大型バスは赤坂の窪みを抜けて首都高のトンネルを進み新宿を目指している。
黄色いライトに照らされたダンジョンみたいな四角いトンネルの少し先に右手に折れる分岐があって、心の中から「あ、右に行きたい」という気持ちがふくらんだ。
なんでかわからないけどちょっと先が見えないカーブの感じがよかったからか。
だからバスが右の道を進み望みのアールを描いた時に、心の中の小さな子が手を叩いて喜ぶのを感じた。
うれしい、ありがとう
バスが曲がりきって本線に合流した後、まっすぐ前を向いてた小さな頭がふいに振り返って私に言った、気がした。
あのね
わたしたくさんいろんなことできて
ほんとにたのしかった
あなたはたいへんだったかもしれないけど
生きるのができてほんとよかった
ありがとう
不意をつかれてそう言われたので動揺して胸がいっぱいになった。
そのトンネルを抜けたところで。
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