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2022年までに日本経済は破綻する。アベノミクス成功でも終焉でも未来は同じ
=高島康司
2022年までに日本経済が苦境に立つ可能性について解説したい。
アベノミクスの終焉もしくは少しの変動があれば、途端に深刻な不況に突入しかねない危うさがある。(『未来を見る!ヤスの備忘録連動メルマガ』高島康司)
※本記事は、未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 2018年9月7日号の一部抜粋です。
崩壊のリミットは近い?やがて来るインフレが国民を突き落とす
アベノミクス終焉で日本経済は転落する
今回はアベノミクスの終焉で、2022年までに日本経済が苦境に立つ可能性について解説したい。
当メルマガでは前回、見かけの数値はよいものの、アベノミクス下の日本経済は前例のない異次元的な政策によって支えられ、好景気を演出しているにすぎないことを詳しく書いた。
とても持続可能な成長軌道に乗っているとはいえない状態だ。
そのため、アベノミクスが終わるか、またはちょっとした変動でもあれば、途端に深刻な不況に突入しかねない危うさがある。
「長期金利の上昇」が暴落スイッチに
景気を失速させるスイッチになると考えられるもっとも重要なものが、長期金利の上昇である。
いまは日銀による国債の膨大な買いがあるので、金利は非常に低く抑えられている。
簡単に説明すると、「国債の市場価格が上がると長期金利は下がり、逆に市場価格が下がると長期金利は上がる」という関係にある。
日銀の膨大な買いが入るなど国債に対する需要が大きければ、国債の市場価格は額面価格を越えて上昇し、反対に需要がなければ逆の動きをする。そして金利が低く抑えられている。
この関係は、長期金利が何らかの原因で先に上がった場合も同様である。
すぐに国債の市場価格に反映し、国債は下落する。
長期金利はとても重要である。
どの国でも住宅ローンや銀行の企業への貸出金利などの長期のローンの金利は、すべてこの長期金利を基準にして決定されるからだ。
これは経済の動きに対して大きな影響力をもつ。
これまでは長期の不況で金利が低く抑えられてきたが、企業の設備投資が停滞しているときに長期金利が上昇してしまうとどうなるだろうか。
貸し出し金利は上昇し、企業は銀行から資金を借りにくくなるし、さらに住宅ローンの金利なども上がるため、景気はいっそう悪化してしまうのだ。
緊縮財政がもたらすゾンビ企業「倒産」の連鎖
さらに長期金利上昇の影響が深刻なのは、政府の財政である。
いまの超低金利状態でも、政府の国債利払い費は年間10兆円にもなる。
もし金利が上昇するようなことがあれば、国債の利払い費は増加し、財政を圧迫する。
これを捻出する必要から政府は、厳しい緊縮財政の実施を迫られる。
このように、国債の市場価格の変動とともに長期金利も変動するので、経済に思っても見ない悪影響が出てしまう。
アベノミクスが継続するにせよ、またしないにせよ、この長期金利の上昇が景気失速の原因となる可能性が高いのだ。
特にいまは、長期間続いているゼロ金利政策によって、なんとか経営を継続できているゾンビ企業が非常に多い。
こうした企業は金利の上昇による利払い費の支払いに耐えられなくなり、連鎖的に倒産する可能性が高くなってくる。
「アベノミクスの成功」が金利上昇の引き金に
このように、深刻な影響をもたらす長期金利の上昇だが、何が原因で上昇するのだろうか?
もちろん、市場における日本国債の信任がなくなり、国債の投げ売りなどという状況になれば、国債は暴落し金利は上昇するだろう。
しかし、そのような極端な状況でなくても、金利の上昇は起こり得る。
周知のようにアベノミクスの目標のひとつは、2%のインフレ率の達成である。
インフレ率が上昇すると、賃金は物価の上昇に出遅れるので、その間に企業の利益は増大する。
すると企業の投資が活発になり、好景気を持続させる。またインフレ率の上昇は、モノが安いうちに買うという消費行動を刺激するので、消費が活発となり景気を上昇させる。
アベノミクスはこれの実現を目標にした。
ところが、インフレ率が目標の2%となると、金利も上昇して2%を超えざるを得なくなる。
なぜなら、インフレ率が2%のとき、銀行がこれを下回る金利で営業していると、銀行は損をするからである。
そして、金利が上昇すると、これと逆比例して国債は下落する。
ちなみに、金利が1%上昇すると、国債の価値は67兆円も目減りしてしまう。
さらにこれと連動して、政府の国債利払い費も増大する。
金利1%上昇で約3兆円ほど増大し、政府の財政を逼迫させる。
これは、アベノミクスの成功が金利を上昇させ、景気を失速させるという皮肉なシナリオだ。
現在、徐々にインフレ率は上昇している。このようなことになる可能性は決して否定できない。
インフレ目標達成で日銀が債務超過に…
これとは逆に、国債の価格が下落して金利が高騰するシナリオも考えられる。
それは、日銀が債務超過になる可能性である。
周知のように日銀は、アベノミクスの異次元的金融政策で毎年80兆円に上る国債を大量に買っている。
そのための資金には日銀券の追加発行で対応している。
日銀券の流通量の増大が円安の理由だ。
しかし日銀のバランスシートでは、日銀券の発行は日銀の債務として計上される。
これは、日銀券が金の現物と交換可能であった金本位制の時代の名残である。
その当時、日銀が保管している金は日銀券を保有するものに所有権があった。
日銀券はいわば債務証書のようなものだった。
金本位制が廃止された現在でもこの伝統が引き継がれている。
2018年6月の時点で、日銀の資産が約427兆円に対し、債務は約352兆円となっており、75兆円程度しか資産が債務を上回っていない。
相当にタイトな状況になっている。
もちろん、これですぐに日銀が債務超過に陥るわけではない。
だが、2%のインフレ目標が実現して金利が上昇すると、債務超過になる可能性が出てくるのだ。
それというのも、日銀の債務の大半は、日銀券と民間銀行が預けている当座預金だからだ。
いま新しい当座預金はマイナス金利になっているが、既存の預金には1%程度の金利がつく。
他方で日銀は、保有する資産としての国債があるので、政府からの利払いがある。これは日銀の収入になる。
しかし、インフレ率の上昇で金利が上がるか、またはアベノミクスの出口戦略で金利が上昇すると、
日銀が当座預金に支払う利子が、政府から受け取る国債の利払い費を上回り、逆ザヤになる可能性が出てくるのだ。
すると、ただでさえタイトな日銀のバランスシートは悪化し、債務超過にもなる。
そのような状態になると、日銀法では政府が日銀を資金的に支援する義務がある。
すると、これまでのように日銀が国債を買って政府の経済政策を支えることはできなくなる。
もちろんこうなると、これで国債の暴落は回避できなくなる。
このような状態は考えられないかもしれない。しかし、この予兆がすでに出ていると見ることができる。
すでに出てきている兆候
予兆のひとつは、国債の下落である。
8月2日、上昇が続いている長期金利は、一時0.145%となり、1年半ぶりの高値になった。
また、8月4日、長期金利の指標となる「10年モノの新発国債」は、値がつかず取引が成立しなかった。
売買が成立しないのは今年になって6回目だ。
アベノミクスが実施される前の2001年から2013年には、売買の不成立は1日もなかった。
2017年も2日だけだ。半年間で6回もあるのは、やはり異例である。
値がつかないのは、国債の主要な買い手である銀行が、将来の下落を警戒して買うのを手控えたからだ。
長期金利が上昇すると何が起こるのか?
もしこのような状況が繰り返し発生すると、予想を越えた国債の下落になるかもしれない。
それによる長期金利の上昇から、景気失速の引き金は確実に引かれることになるはずだ。では、実際にはどのような状況になるのだろうか?
これは比較的に分かりやすい。
繰り返しになるが、まず長期金利の急騰で、これまでゼロ金利でなんとか経営をやりくりしてきたいわゆるゾンビ企業が多数倒産する。
すると、こうした企業の不良債権の増大で、銀行は経営不振に陥る。
銀行は、破綻を回避し自己資本を守る必要から、貸し渋りと貸しはがしが横行する。
これがさらに深刻な不況をもたらす。この過程で不動産バブルの崩壊もある。
これは、バブルが弾けた1991年に起こったことと類似している。
当時は破綻して不良債権の原因となったのは、不動産会社だった。
しかし今回は、もっといろんな業種の企業に及ぶはずだ。
政府に有効な手立てはない…
だが、このような深刻な状況になったとしても、政府は有効な対策を実行できない。
なぜなら、国債の利払い費の急増で政府財政は圧迫され、予算の緊縮を迫られるからだ。
そしてこの過程で、国債の信用の低下で円は売られ、極端な円安になる。これは極端なインフレの原因となり、国民の生活を圧迫する。
これが、比較的に予想しやすいシナリオだ。
では、もっとも気になることは、どの程度のインフレになるのかということだろう。
円が紙くずとなる、ハイパーインフレのような状態になるのだろうか?
どの程度のインフレか?
円が紙くずになるほどのハイパーインフレが起こるかというと、おそらくそうではない。
そのようなハイパーインフレは起こらないと見てよい。
ただ、インフレで物価の上昇が始まると、労働運動などが激化して、それを追いかけるようにして労賃が上昇する。
すると、これは企業の利益を圧迫するので、企業は製品価格をさらに引き上げる。
するとまた労賃は引き上げられるというように、インフレをさらに悪化させる。
これは、物価と労賃が相互に刺激しあってインフレを悪化させる状況だ。
戦後の日本で極端なインフレが発生したのは、敗戦直後の1946年と、オイルショックで狂乱物価になった1974年の2回だ。
前者は敗戦直後という特殊な状況なので、これから起こるインフレの参考にはならない。
後者の1974年時の狂乱物価は参照すべきだろう。このときは、31.4%のインフレ率だった。
今回の国債の暴落と長期金利の上昇によるインフレも、この程度は覚悟しておいた方がよいかもしれない。これはハイパーインフレではないものの、相当な水準のインフレだ。
2019年から2022年の間に起こる?
これがいま警戒されている状況だ。これは金子勝氏などの日本のエコノミストも警告しているが、海外のシンクタンク系のレポートでも、これを警戒するものが次第に多くなっている。
では、本当にこれが起こるとすると、いつなのだろうか?
金子勝氏は、オリンピック以降に景気が減速することがはっきりしているので、それまでに国債や不動産の売りが加速し、2019年にも景気は失速すると予測している。
また他の海外のシンクタンクでは、オリンピック直後の2020年秋から、遅くとも2022年頃には起こるのではないかとしている。