語彙論と意味論、そして文法論の分野で、音声科学を音韻論と区別して、音韻と文法を主にすれば、語の意味になる言語の現象である。語彙の論はひろく意味の議論に包含することになる。語誌のうち、語史また語彙史は通時論にあって、現代語の意味については共時論になる。
日本語教育の語彙7
2018-08-15 | 日本語教育
日本語教育の語彙を城生佰太郎著作によって進めているが、音声学研究者の立場で書く日本語教育の音声と違って、説明の境界がよくとらえられないところがあって、理解が得られない。言語学の立場を持とうとして、それはおのずと国語学との違いを闡明にしようとするものであるが、そこに立場の揺れがあるのは扱う内容によることである。つまり、語彙は国語学で語彙論を分野とするので、意味論を分野とする場合の、日本語学での意味論と語彙論がとらえられないことになる。日本語学は語彙・意味としての分野をもつ。これは日本語教育に焦点を当てたことだけではない。日本語の語彙の議論を展開するについては、語彙分析が手法として確立されていないともいえるからである。国語学の語彙論が作り出した国語の語彙の分析は文献学を基礎に古典語と現代語の証拠を求め証明する手法を確立してきているので、それを踏まえた語の見方には日本語の実情に見合うものである。城生氏が国際レベルの考え、見方、切り取り方という、いわば言語学であるという立場の表明には、意味論導入で解決を持とうとする困難な日本語がある。
国語学研究分野 3大分野として、音韻、文法、語彙を挙げる。
日本語学研究分野として、音声科学、文法論、意味論を挙げる。
日本語教育は、上記を受けて、音声・音韻、文体・文法、語彙・意味の分野に分ける。
したがって、日本語教育を言語のひとつ、日本語学として見るのは、語と意味についての議論となる。
教育用の日本語を語彙とする見方には、国語語彙論が作り出した成果が取り入れられる。
http://user.keio.ac.jp/~rhotta/hellog/2013-12-08-1.html
hellog~英語史ブログ
#1686. 言語学的意味論の略史[history_of_linguistics]
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2013-12-08
イレーヌ・タンバによる『[新版]意味論』を読んだ.訳者あとがきにも述べられているように,導入的な文庫クセジュにしてはやや難解ではないかと思いつつ読んだのだが,2度読んでみたら,随所に鋭い洞察がちりばめられていることがわかった.とりわけ第1章,意味論史の概略は有益だった.以下にその概略の概略を記そう.
(1) 歴史的語彙意味論が支配的であった比較言語学の進化論.「#1666. semantics の意味の歴史」 ([2013-11-18-1]) でも触れたように,Michel Bréal (1832--1915) が1883年に sémantique を創始した(1897年の著作をもって意味論の誕生とする見解もある).Bréal の意味論は進化論に発想を得ており,意味の進化,進化の一般法則,一般法則の経験的観察からの導出を拠り所としている.これにより,意味論は自然科学の方向と歴史科学の方向へと発展をとげることになった.前者の方向は言語有機体説として Arsène Darmesteter (1846--88) や August Schleicher (1821--68) などにより,後者の方向は Antoine Meillet (1866-1936) などにより盛んとなった.このように,言語学的意味論は進化論の影響を受けながら,哲学,論理学,心理学から区別されるものとして自らの立場を見いだしたが,一方で歴史社会学の方向へ歩み寄ることによって,自ら制御できない領域を作り出すに至った.
(2) 共時的語彙意味論が特徴の構造主義的時代.ソシュールの登場により言語学は構造主義の時代に入ったが,意味論も,1931年,Jost Trier (1894--1970) による意味場の理論により,構造主義時代に入った.意味場とは,1言語の語彙の総体は構造をなす部分集合(=場)からなっており,有限個の語によって満たされた概念場が指定されるという説である.その延長として,統計による主題場のキーワード分析なども出た.
意味場と並ぶもう1つの主役は意味素分析である.語の意味は,弁別特徴をもつ有限個の基本意味成文に分解できるという説である.しかし,意味素体系の確立という計画は挫折したようである.
(3) 文と談話の意味論が出現する形式文法の時代.1963年に Jerrold J. Katz (1932--2002) and Jerry A. Fodor (1935--) が,1965年に Noam Chomsky (1928--) が,文の統語構造と意味構造との関係に着目した新しい意味論を開始した.Chomsky は生成文法に意味解釈部門を導入し,それがもとで1968--72年の間に生成意味論との間に「言語学戦争」が勃発した.生成文法における意味論は行き詰まった感があるが,1970--73年の間に Richard Merett Montague (1930--71) がラムダ計算による数学的手段を導入し,形式文法が進展した.
一方,談話の意味論も展開を見せた.そこでは,指示記号の働きを巡る論理学的語用論,イギリス哲学の日常言語学派による言語行為の問題,会話の公理,発話の意味論などが考察される.
(4) 言語の意味形態ではなく,言語活動の認知的側面との関係の中で意味をとらえる概念意味論が現れる認知科学の時代.(3) で示された心理主義の流れは,言語学,生物学,心理学を接近させ,1978年以降の認知機構に基盤をおく意味論が生じた.とりわけこの方向は,1987年に G. Lacoff (1941--) の Women, Fire, and Dangerous Things 及び R. Langacker (1942--) の Foundations of Cognitive Grammar, Vol. 1 が出版されることにより決定づけられた.この認知意味論は,意味を脳の一般的な働きと結びつけることで意味に神経生理学的基盤を与えようとする.そこでは,主として空間表現,カテゴリ化とプロトタイプ,メタファーなどの問題が扱われる.また人工知能 (artificial intelligence) や結合主義 (connectionism) との親和性が高い.
以上のように,1883年,1931年,1963年,1978年を境に,異なる種類の意味論が現れてきたが,先行するものが後続するものに直接に置換されたわけではない.むしろ,後続するものが新たな層を付け加え,意味論が厚みを増してきたというべきだろう.ただし,お互い部分的に影響を与えながらも,それぞれ比較的独立性が高いのも事実であり,この事実を重視して,著者のタンバは書名を現行の単数形 la sémantique ではなく,複数形で les sémantiques と表現したかったというのが本音のようだ.実際に,1980年以降も意味論の進展は続いており,談話標示理論,関係性理論,語彙・文法理論などの種々のアプローチが生まれている.言語学的意味論は日々学際的になってきており,独自の領域にとどまっていることはできなくなっているのだ.
・ イレーヌ・タンバ 著,大島 弘子 訳 『[新版]意味論』 白水社〈文庫クセジュ〉,2013年.
意味論の基本的枠組みについて ーその歴史的基盤と展望- 松倉 茂
https://toyama.repo.nii.ac.jp/index.php?.
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意味論の歴史的成立過程
意味論(semantics)とは、 言語の意味(meaning)を研究する領域であり、 音韻論(phonology)や文法(grammar)と対立する分野である。 科学的な意味研究の確立は19世紀末期まで待たねばならなかったcそして、その初期においては、史的意味論(historicalsemantics) に代表されるように、 主として意味の歴史的変化を取り扱っていた。 20世紀になってから、 ソシュール(F.de Sa ussure)の影響を受け、 共時的意味論(synchronic semantics)も研究されるようになり、 1 930年代にヨーロッパにおいである一定の研究成果が出てきた。
一方、 米国においては極端な物理主義(physicalism)を掲げるブルームフィールド(L.Bloomfield)を中心とするアメリカ構造言語学(structuralism)が興り、 意味研究は一時中断されるが、 チョムスキー(N.Chomsky)等の変形文法(transformational伊・ammar)によって、 1 950年代の後半から復活するようになり、 現在では、 言語学の中で意味論はますます大きな割合を 占めるようになってきている。
http://skinerrian.hatenablog.com/about
Skinerrian's blog
2011-09-12
意味論って…何?
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個人的には、よく聞くけど、結局のところあまり理解できていない概念の典型がこれ。`semantics’という言葉は、ギリシャ語で「記号」を意味する言葉に由来する。モリス以来、言語学では構文論と意味論と語用論という3つの区分分けが成立したという話だ。構文論は文法みたいなもので、意味論は言葉の意味を研究する、と。
もう少し細かく分けると、特定の言語の意味に関する理論は意味論的理論semantic theoryと呼び、言語学の中で意味の体系的研究を扱うものを意味論semanticsと呼んで区別するようだ*1。デイヴィドソンの意味理論は主として前者に関係しているのかな?
特定の言語の意味に関する意味論的理論はふつう真理条件意味論を採用している。もっとも、それが唯一の選択肢というわけではないのだろう。認知意味論のように百科事典的な知識に訴えるタイプの意味論もありうるし、そういうアプローチは隣接分野への応用も利くのかもしれない。