勝又壽良
Sent: Thursday, December 27, 2018 5:00 AM
中国は大国のメンツ維持を優先、米へ妥協し経済危機回避へ必死
中国の世界覇権阻止へ全力
米国の外濠埋め立て作戦へ
ファーウェイ包囲網を構築
本格化する経済危機の到来
経常赤字で為替・株価大揺れ
米中貿易戦争は、来年2月末まで「休戦」状態になっています。
この間に、通商交渉を進めていますが、順調に進んでいるようです。
12月には、中国通信機メーカーのファーウェイ(華為技術)副会長が、米国の要請によってカナダで逮捕される事件が発生しました。
従来の中国であれば、これを理由に米中交渉を中断してもおかしくはありません。
だが、中国は「ファーウェイ事件と米中通商交渉は別問題」として、交渉を続けています。
中国は、カナダに対して厳しい態度に出ています。
カナダ人二人を違法拘束して「人質」にとっています。カナダへこういう態度を取るならば、米国へも「報復」して当たり前でしょう。
それを控えていることが、今回の米中交渉を妥結させたいという中国の強い意志の表れと見られます。
米国は、中国に5項目で合意を迫っています。
その内の一つである、米国農産物輸入と米国製自動車関税を引下げは、中国が同意し実行に移しています。
問題は、残りの4項目です。
知財権保護、ハッカー禁止、技術移転強要禁止などが焦点になっています。技術移転強要禁止は全人代(国会)の常務委員会で成文化の検討を始めました。
このように、中国は断片的ですが対米合意に向けて動いています。
来年1月になれば、米中両国の交渉団が、顔を合わせて直接交渉を行なうと伝えられています。
米国は、合意書にサインしたあとも、実際に合意事項が履行されているか検証することを要求しています。
中国得意の「食い逃げ」は許さない強い姿勢です。
米ホワイトハウスのナヴァロ通商政策局長は、「中国が経済政策の変更をしなければ、実効を挙げえないだろう」とも指摘しています。
米国は、不退転の決意であることを示しています。
中国の世界覇権阻止へ全力
米国が、中国に対して強硬姿勢をとっている理由は、安全保障上の問題も絡んでいます。
中国の習近平国家主席は、自らの権力基盤を固めて国家主席の任期制(2期10年間)を廃止し、自らの「終身国家主席制」に道を開きました。
この余勢を駆って、2050年頃には、米国の世界覇権に挑戦する夢まで語ってしまったのです。
これが、米国の強い反発を受けました。
独裁国家が、世界覇権を握りたいとう野望は、世界の歴史を逆回転させるに等しいことです。聞き捨てにできない「放言」です。
人間は、長い歴史において第二次世界大戦や、その後の米ソ対立という冷戦を経験して、ようやく世界的な民主主義政治の確立を見ました。
それが突然、新興国の中国が、米国と覇権争いをすると名乗り出たのです。
米国とその同盟国が政治的危機感を覚え、独裁国家の中国へ対抗する姿勢で足並みを揃えたのです。
この点は、中国にとっては予想外のことであり、ここに先進国vs中国という対抗の構図に変ったのです。
こうなると、中国は、もはや手も足も出ません。中国の大誤算というべき事態です。
中国は、「中国製造2025」という産業構造高度化のプロジェクトを立ち上げています。
2025年までに、日本やドイツの工業化水準に追いつくというものです。
日本でも過去、「所得倍増計画」や「産業構造高度化計画」を立ててきました。
これが、何らの問題を起こさなかったのは、自主技術開発や、他国からの正規の技術導入によって実現を目指したからです。
中国は、スパイによる技術窃取や技術移転強要など、犯罪行為を駆使しているのです。
国家が経済犯罪を煽動するという、これまで考えられない手を使ってきました。
米国は、中国に対して「中国製造2025」を中止せよと言う資格はありません。内政干渉になるからです。
米国は、技術窃取や技術移転強要などの禁止を中国に求める資格はあります。
中国へ要求している4項目(5項目から農産物などの輸入を除く)の是正は、「中国製造2025」の外濠を埋めさせる行為なのです。
卑近な例で言えば、盗賊集団に盗賊行為を禁じれば、盗賊は生存不可能になると同じことなのです。
米国の外濠埋め立て作戦へ
米国による外濠埋め立て作戦の例を挙げておきます
1.
中国人の米国入国へのビザ発給の厳格化です。
米国留学生の中で、最大の比率は中国人です。
米国の大学は、中国人留学生の授業料で経済的に潤ってきました。
これが、産業スパイの温床になっていました。
大学院生が米国の大学の研究室から研究成果を盗み出す役割をしていたのです。
また、米国大学院で博士号取得後に米企業に就職し、米企業の極秘情報を盗み出す例が跡を絶ちません
これに業を煮やした米国政府は、ビザの発給そのものを厳格化することに切り替えています。
留学生や研究者のビザを大幅に絞ったのです。
ビザ申請者の電話の通話記録やSNSのIDの調査が検討されていると報じられました。10年有効のビザも大幅に減っています。
一般旅行者のビザの発給も減らしています。
米国にいるスパイから資料を受け取って帰国すれば、まんまと米国の極秘資料の盗み出しに成功するからです。
2.
スパイ摘発に積極的に取り組んでいます。
米司法省は12月21日、米国の石油会社から機密情報を盗んだとして中国国籍の男を逮捕しました。
10億ドルを超える製品に関する情報を盗んだものです。
容疑者のパソコンからは、リチウムイオン電池の材料の生産ラインを開発している中国企業との雇用契約を発見しました。
押収した資料は携帯電話とリチウム電池システムに関する機密情報といいますから、盗み出しを唆した中国企業は特定できそうです。
ファーウェイが最近、スマホに力を入れ、世界一を目指しています。疑われる理由は十分にあるのです。
3.
ハッカーでは中国人2人を起訴しました。
米司法省は先端技術を盗み出した疑いで、12月20日に起訴した2人の中国人をハッカー集団のメンバーと断定しました。
同集団は、2016年ごろからサイバー攻撃を強めていました。
活動拠点は、中国にあると見られています。
米政府は中国の情報機関である国家安全省の関与を指摘し、国家主導で世界規模のハッキングを画策したとみなしています。
中国の名門大学・精華大学からも発信されたと指摘されています。パソコンのIPが精華大学と指摘されています。
ファーウェイ包囲網を構築
4.
ファーウェイ包囲網を構築しています。
ファーウェイの副会長が、米国政府の依頼によりカナダで逮捕されました。
現在は保釈中ですが、米国へ身柄移送となればファーウェイと中国政府の関係などが捜査されると思います。
中国はこれを恐れて、副会長の身柄移送阻止に出ているのです。
ファーウェイは、次世代ネットワーク「5G」で世界制覇を目指しています。
世界の情報を窃取して北京へ集め、人民解放軍が活用する戦略です。
これが実現したならば、人民解放軍が世界支配のトリガー(引き金)を握ると言われています。
米国は、これを阻止すべき「ファイブアイズ」という、米国が機密情報共有協定を結ぶカナダ、英国、オーストラリア、ニュージーランドを動員しています。
これら5ヶ国を核にして、日本、ドイツ、フランス、インドを巻き込みファーウェイ製品を除しようとしています。
こうして、具体的にファーウェイ「枯死作戦」を展開する戦略です。
米国が、ファーウェイ副会長に逮捕状を出したのは、容疑が固まり次第ファーウェイへ処分を下すという意味です。
その具体的な内容は、先にZTE(中興通訊)へ下した米国からのソフトや半導体輸出禁止措置(その後に撤回し罰金15億ドル)になれば、ファーウェイの「5G」は製品化不可能と見られています。
中国は、「中国製造2025」の核としてファーウェイを位置づけています。
前述のような米国の戦略によれば、主要部品の輸出は阻止され、製品の販売でも多大のダメージを受けます。
こうして、ファーウェイは企業としての活動が麻痺状態を迎えるのです。米国は、ファーウェイをそこまで追い詰める決意です。
結局、「中国製造2025」はすでに、2025年までの実現が不可能になったのです。
中国が、「無駄な抵抗」を止めて、米国との話し合いに入った背景は、以上の諸点が障害となっていることを挙げられます。
米中貿易戦争は最早、「勝負あった」というのが実感なのです。
本格化する経済危機の到来
中国が抱えている経済的な問題は、対米貿易戦争だけではありません。
不動産バブルを放置していたことによる過剰債務問題です。
対GDP比で260%以上という債務を抱えて、信用機構は不良債権によって窒息状態に追い込まれています。
金融機関は、信用不安で新規融資が不可能な状態なのです。
この結果、マネーサプライ(M2)は、10月、11月ともに前年同月比8.0%増という低増加率です。
名目GDP成長率を下回っている異常な状態です。普通の経済ではあり得ない現象です。
過剰債務は、過剰投資につながっています。
中国経済の生産性が落ちているので、借りた資金を返済できず、それが根雪のように溜まっているからです。
過剰債務=過剰投資です。
これが、「限界資本係数」を押上げています。
つまり、GDP1単位を産み出すために、他国経済よりも多く(2倍)の資本を投下しなければならない「欠陥経済」に変質したのです。次の例を挙げましょう。
中国農業では、現実に農薬を他国よりも2倍多く散布しています。
これまでの過剰な農薬散布が土壌を悪化させており、これが新たな病虫害を発生させているのです。
そこでまた、農薬を増やすという悪循環の繰り返しです。中国経済もこれと同じことの繰り返しです。
中国経済が、過剰債務=過剰投資に陥ったことで、国際競争力は低下しています。
つまり、効率性の劣る中国経済の産み出す工業製品は、輸出競争力の低下に見舞われています。
これが、貿易収支の黒字を減らしているのです。
2015年の5939億ドルをピークに減少し、17年には4195億ドルに低下しています。
最大の問題は、これによって経常収支の赤字問題が浮上することです。
今年の経常収支の黒字は300億ドル以下と見られます。来年は確実に赤字です。
中国の経常収支が赤字になれば、大変なニュースバリューを持ちます。
対外直接投資は、経常黒字が「元金」になります。
経常赤字では、中国の対外投資に大きな制約がかかるのです。
華々しく登場した「一帯一路」融資の元手が手薄になる事態で、中国はどう振る舞うのでしょう。
去年も5000億ドルの債務を増やして、対外直接投資を行ないました。これ以上の債務増加は望ましくありません。
中国政府が、「ニーハオ」と言って日本へ接近した理由は、すべて経常収支問題に絡んでいます。
中国は、財政的な弱小国を「債務漬け」して国際的な批判をあびました。
中国は、担保に目がくらんでいますが、貸し付けた資金は回収できません。
こういう未回収資金が、中国の外貨資金バランスを悪化させているはずです。
中国は本来、「債務漬け」にするほどの資金的ゆとりがない国です。それがいま、馬脚を現したと言うほかありません。
経常赤字で為替・株価大揺れ
中国の経常収支が赤字になれば、人民元相場に大きな影響を与えます。
中国人民銀行は1ドル=7元を維持したいとしていますが、経常赤字が回復せずに、かなりの期間にわたり継続するとなれば、7元を割り込むことは必至でしょう。
外貨準備高3兆ドル台を取り崩すのは当然ですが、ここで投機筋の「人民元売り」が加わります。
株価は暴落します。2015年の為替と株価の急落劇再現です。
来年の中国経済は、米中貿易戦争がなくても劇的な変化に見舞われる条件下に差し掛かっています。
従来の野放図な経済政策の総決算の段階を迎えたからです。
私は、2010年5月からブログを始めました。
それ以後、休みなく毎日ブログを書き続け、中国経済と向き合っています。
日本のバブル経済崩壊と重ね合わせながら、中国経済の「栄枯盛衰」を眺めてきました。
バブル破綻という最終局面にあることは間違いありません。
仮に、米中の合意が成立しなければ、中国経済は最悪事態を迎えます。
習近平氏が、それを見通せずに「意地」を張れば、習氏自身の権力の座も危うくなると見るほかありません。
Sent: Thursday, December 27, 2018 5:00 AM
中国は大国のメンツ維持を優先、米へ妥協し経済危機回避へ必死
中国の世界覇権阻止へ全力
米国の外濠埋め立て作戦へ
ファーウェイ包囲網を構築
本格化する経済危機の到来
経常赤字で為替・株価大揺れ
米中貿易戦争は、来年2月末まで「休戦」状態になっています。
この間に、通商交渉を進めていますが、順調に進んでいるようです。
12月には、中国通信機メーカーのファーウェイ(華為技術)副会長が、米国の要請によってカナダで逮捕される事件が発生しました。
従来の中国であれば、これを理由に米中交渉を中断してもおかしくはありません。
だが、中国は「ファーウェイ事件と米中通商交渉は別問題」として、交渉を続けています。
中国は、カナダに対して厳しい態度に出ています。
カナダ人二人を違法拘束して「人質」にとっています。カナダへこういう態度を取るならば、米国へも「報復」して当たり前でしょう。
それを控えていることが、今回の米中交渉を妥結させたいという中国の強い意志の表れと見られます。
米国は、中国に5項目で合意を迫っています。
その内の一つである、米国農産物輸入と米国製自動車関税を引下げは、中国が同意し実行に移しています。
問題は、残りの4項目です。
知財権保護、ハッカー禁止、技術移転強要禁止などが焦点になっています。技術移転強要禁止は全人代(国会)の常務委員会で成文化の検討を始めました。
このように、中国は断片的ですが対米合意に向けて動いています。
来年1月になれば、米中両国の交渉団が、顔を合わせて直接交渉を行なうと伝えられています。
米国は、合意書にサインしたあとも、実際に合意事項が履行されているか検証することを要求しています。
中国得意の「食い逃げ」は許さない強い姿勢です。
米ホワイトハウスのナヴァロ通商政策局長は、「中国が経済政策の変更をしなければ、実効を挙げえないだろう」とも指摘しています。
米国は、不退転の決意であることを示しています。
中国の世界覇権阻止へ全力
米国が、中国に対して強硬姿勢をとっている理由は、安全保障上の問題も絡んでいます。
中国の習近平国家主席は、自らの権力基盤を固めて国家主席の任期制(2期10年間)を廃止し、自らの「終身国家主席制」に道を開きました。
この余勢を駆って、2050年頃には、米国の世界覇権に挑戦する夢まで語ってしまったのです。
これが、米国の強い反発を受けました。
独裁国家が、世界覇権を握りたいとう野望は、世界の歴史を逆回転させるに等しいことです。聞き捨てにできない「放言」です。
人間は、長い歴史において第二次世界大戦や、その後の米ソ対立という冷戦を経験して、ようやく世界的な民主主義政治の確立を見ました。
それが突然、新興国の中国が、米国と覇権争いをすると名乗り出たのです。
米国とその同盟国が政治的危機感を覚え、独裁国家の中国へ対抗する姿勢で足並みを揃えたのです。
この点は、中国にとっては予想外のことであり、ここに先進国vs中国という対抗の構図に変ったのです。
こうなると、中国は、もはや手も足も出ません。中国の大誤算というべき事態です。
中国は、「中国製造2025」という産業構造高度化のプロジェクトを立ち上げています。
2025年までに、日本やドイツの工業化水準に追いつくというものです。
日本でも過去、「所得倍増計画」や「産業構造高度化計画」を立ててきました。
これが、何らの問題を起こさなかったのは、自主技術開発や、他国からの正規の技術導入によって実現を目指したからです。
中国は、スパイによる技術窃取や技術移転強要など、犯罪行為を駆使しているのです。
国家が経済犯罪を煽動するという、これまで考えられない手を使ってきました。
米国は、中国に対して「中国製造2025」を中止せよと言う資格はありません。内政干渉になるからです。
米国は、技術窃取や技術移転強要などの禁止を中国に求める資格はあります。
中国へ要求している4項目(5項目から農産物などの輸入を除く)の是正は、「中国製造2025」の外濠を埋めさせる行為なのです。
卑近な例で言えば、盗賊集団に盗賊行為を禁じれば、盗賊は生存不可能になると同じことなのです。
米国の外濠埋め立て作戦へ
米国による外濠埋め立て作戦の例を挙げておきます
1.
中国人の米国入国へのビザ発給の厳格化です。
米国留学生の中で、最大の比率は中国人です。
米国の大学は、中国人留学生の授業料で経済的に潤ってきました。
これが、産業スパイの温床になっていました。
大学院生が米国の大学の研究室から研究成果を盗み出す役割をしていたのです。
また、米国大学院で博士号取得後に米企業に就職し、米企業の極秘情報を盗み出す例が跡を絶ちません
これに業を煮やした米国政府は、ビザの発給そのものを厳格化することに切り替えています。
留学生や研究者のビザを大幅に絞ったのです。
ビザ申請者の電話の通話記録やSNSのIDの調査が検討されていると報じられました。10年有効のビザも大幅に減っています。
一般旅行者のビザの発給も減らしています。
米国にいるスパイから資料を受け取って帰国すれば、まんまと米国の極秘資料の盗み出しに成功するからです。
2.
スパイ摘発に積極的に取り組んでいます。
米司法省は12月21日、米国の石油会社から機密情報を盗んだとして中国国籍の男を逮捕しました。
10億ドルを超える製品に関する情報を盗んだものです。
容疑者のパソコンからは、リチウムイオン電池の材料の生産ラインを開発している中国企業との雇用契約を発見しました。
押収した資料は携帯電話とリチウム電池システムに関する機密情報といいますから、盗み出しを唆した中国企業は特定できそうです。
ファーウェイが最近、スマホに力を入れ、世界一を目指しています。疑われる理由は十分にあるのです。
3.
ハッカーでは中国人2人を起訴しました。
米司法省は先端技術を盗み出した疑いで、12月20日に起訴した2人の中国人をハッカー集団のメンバーと断定しました。
同集団は、2016年ごろからサイバー攻撃を強めていました。
活動拠点は、中国にあると見られています。
米政府は中国の情報機関である国家安全省の関与を指摘し、国家主導で世界規模のハッキングを画策したとみなしています。
中国の名門大学・精華大学からも発信されたと指摘されています。パソコンのIPが精華大学と指摘されています。
ファーウェイ包囲網を構築
4.
ファーウェイ包囲網を構築しています。
ファーウェイの副会長が、米国政府の依頼によりカナダで逮捕されました。
現在は保釈中ですが、米国へ身柄移送となればファーウェイと中国政府の関係などが捜査されると思います。
中国はこれを恐れて、副会長の身柄移送阻止に出ているのです。
ファーウェイは、次世代ネットワーク「5G」で世界制覇を目指しています。
世界の情報を窃取して北京へ集め、人民解放軍が活用する戦略です。
これが実現したならば、人民解放軍が世界支配のトリガー(引き金)を握ると言われています。
米国は、これを阻止すべき「ファイブアイズ」という、米国が機密情報共有協定を結ぶカナダ、英国、オーストラリア、ニュージーランドを動員しています。
これら5ヶ国を核にして、日本、ドイツ、フランス、インドを巻き込みファーウェイ製品を除しようとしています。
こうして、具体的にファーウェイ「枯死作戦」を展開する戦略です。
米国が、ファーウェイ副会長に逮捕状を出したのは、容疑が固まり次第ファーウェイへ処分を下すという意味です。
その具体的な内容は、先にZTE(中興通訊)へ下した米国からのソフトや半導体輸出禁止措置(その後に撤回し罰金15億ドル)になれば、ファーウェイの「5G」は製品化不可能と見られています。
中国は、「中国製造2025」の核としてファーウェイを位置づけています。
前述のような米国の戦略によれば、主要部品の輸出は阻止され、製品の販売でも多大のダメージを受けます。
こうして、ファーウェイは企業としての活動が麻痺状態を迎えるのです。米国は、ファーウェイをそこまで追い詰める決意です。
結局、「中国製造2025」はすでに、2025年までの実現が不可能になったのです。
中国が、「無駄な抵抗」を止めて、米国との話し合いに入った背景は、以上の諸点が障害となっていることを挙げられます。
米中貿易戦争は最早、「勝負あった」というのが実感なのです。
本格化する経済危機の到来
中国が抱えている経済的な問題は、対米貿易戦争だけではありません。
不動産バブルを放置していたことによる過剰債務問題です。
対GDP比で260%以上という債務を抱えて、信用機構は不良債権によって窒息状態に追い込まれています。
金融機関は、信用不安で新規融資が不可能な状態なのです。
この結果、マネーサプライ(M2)は、10月、11月ともに前年同月比8.0%増という低増加率です。
名目GDP成長率を下回っている異常な状態です。普通の経済ではあり得ない現象です。
過剰債務は、過剰投資につながっています。
中国経済の生産性が落ちているので、借りた資金を返済できず、それが根雪のように溜まっているからです。
過剰債務=過剰投資です。
これが、「限界資本係数」を押上げています。
つまり、GDP1単位を産み出すために、他国経済よりも多く(2倍)の資本を投下しなければならない「欠陥経済」に変質したのです。次の例を挙げましょう。
中国農業では、現実に農薬を他国よりも2倍多く散布しています。
これまでの過剰な農薬散布が土壌を悪化させており、これが新たな病虫害を発生させているのです。
そこでまた、農薬を増やすという悪循環の繰り返しです。中国経済もこれと同じことの繰り返しです。
中国経済が、過剰債務=過剰投資に陥ったことで、国際競争力は低下しています。
つまり、効率性の劣る中国経済の産み出す工業製品は、輸出競争力の低下に見舞われています。
これが、貿易収支の黒字を減らしているのです。
2015年の5939億ドルをピークに減少し、17年には4195億ドルに低下しています。
最大の問題は、これによって経常収支の赤字問題が浮上することです。
今年の経常収支の黒字は300億ドル以下と見られます。来年は確実に赤字です。
中国の経常収支が赤字になれば、大変なニュースバリューを持ちます。
対外直接投資は、経常黒字が「元金」になります。
経常赤字では、中国の対外投資に大きな制約がかかるのです。
華々しく登場した「一帯一路」融資の元手が手薄になる事態で、中国はどう振る舞うのでしょう。
去年も5000億ドルの債務を増やして、対外直接投資を行ないました。これ以上の債務増加は望ましくありません。
中国政府が、「ニーハオ」と言って日本へ接近した理由は、すべて経常収支問題に絡んでいます。
中国は、財政的な弱小国を「債務漬け」して国際的な批判をあびました。
中国は、担保に目がくらんでいますが、貸し付けた資金は回収できません。
こういう未回収資金が、中国の外貨資金バランスを悪化させているはずです。
中国は本来、「債務漬け」にするほどの資金的ゆとりがない国です。それがいま、馬脚を現したと言うほかありません。
経常赤字で為替・株価大揺れ
中国の経常収支が赤字になれば、人民元相場に大きな影響を与えます。
中国人民銀行は1ドル=7元を維持したいとしていますが、経常赤字が回復せずに、かなりの期間にわたり継続するとなれば、7元を割り込むことは必至でしょう。
外貨準備高3兆ドル台を取り崩すのは当然ですが、ここで投機筋の「人民元売り」が加わります。
株価は暴落します。2015年の為替と株価の急落劇再現です。
来年の中国経済は、米中貿易戦争がなくても劇的な変化に見舞われる条件下に差し掛かっています。
従来の野放図な経済政策の総決算の段階を迎えたからです。
私は、2010年5月からブログを始めました。
それ以後、休みなく毎日ブログを書き続け、中国経済と向き合っています。
日本のバブル経済崩壊と重ね合わせながら、中国経済の「栄枯盛衰」を眺めてきました。
バブル破綻という最終局面にあることは間違いありません。
仮に、米中の合意が成立しなければ、中国経済は最悪事態を迎えます。
習近平氏が、それを見通せずに「意地」を張れば、習氏自身の権力の座も危うくなると見るほかありません。