勝又壽良の経済時評
日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。
2018-12-16 05:00:00
中国、「共産党黄昏」習近平に反旗翻す経済改革派「米が呼応?」
習近平氏は、内外ともに厳しい局面に立たされている。対米貿易戦争では、完全に米国に主導権を奪われて「助命嘆願」せざるを得ない局面だ。
国内では、自らの権威確立のために毛沢東化を図ってきたが、経済改革派の経済学者から大きな反発を受けている。
具体的には、「共産党脱党」である。党費を6ヶ月以上滞納すれば、党員資格を失う規約になっている。そこで、長期滞納によって「除籍」を狙っているという。
中国経済の市場化に向けて努力してきた経済学者は今、完全に発言を封じられている。
経済政策批判は、政権批判と受け取られる危険性があるからだ。こうした言論封じの中で、中国経済が失速すれば、習近平政権は一挙に揺らぐであろう。
習氏は極めて危険な橋を渡っている。米国政府が、そこまで読んで貿易戦争を仕掛けているかは分らない。
だが、政権内のタカ派はそういう意図を秘めているはずだ。世界経済の癌は、中国であると判断しているからだ。
トランプ大統領が、ギリギリのところでこのタカ派の判断に乗れば、習氏は追い詰められるであろう。カギは、トランプ氏が握っている。
『大紀元』(12月15日付)は、「中国、著名経済学者が共産党脱退を明言、『同様の知識人が多くいる』」と題する記事を掲載した。
中国の著名経済学者、茅于軾氏(89)はこのほど、米『ボイス・オブ・アメリカ』(VOA)に対して、「共産主義思潮はもう過ぎ去った。
共産党内にとどまりたくない」と述べた。茅氏によると、同様の考えを持つ知識人が多くいるという。
(1)
「今年は中国改革開放40周年に当たる。毛沢東が死去した2年後の1978年、今までの計画経済から市場経済へと移行した。
この歴史的な変革を直接に見てきた茅氏は『毛沢東の統治は失敗そのものだ。毛時代の中国は世界でも最貧国の一つとなった』と述べた。
茅于軾氏は、『中国で現在、汚職問題が深刻で、政治環境が良くない。これは市場化の妨げとなっている』と指摘した。
政治環境を改善するには、国民による政府への監督、言論の自由、司法の独立性が欠かせないという」
今年は、改革開放後の40年に当る。
この間にGDPは世界2位になったが、多くの矛楯を抱えている。
習近平氏は、この問題点を「強権=毛沢東化」で乗切ろうとしている。
茅氏は、それを間違いであると指摘する。
そうではなく、経済の市場化を促進し、国民による政府への監督、言論の自由、司法の独立性が欠かせないという。
この考え方は、習近平氏の主張と完全に対立する。
政府から睨まれており、茅氏が設立したシンクタンクへ圧力がかかっているという。
だが、中国では大学卒業者が増加の一途である。市場経済論の理解者が増える環境にあるのだ。
(2)
「茅氏によると、現在多くの知識人が中国共産党から脱退したいと考えている。
このため、中国当局が現在、各民間企業で党組織を設立しようとしているが、『全くの無意味だ』。
一部の党員は党を脱退するために、党費の不払いを続けている。党の規定では6ヶ月以上党費不払いすると、党員資格が停止される。
茅氏は『当局が認めたくなくても』、現在の内外の情勢は『民主、法治、憲政、人権』に向かって急速に変化しているとした」
習近平氏にとって最大の脅威は、米中貿易戦争による中国経済の混乱である。
これが、「反習近平派」を増やすことだ。
茅氏は、不気味な予言をしている。「現在の内外の情勢は『民主、法治、憲政、人権』に向かって急速に変化している」と指摘する。
党内改革派が力を付ければ、経済混乱を期に立ち上がる可能性も出てくるのだ。米中貿易戦争の「二幕」が、国内で始らないと言い切れまい。
(3)
「VOAのインタビューで、茅于軾氏は中国憲法に定めている『人民民主専政(人民民主独裁)の実行』について、『とんだ笑い話だ』とこき下ろした。
『民主主義国家で、独裁政治を施すことができなければ、独裁体制の国で民主主義を実践することも不可能だ。
この理論的に破綻している国家制度が憲法に取り入れられ、全世界が抱腹絶倒しているだろう』と言う」
中国憲法には、麗々しくも「民主主義」という言葉が入っている。
独裁国家で人権蹂躙を平気でやっている中国が、笑い話であると茅氏は指摘する。
毛沢東時代の中国では、文盲も多かった。だから、共産党の「一党独裁」が可能であったにちがいない。
現在のような高度の教育を受けた人々が増える高度大衆社会では、「毛沢東化」が不可能に思われる。茅氏は、そこを鋭く衝いている。
日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。
2018-12-16 05:00:00
中国、「共産党黄昏」習近平に反旗翻す経済改革派「米が呼応?」
習近平氏は、内外ともに厳しい局面に立たされている。対米貿易戦争では、完全に米国に主導権を奪われて「助命嘆願」せざるを得ない局面だ。
国内では、自らの権威確立のために毛沢東化を図ってきたが、経済改革派の経済学者から大きな反発を受けている。
具体的には、「共産党脱党」である。党費を6ヶ月以上滞納すれば、党員資格を失う規約になっている。そこで、長期滞納によって「除籍」を狙っているという。
中国経済の市場化に向けて努力してきた経済学者は今、完全に発言を封じられている。
経済政策批判は、政権批判と受け取られる危険性があるからだ。こうした言論封じの中で、中国経済が失速すれば、習近平政権は一挙に揺らぐであろう。
習氏は極めて危険な橋を渡っている。米国政府が、そこまで読んで貿易戦争を仕掛けているかは分らない。
だが、政権内のタカ派はそういう意図を秘めているはずだ。世界経済の癌は、中国であると判断しているからだ。
トランプ大統領が、ギリギリのところでこのタカ派の判断に乗れば、習氏は追い詰められるであろう。カギは、トランプ氏が握っている。
『大紀元』(12月15日付)は、「中国、著名経済学者が共産党脱退を明言、『同様の知識人が多くいる』」と題する記事を掲載した。
中国の著名経済学者、茅于軾氏(89)はこのほど、米『ボイス・オブ・アメリカ』(VOA)に対して、「共産主義思潮はもう過ぎ去った。
共産党内にとどまりたくない」と述べた。茅氏によると、同様の考えを持つ知識人が多くいるという。
(1)
「今年は中国改革開放40周年に当たる。毛沢東が死去した2年後の1978年、今までの計画経済から市場経済へと移行した。
この歴史的な変革を直接に見てきた茅氏は『毛沢東の統治は失敗そのものだ。毛時代の中国は世界でも最貧国の一つとなった』と述べた。
茅于軾氏は、『中国で現在、汚職問題が深刻で、政治環境が良くない。これは市場化の妨げとなっている』と指摘した。
政治環境を改善するには、国民による政府への監督、言論の自由、司法の独立性が欠かせないという」
今年は、改革開放後の40年に当る。
この間にGDPは世界2位になったが、多くの矛楯を抱えている。
習近平氏は、この問題点を「強権=毛沢東化」で乗切ろうとしている。
茅氏は、それを間違いであると指摘する。
そうではなく、経済の市場化を促進し、国民による政府への監督、言論の自由、司法の独立性が欠かせないという。
この考え方は、習近平氏の主張と完全に対立する。
政府から睨まれており、茅氏が設立したシンクタンクへ圧力がかかっているという。
だが、中国では大学卒業者が増加の一途である。市場経済論の理解者が増える環境にあるのだ。
(2)
「茅氏によると、現在多くの知識人が中国共産党から脱退したいと考えている。
このため、中国当局が現在、各民間企業で党組織を設立しようとしているが、『全くの無意味だ』。
一部の党員は党を脱退するために、党費の不払いを続けている。党の規定では6ヶ月以上党費不払いすると、党員資格が停止される。
茅氏は『当局が認めたくなくても』、現在の内外の情勢は『民主、法治、憲政、人権』に向かって急速に変化しているとした」
習近平氏にとって最大の脅威は、米中貿易戦争による中国経済の混乱である。
これが、「反習近平派」を増やすことだ。
茅氏は、不気味な予言をしている。「現在の内外の情勢は『民主、法治、憲政、人権』に向かって急速に変化している」と指摘する。
党内改革派が力を付ければ、経済混乱を期に立ち上がる可能性も出てくるのだ。米中貿易戦争の「二幕」が、国内で始らないと言い切れまい。
(3)
「VOAのインタビューで、茅于軾氏は中国憲法に定めている『人民民主専政(人民民主独裁)の実行』について、『とんだ笑い話だ』とこき下ろした。
『民主主義国家で、独裁政治を施すことができなければ、独裁体制の国で民主主義を実践することも不可能だ。
この理論的に破綻している国家制度が憲法に取り入れられ、全世界が抱腹絶倒しているだろう』と言う」
中国憲法には、麗々しくも「民主主義」という言葉が入っている。
独裁国家で人権蹂躙を平気でやっている中国が、笑い話であると茅氏は指摘する。
毛沢東時代の中国では、文盲も多かった。だから、共産党の「一党独裁」が可能であったにちがいない。
現在のような高度の教育を受けた人々が増える高度大衆社会では、「毛沢東化」が不可能に思われる。茅氏は、そこを鋭く衝いている。