さよなら

気がついた時にはぱっちりお目目のまま動かなくなっていて触れたら首がゆらゆら揺れて、ああ、と思ったけど

そのあと目の光が失われていったので

あるいは心臓も呼吸もその前に止まっていたとしても、その時にはまだすこし気配があったのかもしれない

まだ暖かくやわらかいからだのうちにもう一度だけ膝の上に抱いてなでたら

（最後の数日は苦しめたくなくてあまり抱いていなかったから）

そうしたらかすかにゴロゴロいうのが聞こえてきた

気がした

そうだよなあ

死って、ある一時点ではなく、幾つもの状態が同時進行するなだらかな一セットの現象だよな

そして気がついた

抱いてなでてゴロゴロいう

私とそのこが出会うということには

それだけで充分でそれ以上ないことを

やすらかにおやすみ

さよならありがとう

可愛いの法則

高齢猫のファイナルラウンド。

もう立ち上がれないかと思ったけど、よろよろご飯を食べに来た。

お刺身もカリカリもチュールも15才以上フードも食べて、えらいねえ。

「ねえ、ちょっとこれ見て。

目がきらっきらになってどんどん可愛くなってるんだけど」

「おかあさん、これ、って言い方どうなの。」

「これ、は可愛さだよ。」

「可愛いのはおかあさんが可愛がるからでしょ」

そうだった。

動物でもぬいぐるみでも人間でも通用する、可愛いの法則。

可愛がれば可愛がるほど、可愛くなる。

光

絶望を知ることは

希望を失うことではない

希望というものは恐らく

驚くほど白々とした悲観の地から見上げた

燦々と輝く陽の筋だ

「羽の生えたの」たちの合体

白っぽい強い鳥のようなのがすごく怒っている

これはプライド

黒っぽい長い耳の蝙蝠みたいなのがそんなの捨てちまえとせせら嗤う

これは怒り？人間嫌い？

これらのパーツは今のメインキャラクターに組み込んでいなくて出番がないから普段は下の方に眠っている

そのうち自由に飛ばせるつもり

私の中の素晴らしいビーストたち

こいつらは小物だけどね

それがね

合体するのを見た

見たことないきれいなミルクティー色の肌の美女になったよ

そういえば羽はどうしたんだろう

もしかしたらいらなくなったんだね

もしかしたら私はとてもしあわせ

用事があってコンビニへ。

冷蔵庫みたいな夜の空気。

ヘッドライトの中ちらつくものが。

雪、かな？