑顔をはりつけて
だれかれかまわず、話しかけた。
スポーツマン、観客、インテリ、
アイドル達、
そして最後に僕は昔の親友の姿を思いだそうとした。丸くてチビた背中、そういや幼稚園から小学2年生の時までは、お互いの家で遊んだりとかしたっけな。
いつからだろう、僕達2人の距離がとても遠く感じるようになったのは、
僕は隣りに座るピエロに
まるでインタビューするみたいに、
たずねる。
「Mr.大地にだって泣きたい日があってもいいと思うんですがいかがでしょうか?」
それは
嘲笑っていい
ものじゃないし、
消せば消える
テレビでもない。
「せやな……………………ありがとう。」
普段の彼からは想像できないほどに口下手にポツリポツリと話しはじめ、
最後に小さくオチがついたころ。
笑って
笑って
いいともだち。
【おわり】