珍しく冷静な、朝鮮日報の論考
新宿会計士
『朝鮮日報』を引用することが少ない理由
何かを議論する際に、当ウェブサイトでは好むのは、
•できるだけリンク先が消えないウェブサイトであること、
•できるだけ無料で閲覧できるウェブサイトであること、
の2つの条件を満たしているサイトです。
NHKのようにすぐに情報が消えてしまうメディアは、インターネット上で何か議論をする際の情報源としては不適格です。
なぜなら、議論を読んだ人が、その議論の妥当性を検証しようとしても、時間が経つと参照できなくなってしまうからです。
また、WSJのように、原則として大部分のページが有料であるような場合、WSJと契約していないと元記事が参照できないため、情報源としてはあまり好ましくありません。
しかし、それでもNHKなどと異なり、リンクが消えないという意味では、まだ情報源としては有益だと思います。
いずれにせよ、当ウェブサイトでは「客観的な情報源」としてリンクを示す際には、
「リンク先が長期間消えずに残ること」
「無料で閲覧できること」という2つの条件を満たすメディアを優先しているつもりであり、その観点から、意図的に排除しているメディアがあります。
それが『朝鮮日報』(日本語版)です。
朝鮮日報の場合は、記事が公表されてから数日の間は、リンク先の記事を比較的自由に読むことができるのですが、一定期間が過ぎると、「有料リンク」に変わってしまうようなのです。
そのようなリンクを引用してしまうと、「原文に当たろうとしたらリンク先が読めない」、ということがときどき発生してしまいます。
そんな朝鮮日報に「周回遅れ」の寄稿
このような問題点があるため、当ウェブサイトでは極力、朝鮮日報は引用しないことにしているのですが、先日、どうしても紹介したい記事を発見してしまいましたので、やや遅くなりましたが、次のリンクを紹介しておきたいと思います。
【寄稿】韓国、このままでは中国の勢力圏に組み込まれる(2018/08/12 05:04付 朝鮮日報日本語版より)
(※もっとも、この記事のリンクも、すぐに読めなくなると思いますので、ご了承ください。)
なぜわざわざ朝鮮日報の記事を引用するのかといえば、この記事の議論が、かなり考えさせられるものだからです。
タイトルに「寄稿」とあるとおり、これは寄稿記事であり、執筆者は「国際政治」を名乗る金載千(きん・さいせん)西江(せいこう)大学校教授(国際政治)です。
ただ、少々厳しいことを申し上げるならば、正論かもしれないものの、議論自体はかなり周回遅れです。
なお、全文を当ウェブサイトにコピーすれば著作権を侵害しますので、ここでは批評を目的に、箇条書きで記事の主張の要旨を抜き出しておきたいと思います
(ただし、大意を変えない範囲で、適宜日本語の表現を修正している箇所もありますが、ご了承ください)。
•朝鮮半島は米中両国の力が「均衡や緊張」を形成してきた地域だ
•米中両国は北朝鮮の核を巡っても、水面下で北東アジアの勢力再編に向けた熾烈な争いを繰り広げている
•だが、北朝鮮核交渉の進展を踏まえると、均衡が徐々に中国側に傾いており、そうなれば韓国の安全保障は危機に瀕する可能性が高い
•それなのに、韓国政府は非核化よりも終戦宣言や平和協定の議論に力を入れている状況だ
•韓国政府は南北交流よりも北朝鮮非核化に優先順位を置くべきだし、北朝鮮制裁解除を巡っても韓国が中国側に立つ理由はない
•韓国は「北朝鮮以後」も視野に入れつつ、中長期的に米国との同盟関係を維持・強化し、さらには日本との安全保障協力体制をきちんと構築すべきだ
•とくに国際規範や自由民主主義(などの価値)を共有する韓日の協力は中国の覇権を予防・牽制する効果的なカードだ
•国民感情が負担になるが、(韓国)政府が先頭に立ち、大局的見地から韓日関係を前向きに管理・発展させなければならない
…。
いかがでしょうか?
これが10年前に行われた議論であれば、まだ説得力はあったかもしれません。
しかし、現時点でこのような議論を見せつけられても、非常に申し訳ないのですが、すでに「周回遅れ」です。これはどういうことでしょうか?
日米から見た韓国
日本から見た韓国はすでに「重要な国」ではない
金教授の認識を私なりにまとめると、
「日本と韓国は国際的な規範や自由主義、民主主義といった基本的な価値を共有しているため、
自由民主主義国家どうしの協力は(共産主義・軍事独裁国家である)中国の覇権を予防・牽制するうえで、非常に効果的なものだ」
というものです。
実は、この基本認識、日本政府自身が持っていたものです。
現在の日本政府・安倍政権は韓国のことを「(これ以上悪化しないように)マネージする相手国」と見ているのですが、
実は、その安倍政権自体、当初は韓国のことを
「基本的価値と利益を共有する最も重要な隣国」
と表現していました。時系列でみると、次のとおりです。
安倍政権は韓国を「どういう相手」と見ているのか?
•2013年2月28日の施政方針演説…「基本的価値と利益を共有する最も重要な隣国」
•2014年1月24日の施政方針演説…「基本的価値と利益を共有する最も重要な隣国」
•2014年9月29日の所信表明演説…「基本的価値と利益を共有する最も重要な隣国」
•2015年2月12日の施政方針演説…「最も重要な隣国」
•2016年1月22日の施政方針演説…「戦略的利益を共有する最も重要な隣国」
•2016年9月26日の所信表明演説…「戦略的利益を共有する最も重要な隣国」
•2018年1月22日の施政方針演説…(特段の言及なし)
日本にとって、「基本的価値と利益を両方とも共有する国」とは、本来、米国など、ごく限られた国しか存在しません。
その「わが国にとって最も大切な相手国」という地位を持っていたのが韓国であり、安倍政権自身もそのように考えていたのです。
それなのに、2015年以降は「基本的価値の共有」という言葉が剥落し、代わって「戦略的利益の共有」という言葉が出て来ます。
いわば、「価値は共有していないが、是々非々でお付き合いする相手」ということでしょう。
それが、いまや「利益を共有する国」でも「重要な隣国」でもなくなってしまったのです。
米国にとって韓国は「恩知らずの裏切り者」
一方、韓国は日本だけでなく、米国から見ても、「恩知らずの裏切り者」です。
1998年以降の5代の大統領を列挙してみると、驚くことに、「米国にべったりの明らかな親米派」の大統領は1人もいません。
いずれの大統領も、北朝鮮と仲良くしたがる「親北派」か、中国と仲良くしたがる「親中派」です。
•親北派:1998年~2003年…金大中(きん・だいちゅう)政権
•親北派:2003年~2008年…盧武鉉(ろ・ぶげん)政権
•親中派:2008年~2013年…李明博(り・めいはく)政権
•親中派:2013年~2017年…朴槿恵(ぼく・きんけい)政権
•親北派:2017年~…文在寅(ぶん・ざいいん)政権
この中で、とくに酷かったのが、前任の朴槿恵大統領です。
彼女は韓国大統領としての外交慣例を破り、2ヵ国目の訪問国として、日本ではなく中国を選びました。
この時点でかなりの親中派ということですが、それだけではありません。
2015年に中国が国際開発銀行である「アジアインフラ投資銀行」(AIIB、私に言わせれば「アジア・インチキ・イカサマ銀行」)を設立した際、
韓国は米国の同盟国というステータスにありながら、いの一番に参加を表明しました。
また、同年9月3日に行われた「抗日戦争勝利70周年記念軍事パレード」では、
ロシアのプーチン大統領、「中央アジアの独裁者」ことカザフスタンのナザルバエフ大統領やウズベキスタンのカリモフ大統領、さらには国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出ているスーダンのバシール大統領らと同席。
激怒した当時のバラク・オバマ米国大統領は、
10月に訪米した朴槿恵氏を徹底的に冷遇し、首脳会談には30分少々しか応じず、
晩餐会を開催せず、午餐会をジョー・バイデン副大統領(当時)に丸投げしたほどです。
こうした韓国の「恩知らずの裏切り者」というステータスを挽回するためには、相応の外交努力が必要ですが、
私が見たところ、現大統領の文在寅氏に、そのような努力を行っている形跡は見られません。
つまり、金教授がいかに「米国との同盟が大事だ」と述べたところで、
「米国との同盟を最優先にすべきだ」と考える大統領が韓国に出現していない時点で、
すでに米国との同盟は修復不能なポイントにまで来てしまっていると考えるべきなのです。
日米両国は韓国を必要としていない
この金教授の議論を読めば、皮肉なことに、いかに韓国が日米両国から離れているかという点を痛感することができます。
金教授は
「韓国は北朝鮮という脅威が除去されたとしても、韓国は中国とではなく、中長期的に米国との同盟関係を維持・強化しなければならない」
「国民感情が負担になるが、韓国政府が先頭に立ち、大局的見地から韓日関係を前向きに管理・発展させなければならない」
などと主張しており、これらは間違いなく韓国にとっては「ためになる提言」です。
ただ、それと同時に、これらは別に日米両国にとっては「ためになる提言」ではありません。
韓国が日米両国を必要としていることは事実ですが、
韓国が日米両国を必要としているほど、日米両国は韓国を必要としていないからです。
冷静に考えてみればよくわかります。
古今東西、どんな国にとっても大切なのは国防と経済です。
韓国の場合、国防を米国に、経済・金融を日本に依存しながら発展してきたという経緯があります。
そして、国防の米国への依存、経済・金融の日本への依存は、いまだに続いています。
実際、韓国軍は米国との同盟関係が打ち切られた場合に、
自力で北朝鮮、中国、ロシアからの侵略を防ぐことができるだけの体制を持っていませんし、
日本との友好通商関係が打ち切られた場合に、資金調達、資源輸入などを自力で行うだけの体制はありません。
もちろん、米国から見れば、韓国に軍事拠点を置いておくことで、
いちおう、ユーラシア大陸の南端に橋頭堡を確保しているという戦略的な意義はあるでしょう。
また、日本から見れば、韓国は原材料など、日本のさまざまな工業製品の輸入国であり、お得意様でもあります。
その意味で、韓国との関係が日米両国にとってまったく意味がない、というわけではありません。
しかし、米国にとってはわざわざコストを掛けてまで、
米軍を朝鮮半島に置いておく意義があるかと言われれば、それはそれで微妙ですし、
日本にしても知的財産権侵害などのトラブルを多発させるコストを考えるならば、
韓国との経済協力関係を維持するのはメリットばかりではありません。
米中のせめぎ合いと北朝鮮
それでも金氏の論考に価値がある理由
ただ、私が金教授の論考を読んで、「韓国にもいちおう、ここまで理解している人がいるのか」と感心した下りがないわけではありません。
それは、
「朝鮮半島は米中両国の力が「均衡や緊張」を形成してきた地域だ
米中両国は北朝鮮の核を巡っても、水面下で北東アジアの勢力再編に向けた熾烈な争いを繰り広げている」
という下りです。
たしかに表面上は、米国が北朝鮮と直接、非核化に向けた交渉を行っています。
しかし、「この機会に乗じて東アジア全体を支配下に収めよう」とする、中国の野望が見え隠れするのも事実です。
端的に言えば、朝鮮半島から米軍を追い出してしまう、ということです。
そうなれば、朝鮮半島のパワー・バランスは、間違いなく、中国の側に傾きます。金教授は
「均衡が中国側に傾くと、韓国の安全保障は危機に瀕する可能性が高い」
と述べており、
金教授は韓国政府が北朝鮮との終戦宣言や平和協定の議論に力を入れている状況を極度に警戒しているのですが、
これらの点についてはそのとおりでしょう。
問題は、こうした全体像を理解している者が、少なくとも韓国大統領府にはいない、という点にあります。
いや、もう少し厳密にいえば、韓国大統領府はおろか、
マス・メディア、学者など、韓国の論壇全体を見渡しても、金教授のような認識を持つ人は少数派でしょう。
ここに韓国の危機の本質があります。ましてや、非常に短絡的な反日運動が説得力を持ってしまうようなお国柄です。
国全体が極論に傾き、政治的には左傾転覆するのも時間の問題なのかもしれません。
中国か北朝鮮か、それが問題だ
ついでに申し上げるならば、金氏の論考に、1つ、欠落している視点もあります。
それは、「中国と北朝鮮はまったくの別物である」、という点です。
以前から当ウェブサイトをご参照くださっている方ならご存知ですが、私は朝鮮半島の将来には大きく6つの可能性があると見ています。それは、
•①赤化統一(朝鮮半島全体が北朝鮮の支配下に入ること)、
•②中華属国化(韓国が中国の支配下に入ること)、
という2つのベースシナリオに加えて、
「▼③南北クロス承認(韓国が中国の属国化し、北朝鮮が米国と関係を改善すること)、
▼④統一朝鮮の中華属国化(中国主導下で朝鮮半島が統一されること)、
▼⑤北朝鮮分割(北朝鮮が中国、ロシア、緩衝地帯などに分割されること)、
▼⑥現状維持」です。
このうち、「①赤化統一」とは、北朝鮮が韓国を支配下に組み入れたうえで、米中両国を両天秤に掛けた外交を行うというものであり、
日本にとってはまことに都合が悪いシナリオです。
いや、もっといえば、中国にとっても、米国にとっても、このようなシナリオが実現することは望ましくありません。
また、「②中華属国化」とは、韓国だけが中国の支配下に入るというシナリオですが、この場合、北朝鮮は中国に対して独立を維持します。
つまり、①と②は、北朝鮮という国が存続したままで、韓国が北朝鮮に支配されるか、中国に支配されるかと言うだけの違いしかないのです。
一方、北朝鮮が消滅するシナリオは④と⑤ですが、これらのシナリオが実現する可能性は、そこまで高くないと私自身は考えています。
何より、北朝鮮は瀬戸際外交の名手です。
米中露という周辺3大国の対立をうまく利用しながら北朝鮮は生き延びていく可能性の方が高いと思います。
その意味で、現在の韓国は、「日米から見捨てられる」ことはほぼ確定しているものの、
「自力で生き延びていく」ほどの知恵も体制も勇気もありません。
「中国に支配されるのか、北朝鮮に支配されるのか、どちらか好きな方を選べ」、というのが韓国に残された道なのだと思います。
日本はどの道を選ぶ?
さて、私の中で最も重要な論点は、「韓国の将来」ではありません。「日本の将来」です。
当ウェブサイトでは以前から主張していますが、日本は「平和憲法」、いや、厳密に言えば「殺人憲法」によって、国防が禁止されています
。
日本国憲法第9条第2項を読むと、次のように明記されています。
日本国憲法第9条第2項
前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
この、日本語としても破綻している奇妙な悪文によれば、
「国の交戦権は、これを認めない。」とあります。
つまり、日本が「外国」から侵略されたときには、交戦権が認められていないため、
日本国憲法は日本に侵略してくる外国と、戦う権利を認めない、ということです。
韓国が竹島を不法占拠しても、日本は韓国と戦うことができません。
北朝鮮が日本人を拉致しても、日本は北朝鮮と戦うことができません。
中国が尖閣諸島に軍事侵攻しても、日本は中国と戦うことができません。
旧ソ連に不法占拠された樺太・千島を奪い返したくても、日本はロシアと戦うことができません。
これが正常な国なのですか?
私はそうは思いません。
「戦争ができない国」というのは、「国民を守れない国」です。
しかし、本来、憲法を守るために国民がいるのではありません。
国民を守るために憲法があるのです。
こんなふざけた殺人憲法、私は今すぐにでも無効だと宣言したい気持ちを、必死に押しとどめているのです。
ただ、安倍晋三総理大臣は、今秋にも、改憲議論にようやく手を付けると言い始めました。
「もりかけ問題」を捏造したテロ組織・朝日新聞社が、またしても言論テロの準備をしているのではないかとの疑念もありますが、
日本国民は、テロ組織に屈せず、日本を「ちゃんと戦争ができる国」にしなければなりません。
拉致被害者が生きているうちに、日本人拉致問題を完全解決するためには、
北朝鮮の独裁者・金正恩(きん・しょうおん)を排除しなければなりません。
日本国民は、今こそ勇気を持って、そのための武器を取るべきです。
戦後73年の節目となる本日だからこそ、
「日本国は日本国民を守るために、勇気を持って戦争ができる国を目指すべきだ」と、強調したいと思います。
新宿会計士
『朝鮮日報』を引用することが少ない理由
何かを議論する際に、当ウェブサイトでは好むのは、
•できるだけリンク先が消えないウェブサイトであること、
•できるだけ無料で閲覧できるウェブサイトであること、
の2つの条件を満たしているサイトです。
NHKのようにすぐに情報が消えてしまうメディアは、インターネット上で何か議論をする際の情報源としては不適格です。
なぜなら、議論を読んだ人が、その議論の妥当性を検証しようとしても、時間が経つと参照できなくなってしまうからです。
また、WSJのように、原則として大部分のページが有料であるような場合、WSJと契約していないと元記事が参照できないため、情報源としてはあまり好ましくありません。
しかし、それでもNHKなどと異なり、リンクが消えないという意味では、まだ情報源としては有益だと思います。
いずれにせよ、当ウェブサイトでは「客観的な情報源」としてリンクを示す際には、
「リンク先が長期間消えずに残ること」
「無料で閲覧できること」という2つの条件を満たすメディアを優先しているつもりであり、その観点から、意図的に排除しているメディアがあります。
それが『朝鮮日報』(日本語版)です。
朝鮮日報の場合は、記事が公表されてから数日の間は、リンク先の記事を比較的自由に読むことができるのですが、一定期間が過ぎると、「有料リンク」に変わってしまうようなのです。
そのようなリンクを引用してしまうと、「原文に当たろうとしたらリンク先が読めない」、ということがときどき発生してしまいます。
そんな朝鮮日報に「周回遅れ」の寄稿
このような問題点があるため、当ウェブサイトでは極力、朝鮮日報は引用しないことにしているのですが、先日、どうしても紹介したい記事を発見してしまいましたので、やや遅くなりましたが、次のリンクを紹介しておきたいと思います。
【寄稿】韓国、このままでは中国の勢力圏に組み込まれる(2018/08/12 05:04付 朝鮮日報日本語版より)
(※もっとも、この記事のリンクも、すぐに読めなくなると思いますので、ご了承ください。)
なぜわざわざ朝鮮日報の記事を引用するのかといえば、この記事の議論が、かなり考えさせられるものだからです。
タイトルに「寄稿」とあるとおり、これは寄稿記事であり、執筆者は「国際政治」を名乗る金載千(きん・さいせん)西江(せいこう)大学校教授(国際政治)です。
ただ、少々厳しいことを申し上げるならば、正論かもしれないものの、議論自体はかなり周回遅れです。
なお、全文を当ウェブサイトにコピーすれば著作権を侵害しますので、ここでは批評を目的に、箇条書きで記事の主張の要旨を抜き出しておきたいと思います
(ただし、大意を変えない範囲で、適宜日本語の表現を修正している箇所もありますが、ご了承ください)。
•朝鮮半島は米中両国の力が「均衡や緊張」を形成してきた地域だ
•米中両国は北朝鮮の核を巡っても、水面下で北東アジアの勢力再編に向けた熾烈な争いを繰り広げている
•だが、北朝鮮核交渉の進展を踏まえると、均衡が徐々に中国側に傾いており、そうなれば韓国の安全保障は危機に瀕する可能性が高い
•それなのに、韓国政府は非核化よりも終戦宣言や平和協定の議論に力を入れている状況だ
•韓国政府は南北交流よりも北朝鮮非核化に優先順位を置くべきだし、北朝鮮制裁解除を巡っても韓国が中国側に立つ理由はない
•韓国は「北朝鮮以後」も視野に入れつつ、中長期的に米国との同盟関係を維持・強化し、さらには日本との安全保障協力体制をきちんと構築すべきだ
•とくに国際規範や自由民主主義(などの価値)を共有する韓日の協力は中国の覇権を予防・牽制する効果的なカードだ
•国民感情が負担になるが、(韓国)政府が先頭に立ち、大局的見地から韓日関係を前向きに管理・発展させなければならない
…。
いかがでしょうか?
これが10年前に行われた議論であれば、まだ説得力はあったかもしれません。
しかし、現時点でこのような議論を見せつけられても、非常に申し訳ないのですが、すでに「周回遅れ」です。これはどういうことでしょうか?
日米から見た韓国
日本から見た韓国はすでに「重要な国」ではない
金教授の認識を私なりにまとめると、
「日本と韓国は国際的な規範や自由主義、民主主義といった基本的な価値を共有しているため、
自由民主主義国家どうしの協力は(共産主義・軍事独裁国家である)中国の覇権を予防・牽制するうえで、非常に効果的なものだ」
というものです。
実は、この基本認識、日本政府自身が持っていたものです。
現在の日本政府・安倍政権は韓国のことを「(これ以上悪化しないように)マネージする相手国」と見ているのですが、
実は、その安倍政権自体、当初は韓国のことを
「基本的価値と利益を共有する最も重要な隣国」
と表現していました。時系列でみると、次のとおりです。
安倍政権は韓国を「どういう相手」と見ているのか?
•2013年2月28日の施政方針演説…「基本的価値と利益を共有する最も重要な隣国」
•2014年1月24日の施政方針演説…「基本的価値と利益を共有する最も重要な隣国」
•2014年9月29日の所信表明演説…「基本的価値と利益を共有する最も重要な隣国」
•2015年2月12日の施政方針演説…「最も重要な隣国」
•2016年1月22日の施政方針演説…「戦略的利益を共有する最も重要な隣国」
•2016年9月26日の所信表明演説…「戦略的利益を共有する最も重要な隣国」
•2018年1月22日の施政方針演説…(特段の言及なし)
日本にとって、「基本的価値と利益を両方とも共有する国」とは、本来、米国など、ごく限られた国しか存在しません。
その「わが国にとって最も大切な相手国」という地位を持っていたのが韓国であり、安倍政権自身もそのように考えていたのです。
それなのに、2015年以降は「基本的価値の共有」という言葉が剥落し、代わって「戦略的利益の共有」という言葉が出て来ます。
いわば、「価値は共有していないが、是々非々でお付き合いする相手」ということでしょう。
それが、いまや「利益を共有する国」でも「重要な隣国」でもなくなってしまったのです。
米国にとって韓国は「恩知らずの裏切り者」
一方、韓国は日本だけでなく、米国から見ても、「恩知らずの裏切り者」です。
1998年以降の5代の大統領を列挙してみると、驚くことに、「米国にべったりの明らかな親米派」の大統領は1人もいません。
いずれの大統領も、北朝鮮と仲良くしたがる「親北派」か、中国と仲良くしたがる「親中派」です。
•親北派:1998年~2003年…金大中(きん・だいちゅう)政権
•親北派:2003年~2008年…盧武鉉(ろ・ぶげん)政権
•親中派:2008年~2013年…李明博(り・めいはく)政権
•親中派:2013年~2017年…朴槿恵(ぼく・きんけい)政権
•親北派:2017年~…文在寅(ぶん・ざいいん)政権
この中で、とくに酷かったのが、前任の朴槿恵大統領です。
彼女は韓国大統領としての外交慣例を破り、2ヵ国目の訪問国として、日本ではなく中国を選びました。
この時点でかなりの親中派ということですが、それだけではありません。
2015年に中国が国際開発銀行である「アジアインフラ投資銀行」(AIIB、私に言わせれば「アジア・インチキ・イカサマ銀行」)を設立した際、
韓国は米国の同盟国というステータスにありながら、いの一番に参加を表明しました。
また、同年9月3日に行われた「抗日戦争勝利70周年記念軍事パレード」では、
ロシアのプーチン大統領、「中央アジアの独裁者」ことカザフスタンのナザルバエフ大統領やウズベキスタンのカリモフ大統領、さらには国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出ているスーダンのバシール大統領らと同席。
激怒した当時のバラク・オバマ米国大統領は、
10月に訪米した朴槿恵氏を徹底的に冷遇し、首脳会談には30分少々しか応じず、
晩餐会を開催せず、午餐会をジョー・バイデン副大統領(当時)に丸投げしたほどです。
こうした韓国の「恩知らずの裏切り者」というステータスを挽回するためには、相応の外交努力が必要ですが、
私が見たところ、現大統領の文在寅氏に、そのような努力を行っている形跡は見られません。
つまり、金教授がいかに「米国との同盟が大事だ」と述べたところで、
「米国との同盟を最優先にすべきだ」と考える大統領が韓国に出現していない時点で、
すでに米国との同盟は修復不能なポイントにまで来てしまっていると考えるべきなのです。
日米両国は韓国を必要としていない
この金教授の議論を読めば、皮肉なことに、いかに韓国が日米両国から離れているかという点を痛感することができます。
金教授は
「韓国は北朝鮮という脅威が除去されたとしても、韓国は中国とではなく、中長期的に米国との同盟関係を維持・強化しなければならない」
「国民感情が負担になるが、韓国政府が先頭に立ち、大局的見地から韓日関係を前向きに管理・発展させなければならない」
などと主張しており、これらは間違いなく韓国にとっては「ためになる提言」です。
ただ、それと同時に、これらは別に日米両国にとっては「ためになる提言」ではありません。
韓国が日米両国を必要としていることは事実ですが、
韓国が日米両国を必要としているほど、日米両国は韓国を必要としていないからです。
冷静に考えてみればよくわかります。
古今東西、どんな国にとっても大切なのは国防と経済です。
韓国の場合、国防を米国に、経済・金融を日本に依存しながら発展してきたという経緯があります。
そして、国防の米国への依存、経済・金融の日本への依存は、いまだに続いています。
実際、韓国軍は米国との同盟関係が打ち切られた場合に、
自力で北朝鮮、中国、ロシアからの侵略を防ぐことができるだけの体制を持っていませんし、
日本との友好通商関係が打ち切られた場合に、資金調達、資源輸入などを自力で行うだけの体制はありません。
もちろん、米国から見れば、韓国に軍事拠点を置いておくことで、
いちおう、ユーラシア大陸の南端に橋頭堡を確保しているという戦略的な意義はあるでしょう。
また、日本から見れば、韓国は原材料など、日本のさまざまな工業製品の輸入国であり、お得意様でもあります。
その意味で、韓国との関係が日米両国にとってまったく意味がない、というわけではありません。
しかし、米国にとってはわざわざコストを掛けてまで、
米軍を朝鮮半島に置いておく意義があるかと言われれば、それはそれで微妙ですし、
日本にしても知的財産権侵害などのトラブルを多発させるコストを考えるならば、
韓国との経済協力関係を維持するのはメリットばかりではありません。
米中のせめぎ合いと北朝鮮
それでも金氏の論考に価値がある理由
ただ、私が金教授の論考を読んで、「韓国にもいちおう、ここまで理解している人がいるのか」と感心した下りがないわけではありません。
それは、
「朝鮮半島は米中両国の力が「均衡や緊張」を形成してきた地域だ
米中両国は北朝鮮の核を巡っても、水面下で北東アジアの勢力再編に向けた熾烈な争いを繰り広げている」
という下りです。
たしかに表面上は、米国が北朝鮮と直接、非核化に向けた交渉を行っています。
しかし、「この機会に乗じて東アジア全体を支配下に収めよう」とする、中国の野望が見え隠れするのも事実です。
端的に言えば、朝鮮半島から米軍を追い出してしまう、ということです。
そうなれば、朝鮮半島のパワー・バランスは、間違いなく、中国の側に傾きます。金教授は
「均衡が中国側に傾くと、韓国の安全保障は危機に瀕する可能性が高い」
と述べており、
金教授は韓国政府が北朝鮮との終戦宣言や平和協定の議論に力を入れている状況を極度に警戒しているのですが、
これらの点についてはそのとおりでしょう。
問題は、こうした全体像を理解している者が、少なくとも韓国大統領府にはいない、という点にあります。
いや、もう少し厳密にいえば、韓国大統領府はおろか、
マス・メディア、学者など、韓国の論壇全体を見渡しても、金教授のような認識を持つ人は少数派でしょう。
ここに韓国の危機の本質があります。ましてや、非常に短絡的な反日運動が説得力を持ってしまうようなお国柄です。
国全体が極論に傾き、政治的には左傾転覆するのも時間の問題なのかもしれません。
中国か北朝鮮か、それが問題だ
ついでに申し上げるならば、金氏の論考に、1つ、欠落している視点もあります。
それは、「中国と北朝鮮はまったくの別物である」、という点です。
以前から当ウェブサイトをご参照くださっている方ならご存知ですが、私は朝鮮半島の将来には大きく6つの可能性があると見ています。それは、
•①赤化統一(朝鮮半島全体が北朝鮮の支配下に入ること)、
•②中華属国化(韓国が中国の支配下に入ること)、
という2つのベースシナリオに加えて、
「▼③南北クロス承認(韓国が中国の属国化し、北朝鮮が米国と関係を改善すること)、
▼④統一朝鮮の中華属国化(中国主導下で朝鮮半島が統一されること)、
▼⑤北朝鮮分割(北朝鮮が中国、ロシア、緩衝地帯などに分割されること)、
▼⑥現状維持」です。
このうち、「①赤化統一」とは、北朝鮮が韓国を支配下に組み入れたうえで、米中両国を両天秤に掛けた外交を行うというものであり、
日本にとってはまことに都合が悪いシナリオです。
いや、もっといえば、中国にとっても、米国にとっても、このようなシナリオが実現することは望ましくありません。
また、「②中華属国化」とは、韓国だけが中国の支配下に入るというシナリオですが、この場合、北朝鮮は中国に対して独立を維持します。
つまり、①と②は、北朝鮮という国が存続したままで、韓国が北朝鮮に支配されるか、中国に支配されるかと言うだけの違いしかないのです。
一方、北朝鮮が消滅するシナリオは④と⑤ですが、これらのシナリオが実現する可能性は、そこまで高くないと私自身は考えています。
何より、北朝鮮は瀬戸際外交の名手です。
米中露という周辺3大国の対立をうまく利用しながら北朝鮮は生き延びていく可能性の方が高いと思います。
その意味で、現在の韓国は、「日米から見捨てられる」ことはほぼ確定しているものの、
「自力で生き延びていく」ほどの知恵も体制も勇気もありません。
「中国に支配されるのか、北朝鮮に支配されるのか、どちらか好きな方を選べ」、というのが韓国に残された道なのだと思います。
日本はどの道を選ぶ?
さて、私の中で最も重要な論点は、「韓国の将来」ではありません。「日本の将来」です。
当ウェブサイトでは以前から主張していますが、日本は「平和憲法」、いや、厳密に言えば「殺人憲法」によって、国防が禁止されています
。
日本国憲法第9条第2項を読むと、次のように明記されています。
日本国憲法第9条第2項
前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
この、日本語としても破綻している奇妙な悪文によれば、
「国の交戦権は、これを認めない。」とあります。
つまり、日本が「外国」から侵略されたときには、交戦権が認められていないため、
日本国憲法は日本に侵略してくる外国と、戦う権利を認めない、ということです。
韓国が竹島を不法占拠しても、日本は韓国と戦うことができません。
北朝鮮が日本人を拉致しても、日本は北朝鮮と戦うことができません。
中国が尖閣諸島に軍事侵攻しても、日本は中国と戦うことができません。
旧ソ連に不法占拠された樺太・千島を奪い返したくても、日本はロシアと戦うことができません。
これが正常な国なのですか?
私はそうは思いません。
「戦争ができない国」というのは、「国民を守れない国」です。
しかし、本来、憲法を守るために国民がいるのではありません。
国民を守るために憲法があるのです。
こんなふざけた殺人憲法、私は今すぐにでも無効だと宣言したい気持ちを、必死に押しとどめているのです。
ただ、安倍晋三総理大臣は、今秋にも、改憲議論にようやく手を付けると言い始めました。
「もりかけ問題」を捏造したテロ組織・朝日新聞社が、またしても言論テロの準備をしているのではないかとの疑念もありますが、
日本国民は、テロ組織に屈せず、日本を「ちゃんと戦争ができる国」にしなければなりません。
拉致被害者が生きているうちに、日本人拉致問題を完全解決するためには、
北朝鮮の独裁者・金正恩(きん・しょうおん)を排除しなければなりません。
日本国民は、今こそ勇気を持って、そのための武器を取るべきです。
戦後73年の節目となる本日だからこそ、
「日本国は日本国民を守るために、勇気を持って戦争ができる国を目指すべきだ」と、強調したいと思います。