面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「ポセイドン」

2006年06月10日 | 映画
子供の頃、「ポセイドン・アドベンチャー」をテレビで何度か観た。
エンディングで流れる「モーニング・アフター」の印象が強い。
ストーリーはほとんど忘れ、映画のシーンが断片的に記憶に残っているだけだが、それでもラストシーンと主題歌が印象深く、子供心に面白い映画だったという覚えはある。

さて、当代の「ポセイドン」。
大晦日の夜、4000人の乗客を乗せて北大西洋を航行中の超豪華客船ポセイドン号。
新年を迎えるパーティーに人々が酔いしれているそのとき、超巨大津波“ローグ・ウェーブ”が船に襲いかかる。
一瞬にして50メートルを超える波に飲み込まれるポセイドン号。
阿鼻叫喚の場面が過ぎると、転覆した船内には生き残った数百人の乗客。
パーティー会場にいる生存者に対して、船長は救助が来るまで動かないように指示するが、ギャンブラーのディランは危険を直感して脱出しようとする。
そして彼とともに9人の人々が、脱出するために船底を目指して“のぼって”いく…。

リメイクというよりは、テイストを残して全く新しい作品として出来上がっている。
始まってすぐ(くらいの感覚)に大津波がポセイドン号を飲み込み、そこからは緊迫の場面が最後まで続いていく。
98分の上映時間はあっという間。
あまりにもあっけない気がしたが、「ポセイドン・アドベンチャー」は117分で大差ない。
しかし、「ポセイドン・アドベンチャー」の方が、これも子供心に、脱出劇における人間ドラマがもっとシリアスだった覚えがある。
本作においても、自分が助かるために仲間を見捨てるのかという葛藤や、娘とその恋人のために命を賭ける父親など、人間ドラマも入っているがいかんせん浅い。

わずか2分半のために制作に1年かけたという冒頭のシーンを始めとして、CG映像は実写と見紛うばかりに素晴らしい。
そして最後までスクリーンに釘付けにさせられる、観客を飽きさせないテンポもいい。
ただ、ストーリーとしてはいささか物足りない。
しかし、見事なCG映像と話の軽めなところが、先に観た「ピンクパンサー」同様、今風なのかもしれない。

何も考えずに観ることができ、終了と同時に安堵感が訪れ、心地よい緊張の緩和が得られるので、観終わってスーッとする映画。
“映画の基本”中の基本を踏襲した佳作ではある。

ポセイドン
2006年/アメリカ  監督:ウォルフガング・ペーターゼン
出演:ジョシュ・ルーカス、カート・ラッセル、エミー・ロッサム、マイク・ヴォーゲル