日本語文章文法
文章単位は文のあつまったもの、その文は語のあつまったもの、語は形態として分析すると、自立モーフと結合モーフとに分かれる。
文単位は文節にわけて、その関係構成を見る。語単位は文法における形をとって関係構成する。
文節は語相当に関係しあって句を構成して、句が文における部分になり、関係構成に分けることができる。
次は小説の引用である。
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気になったことを訊(たず)ねてみた。
「工場から、ここへ来る途中、橋は渡りませんでしたか」
「橋? 橋も川もなかった」
「洞窟は? 狭い入り口で、抜けたところにきれいな谷間がある」
「二子山の奥入谷(おくいりたに)のことか。あんなほうには行ってない」
どういうことだ。
時空の出入り口は、あの洞(ほら)じゃないのか。この辺り一帯のいたるところにあるのか。どちらにしても、なぜ私だけ? 誰も彼もに異世界の扉が開いてしまったら、ここは行方不明者の名所になっているだろう。
<日経新聞夕刊、荻原浩「ワンダーランド急行」(255)
作者によって行を分かち、改行している。文章の文段を分けている。さらに、ここで作者が会話を文章、文段とする場面なら、次のようになる。
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気になったことを訊(たず)ねてみた。「工場から、ここへ来る途中、橋は渡りませんでしたか」「橋? 橋も川もなかった」「洞窟は? 狭い入り口で、抜けたところにきれいな谷間がある」「二子山の奥入谷(おくいりたに)のことか。あんなほうには行ってない」どういうことだ。
時空の出入り口は、あの洞(ほら)じゃないのか。この辺り一帯のいたるところにあるのか。どちらにしても、なぜ私だけ? 誰も彼もに異世界の扉が開いてしまったら、ここは行方不明者の名所になっているだろう。
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文章にあらわされた、わたし、主体による文の連鎖である。
気に なった ことを 訊(たず)ねて みた 工場から ここへ 来る 途中 橋は 渡りませんでしたか 橋 橋も 川も なかった 洞窟は 狭い 入り口で 抜けた ところに きれいな 谷間がある 二子山の 奥入谷(おくいりたに)の ことか あんな ほうには 行って ない どう いう ことだ
時空の 出入り口は あの 洞(ほら)じゃない のか この 辺り 一帯の いたる ところに ある のか どちらに しても なぜ 私だけ 誰も 彼もに 異世界の 扉が 開いて しまったら ここは 行方不明者の 名所に なって いるだろう
さて、作者によって句点を打つ文とするなら、次である。疑問符を句点に準ずる。
気になったことを 訊(たず)ねてみた。
……どういうことだ。
時空の出入り口は、あの洞(ほら)じゃないのか。
この辺り 一帯のいたるところに あるのか。
どちらにしても、なぜ 私だけ?
誰も彼もに 異世界の扉が 開いてしまったら、ここは 行方不明者の名所になっているだろう。
以上で、ひとまず、文章と章句の関係構成を例示したことになる。
そこで、文段における文、文における文節が、その文節による関係構成を持つ連文節、その語相当になる句での働きを解釈する。