韓国・現代自動車の不振、部品産業を直撃 前期営業47%減益、大手の破綻相次ぐ
- 2019/1/28 20:30
- 情報元
- 日本経済新聞 電子版
韓国の現代自動車の不振が同国の車産業を直撃している。
2018年12月通期の連結営業利益は主力の対米輸出の伸び悩みなどで、前の期より47%減った。
現代自が直接取引する地元の1次部品メーカー(ティア1)は同社への依存度が8割と高い。
18年には、現代自のティア1で08年の世界金融危機後、初めて複数の経営破綻が起きた。
部品大手の衰退は韓国の車産業の復活を厳しくしかねない。
現代自が24日発表した18年12月通期の連結決算は、営業利益が2兆4220億ウォン(約2370億円)、売上高が1%増の97兆ウォン。
18年10~12月期の営業利益は5四半期連続で1兆ウォンを下回り、同社幹部は「販売奨励金や安全対策費用がかさんだ」と肩を落とした。
現代自グループは韓国で生産する完成車の6割程度を欧米や中東などに輸出する。
18年は米国や中東の販売低迷に伴い、韓国の完成車工場や部品子会社の採算が悪化したもようだ。
通期の減益は6年連続だ。現代自は傘下の起亜自動車と合わせ、お膝元の韓国市場で7割のシェアを握る。
その収益力の低下は現代自グループと取引する韓国の部品メーカーに影を落とし、自動車産業の土台を揺るがしている。
韓国は輸出の約1割を同産業が占める。
現代自が主力工場を構える韓国東南部・蔚山(ウルサン)に本社を置くセグァン精密は18年12月下旬、蔚山地裁に法定管理(日本の会社更生法に相当)を申請した。
ハンドルなど操舵(そうだ)装置を主力とする1次部品メーカーだが、近年は資金繰りが悪化していた。
同じく現代自の1次部品メーカーで装飾部品をてがけるクムムン産業、駆動部品を手がけるダイナメックも、18年11月までに相次ぎ裁判所の法定管理に入った。
取引銀行の管理下での再建を目指したが、債権者との調整がつかず、断念した。
また、放熱部品のリハンは銀行管理下で再建を目指すことになった。
現代自グループは独立系の部品メーカーと資本関係を持つ例が少ないが、ダイナメックは起亜自の数少ない出資先の一社だった。
韓国の車部品メーカーに吹く逆風の強さを示している。
韓国メディアによると、18年に中国企業の傘下に入った韓国タイヤ2位の錦湖(クムホ)タイヤを除くと、現代自の1次部品メーカーの破綻は、08年のリーマン・ショックのあおりで自動車需要が世界的に急減した時期以降で初めて。
韓国紙・毎日経済新聞は一連の経営破綻について「韓国自動車産業の危機を反映するとの受け止めが多い」と指摘する。
韓国には1次部品メーカーが約850社、2次・3次の取引先は約8000社あるとされる。
韓国政府系シンクタンクの韓国産業研究院は、1次部品メーカーは売上高の8割を現代自グループに依存していると分析する。
その上で、現代自が優位な立場を背景に、取引先にコスト削減を繰り返し求めてきたことが競争力の低下の原因だと強調する。
日本の自動車メーカーは取引先と協力して技術開発やコスト削減に成功した場合、成果を分け合う慣習がある。
しかし、韓国では分け合ったりせず、完成車メーカーが技術を奪ったり、海外の完成車メーカーと取引するのを制限したりする。
トヨタ自動車が「他流試合」と称して部品会社にトヨタ以外の完成車メーカーとの取引を奨励し、実力の底上げを図ったのとは対照的だ。
(ソウル=山田健一)