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全世代型社会保障改革の狙いは何か

2019-04-05 18:43:56 | 日記

全世代型社会保障改革の狙いは何か    

2018年10月26日

社会保障負担と受給の世代間格差は当然

10月24日召集の臨時国会で、安倍首相は所信表明演説を行い、当面の政策課題について語った。

その一つが、従来から政府が提示してきた「全世代型社会保障改革」だ。

首相は、「子どもから現役世代、お年寄りまで、すべての世代が安心できる社会保障制度へと、今後3年間かけて改革を進める」と説明している。

さらに具体策として、

生涯現役社会を目指した65歳以上への継続雇用の引き上げ、

来年10月からの幼児教育無償化、

再来年4月から一部高等教育の無償化を挙げている。

これら以外にも、年金の受給開始年齢の選択範囲を70歳超に伸ばすこと、

社会人になった後にあらためて学び直すリカレント教育の支援なども、全世代型社会保障改革の一環として、政府は挙げてきた。

しかし、社会保障制度の本来の機能を考えた際に、全世代型社会保障改革という言葉は、その意味が明確ではなく、

また現在の社会保障制度が抱える本質的な問題を覆い隠してしまっている面があるのではないかと感じる。

社会保障制度は、高齢、病気、失業などによって生活の維持が困難になる場合に、国民の生活を支えるセーフティーネットの役割を果たしている。

個人が、こうした事態に備えて自ら資金を積み立てる、あるいは独自に保険に加入するように、

社会全体がそうした機能を担っているのが社会保障制度だ。

その際に、年金制度が典型的で医療保険制度でもそうした傾向は強いが、

現役世代、あるいは若年世代が多くの保険料を負担し、退職後や高年齢時にサービスを受給する傾向が強い。

つまり、負担と受給のバランスが世代によって異なること自体は、

社会保障制度の機能を考えれば当然のことであり、この点が問題視されることはない。

全世代型社会保障改革にバラマキの懸念も

ところで、全世代型社会保障改革と聞くと、高齢者に偏る社会保障サービスの受給を、全世代へと広げていくというイメージがある。

ここには、バラマキ政策に繋がるリスクも感じられる。

特に、政府が全世代型社会保障改革の一環として挙げている高等教育の無償化やリカレント教育支援は、社会保障政策とは言えないだろう。

これらは、経済の生産性向上などの観点から、その実効性をしっかりと検討しつつ実施すべき、教育改革の一環と位置付けるべきではないか。

現在の社会保障制度の主な問題は、世代間でのサービスの格差よりも世代間での負担の不公平感にある。

社会保障サービスが、現役世代の保険料支払いや現役世代が負担する傾向が強い税金によって賄われる一方、

自身が高齢化し退職世代になった際には、十分なサービスを受けられないのではないか、という不公平感が現役世代には強くある。

消費税率の引き上げには負担の世代間公正化の要素

これへの対応としては、退職世代に支払う社会保障支出を抑制するとともに、退職世代の負担も相応に高める必要があるだろう。

社会保障制度の持続性を高めるためには、そうした方向での改革を進めていくことは避けられない。

全世代型社会保障改革という名称には、そうした痛みを伴う改革のイメージを少しでも良くしたい、という意図も感じられる。

さらに、現役世代の当座の不満を和らげるため、

全世代型社会保障改革と銘打ち、現役世代や若年層にもより恩恵が及ぶことをアピールする狙いもあるのではないか。

しかし、本当に必要な社会保障関連支出は当然ながら別としても、

バラマキ的な支出を安易に増やす結果となれば、財政環境は一段と悪化し、社会保障制度の安定性、持続性も低下してしまう。

政府は、退職世代に支払う社会保障支出を抑制するとともに、

退職世代の負担も相応に高めることの必要性を、

逃げることなくストレートに国民に説明すべきではないか。

ところで、退職世代の相対的な負担を高める手段として長らく議論されてきたのが、幅広い世代の人が負担する消費税の税率引き上げだ。

政府による消費税率引き上げの議論は、その経済への悪影響に集中してしまっている感が強い。

世代間の負担不公平感への対応を進めつつ、財政の健全化や社会保障制度の持続性を高めるために必要な措置であるという、

消費税率引き上げの本来の重要性を、政府は改めて国民に説明し、それを思い起こさせることが必要だ。

Writer’s Profile

木内登英Takahide Kiuchi

金融ITイノベーション事業本部 エグゼクティブ・エコノミスト 専門:内外経済・金融


韓国、来年から人口減に 2065年、46%が高齢者 統計庁推計、日本抜き先進国首位

2019-04-05 18:21:14 | 日記

韓国、来年から人口減に 2065年、46%が高齢者 統計庁推計、日本抜き先進国首位

2019/3/29付
 
情報元
日本経済新聞 朝刊

【ソウル=鈴木壮太郎】

韓国統計庁は28日、将来人口推計を発表した。

総人口は早ければ2019年の5165万人をピークに減少に転じる。

人口に占める65歳以上の高齢者の割合も65年に46%に達し、高齢化では日本を抜いて経済協力開発機構(OECD)加盟の先進国のなかで首位になる。

急速な少子高齢化は韓国経済にも影響を与えそうだ。

韓国は出生率の低下に歯止めがかからない(ソウルの地下鉄の駅)=AP

韓国は出生率の低下に歯止めがかからない(ソウルの地下鉄の駅)=AP

韓国は5年ごとに人口推計を発表している。

前回発表は16年で、次回は21年に予定していた。

ただ2月末に発表した18年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子供の数)が想定以上に低い0.98となり、

初めて1を下回って世界で最低水準に落ち込んだことから、人口を推計し直して発表を前倒しした。

出生率と寿命を低く見積もる「低位シナリオ」の場合、16年の発表では23年が人口のピークで、その後減りはじめると予想していた。

今回の発表では人口減が4年早く訪れる。

総人口は67年に3365万人まで減り、1972年の水準になる。

高齢化も急速に進む。

2017年時点の65歳以上の人口比は14%。国連の人口推計(15年)と比べると日本のほぼ半分の水準にとどまる。

OECD加盟国の中でも低い方だが、65年にはほぼ2人に1人が65歳以上となる見通しだ。

生産年齢人口(15~64歳)も17年は73%と、OECD加盟国のなかで最高だが、少子高齢化によって65年は46%(中位シナリオ)と、日本(51%)を抜いて最低になる。

韓国で少子高齢化が急速に進んでいるのは、子どもを産み育てるのが難しい社会になっていることがある。

15~29歳の青年失業率は18年に9.5%に達し、若者の就職難は社会問題化している。

経済力の問題から結婚しない人も増え、20~44歳の未婚率は男性が58%、女性は48%(15年)に達した。

結婚しても教育費負担が重く、出産をためらう夫婦が多い。

急速な少子高齢化は経済の活力低下につながる。

現在の潜在成長率は2.7~2.8%だが、現代経済研究院の洪俊標(ホン・ジュンピョ)研究委員は「30年以降は潜在成長率が1%台まで下がる可能性がある」と予測する。

国内では「通貨危機以上の危機だ」(韓国大手紙の朝鮮日報)と警戒する声が強まっている。

韓国政府は少子高齢化対策に16~18年の3年間で117兆ウォン(約11兆円)をつぎ込んだが、

施策が総花的で即効性がなく、出生率は目標の1.5に上向くどころか低下に歯止めがかからなかった。

文在寅(ムン・ジェイン)政権は昨年12月「低出産・高齢社会政策ロードマップ」を発表。

出産・養育費支援の増額や小学校入学までの医療費無料化、

育児休暇時の給与引き上げなど、ニーズの高い施策に財源を集中配分し、出生率の引き上げに腐心する。

ただ急激な出生率の回復は難しいのが現実だ。

延世大の成太胤(ソン・テユン)教授は「このままでは年金制度の維持も難しい。

 

洪氏も「潜在成長率を高めるには女性が働きやすい環境づくりのほか、

移民政策の緩和に加え、規制緩和や新産業の創出などで投資をしやすい環境づくりをさらに進める必要がある」と、

産業政策との連携が重要だと強調する。

 


就業者の4人に1人は国から給与を支給される国・韓国

2019-04-05 13:03:05 | 日記

 朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

    【コラム】就業者の4人に1人は国から給与を支給される国・韓国

スタートアップ業界を描いた米国のコメディードラマ「シリコンバレー」には、雇用に関する興味深いエピソードが登場する。

あるIT系大企業のCEOがある開発途上国で安価な生産拠点を探していて、米国のとある小都市に目を向ける。その都市ではビデオ機器の工場が閉鎖されたことで危機に直面していた。

工場建設を懇願する市長に対し、CEOは到底受け入れられないな要求事項を並べ立て、「全て受け入れられなければ、工場は建てられない」と図々しく振る舞った。

市長が公益サービス予算を引き締めて、どうにか要求に応じたが、ある日工場に積み上がった廃棄物から火が出た。

予算削減でごみ収集がまひしたためだった。

消防予算も削減してしまっていたため、消火しようにも出動できる消防官が残っていなかった。

工場は全焼し、唯一燃え残ったレアアースも激怒した住民が暴徒と化して奪っていった。

警察も大量解雇で略奪を防ぐ要員がいなかった。結局工場は完全に崩壊してしまったという内容だ。

  このエピソードは「世の中を良くする」と叫ぶグローバル企業がどれだけ貪欲かを風刺したものだが、一方では開発途上国に雇用を奪われた先進国がどれほど雇用創出を迫られているかを描いている。

ドラマに登場する米国の小都市ほどではないにせよ、各国政府は雇用創出のために企業経営者を優遇し、税金を下げ、補助金を出し、規制をなくし、道路や送電塔を整備し、労組や住民の説得に努力する。

  長期化する雇用低迷について、青瓦台(韓国大統領府)の尹琮源(ユン・ジョンウォン)経済首席秘書官は「民間雇用中心の雇用増加が求められる」と述べた。

しかし、他国がやっていることを一つもやらないでおいて、「民間雇用」と叫び続けたところで雇用が生まれるはずはない。

それどころか、韓国政府はどの国もやっていないことにばかり没頭している。国が直接月給を払うというやり方だ。

文在寅(ムン・ジェイン)政権が発足して以降、場当たり的な雇用政策が乱発され、国から月給を受け取る国民は急速に増加している。

まず、公務員と政府系企業など公共部門で働く人は2017年末に241万人いる。

民間企業の勤労者250万人も雇用安定資金を通じ、給与の一部を国から受け取っている。

中小企業に正社員として就職した若者の資産形成を支援するという名目の「青年ネイルチェウム共済」に加入した22万人も同様だ。

企業が3人を雇用すれば、1人分の給与を政府が負担するという青年追加雇用奨励金の支給対象も10万人いる。

弱者層の雇用事業で賃金を受け取る人も96万人に達する。

私立学校の教員や幼稚園教員約10万人も国から給与の全額または一部を受け取っている。

全て合計すると、約630万人が国が支払う給与に依存して延命していることになる。

就業者全体2600万人の4人に1人に相当する。「政府が最大の雇用主になるべきだ」とする大統領の公約が現実になった。

  ドラマの中で米国の小都市の市長は工場誘致のためにあらゆる無理をしたが、失業者を直接雇用することは考えられなかった。

やってはならないことだという最低限の分別があったからだ。

政府が給与を支払う雇用は持続不能であり、納税者の負担を増やし、労働市場を歪め、バランスに反し、経済成長にも役に立たない。

そんな最低限の分別すらない現政権は、崩壊する民間雇用を隠すため、高齢者の公共部門での雇用を増やしておいて、「就業者数が20万人増えて幸いだ」などと平然と言ってのける。

じきに政府財政が底をつき、政府が給与を負担できなくなれば、ドラマの中の小都市で起きたよりもひどい出来事が韓国で現実となるはずだ。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版


日韓経済力比較 差は縮まりつつあるが逆転の可能性は? 

2019-04-05 12:00:50 | 日記

日韓経済力比較 差は縮まりつつあるが逆転の可能性は? 

元徴用工への賠償命令判決にレーダー照射問題と、日韓関係に改善の兆しは見えない。

いま両国に求められているのは、経済力から軍事力、学力からスポーツまで、感情論が一切排除されたデータに基づき、お互いの現状を認識し合うことである。

 ここでは経済力を見てみる。

名目GDPは総人口数の多い日本が韓国を上回るのは当然だが、国民一人当たりの同数値で比べても日本は約4万ドルで、韓国は約3万ドル。世帯年収は日本が429万円で、韓国は357万円と、現状は日本が上回っている。

 一方で、IMF(国際通貨基金)が予測する2019年の経済成長率は、日本が1.1%であるのに対し、韓国は2.6%とその差は徐々に詰まりつつある。

今後、逆転の可能性はあるのか。元韓国大使で評論家の武藤正敏氏はこう見る。

「サムスンをはじめとする韓国の財閥は、オーナーによるカリスマ経営や徹底した競争主義で世界に通用する急成長を遂げ、それが韓国成長の原動力となってきた。

ただし、文在寅大統領は『財閥解体』を掲げており、サムスンも2018年10~12月期は前年同期比29%減益となるなど落ち込んでいる。

このままでは成長に歯止めがかかるのではないか」

 1月31日、韓国銀行は2018年の韓国の一人当たりのGNI(国民所得)が3万1000ドルに達したと発表。

「人口5000万人以上の国で3万ドルを超えたのは世界で7番目」とのコメントを添えたが、この数字には韓国経済の実情も垣間見える。

 

政治・経済・軍事 日韓徹底比較

 

 韓国の一人当たりのGNIが2万ドルを超えたのは2006年。そこから3万ドル台に乗せるまで実に12年かかった。2万ドルから3万ドル到達への期間は、他国の場合は平均9年。

日本は5年で達成している。

 韓国の経済成長の“陰り”がうかがえるのだ。

※週刊ポスト2019年2月15・22日号

 


「日本越え」韓国経済の落とし穴

2019-04-05 11:25:00 | 日記

Newsweek

2019年4月3日(水)17時00分

武田 淳(伊藤忠総研チーフエコノミスト)
 

<韓国経済が減速している。これまでじわじわ成長を続け日本に迫ってきたが、長年の「持病」が足を引っ張る。政治的なケンカが続けば日韓はど

ちらも得をしない>

韓国経済の2018年の成長率は、前年の3.1%増から2.7%増へ減速した。
 
この数字は2年ぶりとなる3%割れのみならず、2012年に記録した2.3%増以来の低成長率だったことから、景気の停滞感を強く感じさせた。
 
リーマン・ショック後の韓国経済は概ね3%前後の成長を続けてきたため、3%を大きく割り込む成長率に物足りなさを感じる向きは少なくない。 

成長減速の主因は、サムスンなど半導体業界で次世代製品向けの投資が一巡したことに加え、2018年2月に開催された平昌冬季五輪の関連需要が剥落したことにある。

さらに、韓国経済の柱である輸出が主に中国向けを中心に、財別では主に半導体関連で2018年終盤に落ち込んだため、国内投資の減少をカバーできなかった。

接近する日韓の経済力

ただ、それでも1%程度の成長ペースを巡航速度とする日本と比べれば、韓国の成長率ははるか高い。

日韓の成長率の違いは約2%ポイントあり、その分だけ両国の経済規模は接近することになる。

また、米ドルベースで2012年以降の日本円と韓国ウォンの動きを見ると、日本円はドルに対して約4割も下落したが、ウォンは対ドルでほぼ横ばい推移だった。

つまり、為替変動だけで両国の経済力は2012年以降の6年間で4割も縮小したという見方になる。

 

 こうした成長率や為替相場の動きを反映して、経済水準を示す代表的な指標である1人当たりのGDPは、韓国で2012年の2万4000ドルから2018年には3万2000ドルまで上昇した一方で、日本は4万8000ドル台から4万ドルへ低下した。

つまり、2012年に2倍の開きがあった両国の経済水準は、その後の円安進行もあって急速に接近し、その差は2018年に25%まで縮まっているわけである。

韓国「日本越え」シナリオの現実味

今後も日本の1%成長、韓国の3%成長が続けば、10年余りで両国の経済水準(1人当たりGDP)に差がなくなる計算となり、これに円安ウォン高が加われば、数年で韓国が日本を追い越すというシナリオも現実味を帯びてくる。

最近の韓国は、北朝鮮に対する独自のアプローチで明らかとなったように、

日本バッシングならぬ「日本パッシング(無視)」の傾向が見られるという指摘もあるが、

その背景には、こうした経済面における日本の優位性の低下、少なくとも韓国側から見れば永年の目標であった日本へのキャッチアップを達成した感があるのかもしれない。

輸出の国別シェアでも、日本の存在感の低下が鮮明である。

韓国の輸出に占める日本のシェアは2000年時点で11.9%だった。

米国の21.8%、EUの14.3%に次ぐ規模であり、ASEAN主要6か国合計の11.5%や中国の10.7%を上回っていた。

ところが、2018年に日本は6.1%へ半減、欧米もシェアを落としており、代わって中国が26.1%へ、ASEANが14.9%へシェアを伸ばしている。

 このように、少なくとも販売先の依存度という観点で日本の地位はかなり低下し、一方で中国の存在が圧倒的となっている。
 
しかも、経済水準で見れば日本は手の届くところまで接近している。
 
こうした経済的な関係は、外交面において各国との距離感を決める需要な要素となることは言うまでもない。

韓国経済の解決されない課題とは

それでは、本当に韓国は経済水準で日本を抜き去り、シンガポールのような都市国家を除いて、アジアで最も経済的に豊かな国となるのかと言えば、そう簡単な話ではないだろう。

確かに、足元で減速した韓国経済は、その主因である半導体分野の在庫調整が今年半ばにも終了、

世界経済がAIやIoT、自動運転などITを牽引役として成長する中で、新しい通信サービス5Gの関連需要拡大も期待できるため、半導体需要の復調とともに遅くとも来年には回復が見込まれている。

 

 しかし、中長期的な視点で見れば、韓国経済は依然としてサムスンやLG、現代、ロッテなどの大企業依存構造であり、産業の裾野を形成する中小企業が脆弱な状態は変わっていない。

その原因の一つに中小企業の人材難があり、過度に大企業に偏重する新卒者の就職希望がある。

全体の失業率が4%前後で推移する中で、財閥系大企業という狭き門に集中する若年層の失業率が10%に達していることが、その証左である。

文在寅(ムン・ジェイン)政権は、「所得主導成長」という看板を掲げ、その柱に最低賃金の大幅引き上げを据えた。

この政策は、中小企業と大企業の賃金格差を縮小し、中小企業の人材難という課題の解決に一役買う可能性を秘めていたのかもしれないが、現実はコスト上昇を嫌った中小企業の雇用削減や非正規労働者へのシフトにつながっている。

また、高い所得水準を維持するためには、グローバル競争の中を生き抜く高い技術力が幅広い分野で求められるが、

対日・対欧貿易赤字が示す通り、現状において韓国は、主力産業である半導体や家電、自動車など多くの分野で、競争力維持のため高品質な生産設備や部品、原材料を日本や欧州からの輸入に依存している。

具体的な数字を示すと、韓国は2018年、697億ドルの貿易黒字を稼ぎ、国・地域別では中国(含む香港)996億ドル、ASEAN主要国406億ドル、米国139億ドルが黒字の上位国に並んだ一方で、

産油国の多い中東は645億ドル、鉄鉱石の産地である豪州を含む大洋州も88億ドルの赤字であり、日本も241億ドル、EUも46億ドルの赤字であった。

 そのため、中長期的に見れば韓国は技術面で先行する日米欧を追いかけてはいるが、工業国として急速に力をつける中国に追い上げられ、成長余地は狭まる一方である。
 
グローバルな競争力が低下すれば、ウォン相場安定の源泉である貿易収支の黒字幅は縮小、場合によっては赤字に転じる可能性すらある。
 
いかにして今後も技術力、製品力を高めていくかが持続的な成長への大きな課題であり、その道のりはこれまでのように他の先進国によって踏み固められた平坦なものではない。

日韓の「ケンカ」で得するのは誰か

さらに言えば今後、アジア各国が米中2大国の狭間でそれぞれの立ち位置を模索する中、高い中国依存の経済構造は必ずしもバランスの良いものではなく、既に取り組みつつある脱中国依存の動きを加速させる必要があろう。

そのうえで、米中と適度な距離感を保ちつつ自国の利益を確保するため、自らの存在感を両国に十分認識させる必要がある。

しかしながら、それを単独で実現することは、特に中国の経済成長によって徐々に困難となっていくであろう。

 

 前述のような日本と韓国の貿易関係を見れば、両国が相互依存の下で経済成長を続けていることは明らかで、

米中が軸となる新たなグローバル市場において一定の存在感を維持するために、経済的な連携は一段と重要となるはずである。

政治的な対立によって日韓両国が競争力を削がれることで、誰が利益を得るのか――。

経済的な観点から、日韓双方に冷静かつ合理的な判断が求められるということだろう。