ぐらのにっき

主に趣味のことを好き勝手に書き綴っています。「指輪物語」とトールキンの著作に関してはネタバレの配慮を一切していません。

黄金の羅針盤(ネタバレ)

2008年05月02日 | 読書

映画観終わったのでさあ読むぞ! と読みました。久々に図書館で借りずに自分で買いましたよ(笑)
映画の続編もあやしいので、どんどん続き読むぞ・・・と思ってたんですが、現在「神秘の短剣」は上下とも品切れ状態・・・「琥珀の望遠鏡」も売り切れ寸前という感じでした。もうなくなってるかも・・・「黄金の羅針盤」だけ山積みになってますが・・・
まあそのうち増刷すると思いますが、せっかく乗り気になってるのにすぐに続き読めないのはちょっと悲しい・・・
思えばFotR公開後も「二つの塔」上1が一番品薄になってたものです。何で皆続きから読もうとするのかな~? あの映画の場合、「黄金の羅針盤」下の最後のほうこそが続きなんですが・・・

で、とりあえず「黄金の羅針盤」を読んでの感想ですが。
ん~、結構面白かったけれど、トールキンやル=グィンのように、夢中になるほどではありませんでした。
続きが気になるという点ではハリポタにも負けるかなあ。まあ、全体的にはハリポタよりも好きですけれど。
映画はどうも今イチだったんですが、原作を読んでも、最初のうちは結構映画そのままだったので、なーんだ、と思ってしまいました。
世界観や設定は面白いのですが、子供が主人公で、物語の視点もほぼライラの視点で進むので、あまり感情移入できなくてちょっと物足りなく思うところもありました。
まあ、ガキ大将で嘘つきなライラのキャラクターはかなり面白かったですけど。本当に能力の優れた人の子供時代って案外こんなタイプなのでは、と思ったりしました。
映画にはなかった、普段のライラの嘘つきな様子が描かれていたことで、嘘つきが昂じてイオファー・ラクニソンをだますのに成功して、イオレクに「ライラ・シルバータン」と敬意をこめて呼ばれるあたりにちょっと感動しました。
映画では同じ台詞を言ってるのに「ふーん」という感じだったんですが・・・(汗)
オックスフォードで過ごす子供時代、というのも面白かったですけど。あの美しい街でのびのびと遊ぶ子供たちがちょっと羨ましい・・・
作者のフィリップ・ブルマンはオックスフォード卒な上に現在もオックスフォードに住んでいるそうなので、オックスフォードの描写にも説得力がありましたね。
ライラが所属するジョーダン学寮を始め、学寮の名前は架空のもののようですが、ジョーダン学寮の様子はなんだかC.S.ルイスが所属していたモーダレン・カレッジと似ているように思いました。14世紀からあちこち建て増しされて、建物がつぎはぎになっているとかいうあたりが・・・。塔があるのも同じですしね。
しかし、話の中にタール通りという実在の通りの名前が出てきたのでびっくりしました。マーケットから帰る時に通るという位置関係も実際のオックスフォードと同じ・・・
オックスフォードの地図とにらめっこしてみましたが、タール通りを走って行ってたどり着くカレッジというと、とりあえずモーダレン・カレッジは位置的に違いますね。
ジョーダン学寮の位置候補?として、エグゼター・カレッジやマートン・カレッジ、ベルリオール・カレッジ、もしかしたらクライスト・チャーチ・カレッジも・・・なんてのをあげてみましたが、どうもエグゼター・カレッジがあやしいかなあと・・・
エグゼター・カレッジはタール通りに面しているんですよね。トールキンも学生時代に所属していて、トールキンが住んでいた部屋がちょうどタール通り沿いにあるんです。
こちらがそのタール通りから見たエグゼター・カレッジ。

フィリップ・ブルマンもエグゼター・カレッジ出身らしいので、可能性高いかなあと思うのですが。まあ、ジョーダン学寮の描写を読んでると、エグゼター・カレッジとは違うんですけどね。やっぱりモーダレン・カレッジっぽい・・・
ジプシャンたちが運河の舟住まいの暮らしというのも、運河だらけのロンドン~オックスフォードあたりを見ているとなんだか目に浮かぶようで面白いなあと。実際キャンピングカーみたいに舟で暮らしながら旅することもできるんですよね。旅行者でも舟借りられるらしいので、いつかやってみたい・・・
とまあ、教権やダストなどのオリジナルの設定も面白かったのですが、こういうイギリスならではの設定もなかなか面白かったです。
そして、北国の描写もとてもリアルに感じました。って行ったことないけれど・・・
鎧クマ=シロクマの描写や、アザラシを引き裂いたり生肉を食べる描写もどこか荒々しくて、ちょっとイヌイットのような雰囲気を感じました。殺した命を無駄にせずに取り込む、みたいな思想というか・・・ライラたちもアザラシの腎臓生で食べたりしてましたね。
そもそもダイモンが色々な動物になるあたりを考えても、ブルマン氏は動物好きなんですかねえ。
話の筋の方は、最初のうちはライラがちょっと変わった子ながらもなんだかんだとまだ普通の子供なので、さほど感情移入できずに読み進んでいたのですが、話が進むに連れてだんだん面白くなって行きましたね。
それまである意味子供っぽく、傲慢でもあったライラが、周囲の大人たちの愛情を感じたり、恐怖を感じながら立ち向かっていく姿に、感情移入できるようになるのかもしれません。
思えば、この面白くなるあたりから映画はどんどん原作から離れて行っていたような・・・。後半のいいなあと思ったところ、映画ではことごとく出てこなかったり変えられちゃったりしてました。
マ・コスタがライラの乳母だったこととか、ダイモンと人間の絆についてのエピソードとか。
またイオレクがカッコいいんですよねー、原作。ボルバンガーで助けにやってくるところ、スバールバルで現れるところ、もうイオレクかっこイイ! とワクワクしました。
映画では全然感じなかったんだけど・・・(汗)
ライラとイオレクの絆も、映画ではあまり感じられなかっなあ・・・
映画ではイオレクと鎧クマの王の対決(映画では名前違いましたよね)と、ライラのボルバンガーへの潜入の順番が変わっていたのは、子供たちの救出の話をメインに持って行って終わらせたかったんでしょうが、おかげでライラが鎧クマの王をだませたのが不自然な感じになってしまってましたね。
ライラがダイモンについての嘘を言うことができたのは、ボルバンガーで行われていることを知っていたから、というのが、原作では説得力がありましたね。これがなかったから、映画での王をだますところ、なんか嘘くさかったんだよなあ・・・原作を読んでようやく納得しました。原作だと、イオレクの「ライラ・シルバータン」という言葉に重みがありますね。
そして、映画ではやらなかった、終盤が一番面白かったです。あそこまでやらないという時点で映画だめじゃん、と・・・
ライラとイオレクの別れも悲しくて。ライラが一人で橋を渡るシーンは映画でもあったけれど、イオレクまた出てくるんじゃ感動も半減ですよね。(そもそも映画では特に感動しなかったし(汗))
アスリエル卿とコールター夫人の真の目的が明らかになるまで映画でやらなかったのも疑問。
ライラの両親が結局は自分のことしか考えられない冷たい人間なのだということがわかることで、血がつながった自分の両親よりも、周囲の暖かい人々の方を愛している、とライラがはっきり言えるのがまたいいですね。それでいてライラは両親に間違いなく似ていたりするのも皮肉でちょっと悲しくて。
ラストのロジャーは衝撃だったけれど、ライラの決意には説得力ができますね。単なる「冒険」じゃなくなるというか・・・(だから「ライラの冒険」ってシリーズタイトルはどうなんですかねえ・・・)
とまあそんなわけで、映画のダメだったところがよーくわかった原作読書でした(汗)
あ、でも映画オリジナルの場面でひとつだけ良かったところが。コールター夫人がライラの写真をじっとみつめていて、ダイモンのサルが嫉妬して? 写真をはたき落としたら、コールター夫人がダイモンを殴って・・・というシーン。
ダイモンは分身なのだから、嫉妬するのもおかしいし、ダイモン殴ったら自分も痛いんじゃ・・・というツッコミはあるんですが、ちょっといいシーンだったかなあと。まあ、単にニコール・キッドマンの出番増やすためだけだったかもですが(汗)
コールター夫人の印象は原作では結構薄くて、なんかニコール・キッドマンのイメージを拭い去ることができませんでした(汗)髪の色は違うけれど、はまり役だったように思います。
あ、あと、魔女が松の枝に乗って空を飛ぶ、というのも、映画ではやらなくて正解だったかなーと(汗)映像にしたらなんか間抜けですよね・・・
セラフィナ・ぺカーラとファーダー・コーラムの過去について、詳細に語られなかったのも映画が良かったなあと。まあ、単に時間がなかっただけなんでしょうが(汗)
アスリエル卿がダニエル・クレイグというキャスティング、最後まで読んだらなかなか合っていたなあ、と思いました。何で彼なんだろうとちょっと思ってたんですが、いかにも悪役そうな面構えはぴったりかと思います(笑)
ライラのダコタ・ブルー・リチャーズちゃんもぴったりだったと思うし、イオレクも映像的には良かったし・・・
というわけで、ちょっともう一度動く彼らを見たいなあという気がしてきたんですが、残念ながらもう吹き替えしかやってないようで。まあ仕方ないですな。
というわけで続きが気になるんですが・・・「神秘の短剣」いつ重刷されるかなあ・・・
と思ってたら、地元の図書館で予約入ってないのを発見! 早速予約しました! イッキミ終わったら残りの連休は「神秘の短剣」漬けかな?(笑)
コメント
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