クワガタ~スズメバチ等の覚書

Photo & Text byこよみ / Xジジック

虫屋のEEZ!

2025-04-06 17:02:16 | クワガタムシ関連

虫屋のEEZ

*EEZ=本来の意味は、排他的経済水域( Exclusive Economic Zone)のこと

 排他的=自分や自分の仲間以外の者を退けて受け入れない的なこと

*虫屋=ここでは虫を愛好する者全般のことを意味し、生業を意味しない

みなさんは自分だけの採集ポイント・観察ポイントを持っていますか?

フィールドに出る方ならほとんどの人が自分だけのポイント

或いは自分と信頼する仲間だけの秘密のポイントを持っていると思います。

それは、クワガタムシやカブトムシだけに限りません。

蝶・カミキリ・コガネ・ハナムグリ・水生昆虫などあらゆる種に及び

フィールドに出れば出るほど自分が得意とするエリアや、場所は増える傾向にあります。

そして、地理的なことの他にも経験から得た知見は蓄積され

いつの間にか多くの情報を抱え込みます。

私はこれらのことを、虫屋のEEZ「排他的採集領域」みたいに感じることがあります(以下EEZ)

↓ 近くには秘密の棲息場所があった(キベリハムシ)

このEEZは、自分一人だけで抱え込みの場合は比較的平穏です。

誰かと共有した場合は時にセンシティブなものが入り込み

一旦嫌な方向に向いてしまうと

真実・誤解含めてちょっとしたトラブルを引き起こすこともあり

他の誰かに無断でポイントを教えたとか、ポイントを荒らしたなどという話は

昔からある虫屋のEEZ的な、代表的トラブル話です。

↓ ひっそりこっそりクワガタ探し

↓ 標高1000m超のブナ帯の黒カナブン、おそらく県下分布の最標高

↓ 不意に飛んでくる場所がある、ヨコヤマヒゲナガカミキリ

↓ ○○のニシコルリは相対的に大きいと感覚的に感じている

私は「秘密のポイント」という言葉が好きです。

時には自分の「秘密のポイント」を誰かと共有することもありますし

逆に、誰かに教えてもらった「秘密のポイント」もあり、それは敬意のポイントです。

↓ 敬意のポイントにてライトトラップ成果(全部オオクワガタ)

↓ 絶対誰も探さない場所のマダラクワガタ

↓ ブナ帯のチャイロスズメバチ

↓ カバフキシタバが飛んでくる場所がある

↓ ムラサキシタバ、さすがに大きくキレかった!

↓ ルッキングで見るヒメオオクワガタ

↓ ○月○○ころは金色ミヤマが期待できる

飼育のEEZ!

例えば、ほんの数年前までは検索してもヒットしなかったチャイロマルバネのマットレシピが

この2~3年でいくつかヒットするようになり、それまでやや独占的であった㊙マットも

今ではレシピが愛好家に浸透しつつあり

飼育の排他的な部分が少しずつ解放されてきたように感じます。

↓ 浸透しつつあるチャマルマットのレシピ

↓ チャマル・インビタ・ブルークツヤなどに汎用性あり

難関種マットの作り方 - クワガタ~スズメバチ等の覚書

難関種マットの作り方 - クワガタ~スズメバチ等の覚書

はじめに現在、ヤエヤママルバネやオキナワマルバネ等の国産大型マルバネの飼育方法はほぼ確立されており、愛好家に広く知れ渡っています。一方で小型種であるチャイロマル...

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↓ 汎用性のあるマットで育ったブルークツヤクワガタ

↓ インビタにも汎用性あり

ツキノワグマのEEZ!

私の行動範囲はツキノワグマのEEZと被ります。

近年ツキノワグマはしれっとEEZを拡大しつつあるようで

各地でクマの目撃情報や、被害報告が増えています。

20年ほど前なら、クマがいるといわれているブナ帯でも実際にクマを見たことはなく

熊に対する恐怖心もほとんどなかったので、一度は近くで見たいと思っていましたが

今は、複数人で入山してもクマの心配は抜けません。

最後に

今回は「虫屋のEEZ」と題して

少し深く、伝わりずらい記事になってしまったかもしれません。

春は手の届くとこまでやってきました。

今年も多くの人にお世話になりながら、虫屋を楽しんでいきたいと思います。


マルバネ(マット)飼育とコバエについて

2025-03-30 23:17:18 | クワガタムシ関連

マット飼育とコバエについて

クワガタムシやカブトムシの飼育にコバエは付き物です(小型のハエの総称)

特にカブトマットのように黒くなるまでよく腐食して水分も含んだマットは

コバエの幼虫がよく育つ格好の繁殖場となります。

そして、コバエの発生はマットの劣化を加速し

飼育する幼虫への影響も気になるだけでなく、精神的・衛生的にもよいものではありません。

カブトムシをあまり飼育しない私のところでは、コバエの発生は常時ではありませんが

毎年発生し、対処に迷うことがあります。

今年は国産マルバネのまとめ飼いケースにコバエが発生しました。

 

最低でも2種類のコバエ

私の飼育小屋で見るコバエは見た目の判断で最低でも2種類います。

1種は体長1.5~2㎜くらいで黒味があり、もう1種はそれより小型で羽が青〜紫がかって光る種です。

この二つは見た目の区別が容易で、今回マルバネ容器に発生したのは後者の方です。

私はこれまでにマキシムスマルバネ(規制前:タイ・台湾)・オキナワマルバネ

ヤエヤママルバネでコバエの発生を経験しましたが

いずれの場合もコバエ発生が原因と思われる幼虫全滅の記憶はありませんので

私には、コバエ=緊急事態・切羽詰まるという意識はあまりなく

その都度、同様の配合マットを準備し、タイミングを見て全交換してきました。

マルバネクワガタの場合、マットの全交換は笑われますが、私はそうしています。

ただ、蛹室を作るような時期のコバエの発生は、嫌な予感がしますので早々に交換します。

↓ 全交換に向けてマット作成 よく発酵したマット+赤枯れ(2025.3.中旬)

↓ 山土を使った低栄養マットはコバエが育つ環境にない(画像はチャイロマルバネ飼育)

↓ 白い異物はコバエの幼虫・大きい異物は国産マルバネの幼虫(2025.3.30)

↓ コバエ幼虫入りマットでも育つ(2齢後期と終齢初期幼虫 2025.3.30)

 

コバエの侵入経路

コバエの侵入経路として考えられるのは

1.容器の隙間から侵入

 コバエ侵入防止を意識した容器でも開閉時など含め、侵入の可能性は大いにあり

2.外部より入手時に混入

 コバエ排除は難しいので、明日は我が身としてお互い様

3.マット保管時に侵入

 洗濯ネットや冷凍庫保管などで対策可能だが、後者は一般的ではない

4.最初からマットに混入

 商品によっては袋に通気口が設けてあるので致し方ない

↓ 洗濯ネットによる進入防止対策

↓ マット全交換のついでに個別飼育開始(2025.3.30)

巻頭でも書いたようにマット飼育とコバエはつきもので、永久的に排除するのは困難です。

以前、針で開けたプリンカップのフタ通気口に腹部が入っているコバエを見たことがあります。

カップの中には他のコバエは見つからなかったので

通気口直下のマットに産卵をしようとしていたのかもしれません。

↓ プリンカップの通気口も安心はできない・もっと細い針で開けたい

最後に

どこからともなくやってきて、わずかな隙間を見つけ出し、したたかに繁殖するコバエ

振り返ると、これに勝ち目はないと思われ

少しでも長い期間、長い時間排除出来たら「大したもんだ!」とするのが

より現実的なのかもしれません。

↓ 殺虫灯の効果は高いが、蛍光ランプはよく切れる

↓ 殺虫灯の「取説」と、交換用「蛍光ランプ」は心の支え


マメクワガタ-6年ぶりの訪島

2025-03-01 23:46:13 | マメクワガタ(兵庫)

6年ぶりのマメクワガタ

2018年10月以来6年と4ヶ月ぶりの訪島です。

今回は昆虫写真家のFさんと一緒です。

日時:2025年3月1日 11:40〜14:40

天候:晴れ  気温:17度前後 

ここに来るのは久しぶりすぎて発見できるか不安でしたが、マメクワガタはいました。

最初に発見したのは大きめの白枯れ朽ち木からで

他のクワガタ幼虫の食痕から成虫が一つ出てきました。

以前もそうでしたが、こういう場合は同材から成虫・幼虫の追加はありませんでした。

これは、去年の秋にコロニーから独立した家族を持たない越冬中の新成虫のように思え

春には新たな住処を求め、越冬材から出ていくのではないかと想像しています。

↓ 白枯れ、コクワガタの食痕から出た単独成虫 

↓ コクワガタ新成虫

↓ 同材から出現、これはマメクワガタではない

↓ 引き続き付近を探す

 

コロニー現る

今日は、斜面を下りたり横切ったりしていると少し汗ばむほどの陽気です。

ふと岩場を見ると、缶コーヒー程度の太さの朽ち木がツタに絡まった状態で立っており

林床には絡まった朽ち木の続きが転んでいました。

朽木の長さは絡まった部分も含め60cmほどで、やや乾燥気味の広葉樹朽ち木でしたが

樹皮を剥がすとすぐマメクワガタの終齢幼虫が出てきました。

「おっ、これは!」

朽木を手で崩していくと、終齢幼虫、成虫ともに出てきます。

↓ この朽ち木全体がマメクワガタのコロニーと化していた

↓ 成虫も出てきた

↓ 林床に白い紙を敷いて割り出し

↓ 終齢幼虫はドルクス系よりやや細長で、サイズばらつきは少ない

↓ まだ赤いテネラル(新成虫)も出てきた

↓ これも新成虫

↓ このコロニーからは成虫が5頭・終齢幼虫が15頭出てきた

実は今回の訪島は来週の予定でしたが

この季節は天気の移り変わりがあるため、より安定した日に変更しました。

さすがに昨日までは2月です、朝のうちはそれなりに長袖二枚が役立ちましたが

荷物を背負い、原生林を歩くとすぐに汗ばむほどの良い天気になりました。

斜面から上がってきて、「大変長らくお待たせいたしました!」

Fさんにドヤ顔で差し出したコロニー材!

6年ぶりの不安をよそに、今日はとてもよいものを見ることができました。

Fさん、お疲れ様でした。

↓ 秋〜この時期、終齢幼虫と成虫が見つかる

 

今でも移入はあるのか?

日本のマメクワガタの分布は、太平洋岸で複数個所確認されているので

本島の分布が「奇跡とか、かなり特殊」というほど大げさなものではないと私は考えており

自然の流れにより、今後も移入はありうると思っています。

 

おまけ

↓ 飼育下:成虫の餌は煮干し

↓ 複眼縁取りの違い(赤マーカー部)左からイオウマメ・マメ・マメ 


キンキコルリ・10-やっぱりニシコルリ

2025-02-21 23:16:42 | キンキコルリ(兵庫県中部)

昨年の10月20日にIエリアで採集したコルリクワガタの幼虫が羽化しました。

兵庫県でのキンキコルリとニシコルリの分布境界調査について

中部地方周辺で発見したコルリクワガタは

便宜上「キンキコルリ」のカテゴリーで覚書しています。

カテゴリー「キンキコルリ」から入ると一連の調査につながります。

↓ Iエリアで採集した幼虫が羽化 

↓ Iエリアの記事「更に西のコルリクワガタ」

 

キンキコルリ・7-更に西のコルリクワガタ - クワガタ~スズメバチ等の覚書

はじめに兵庫県でのキンキコルリとニシコルリの分布境界調査について中部地方周辺で発見したコルリクワガタ種群は便宜上「キンキコルリ」のカテゴリーで覚書しています。カ...

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昨年Iエリアで材採集した新成虫はニシコルリでした。

同日に同じIエリアで材採集した終齢幼虫も先日羽化したのですが

体色は緑が強く、私の知るキンキコルリと雰囲気が似ていたので

念のため瓢箪坊主さんに交尾器の調査をお願いしたところ、早々に検証いただきました。

瓢箪坊主さん、いつもありがとうございます。

↓ 緑がきれいな個体

↓ Aエリアのキンキコルリ:羽化したIエリアのコルリペア

調査の結果は下画像の通り、特徴のよく出たニシコルリでした。

「もしかして?」と思ったのですが、やっぱりニシコルリ。

外見での区別は難しいですね。

↓ 調査・画像提供:瓢箪坊主さん

↓ Iエリアのニシコルリ

↓ メス腹面 

↓ この春に羽化しそうな Iエリアの終齢幼虫(2025.2.16)

2月も後半に差し掛かり、春はどこかに隠れているはずですが、寒さはあまり和らぎません。

県下北部でニシコルリの新芽観察は、タイミングさえ合えば比較的容易です。

中部のキンキコルリに関しては未知なる部分が多く、まだその域にはありませんが

昨年5月に産卵中のメスを観察できたことは

県下でのキンキコルリの生態に一歩踏み込めたと考えています。

ちょうどそのころは、マグソクワガタも現る

ルリクワガタも現るかも?の、「春のクワガタ祭り」です。

残雪と天候に左右されながらそれぞれの予定配分と

タイミングを見計らうのは少し難しいですが

キンキコルリの生態に関しては、もう一二歩進みたいです。

↓ 産卵中のキンキコルリ(現地で撮影:2024年5月)


ルリクワガタ・7-ほぼルリクワガタの厳しい現実

2025-02-16 21:23:49 | ルリクワガタ

2月16日、前々記事「ほぼルリクワガタ」の結果が出ました。

結果は、採集〜飼育した幼虫4頭のうち3頭は死亡、残り1頭が下の画像です。

↓ 前々記事「ほぼルリクワガタ」

 

ルリクワガタ・5-ほぼルリクワガタ - クワガタ~スズメバチ等の覚書

県下のとある山でルリクワガタと思える終齢幼虫を見つけました。発端は、先月中ごろのこと、ニシコルリ探しをしているとき大きめの倒木でルリクワガタらしき産卵痕を見つけ...

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↓ 2024年12月7日採集〜1頭ずつ個別飼育してきた

↓ カビて原型をとどめない幼虫

↓ こちらもアウト

「これは全滅かも」と思いながら最後のカップ(マット)を崩しました。

「おっ!」マットから出てきたのはオスの蛹、間違いなくルリクワガタ属の蛹です。

しかも今日明日にでも羽化しそうな状態です。

↓ 羽化直前のオスの蛹が出てきた!

貴重な最後の1頭を凄いタイミングで掘り出し

これが本当にルリクワガタなら「あの山の分布が確実になる」などと

一人喜んでいたのですが、まったく動きません。

もしかしてご臨終?

画像を拡大してみると、体表には白い菌系らしきものが僅かに見えました。

経験上、このパターンはそのまま菌に巻かれて白くなり、最後は緑白色。

最後の頼みの綱がゴール直前でコケました。

↓ 大アゴの形からすると、ほぼルリクワガタなのだが・・・

↓ 蛹では背板の形もわかりずらい

↓ このまま菌に巻かれてしまう

結局結果は、「ほぼルリクワガタ」のまま。

県下でのルリクワガタ属調査の厳しさを、今回は違う角度から味わいました。

春にはもう一度現地でしっかり探してみます。

 

余談〜エアコントラブルの巻

エアコントラブルで15万円儲けた錯覚に陥りました。

年末に4回ほど発生したエアコントラブル(室内機に霜が付き効かなくなる)

この時は、毎回数時間にわたり室温が0度まで下がりました。

温度計によっては-0度の表示もあり

今回のルリクワガタ属のように当時前蛹あたりのステージにあった個体は

その都度ダメージを受けたと思います。

年の瀬は押し迫ってましたが、さすがにそのままではまずいので電気店に連絡

目視と状況聞き取りの結果「修理は難しい」とのこと

霜が付かない寒冷地仕様系=17万円以上するエアコンの買い替えを薦められました。

3畳の虫小屋に17万円? 罰が当たるわ、悩む隙間は1ミリもありませんでした。 

翌日、全国ネットのエアコン修理屋さんに点検を依頼

「これは直りますよ」と即答

ガスパイプ内にある空気と霜(結露〜霜)の除去

室内外の過剰に折れ曲げて設置されていたパイプの改善(ガスの通り)

最後にガスを充填、それと出張費、締めて2万5千円也!

それ以降は問題なく運転できており、すぐに駆け付けてくれたプロに感謝しています。