「中国、極めて重大な懸念」 河野防衛相インタビュー
政治
2020/8/15 0:30 (2020/8/15 5:25更新)日本経済新聞 電子版
インタビューに答える河野防衛相(防衛省)
河野太郎防衛相は日本経済新聞のインタビューで、軍事的に台頭する中国について「極めて重大な懸念だ」と述べた。
同国も念頭にミサイル防衛の拡充に臨む考えを示した。日米同盟で抑止力の強化に取り組み、日本の役割拡大を含めて政府内で議論する方針を明らかにした。
防衛省は中国に関して2018~20年版の防衛白書で「わが国を含む地域と国際社会の安全保障上の強い懸念」と記述している。
東シナ海や南シナ海での活発な活動を受け、河野氏は「日本の安全保障に責任を持つ防衛相として、極めて重大な懸念があると言わざるを得ない」と踏み込んだ。
防衛白書は北朝鮮を「わが国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威」と記す。
河野氏は中国を北朝鮮並みの「脅威」と呼ぶかどうかに関し「常に検討しなければならない」と語った。
経済などの要素を念頭に「安保以外の視点を踏まえた議論がある」とも指摘した。
4~8月にかけ、中国公船は沖縄県・尖閣諸島周辺の接続水域内に12年の尖閣国有化後で最長となる連続111日間航行した。
南シナ海では西沙(パラセル)諸島や南沙(スプラトリー)諸島の軍事拠点化を進める。
河野氏は「東シナ海や南シナ海、中印国境や香港も含めて、中国が力を背景とした一方的な現状変更の試みをしていると多くの国が考えている」と説明した。
「そういう試みには高いコストを支払わせるというのが国際社会のコンセンサスだ」と強調した。
ポンペオ米国務長官は7月、対中政策に関する演説で民主主義国による新たな同盟で対抗すべきだと訴えた。
河野氏は「民主主義や法の支配といった共通の価値観に基づく国際秩序を維持すべきだとのコンセンサスができつつある」との認識を示した。
これらの動きから「ポストコロナの世界を分断しようとしている」との見解を表明した。
「民主主義対独裁、自由なネットワークと国家が管理するネットワークのような形で国際秩序を分断する試みに多くの国が懸念を持っている」と分析した。
河野氏は6月、地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の計画停止を発表した。政府は代替策や新しい抑止力のあり方を検討する。9月中にも方向性を示す。
河野氏は抑止力強化の必要性について「新しい高速滑空弾や極超音速ミサイル、大量のミサイルを一気に撃つ飽和攻撃に今の体制で対応できるのか。
確実に対応できるよう検討しないといけない」との見解を示した。
周辺国の反応を懸念する意見には「中国や北朝鮮といった周辺国がミサイルを増強している。周辺国が原因を作っており、そこに了解を求める必要性は全くない」と明言した。
自民党は4日、「相手領域内でも弾道ミサイル等を阻止する能力の保有」を含めた抑止力向上を促す提言をまとめた。相手の拠点をたたく「敵基地攻撃能力」の記述を避けたものの、保有を事実上促す。
日米同盟は米国が打撃力の「矛」、専守防衛の日本は「盾」の役割を担う。
党の提言では、基本的な役割分担は維持しつつ、日本がより主体的に取り組むことで抑止力をさらに向上させる必要があることを提起した。
河野氏は「日米同盟の中で抑止がきちんと機能することが大事だ」と強調した。
日米の役割分担の修正の可能性は「これから国家安全保障会議(NSC)の方で検討する」と言及した。
北朝鮮のミサイルの脅威に関しては「金正恩(キム・ジョンウン)委員長が『この程度なら米国は報復してこない』と誤算をするのが一番危ない」と表明した。
「どの程度でもきちんと対応すると明確なメッセージを送るのが大事だ」と訴えた。
政治
2020/8/15 0:30 (2020/8/15 5:25更新)日本経済新聞 電子版
インタビューに答える河野防衛相(防衛省)
河野太郎防衛相は日本経済新聞のインタビューで、軍事的に台頭する中国について「極めて重大な懸念だ」と述べた。
同国も念頭にミサイル防衛の拡充に臨む考えを示した。日米同盟で抑止力の強化に取り組み、日本の役割拡大を含めて政府内で議論する方針を明らかにした。
防衛省は中国に関して2018~20年版の防衛白書で「わが国を含む地域と国際社会の安全保障上の強い懸念」と記述している。
東シナ海や南シナ海での活発な活動を受け、河野氏は「日本の安全保障に責任を持つ防衛相として、極めて重大な懸念があると言わざるを得ない」と踏み込んだ。
防衛白書は北朝鮮を「わが国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威」と記す。
河野氏は中国を北朝鮮並みの「脅威」と呼ぶかどうかに関し「常に検討しなければならない」と語った。
経済などの要素を念頭に「安保以外の視点を踏まえた議論がある」とも指摘した。
4~8月にかけ、中国公船は沖縄県・尖閣諸島周辺の接続水域内に12年の尖閣国有化後で最長となる連続111日間航行した。
南シナ海では西沙(パラセル)諸島や南沙(スプラトリー)諸島の軍事拠点化を進める。
河野氏は「東シナ海や南シナ海、中印国境や香港も含めて、中国が力を背景とした一方的な現状変更の試みをしていると多くの国が考えている」と説明した。
「そういう試みには高いコストを支払わせるというのが国際社会のコンセンサスだ」と強調した。
ポンペオ米国務長官は7月、対中政策に関する演説で民主主義国による新たな同盟で対抗すべきだと訴えた。
河野氏は「民主主義や法の支配といった共通の価値観に基づく国際秩序を維持すべきだとのコンセンサスができつつある」との認識を示した。
これらの動きから「ポストコロナの世界を分断しようとしている」との見解を表明した。
「民主主義対独裁、自由なネットワークと国家が管理するネットワークのような形で国際秩序を分断する試みに多くの国が懸念を持っている」と分析した。
河野氏は6月、地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の計画停止を発表した。政府は代替策や新しい抑止力のあり方を検討する。9月中にも方向性を示す。
河野氏は抑止力強化の必要性について「新しい高速滑空弾や極超音速ミサイル、大量のミサイルを一気に撃つ飽和攻撃に今の体制で対応できるのか。
確実に対応できるよう検討しないといけない」との見解を示した。
周辺国の反応を懸念する意見には「中国や北朝鮮といった周辺国がミサイルを増強している。周辺国が原因を作っており、そこに了解を求める必要性は全くない」と明言した。
自民党は4日、「相手領域内でも弾道ミサイル等を阻止する能力の保有」を含めた抑止力向上を促す提言をまとめた。相手の拠点をたたく「敵基地攻撃能力」の記述を避けたものの、保有を事実上促す。
日米同盟は米国が打撃力の「矛」、専守防衛の日本は「盾」の役割を担う。
党の提言では、基本的な役割分担は維持しつつ、日本がより主体的に取り組むことで抑止力をさらに向上させる必要があることを提起した。
河野氏は「日米同盟の中で抑止がきちんと機能することが大事だ」と強調した。
日米の役割分担の修正の可能性は「これから国家安全保障会議(NSC)の方で検討する」と言及した。
北朝鮮のミサイルの脅威に関しては「金正恩(キム・ジョンウン)委員長が『この程度なら米国は報復してこない』と誤算をするのが一番危ない」と表明した。
「どの程度でもきちんと対応すると明確なメッセージを送るのが大事だ」と訴えた。