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国基研ろんだん公共投資が牽引する中国のプラス成長 大岩雄次郎(国基研企画委員兼研究員)

2020-08-15 18:41:36 | 日記
国基研ろんだん

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国基研ろんだん公共投資が牽引する中国のプラス成長 大岩雄次郎(国基研企画委員兼研究員)

2020.07.21 (火)印刷する

公共投資が牽引する中国のプラス成長 大岩雄次郎(国基研企画委員兼研究員)
 
中国の国内総生産(GDP)は、新型コロナウイルスの影響で1~3月期は前年同期比6.8%減と統計開始以来、初のマイナス成長に陥ったが、4~6月期は物価変動を除いた実質で同比3.2%増と市場予想を上回る回復を見せた。

なお、年初来の1~6月期で見ると、前年同期より1.6%減で、依然としてマイナス圏で推移している。

足下の急速な回復は、まずは、一定の感染抑制による生産活動が再開できたことによるが、その他の回復要因は、外需と固定資産投資の持ち直しが中心で、リーマン・ショック時のような世界経済の牽引役を期待できるどころか、現在の回復の持続力には不透明感が残る。

民間投資は依然振るわず

生産再開により、製造業を中心とする第2次産業で生産が大きく拡大しており、工業生産は4~6月期の前年同期比4.4%増(1~3月期同8.4%減)と改善した。

しかし、1~6月期の前年同期比では、減少幅は縮小したが、依然1.3%減にとどまった。1~3月期は工場の操業停止など全国で生産停滞したが、4月以降プラスに転じている。

コロナ禍前に注文を受けていた製品の生産再開を含め、工場の稼働率が上がっている。

一方、サービス業を中心とする第3次産業では、生産拡大の動きはみられるものの、昨年10~12月期の水準を下回っており、依然として新型コロナウイルスの影響を克服出来ていない。

公共投資や企業の設備投資の動きを反映した「固定資産投資」は、1~6月期の前年同期比3.1%減(1~3月期同16.1%減)に留まった。

そのうちインフラ投資は前倒しで執行しており、1~6月期の前年同期比2.7%減(1~3月期同19.7%減)であるが、民間投資の1~6月期の前年同期比は7.3%減(1~3月期同18.8%減)と依然振るわない。

また、中国人民銀行は、新型コロナウイルス対策として金融緩和を続けているが、2020年上半期の新規銀行融資は12兆900億元(1兆7300億ドル)で、過去最高を更新した。

その一部が不動産市場に流れ込み、1~6月期の投資額は前年同期比で2%増となり、不動産市場の回復は鮮明になっている。

4~6月期の輸出額も前年同期比0.1%増とわずかながら増勢を示し、6月の輸出額は前年同月比0.5%増と2カ月ぶりに前年を上回ったが、1~6月期の前年同期比では、依然3.0%減である。
東南アジア諸国連合(ASEAN)やアジア新興国及び米国向けの輸出が、比較的堅調な動きを維持している。6月の輸入額も前年比2.7%増と4カ月ぶりに前年を上回る伸びに転じたが、1~6月期の前年同期比では、依然3.3%減である。世界でコロナ感染が拡大するなかでは、輸出の大幅な回復は短期的には難しいだろう。

このように、足下の生産活動の回復は、主要国での経済活動再開を受けた世界経済の回復期待の動きに加え、中国国内でのインフラ関連など公共投資や不動産投資の拡大などに依存しており、公的部門と外需の動向に左右される状況にある。


雇用・所得不安で需要低迷

一方、実質消費支出は、1~6月期の前年同期比9%減と振るわない。

小売売上高も、4~6月期の前年同期比3.9%減(1~3月期同19.0%減)で、6月の小売売上高も依然前年同月比1.8%減と前年を下回る伸びに留まった。昨年は年間で8%増と、成長のけん引役を果たしていただけに、消費の回復の遅れが際立つ。

消費の弱さの背景にあるのが、失業や所得減に対する不安である。

ネット通販など電子商取引の活発化が押し上げ要因となるも、雇用環境の悪化や家計のデフレマインドが消費の足かせとなっている。

6月の都市部失業率(農民工を除く)は5.7%で、直近でピークだった2月(6.2%)からは低下傾向にあるが、流行前の昨年12月(5.2%)を依然上回っている。

今年上半期の実質可処分所得は前年同期比1.3%減少した。今夏は874万人という史上最大規模の大卒者が労働市場に参入する予定であるが、これらの受け皿を充分に確保し得るかは心許ない。

5月22日に開幕し、28日に閉幕した全国人民代表大会では、

2018年半ば頃に強調され始めた「六穏」(雇用、金融、貿易、外資、投資、予期の安定化)に加えて、

2020年4月17 日の中央政治局会議で決まった「六保」(雇用、民生、市場主体、食料・エネルギーの安全、産業チェーン・ サプライチェーンの安定、基層(末端)組織運営の維持)を重視する方針が示され、雇用を最重視する姿勢が強調された。

しかし、雇用吸収力の大きいサービス業の回復の遅れが響いていて雇用拡大は進んでいない。供給に対して需要の改善には、依然、多くの問題が残っている。

簡単ではないV字回復

足下ではプラス成長に転じた中国だが、先行きは予断を許さない。

習近平体制下で、足下の投資の動きは公的部門が中心となる『国進民退』の色合いが強まっている。

新型コロナウイルス対策を名目に、本来、資金需要が逼迫している民間企業に回すべきものが国有企業に集中し、結果、効率性の悪い国有企業の債務膨張やバブル再燃のリスクを高めている。

中長期の不安要素は、各国で高まる“脱中国”の行方である。

コロナ禍で、中国に過度に依存する生産体制への見直しが起きている。

米中の経済冷戦が急速に激化していることに加え、香港や南・東シナ海における中国の強権的姿勢への反発から、欧州連合(EU)との友好関係も悪化しつつある。

コロナ禍からいち早く脱出したと喧伝してきた中国だが、V字回復は簡単ではない。わが国も、短期的な経済の上振れに惑わされず、着眼大局の判断が求められる。



日本の歩み寄りに期待するしかない文政権 支持率は急落も好材料なし

2020-08-15 18:27:11 | 日記
日本の歩み寄りに期待するしかない文政権 支持率は急落も好材料なし

8/15(土) 16:17配信


産経新聞
 
【ソウル=名村隆寛】

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は15日の「光復節」の式典演説で、いわゆる徴用工問題について韓国最高裁が日本企業に賠償を命じた2018年の判決を「尊重する」との従来の姿勢を改めて示した。

立場を変えず、日本に対話を呼びかけ、日本側の妥協以外に解決法がないという韓国側の厳しい事情をさらけ出した形だ。

徴用工問題をめぐっては、韓国最高裁から賠償を命じられた日本製鉄(旧新日鉄住金)が今月、韓国裁判所による同社の韓国内資産差し押さえ命令決定を差し止めるため即時抗告状を提出。

裁判所による資産の売却命令が出れば現金化、原告への支払いに向かう。 

日本政府は「日韓請求権協定(1965年)で個人請求権の問題は解決済み」との立場で、現金化が実行されれば、日韓関係の破綻は避けられない。

韓国側は日本資産が売却された場合の日本の“報復措置”を強く警戒している。

文氏は演説で、対日政策について原則論を繰り返しつつも、政権発足以降、悪化の一途をたどる日韓関係を対話で改善させたいとの意図をにじませた。

今回の問題は、文政権の韓国が日本との協定や合意をほごにしたことが発端だ。

しかし、政権は問題解決の糸口を見つけられず、韓国国内の反発を招かないよう日本の歩み寄りに頼らざるを得ないという矛盾に陥っている。

一方、文氏は演説で北朝鮮に対話や協力を呼びかけたものの南北関係は停滞したままだ。

韓国は今月、大規模な水害に見舞われ復旧に苦闘している。

収まっていた新型コロナウイルスの感染も再び拡大。

不動産価格は高騰を続け、家が買えない若年層を中心に文政権の不動産政策を批判する声は連日高まっている。

世論調査会社「韓国ギャラップ」(14日発表)によると、文氏の支持率は前週より5ポイント減り39%、不支持率は同7ポイント増の53%。

支持が過去最低、不支持が過去最高だった昨年10月中旬と同じ数字だ。4月の総選挙で左派系与党が圧勝した後、70%台まで上昇した支持率は急落している。


ソウル市中心部では15日、新型コロナのため市が禁止しているにもかかわらず、雨の中、複数の保守系団体が「文政権退陣」を訴え抗議集会を強行した。

新型コロナへの対処を追い風に4月に支持率を挽回した文政権だが、今は好材料がなく、民心離れを招いている。

「韓国は日本と戦って独立した」「建国は1919年」ますます歴史歪曲を進める文政権

2020-08-15 17:51:30 | 日記
「韓国は日本と戦って独立した」「建国は1919年」ますます歴史歪曲を進める文政権

FNNプライムオンライン 2020/08/15 14:11


© FNNプライムオンライン

韓国・文在寅(ムン・ジェイン)政権は2017年に、8月14日を「日本軍慰安婦被害者をたたえる日」と定め、今年も記念式典を行った。

韓国では現在、歴史認識を巡る日本との問題にどのような変化が起きているのか。文政権の歴史認識は従来の韓国と比べどの点が異なっているのか。識者を交えて分析を深めた。

相変わらず国際法より国民感情が優先する韓国

© FNNプライムオンライン


釜山の日本総領事館前の少女像について新たな動きが。

松川るい 自民党 外交部会 副部会長:

非常に不愉快ですし、明らかなウィーン条約違反。

韓国政府に即刻撤去する義務があるが履行しておらず残念。一旦は撤去しようとしたが、流れが変わり合法的に設置できる決定が行われ遺憾。抗議したい。

反町理キャスター:

青瓦台はこれについて何と言っている?

武藤正敏 元駐韓大使:

正式には許可を出していないが、釜山の市長が「共に民主党」の党員で、慰安婦に寄り添った決定を下した。そもそも韓国外交部などが疑問を持っていても、国際法より国民感情を優先する青瓦台に何も言えない。

© FNNプライムオンライン

黒田勝弘 産経新聞ソウル駐在客員論説委員:

民間レベルのことに対しては日本政府としても言えない。

リゾート地の植物園に慰安婦像と安倍総理とされる土下座像を作った件もそうだが、韓国の皆さんの常識の問題。
そして今回釜山の件は、韓国外務省が自制を伝えたのみ。丸山総領事から国際法違反であるという話は伝わっているが、国際的に非常識だと韓国世論にアピールしなければいけない。

李泳采(イ・ヨンチェ) 恵泉女学園大学大学院 教授:

土下座像について、作者は作品だと言っているが、評価は分かれて批判もあった。

作者の言い分では、これは4年前からあったが今までは問題にされないで、今年問題になったのだと。本人はこれが安倍総理だとは言わない。

なぜ謝罪しているのかというと、慰安婦に対する家父長制社会における男たちの責任を示していると。


法律違反があるかもしれないが、国民が慰安婦問題はまだ解決されていないと言って政府がそれを抑えるということが社会的に広がるのは、今の時代精神となっている。

反町理キャスター:

それは、韓国では国民感情が国際法より優先するという意味の説明ですよね。

李泳采 恵泉女学園大学大学院 教授:

領事館・大使館前に設置する理由は、責任もあるし解決してほしいという世論の背後にある国民感情。作っている団体は政治問題として取り扱ってほしいということ。

「韓国の建国は1945年ではなく1919年」文政権の歴史認識

© FNNプライムオンライン
長野美郷キャスター:

日本は8月15日に75回目の終戦記念日を迎え、韓国でもこの日は日本統治から解放された「光復節」。文在寅大統領の建国に対する考え方が2017年の式典で示されている。建国は1919年3月、政府樹立は1948年8月という考え。

黒田勝弘 産経新聞ソウル駐在客員論説委員:

文大統領のこれまでの8.15記念演説で最もいかんと思ったのは、韓国政府樹立の話ではない。

1945年8月15日、韓国では解放独立を意味する「光復」というが、これがどこからもたらされたかということ。

韓国が日本の支配から独立した背景の歴史的事実を、文大統領は「外からもたらされたものではなく、我々が力を合わせて成し遂げた」と言った。

韓国教科書でも、同時に我々の努力にもよると書いてはいるが、連合国の日本に対する勝利の結果だと書いている。これを文大統領は「我々の努力で実現した」と言った、これは相当な歴史歪曲、韓国の国民を誤解させる。

黒田勝弘 産経新聞ソウル駐在客員論説委員© FNNプライムオンライン 黒田勝弘 産経新聞ソウル駐在客員論説委員
李泳采 恵泉女学園大学大学院 教授:

韓国国民に初めて主権意識が生まれたのは1919年。主権を取り戻すための運動が植民地時代にもあって、8.15までにも独立運動があって、という延長上に文政権の歴史認識がある。
今までは敗北意識、自分たちで勝ち取れなかった受け身の独立だという意識が強かった。

日本で「与えられた民主主義」という表現があるが、文在寅政権では韓国は抵抗して自ら取り戻したと強調して、国民が歴史の主人公だと訴えている。

「韓国は日本と戦って独立を勝ち取った」という歴史歪曲

松川るい 自民党 外交部会 副部会長© FNNプライムオンライン 松川るい 自民党 外交部会 副部会長

松川るい 自民党 外交部会 副部会長:

日韓が戦ったことは一度もない。当時の韓国は大日本帝国の一部で、日本と一緒になって米中と戦ったのが事実。

でもそれでは承服できないので、色んなところで日本と戦っていたという歴史に変えたいという願望があるのだろう。

でも指摘の通り、韓国の歴史では勝手に光がやってきたのが残念だったと教えていた。


これを文大統領がはっきり変えたことに問題がある。1919年の上海臨時政府も2年間ほとんど活動しておらず、その後1945年まで相当の時間が残っていて事実関係に無理がある。

日本と韓国の歴史がパラレルワールドになったまま本当に何も噛み合わないという関係になりかねないので心配。

武藤正敏 元駐韓大使:

文在寅大統領の歴史観がいかに狂っているか。3・1独立を北朝鮮と祝おうとして無視されたことがあった。北朝鮮はパルチザンで戦ったが、上海臨時政府はなにもしていないと。韓国は日本と戦って勝ったことはない、戦ったことすらない。

武藤正敏 元駐韓大使© FNNプライムオンライン 武藤正敏 元駐韓大使

黒田勝弘 産経新聞ソウル駐在客員論説委員:

韓国は日本と戦ったことはない。李泳采さんは戦ったことがあるという立場だと思うが、韓国ではメディアを中心に、日本と戦ったという歴史的キャンペーンで国民教育がなされている。

李泳采 恵泉女学園大学大学院 教授:

上海臨時政府が連合軍に参加する直前に終戦となったから最後の決戦はなかった。しかし1945年まで戦っていたというのが文政権の歴史認識。サンフランシスコ講和条約にも参加したいと言ったのに、吉田内閣が韓国だけは排除してくれとアメリカに言ったのだと。日本の歴史教育を受けた歴史家は日本との決戦はなかったと言って自らの国家を否定してきた、という立場。

李泳采 恵泉女学園大学大学院 教授© FNNプライムオンライン 李泳采 恵泉女学園大学大学院 教授
反町理キャスター:

歴史の再解釈と改竄は違いますよね? 大戦中に日本軍と戦って独立を勝ち取ったのだという人が韓国に増えていると。今後の日韓関係に災いがあると思わないか?

李泳采 恵泉女学園大学大学院 教授:

サムスンやドラマのヒットなどで韓国は以前よりも自信を取り戻している。経済的にも国際的にも、昔のように日本に対して負けていると思っていない。それと歴史認識が重なって、植民地時代は弱かった、でも歴史認識でも正々堂々戦ったことになれば自信を取り戻せると。

反町理キャスター:

それで不幸にならないのか?

李泳采 恵泉女学園大学大学院 教授:

日本ではこうした歴史は知られてないからギャップが大きいと思うが、平等な関係で向き合ったほうが関係改善になるのではないでしょうか。

BSフジLIVE「プライムニュース」8月14日放送

「脱日本」の成功をすごく強調する韓国…輸出規制から1年、実態はどうなっている Tweet 2020年08月12日 09時15分 PRESIDENT Online

2020-08-15 15:38:03 | 日記
「脱日本」の成功をすごく強調する韓国…輸出規制から1年、実態はどうなっている



2020年08月12日 09時15分 PRESIDENT Online


昨年、日韓の間でこじれにこじれた韓国「ホワイト国外し」騒動。1年以上が過ぎ、韓国や世界の半導体産業に“影響した”のは本当か?■「日本とは違う道を歩む」文在寅が自信

今年7月9日、韓国の文在寅大統領が同国の半導体メーカー、SKハイニックスを訪問した。

京畿道利川市にある同社で、「(輸出規制は)韓国経済にとって大きな打撃になるだろうという懸念があったが、共に力を合わせ、これまで1件の生産支障もなく、危機をうまく克服してきた」と自信のほどを見せ、「日本とは違う道を歩む」「グローバル先端素部装大国へと飛躍していく」と胸を張って見せた。

これは約1年前の日韓の軋轢を意識した発言である。

昨年7月1日に日本が韓国に対して行った輸出管理の「制度運用の見直し」。フッ化ポリイミド、レジスト(感光材)、エッチングガス(フッ化水素)という半導体材料を包括輸出許可から個別輸出許可に切り替えると発表した。
いずれも日本が世界シェアの70~90%を独占し、しかも韓国産業の生命線である半導体製造に不可欠な素材だ。

経済産業省によれば、この措置を取った理由は、


①日韓間の信頼関係の喪失、
②韓国の輸出管理における不適切な事案発生の2つ。2018年の国連北朝鮮専門家パネル報告書には、北朝鮮向けに船舶用ディーゼルを積み込まれた船をめぐる調達ネットワークについての記載が、2019年の同報告書には韓国が開城(ケソン)の南北共同連絡事務所に石油精製品を持ち込んだ件についての記載があり、そもそも韓国が戦略物資を扱うことには日本側から疑念がいくつもあったようだ。

それだけではない。
昨年5月17日付で朝鮮日報が156件の不正輸出事案一覧(うち5割が化学・生物兵器関連、大量破壊兵器関連が3分の2。2016年から3年で3倍に)を明らかにし、発表直後の7月12日には、韓国国会の予算特別委員会の質疑で、逆に日本向けに輸出されたというフッ化水素が日本の輸入統計に計上されず消えてしまっていることを野党議員が指摘している。

さらに韓国の半導体企業が日本から輸出した高純度フッ化水素を、韓国工場以外に中国の現地工場に再輸出していたとも報じられた(日経新聞2019年7月20日付)。

■6800億円で「戦略品目100の国産化目指す」

1カ月後の8月2日、日本政府は輸出時のさまざまな手続きを簡略化する優遇措置の対象国(ホワイト国)から韓国を外すことを閣議決定した。


ホワイト国であれば当然、輸出品の最終需要者が韓国ないし韓国企業であるのが当然。ゆめゆめよその国に転送・転売などしない……はずだが、はたから見た限りでは限りなく黒に近いグレーというわけだ。

前述のフッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素の、昨年1~5月のおのおのの対日輸入依存度は、それぞれ93.7%、91.9%、43.9%(韓国貿易協会)と非常に高い。7月以降は、数カ月分しか在庫のなかった韓国半導体メーカーと、すぐには調達できない日本素材メーカーとの間で、小さくない混乱が起こったとも伝えられた。

韓国はこの「見直し」を、日本企業に元徴用工に対する賠償を命じた韓国大法院の判決に対する報復であり、「輸入規制」だと受け取った。

危機感を募らせた韓国は、直後に主要な部品・素材の国産化を目指す100品目を戦略品目に指定。7年間で7兆ウォン(約6800億円)かけて国産化することを決めた。中でも前述の半導体材料の3品目を含んだ20品目については、1年以内とリミットまで定めた。
3品目以外の対日依存度が高い品目も「規制」対象となると勘繰った末の決定だったようだ。

■韓国フッ化水素メーカー株が急騰

実際に1年経過した今、韓国の「脱日本」は進んだのだろうか。何となく「日本でしか製造できぬ高品質製品が輸入できなくなって、韓国半導体産業は困っているだろう」と認識している向きもあろうが、主要3品目に絞って簡単に結果だけ示してみよう。

1)フッ化水素は韓国が自足度を高め、日本企業がシェアを落とした
2)フッ化ポリイミド、フォトレジストは、韓国の対日依存の状況に大きな変化はないまず、1)。素材3品で大きく影響を受けたのはフッ化水素である。半導体製造は500以上に細分化された工程の中で様々な純度のフッ化水素を使うが、韓国はそのうちステラケミファと森田化学工業の日系2社でしか作れない99.9999999999%(トウェルブナイン)という超高純度のものを輸入していた。

しかし「見直し」後は、日本からの輸入が急減。年明けの1月8日まで約半年間、個別輸出の許可が下りなかった。これは、やはり前述の日本への逆輸出分が行方不明となったことなどがネックとなったと思われる。

昨年通年の輸入額は前年比45.7%減、個別輸出の許可が出た後も前年比2割程度の低い水準にとどまっているのは、輸入先が主に台湾に変わったことと、韓国国内での国産化が進んだことがその原因だという(日本総研2020年6月25日付リポート、JETROビジネス短信)。脱日本化が成功した、というわけだ。森田化学工業の森田康夫社長は、「日本企業のシェアが下がりかねない」と危惧していた(日経新聞2019年8月8日付)が、それが現実のものとなってしまった。

実は、韓国の一部半導体材料メーカーのうち、過去1年間で株価が急騰したのがソウルブレイン、ラムテクノロジーの2社。いずれもサムスン電子やSKハイニクスに対するフッ化水素の安定供給が奏功したという。韓国特許庁は同15日付で、ソウルブレイン社について「日本の対韓輸出規制により大きな打撃を受けた」ものの、今年1月には「政府支援と独自の技術力で12N以上の液体フッ化水素の大量生産および国産化に成功して滞りなく供給することができた」と自賛している。純度そのものはまだ日本には及ばぬものの、かなりの水準に達しているといわれている(前出・日本総研リポート)。

■対日依存の変わらぬ2素材

2)他の2つはどうだろうか。フッ化ポリイミドは、結局個別輸出許可の対象となったのは一部だけで、対日輸入額に影響はほとんど表れていない。つまり、対日依存度は変わっていない。最後のフォトレジストは少し複雑だ。「見直し」の対象は、同じフォトレジストの中でも次世代EUV(極端紫外線)向けのそれに限られ、数量ベースでは全体の1%未満だ。

JSR、富士フイルム、東京応化工業、信越化学など日本企業が世界市場の9割を占め、これが入手できないと、「世界市場トップの台湾TSMC社を追撃するサムスン電子の次世代成長力に影響しかねない」(朝鮮日報)素材である。

「見直し」以降のフォトレジストの輸入額は、7月に駆け込み需要で急増した後でしばらく減少した。
しかしその後、8月に最初の輸出許可が下り、さらに日韓の特定企業どうしに限って最長3年の許可を一括して得られることになり、最近はほぼ元の水準に戻ったという。ベルギーからの輸入額が前年比431%と大きく増えている(韓国貿易協会)が、これはサムスン電子がJSRとベルギーの研究機関の合弁会社からの調達を増やしたからで、日本への依存は実質的に今も続いているといっていい(前出・日本総研リポート)。

■「当事者間の混乱はおおむね収まっていた」

こうして振り返ると、今にも韓国や世界の半導体産業に打撃を与えるかのような当時の報道とは少なくないズレを感じる。

日本の“圧勝”ではないし、かといって文在寅氏が言うように何もかも日本依存から脱却したわけでもない。

なぜ、日韓双方でこうした誤解や混乱が起きたのか。日本の安全保障貿易情報センター(CISTEC)は、「見直し発表当初こそ日本の輸出企業に問い合わせが多数あったものの、然るべき説明に納得し、当事者間の混乱は概ね収まっていた」「輸出規制的な話では元々なく、日本の輸出管理制度運用に関する基本的誤解によるものだということは、日本の輸出管理当事者であればすぐわかる」という。

しかし、これが政治問題化したことから、前述の3品目以外でも、対日依存度が高い品目が規制対象となるという誤った認識から危機感が煽られ、ついには軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄などという違う次元の問題にまで発展してしまった、とCISTECは指摘している(以上、「日韓間の混乱を招いた安全保障輸出管理に関する誤解」2019年9月)。

この「見直し」が偶然ではなく意図的に政治問題化された、と指摘する声は昨年からあった。米国は、急速な成長の途上にある中国半導体産業に神経をとがらせており、韓国を通じて稀少な素材や知的財産の流出があれば日本を通じてそれをけん制しストップさせるのは当然……という理屈だが、その明確な証左となるものはない。そもそも両国の仲介に乗り出したのは米国のマイク・ポンペオ国務長官であった。

■WTO提訴は明らかに無理筋

誰かの政治的意図があったのか、それが達成されたのか否かは明確ではないが、現時点で確かなのは、日本企業の高純度フッ化水素のシェアが低下したことと、韓国の半導体産業に対する大きな打撃にはなっていないこと、韓国の脱日本依存に、まだ完全ではないにせよ加速をつけさせることになった、ということだ。

昨年9月、韓国はこの「見直し」を不当だとして世界貿易機関(WTO)に提訴すると発表。


軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄とリンクさせたことで米国の逆鱗(げきりん)に触れ、いったん提訴を取りやめていたが、今年6月にその手続きを再開した。


しかもそのWTO議長に韓国人の兪明希(ユ・ミョンヒ)通商交渉本部長が立候補するという念の入れようだ。が、「輸出規制」が誤解であることはすでに明白であり、提訴は明らかに無理筋であろう。

直接交渉のみならず報道も介した国家間のコミュニケーションに、誤解やミスリードはつきものだが、混乱をきたした渦中で正確な情報を見分け、発信するのは難しい。

ある程度収まった時点で振り返ることは、ただでさえ拗らせ続けている両国の先々の関係を考えるうえでも必要な事であろう。もっとも、付き合う際は考えられぬようなリスクを覚悟すべき国だということを、何度も確認しているだけなのかもしれないが。




(プレジデント編集部)

 韓国はGDPに占める輸出の割合が40%と極めて高いが、この構造が困難を呼ぶというのだ。

2020-08-15 15:06:32 | 日記
国際 アジア 醜聞だけじゃない、経済失政でも支持失う文在寅政権

醜聞だけじゃない、経済失政でも支持失う文在寅政権

そろそろ誤魔化しきれなくなってきた左翼的経済政策の失敗のツケ

2020.7.20(月)

武藤 正敏

韓国・北朝鮮

7月16日、国会の開会式で演説する文在寅大統領。この後、建物の外に出て車に乗り込もうとした際に、一般男性から靴を投げつけられ罵声を浴びせられるというハプニングがあった
(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)


文在寅大統領の国政遂行支持率が、昨年の曺国・前法務部長官事件以来の最低水準に落ち込んでいる。

韓国の大手世論調査会社・リアルメーターが実施した7月第3週の調査で、文氏の国政支持率は前週比4.6%下落の44.1%、逆に否定的評価は5.2%上昇の51.7%だった。

支持率が大幅に下落したのは、政府の不動産対策や仁川(インチョン)国際空港の非正規職員の正規化など文政権の政策の混乱への反発と、故・朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長のセクハラ疑惑事件の影響が大きかったと指摘されている。

ソウル市長のセクハラ疑惑で女性からの支持失う
 
実際に性別支持率を見ると、女性の肯定的評価の下落幅(-7.9%)が男性(-1.3%)を大きく上回っているのだ。

年代別を見ると、さらに顕著な傾向が分かる。30代で肯定的評価が13%余り下落し、最大となっている。

30代の女性は文在寅氏の大きな支持基盤であっただけに、青瓦台はいま重苦しい雰囲気に包まれている。


朴前市長のセクハラ疑惑に関して文在寅政権の人々は、事件のもみ消しを図り、世間が事件を忘れ去るのをじっと待っている。朝鮮日報は、米国CNNの報道ぶりをこのように伝えている。

「フェミニストを自認する文在寅大統領は沈黙で一貫しており、人々を怒らせている」

「文大統領がセクハラ問題をどれほど真剣に受け止めているか、疑問が持ち上がっている」

こうした文政権のセクハラに対する不明朗な姿勢こそが30代女性の支持離れを招いているのだろう。

ただ、忘れやすいのも韓国の世論の特徴である。せっかく韓国の人々が文政権の欺瞞性の本質を見抜いたのだから、今後は文政権にはっきりと「ノー」を突き付けるべきだろう。

そもそも人権弁護士を自認する大統領を戴きながら、北朝鮮人民の人権には目をつむる政権である。何か困ったことがあるとじっと黙って嵐が過ぎ去るのを待つ政権である。韓国民は、いつまでもそうした欺瞞的行動を許してはいけない。

文政権の支持層が離れていることはこれまでになかった新しい傾向と言える。曺国事態の時も支持基盤は比較的しっかりしていていた。明らかに文在寅政権の足下は揺らぎだしている。

そこに加えて、さらに支持率を引き下げそうなファクターがチラつき始めた。「経済失政」である。

「雇用大統領」のはずが雇用の改善に失敗
 


文在寅氏は大統領候補時代から「雇用大統領」を自任し、良質な雇用創設と所得格差是正を公約して政権に就いたという経緯がある。

ところが、実際に大統領になってからは、経済政策の度重なる失敗によって韓国経済を危機に追いやり、良質な雇用を国民から奪ってきた。

それは新型コロナ感染が広がる前からの傾向であったが、新型コロナによってさらに状況は悪化している。

それでも、これまで経済姿勢で大々的な批判が上がってこなかったのには理由がある。

文大統領は、経済統計を恣意的に解釈し、「経済・雇用は悪くない」と言い張ることで経済成長を装いつつ、財政出動によって短期的に高齢者のアルバイト的雇用を生み出して、失業率を低く抑えてきたのだ。そんな小手先の操作でつじつまを合わせてきた。

しかし韓国経済の実態がいっそう悪化し、その欺瞞性が露呈すれば、文政権の支持率下落が加速するのは目に見えている。

おそらく文政権は経済失速の責任を新型コロナによる経済収縮に押し付けるであろうが、果たしてそれで国民はいつまで納得してくれるのだろうか。

経済情勢の悪化が文政権の支持率に与える影響を、中央日報と韓国経済新聞記事から分析してみよう。

過去より不吉な韓国経済の危機
 
前述のように新型コロナによる景気の後退が起きる前から韓国経済は危機に直面していた。だが、文在寅大統領はそれを認めてこなかった。

例えば昨年9月16日、文大統領はこう述べていた。

「我々の経済は困難の中でも正しい方向に向かっている」

「2年間にわたり雇用政策を着実に進め、雇用状況が量と質の両面で明確に改善している」

根拠なき自画自賛である。しかし、この時すでに国内外の大半の経済分析機関は韓国経済の暗い未来を予告していた。
 
政府系経済研究機関の韓国開発研究院(KDI)は当時すでに6カ月連続で「内外の需要が委縮して全般的に経済状況が不振」と診断した。成長・消費・投資・輸出のどれ一つ良いものはないというのである。

人々も景気後退に危機感を抱いていた。国内ではいつの間にか「Rの恐怖」や「Dの恐怖」が普通名詞化していた。Rはリセッション、Dはデフレーションのことだ。そしてこの時、多くの専門家は「今回の経済危機は過去に比べ4つの理由るかに危険な兆候」懸念を表明していた。

そこで指摘されていた4つの理由とは以下のものだ。

 第一に、この景気後退の原因は、景気循環サイクルの問題ではなく、第4次産業革命、高齢化と生産人口減少、世界的な供給過剰、過去最大の家計・政府債務などといった原因が複合的に絡んだ構造的な問題ということである。

 第二に、頼れる国がないということ。1997年の通貨危機の時は米国、日本、欧州、中国が韓国を助けた。しかし、今回は、世界経済全体が停滞している、米中が対立し、欧州も英国のEU離脱問題などに揺れている。日韓の対立も深刻化している。そうした中、保護貿易が強まり、グローバル経済の柱だったWTOとIMFは機能不全に陥っている。

 第三に、文政権の経済政策がことごとく経済の実態・経済理論的に反対方向を向いていることだ。所得主導成長政策、労働時間短縮、脱原発など反市場・反企業政策が主としており、それでも文政権は「経済体質転換過程の陣痛」といって政策を改めようとはしない。またこのピンチを財政支出の大幅増強でこれを切り抜けようとしているが、財政支出の効果は以前に比べれば出にくい経済環境になっており、ただただ財政赤字を拡大しているだけという。

 第四に解決法はあっても実行が難しいという点だ。文大統領は「(2019年)8月の雇用が最高」と自慢したが、増えた就業者45万人のうち、実に39万人は60歳以上の高齢者だった。単に税金を使って高齢アルバイターを量産しただけだった。もちろん経済全体に寄与する効果は、若者の雇用には遠く及ばない。このように、政府は統計を選別的に利用して国民向けに使っている。現実を直視しなければ解決はない。

KDIなどは「成長潜在力を拡充するには、経済全般の構造改革を通じて生産性を向上させること」それには各種規制と参入障壁を緩和する必要があると述べている。これは、とりもなおさず、文在寅政権の選挙公約やこれまでの経済政策を真逆の方向に改めよ、ということだ。そう考えると、解決法があっても、実行は極めて難しいと判断せざるを得ない。

韓国経済を見限る国際社会


昨年11月13日付けの中央日報は、「市場の復讐『韓国経済にはもう食えるものがない』」と題するコラムを掲載した。

 その中で、30年間ソウルで勤務したグローバル金融のCEOがこう指摘している。

「朴槿恵(パククネ)の創造経済や文在寅の平和経済が何であるのか全く分からない。一つ確実なことは、国際資本が韓国経済に完全に興味を失っているという点だ」

過去2年間において、ゴールドマンサックス、バークレイズなどが相次いで撤退したが、さらに最近では、JPモルガン、スイス投資銀行のUBSが事務所を閉鎖した。

韓国経済は深刻な慢性疾患に陥っている。

韓国経済の根本的問題は主要産業の国際競争力の低下であり、文在寅政権の多くの政策が構造改革に背を向け、財政に頼りきっている。グローバルに活動する国際資本は、これでは韓国経済に未来はない、ととうに見切りをつけているのだ。ここからの巻き返しは容易ではない。

新型コロナ後も続く文大統領の「自画自賛」
 
こうした韓国経済を取り巻く経済環境が厳しい中で発生したのが、新型コロナ感染症による世界経済の後退である。もちろん韓国もその例外ではない。経済はマイナス成長が続き、雇用情勢も悪化した。

特に厳しいのが青年の10.7%という失業率であり、これは21年ぶりに最悪の状況である。これは青年層が主につく製造業とサービス業の状況がよくないためである。新型コロナが全般的な景気低迷につながり、青年の就業機会を閉じてしまった。

これだけ深刻な経済状態に直面してもなお文大統領の自画自賛は継続中だ。文大統領は7月16日、第21代国会の開院演説で、「経済でも韓国は他国より相対的に善戦した。


世界経済のマイナス成長の中、OECDのうち韓国の経済成長率が最も良好」と自慢した。

こうした政権による分析に異を唱える専門家も多い。漢陽大学経済学部のキムサンボン教授は、「今年の経済成長予測が他国に比べて悪くないのは、新型コロナが先に拡大して落ち着いたという特殊性のためであり、経済状況自体が良くったのではない」と指摘した。


キム教授によれば、「新型コロナの影響で、長期停滞に入る可能性がむしろ高まった」「消費活力が落ちているうえ、製造業の競争力も振るわず、輸出状況も良くないという本質的問題が解決されていない中、楽観的に評価すべきではない」と述べている。

大統領が話さない不都合な真実
 
中央日報は7月14日、『文在寅大統領が話さない半分の不都合な真実』のタイトルのコラムを掲載している。そこには文大統領が良いものばかり見て悪いものに目を閉じている現実を鋭く指摘している。

今年の韓国の一人当たり国民所得は3万ドル割れの危機を迎えている。18年の3万3434ドルから、19年には3万2047ドルに減少し、今年は3万ドルを下回る可能性があるというのである。成長率は年々減少し、為替レートもウォン安が進んでいる。

文政権が出す処方箋は「現金給付」だけなのだが、これはモルヒネのような応急処方に過ぎない。根本治療にはならないし、かえって副作用を伴う。

それなのに、なんとか40%の手前で踏みとどまっていた国家債務比率について、文大統領は「国家債務比率を40%に維持する根拠は何か」と語り、財政出動のアクセルを踏んだ。かくして国家債務比率は40%の天井をあっさりと超えた。

借金が増えているのは国家だけではない。OECD加盟国別の民間負債統計によれば、今年3月末基準で、韓国の家計と企業のへの貸し出しは3866兆ウォン(約343兆円)とGDP比で201.1%に達し、主要43カ国の平均より45%も高い。

国際決済銀行(BIS)は「韓国の民間負債残高増加ペースがあまりにも速い」として警報レベルを「注意」に引き上げた。

左派系学者は「2000年以降、賃金上昇率が低下しているのは明白な事実」と指摘するが、昨年の韓国の労働分配比率は63.8%で、2000年の58.1%から大幅に引き上げられている。


それを反映し、企業実績は大きく悪化した。韓国の労働生産性はOECDの中で28位であり、米国・ドイツ・日本を大きく下回る。それでも韓国民主労組は来年の最低賃金の25.4%引き上げを要求した。文政権が就任してから、民主労組の横暴は加速しており、これは韓国における企業活動を大きく阻害している。

韓国版ニューディールにも掛け声倒れの懸念
 
こうした中で、文在寅大統領は、コロナによって打撃を受けた経済を立て直し、世界経済をリードするための意欲的な経済政策「韓国版ニューディール」をぶち上げた。

 
文在寅大統領は「韓国版ニューディールは先導国に飛躍する“大韓民国大転換宣言”であり、“大韓民国の新たな100年の設計”だ」と大言壮語する。

その中身は、2025年までに政府が114兆ウォン、民間・自治体が46兆ウォン、計160兆ウォン(約14兆円)投資して雇用190万件を創出するというものである。





デジタルインフラやビッグデータに関する産業を育成するデジタル分野と、気候変動に対応するグリーンエネルギー分野が二本柱となる。

しかし、ここでもネックになりそうなのが韓国政府の労働政策だ。デジタル新事業は開発速度がカギである。しかし、韓国国内のスタートアップとベンチャー企業は週52時間労働制限に縛られ、グローバルベンチャーとの競争で不利な条件を強いられてきた。

韓国版ニューディールが成功するためには規制改革と労働組合寄りの労働政策の方向転換が何より求められる。それができなければ結局、これまでのように政府資金でアルバイト的な雇用を多く生み出すだけに終わるとの懸念も伝えられている。




7月16日、国会で演説し終え、大統領府に戻ろうとした文在寅大統領に靴を投げつけ、SPらに制圧される男性。「共産主義者は韓国から出ていけ」「偽の平和主義者、偽の人権主義者・文在寅」などと叫んだというが、制圧されたときには口をふさがれている

コロナのダメージから回復しにくい韓国経済の構造
 
ハーバード大学のロゴフ教授は「韓国の危機はこれから」と警鐘を鳴らしている。

ロゴフ教授は、中央日報のメールインタビューに対して、「韓国などアジアの経済は輸出依存度が相対的に高いという点で状況が良くない、これはアジア各国の経済状況が長く困難に陥るだろうという兆しだ」と述べている。

韓国はGDPに占める輸出の割合が40%と極めて高いが、この構造が困難を呼ぶというのだ。

つまり、コロナの影響で世界各国の経済がいまだダメージを受けているため世界の景気回復の速度は極めて遅くなるということ、さらにその過程で各国は保護主義政策を採用することになる、というのだ。


『文在寅の謀略―すべて見抜いた』(武藤正敏著、悟空出版)

こうしたことから、韓国の来年度の成長率は3.1%にとどまるであろうというのがOECDの見方だ。OECDは来年の世界経済が5.2%反騰すると予想している。韓国の景気回復はそれに比べて遅れると見られているのだ。

海外の専門家が見る韓国経済の展望は相当に厳しい。だが、文在寅政権の「反企業」的体質は変わらない。国内的に発信する“根拠なき楽観的観測”も相変わらずだ。

韓国経済に力強さが戻らず、青年・壮年層の雇用が回復してこなければ、その反動は文在寅氏の支持率に跳ね返ってくる。

経済政策の失敗が本格的に支持の低下に結び付くのはこれからである。もはや高齢者のアルバイト的雇用では誤魔化せない瀬戸際にきている。