ERの待ち合いベンチで
母のトリアージを待ちながら
入退院を数える
そして旅行と
その年月と
はるばる来た
この道のりは
見方によっては
ひたすら下る悲しい道に見えるかもしれない
でも
それを
悲しいだけとは
見ないで欲しい
もしこの先でたどりつく門に
かみさまかえんまさまかてんしたちがいたとして
私たちは胸をはって記録を渡す
母を中心にみんなの力を合わせて
良き人たちの貴い手を借りながら
母らしく私たちらしく歩いてきたと
不備も不足も隠しだてせず
その時々に
なんとかやってきたと
やがて通されたハイケアユニットに何年ぶりかの懐かしいサトウさんがいても
同じように親切に疲れた顔で笑ってくれても
動けなくなった母と私たちを
どうか悲しいだけとは
思わないで欲しい
これもまた豊かな生であるのだから