ヒッポウさんはブトウカだ。
戦う方じゃなくて身体表現の舞踏家。
去年、舞台を観に行った。
幕が開いたら三匹の蝦蟇(がま)。
みんな後ろ姿なのに、私の目は最初からヒッポウさんだけを見ていた。
舞踏のことはわからないけれど、半端なものじゃないってことはよくわかった。
中ほどのソロ(っていうのかしら)が圧巻だった。
舞台に立つヒッポウさんは白塗りで、ほぼすっ裸。
でも裸の必然性は、絶対に、ある。
斜めにあたるライトの中
震えるおんなが少しずつ歩く
なぜここにいるのか
どこに向かうのか
何もわからずに
この上なく心もとなく裸で
守るものはなにもないのに
向かう先には死が待っている
おんなは恐ろしい
恐れながら一歩
よろけて
眇め見て
一歩
私たちは恐ろしい
けれど向かう方向はひとつしかない
恐れつつ近づく
見えないロープに引き摺られるように
一歩また一歩
何も知らされていないのに
私たちはみな舞台の上で生まれる
そして一歩
また
一歩
「女中たち」
筆宝ふみえ
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5e/ce/3d2b6e8929c40fb825ad61f710406fb4.jpg)
戦う方じゃなくて身体表現の舞踏家。
去年、舞台を観に行った。
幕が開いたら三匹の蝦蟇(がま)。
みんな後ろ姿なのに、私の目は最初からヒッポウさんだけを見ていた。
舞踏のことはわからないけれど、半端なものじゃないってことはよくわかった。
中ほどのソロ(っていうのかしら)が圧巻だった。
舞台に立つヒッポウさんは白塗りで、ほぼすっ裸。
でも裸の必然性は、絶対に、ある。
斜めにあたるライトの中
震えるおんなが少しずつ歩く
なぜここにいるのか
どこに向かうのか
何もわからずに
この上なく心もとなく裸で
守るものはなにもないのに
向かう先には死が待っている
おんなは恐ろしい
恐れながら一歩
よろけて
眇め見て
一歩
私たちは恐ろしい
けれど向かう方向はひとつしかない
恐れつつ近づく
見えないロープに引き摺られるように
一歩また一歩
何も知らされていないのに
私たちはみな舞台の上で生まれる
そして一歩
また
一歩
「女中たち」
筆宝ふみえ
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5e/ce/3d2b6e8929c40fb825ad61f710406fb4.jpg)