「和室にかたつむりがいる」と息子からLINEが来た。正確に言うと写真が送られてきた。
え、なんで？
猫がベランダから持ってきたんだな、多分。
帰宅した後、何故かどこにも見つからない。
猫がまた外に持って出たのか。
……そして３週間の時が流れた。
かるーくなったかたつむりは私の仕事鞄の裏に貼り付いていた。はがして中をのぞき込むと二重に覆いを張ってある。
棒でぱりぱり破って小さく縮こまった体を触ると、すこーしだけ反応があった、ような。
まだいける。
玄関先の植木に乗せて、少し水をかけた。
下にはキャベツ。
上には風よけ。
５分もしないうちにばりばりキャベツを食べて、３０分もしないうちにどこかへ姿を消した。
あとで知ったんだけどかたつむりはそうやって冬眠するんだって。
あらじゃあ無理やり起こしちゃったかな。
お腹は空いたけどごはんはまだできない。
トマトのサラダとゴーヤの和え物を作ったらなんだか疲れてしまって猫のいるソファに倒れこんだ。
台所では息子が秋鮭を揚げ焼きにする横で娘が蒲焼のタレをぐるぐる混ぜながら煮詰めている。
美味しそうな気配がする。
（美味しかった！）
水がただ水なだけなんてありえないと
波を見ていたらわかった
水はもちろんなにかをキャリーしている
役割があってそのような性質のそのような動きをしている
なんというか
魚が住んだり動物が飲んだりするのは
余禄なんだ
ついに娘の実習が本格的に始まった。
帰ってきて１日の話をしてくれる娘を遮って聞く。
「え、ちょっと待って。なんて呼ばれるわけ？」
（わかっているけど）
「（ていこ）先生って。一人称はたまに先生」
！！
どうしよう。
私から生まれし者が「先生」。
あなたはただの一度も私を変えようとしなかった
思えば私はずっとそうしていたというのに
その一点だけで
あなたは私など及びもつかないすばらしい人
