ある日、姉ちゃんが買ってきた月刊誌「 明星」の表紙には
西郷輝彦が見たこともない白い丸首のシャツを着てニッコリ笑って写っていたとです。
当時、下着はランニングシャツかU首の下着しか持たない中学生のオイには
丸首の白い下着がTシャツと呼ばれている事など知る筈もなく
今回も白い靴下同様、白いTシャツなるものが青春歌謡の中でのファッションに
欠かせないもなのだと感じとり前回と同じく、欲しかぁ!と思ったとです。。
ばってん、メリヤスの下着しか売っていないオイの田舎のスーパーの軒先には
年中ビーチサンダルがぶら下がり入り口付近は泥の付いた野菜が新聞紙の上に
置いてあり日曜雑貨と作業着と酒とタバコと味噌醤油、子供も買わないお菓子があるだけの店。
それでも
毎度の事で慣れてるとばってん、無いものを創造する力だけは長けていると言う
自負のもと、考え付いた事は「裏返し作戦」つまりU首のシャツを前後ろ反対に着る方法です。
鏡で見てみると背中は少しスースーするばってん何とかTシャツ風に見えたとです。
あぁ青春歌謡が聴こえてきます。
西郷輝彦の♪君だけを♪チャペルに続く白い道♪星空のあいつ♪涙をありがとう・・・・・・・・・。
オイはしばらく歌い続けたとです。
人から見られないように・・・・・・・・・・・。
しばらくすると、やっぱり首が絞めつけられたようになって苦しくなったとです。
その苦しさにオイのしている事の空しさが急に胸の中に押し寄せて来たとです。
一度きりの「前後ろ反対作戦」はこうして終わったとです。
21世紀の今、ファッションは多様化しており自由に自分の感覚でお洒落を楽しめます。
もし街を歩く若者がオイの「前後ろ反対作戦」ファッションをしていても
それは違和感なく受けいれられると思います。
いい時代になったと言えばそうなのでしょうが
オイは今でも青春歌謡時代のあの日々がとても大切で懐かしくなってしまうとです。