(10月21日追加情報) 織田さんの解説動画を、下のほうに追加しました。
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羽生選手の2015年~シーズンの初戦となった、オータム・クラシック・インターナショナルの試合が終了しました !
羽生選手にとって、この大会が優勝だったのはもう当然のこととして、演技について観ていきます!
今回は先に、フリーの「SEIMEI」から。
とにかく、素晴らしかったです!
一言で言うと、世界の目から見た、日本の「高く評価されるポイント」「受け入れられるポイント」を、見事にことごとく取り入れつつ、
逆に「評価されないポイント」を出来るだけうまく排除・回避して、斬新な「和」の競技用作品としてうまく作ったーーーそのように見えました。
それでいて、羽生選手の良さもとても活かされている!
まだまだ詰めるところは沢山あるでしょうけれども、まだグランプリシリーズでもない「初戦」でここまで出来ていれば、上出来でしょう!
まだ初戦だというのに、ただただ、見惚れました。
アイスショーで見せてくれた時とは比較にならないほど 凄く良くなっていましたし、初めて公開されたプログラム全体の音楽も振り付けもすごく良かったです!!
音楽だけでも十分感動できるようになっているオペラ曲などとは違い、リズムをとるのも表現も難しそうなあの曲で、冒頭から最後まで、一つ一つとんでもない難易度に挑みつつ、あんなにも音にピッタリと合わせて独特の音を表現できて魅せられるとは!
ジャンプの細かいミスが複数あったにもかかわらず、それらがまったく気にならなくなってしまうほど、羽生選手の「演技に」次々と「惹き込まれ」ました!
惚れるなと言われても、「それは無理無理、無理です!」(笑)、というくらい、カッコ良かったです!
フィギュアスケートの「男子シングル」のトップレベル技術と、「アイスダンス」要素、そして「和の舞踊要素」と「和の音楽」とが見事に絶妙に融合されていて、さらに羽生選手の精神性も加わり、見たことのないような凄い作品になっていました。
斬新で優雅で凛々しくて、清々しくて勇ましくて、清廉で気品があって、そして気迫があって。
おまけに誰にもできない高難度技の数々!
それが自然に組み込まれてしまって、まるで何でもないことのように当たり前にこなしていってしまう羽生選手!
シーズン初戦の段階で、フリー演技で「これは素晴らしい!!」と、ここまで惚れ込むほどの感覚を覚えたのは、2011年シーズンのロミオ以来かも!
とても感動したし、安心しました。 さすが羽生選手でした。
(昨年の「オペラ座の怪人」もすごく好きだったし良かったのだけど、初戦の中国杯は、観るだけでも痛すぎたので…)
「和」の舞踊特有の動きは、「正面」または「前側」から見た場合に、「最もカッコよく」決まって見えるようになっていることが多いので、それを「裏から見た場合」、印象の落差が、「洋」の舞踊よりもより大きいように個人的には思っています。
いくつか映像を観ましたが、最もカッコよく見えるのはやはりオータムクラシックの公式配信動画(映像)で、ジャッジ席側から撮影した演技だろうと思いました。
フィギュアスケートは、観客席が一方方向だけに固定されている「舞台」芸術とは違い、リンク全体を移動して演技するので、選手も絶えず角度が変わるし、全方位に観客がいるので、観る人の場所によって見え方が変わるところが難しいですが、試合の場合、何よりも「ジャッジから」高評価されるように作られていると思います。
オータムクラシック・公式動画 (羽生選手のフリー演技のみ) → http://www.dailymotion.com/video/x39ta9e_yuzuru-hanyu-jpn-free-program_sport
フリー本番だけの動画。
こちらが、フリーの公式練習と、フリーの本番の演技の動画。
羽生選手のインタビューも含まれた、演技の入ったニュース動画。
これと比べると、テレビ朝日系列で撮影・放送された、佐野さん解説のついている演技映像は、撮影角度が違うために、少し印象が変わってきました。
見比べてみると、違いが発見できて、面白いかもしれません。
こちらBS朝日版 (先に、SPのバラード第一番が入っていて、そのあとの後半から「SEIMEI」です )→ http://www.dailymotion.com/video/x39yk68_yuzuru-hanyu-autumn-classic-sp-fs_sport
さて、具体的に、何がそんなに良かったかといいますと… もう色々ありすぎて。(笑)
( 正直言って、何かを書くより、もうただただ繰り返し観ていたいような気分でした。)
具体的には、まず、衣装がとても良くなっていて、素敵でした!
胸や背中のキラキラ装飾がぐっと増え、白地に特に金色が増えたので全体に明るくなって、羽生選手により似合って見えました!
肩の紫(藍?)が大幅に増え、黒い手袋もしたことで、白い氷の上でも動きがとても見やすくなり、和の動きも印象にも残るし、
全体として 高貴で威厳あるイメージが増し、「和」の形としての美しさも増したように感じました!
演技中は、袖の振られ方、揺らぎ方なども含めて、全体のシルエットがあまりにも カッコよくて たびたび 目を奪われました。(笑)
遠目から見た時は、色や形は、ちょっと旧・ロミオの衣装イメージに近かったですね。
羽生選手は、やはり白と金色の入った組み合わせが似合いますね!
濃い色の手袋をしたのは大正解だと思いました。 おかげで手と腕の動きもハッキリしただけでなく、袖口の揺れ動きや、そのデザインがよく見えて、「和」独特の動きが一つ一つ、際立って見えるようになったと思います!
前のより、素材が軽やかになったのが良かったですが、ただ、もしかして、それでもまだジャンプはちょっと跳びにくい形なのかな…?というように見えなくもない。
純粋な和としてみると、ちょっとあり得ない色彩なのだろうけど、でも、世界に評価される「フィギュアスケートの」「和の衣装」として見れば、とても良いと思うし、とても素敵でした。
このちょっと動きにくそうな和の衣装でここまで色んな技をこなして、ここまで豪快に魅せてくれて、もう感無量。(笑)
そして、一番感じられたのは、羽生選手の演技における、 気迫の凄さと、迷いのなさ。
邪心も私欲も感じられず、澄んでいて、毅然としていて、一本筋の通ったカッコ良さ。
そして、良い意味で、演技から「陰気」が全くなくなったのが、実に素晴らしかったです!
リズム感の良さはもう、言うに及ばず。
やっぱり羽生選手は、まぎれもなくフィギュアスケートの王者だわ、と私は確信しました。
この「SEIMEI」は、複数の同音の日本語の意味をかけている、と羽生選手は最初から話していましたが、
音を聴いて真っ先に浮かぶ日本語は「生命」ですけど、演技を観た印象としては、「清明」(清く明らかなこと、清らかで曇りのないこと、澄んで明るいさま) の意味のイメージが、最後に強く印象に残りました。
今まで公開されていなかった速めのテンポの部分は、やはり主に和太鼓中心でしたが、振り付けと音もバッチリ合っていて観ていて気持ちが良いほどでした。
曲の編集・構成がとても素晴らしいと感じました!
羽生選手が編曲に関わったというだけのことはあり、切り替わり部分の使い方や、5部に分かれている構成が効果的で素晴らしく、 やっぱり羽生選手は音響オタクなだけはありますね。 それをまた自分で効果的に実演できちゃう、もの凄い才能。
今まで公開されていなかった、第2パートの音楽と振り付けのカッコイイこと!
そりゃあ、GOEが最高の3 にもなりますね。当り前だと思いました。(笑)
練習時に音楽だけを聴くと、それでもちょっと暗さが気になりましたけど、それを、気迫のこもった演技でここまで変えて「魅せられる」羽生選手の凄さに、もう絶句。
和の音楽と動作イメージが一致していて、優雅で斬新な動きも入りつつ、冷静さと熱さを併せ持つ 羽生選手の魅力がとても出ていて、観ていてワクワクするし、飽きないし、新鮮で心地よかったです。
「繊細さの中にも、力強さを出したい」と語っていた通りになっていると思います!
あえて言うなら、後半の4回転の直後にくる、笛の音色のパートの「音は」 美しくて印象に残るのですが、そこの笛の澄んだ音色の清涼感や清流イメージ、哀愁や郷愁みたいなものがもう少し「心から気持ちよく」表現できていると良いような気がしました。 今は ちょっと、ただの「休憩」パートに見えるので。
そうしたら、あそこで見えてくる情景が、他のパートとのコントラストが明瞭になって、さらにメリハリがついて、もっともっと素晴らしいかも、と思いました。
羽生選手なら、絶対出来るわ!
高難度ジャンプや高難度技術が山ほど詰め込まれていて、さらに腰を落としたり、腕を直線的に使ったり肘を張ったり、反対のベクトルに動いたり、という「和」の独特な動きが多用されているので、地上でやるのもエネルギーを使うこれらを、氷上でやるとなると、体力や筋力・かなりの技術が必要だと思うし、本当にとても大変そう…
それでも、最後までビシッと決めてきた羽生選手は本当にすごいです。
すごく体力強化にも力を入れているのだろうな、と思いました。
野村さんに指摘されていた冒頭のポーズは、変更がありました。
右手がより前に出て指がややVの字に開き (勝利のVictoryや、最後に訪れる「平和」を予感させるような)、左腕がより上になって掌が上向きになり、天から力をいただけるイメージに。
全体に振り・動きが大きくなったことで、よりクッキリと浮き立って見えました。
オカルト的陰気さもなくなったし、見栄えがとても良くなり、ちょっとした変化でしたけど、ものすごく良くなったと思います。
そのほうが確実に、外国人にも受け入れられ、伝わるだろうと思いました。
陰気さや内にこもる感じが出てしまうと、フィギュアスケートととしては魅力が半減するだけでなく、特に、スペイン&アメリカ会場では、絶対に評価が上がらないと思うので…。
ラストポーズも、足の交差がなくなってスッキリし、手を広げるタイミングや広げ方も、笛の音色・太鼓の音とバッチリ合っていたし、以前よりずっと引き締まってカッコよく見えましたし、今回は動作から「音が感じられ」ました。
何より、羽生選手に迷いが見えなくて、スパッと終えられたのが良いです。 終わった瞬間に気持ちよくスタオベしたくなります。(笑)
特に、途中でジャンプミスが出ても、まったくひるまない様子 が、とても良かったです!
このプログラムのイメージでは、特にそこはとても重要なポイントになると思います。
武道の精神にも通じるもので、外国人にも伝わりやすい「和」のイメージであり、世界で最も評価されている「日本的な魅力」であり「カッコ良さ」でもあり、なおかつ、もともと羽生選手自身が持っている魅力とも大いに一致していく点かと。
ジャンプの細かいミスについては、ジャンプの一つ一つの入り方が、助走を極力排して、より難易度の高いものに「わざわざ」してあるからのように見えます。
それらは今後の課題と挑戦だと思いますが、プログラムの冒頭の4回転2発の「前後の振り付け」も、見栄えがするようになり、とても良い出来になっていると思いました。 すごく魅せられました。
やはり冒頭の4回転2発のジャンプが決まることは、観ている側の印象に大きな影響を与えると思います。
まだまだ詰めていく個所もあるのでしょうけれども、とても印象に残ります。
さらに洗練されて、ジャンプもすべて成功したら、ものすごいプログラムになりそうですね。
振付師のシェイリーン・ボーンさんが、このプログラムを、「闘い」と「優雅さ」を意識して作っているそうですし、演技が進むにつれて「闇に覆われていたリンクが光に満ちていく」イメージで滑るように指導したそうですが、(「日刊スポーツ」のフィギュアスケート雑誌の詳細インタビューより↓)
![]() |
フィギュアスケート15-16シーズン展望号 (日刊スポーツグラフ) |
日刊スポーツ出版社 |
それが納得のプログラムになっていると思いました。
途中からはもう、羽生選手が近づいただけで、闇が勝手に逃げていきそうなほどの無私な「清廉さ」と覚悟ある毅然とした態度が素晴らしい。
そうでないと、「本物の闇」には絶対に勝てませんから、方向性としても実に正しいですし、それを演技で実行できる羽生選手は本当に素晴らしい!
芸術性という観点からも海外から絶賛され、演技構成点が高評価になるのも当然だと、私は思います。
最後のコレオシークエンス(振り付けの連続)の部分は、気迫も凄く、ハイドロが効果的で、ますますカッコよくなったように見えました!
今回のフリーは、今までの過去のプログラムにあった「恋愛要素」からくる「甘さ」や「激情」は一切ないですが、十分すぎるほど素敵でした。
「和」の競技プロは、曲の使い方や編曲の仕方、演技の解釈の上で、時に両刃の剣になりやすく、プログラムを見ただけで、そもそも勝てないことがシーズン初めに「わかってしまう」ようなことも過去には何度もあったので、そうなることだけを心配していたのですが、今回の羽生選手の演技を観る限りでは、その心配はないと思いました!
むしろ素晴らしいのでは!! あとは羽生選手の毎回の心持ち次第!
とても良いスタートだったと思います! さらなる洗練を目指して頑張れ~!!
羽生選手は、ミスがあった割には演技で思ったよりも点数を出してもらえた、と今回感じたようですが、(インタビューより)、
それだけプログラムや表現面がとても良かったと私は思いましたし、
羽生選手とシェイリーンさんの試行錯誤と努力の跡が実ってきているのだと私は思います。
世界にも通じる形での、フィギュアスケートへの「和」の取り入れ方・絶妙な融合具合が素晴らしく、音をバッチリと表現出来ていて、またそれを高難度技だらけで構成し、氷上で見事に実行できる羽生選手は、やっぱりとんでもない天才だと私は思いました。
あと課題は、ジャンプだと思いますけど、
後半の3連続ジャンプで、3回転アクセルからの後続ジャンプをつけそびれたのですが、
その後の単独ループ・ジャンプに直ちに付け直してその分を取り戻す、その冷静さと機転がまた、さすが羽生選手。
3回転ループ+1回転ループ+3回転サルコウ という、見たことのない組み合わせ技を観ることが出来ました。(笑)
今回、音楽の冒頭に、羽生選手が自分の息の音を吹き込んで、その音でスタートするようにしたそうですが、発想が凄いですね!
息を吹き込む=命、 の意味ですから、羽生選手が冒頭で「プログラムに自ら、命を吹き込む」スタート・・・ なるほど「生命」(SEIMEI)ね、と。
とても魂のこめられた演技になっていて、
おかげで私は逆に、観ていて 息ができなくなりそうでした。(笑)
もし技術面がノーミスになったら、スコアは凄いことになると思います。
こちらは、現地の方が上げてくださった、表彰式の動画。
やっぱり和装の羽生選手、素敵ですね…!
男子が和装で表彰台の一番上に乗っている姿を見たのって、初めてではないかと。
羽生選手が演技後にインタビューで答えた内容が、こちら。
「正直悔しい点がすごく多いですけど、得点は自分が思っていた以上に評価していただけたのかなと思います。まだまだ4回転3つという構成でしっかり決められないというのは悔しいです。でも、初戦で試合勘もないなかでの演技で、サルコウとトーループの4回転を耐えてしっかり立てたのはひとつの収穫でしたし、次のスケートカナダへ向けて課題が見つかった試合になったと思います」
インタビューで答える羽生選手は、凛々しさと冷静さが以前にも増したように見えました。
昨年の初戦との違いが、なんだかとても嬉しいです。(笑)
(10月21日追加) 羽生選手のインタビュー(一部)と、織田さんの解説動画
難しい要素が満載であるはずのこの「挑戦」プログラムに、本気で主体的に取り組み、とても努力している羽生選手。
工夫しつつ、より理想形に向けて、一歩一歩頑張ってほしいな、と思います!
良い意味で自信をもって、頑張って下さい!!
次の試合を、とっても楽しみにしています!
羽生選手の才能の凄さに圧倒され、ひるまない挑戦心に感動し、演技のカッコ良さにノックアウトされ、
自分がどれほど羽生ファンなのか、改めて 思い知った シーズン初戦でした! (笑)
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フィギュアスケート日本男子応援ブック シーズン開幕号 |
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フィギュアスケートファン通信 3 (メディアックスMOOK) |
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