クワガタ~スズメバチ等の覚書

Photo & Text byこよみ / Xジジック

虫屋のEEZ!

2025-04-06 17:02:16 | クワガタムシ関連

虫屋のEEZ

*EEZ=本来の意味は、排他的経済水域( Exclusive Economic Zone)のこと

 排他的=自分や自分の仲間以外の者を退けて受け入れない的なこと

*虫屋=ここでは虫を愛好する者全般のことを意味し、生業を意味しない

みなさんは自分だけの採集ポイント・観察ポイントを持っていますか?

フィールドに出る方ならほとんどの人が自分だけのポイント

或いは自分と信頼する仲間だけの秘密のポイントを持っていると思います。

それは、クワガタムシやカブトムシだけに限りません。

蝶・カミキリ・コガネ・ハナムグリ・水生昆虫などあらゆる種に及び

フィールドに出れば出るほど自分が得意とするエリアや、場所は増える傾向にあります。

そして、地理的なことの他にも経験から得た知見は蓄積され

いつの間にか多くの情報を抱え込みます。

私はこれらのことを、虫屋のEEZ「排他的採集領域」みたいに感じることがあります(以下EEZ)

↓ 近くには秘密の棲息場所があった(キベリハムシ)

このEEZは、自分一人だけで抱え込みの場合は比較的平穏です。

誰かと共有した場合は時にセンシティブなものが入り込み

一旦嫌な方向に向いてしまうと

真実・誤解含めてちょっとしたトラブルを引き起こすこともあり

他の誰かに無断でポイントを教えたとか、ポイントを荒らしたなどという話は

昔からある虫屋のEEZ的な、代表的トラブル話です。

↓ ひっそりこっそりクワガタ探し

↓ 標高1000m超のブナ帯の黒カナブン、おそらく県下分布の最標高

↓ 不意に飛んでくる場所がある、ヨコヤマヒゲナガカミキリ

↓ ○○のニシコルリは相対的に大きいと感覚的に感じている

私は「秘密のポイント」という言葉が好きです。

時には自分の「秘密のポイント」を誰かと共有することもありますし

逆に、誰かに教えてもらった「秘密のポイント」もあり、それは敬意のポイントです。

↓ 敬意のポイントにてライトトラップ成果(全部オオクワガタ)

↓ 絶対誰も探さない場所のマダラクワガタ

↓ ブナ帯のチャイロスズメバチ

↓ カバフキシタバが飛んでくる場所がある

↓ ムラサキシタバ、さすがに大きくキレかった!

↓ ルッキングで見るヒメオオクワガタ

↓ ○月○○ころは金色ミヤマが期待できる

飼育のEEZ!

例えば、ほんの数年前までは検索してもヒットしなかったチャイロマルバネのマットレシピが

この2~3年でいくつかヒットするようになり、それまでやや独占的であった㊙マットも

今ではレシピが愛好家に浸透しつつあり

飼育の排他的な部分が少しずつ解放されてきたように感じます。

↓ 浸透しつつあるチャマルマットのレシピ

↓ チャマル・インビタ・ブルークツヤなどに汎用性あり

難関種マットの作り方 - クワガタ~スズメバチ等の覚書

難関種マットの作り方 - クワガタ~スズメバチ等の覚書

はじめに現在、ヤエヤママルバネやオキナワマルバネ等の国産大型マルバネの飼育方法はほぼ確立されており、愛好家に広く知れ渡っています。一方で小型種であるチャイロマル...

goo blog

 

↓ 汎用性のあるマットで育ったブルークツヤクワガタ

↓ インビタにも汎用性あり

ツキノワグマのEEZ!

私の行動範囲はツキノワグマのEEZと被ります。

近年ツキノワグマはしれっとEEZを拡大しつつあるようで

各地でクマの目撃情報や、被害報告が増えています。

20年ほど前なら、クマがいるといわれているブナ帯でも実際にクマを見たことはなく

熊に対する恐怖心もほとんどなかったので、一度は近くで見たいと思っていましたが

今は、複数人で入山してもクマの心配は抜けません。

最後に

今回は「虫屋のEEZ」と題して

少し深く、伝わりずらい記事になってしまったかもしれません。

春は手の届くとこまでやってきました。

今年も多くの人にお世話になりながら、虫屋を楽しんでいきたいと思います。


マルバネ(マット)飼育とコバエについて

2025-03-30 23:17:18 | クワガタムシ関連

マット飼育とコバエについて

クワガタムシやカブトムシの飼育にコバエは付き物です(小型のハエの総称)

特にカブトマットのように黒くなるまでよく腐食して水分も含んだマットは

コバエの幼虫がよく育つ格好の繁殖場となります。

そして、コバエの発生はマットの劣化を加速し

飼育する幼虫への影響も気になるだけでなく、精神的・衛生的にもよいものではありません。

カブトムシをあまり飼育しない私のところでは、コバエの発生は常時ではありませんが

毎年発生し、対処に迷うことがあります。

今年は国産マルバネのまとめ飼いケースにコバエが発生しました。

 

最低でも2種類のコバエ

私の飼育小屋で見るコバエは見た目の判断で最低でも2種類います。

1種は体長1.5~2㎜くらいで黒味があり、もう1種はそれより小型で羽が青〜紫がかって光る種です。

この二つは見た目の区別が容易で、今回マルバネ容器に発生したのは後者の方です。

私はこれまでにマキシムスマルバネ(規制前:タイ・台湾)・オキナワマルバネ

ヤエヤママルバネでコバエの発生を経験しましたが

いずれの場合もコバエ発生が原因と思われる幼虫全滅の記憶はありませんので

私には、コバエ=緊急事態・切羽詰まるという意識はあまりなく

その都度、同様の配合マットを準備し、タイミングを見て全交換してきました。

マルバネクワガタの場合、マットの全交換は笑われますが、私はそうしています。

ただ、蛹室を作るような時期のコバエの発生は、嫌な予感がしますので早々に交換します。

↓ 全交換に向けてマット作成 よく発酵したマット+赤枯れ(2025.3.中旬)

↓ 山土を使った低栄養マットはコバエが育つ環境にない(画像はチャイロマルバネ飼育)

↓ 白い異物はコバエの幼虫・大きい異物は国産マルバネの幼虫(2025.3.30)

↓ コバエ幼虫入りマットでも育つ(2齢後期と終齢初期幼虫 2025.3.30)

 

コバエの侵入経路

コバエの侵入経路として考えられるのは

1.容器の隙間から侵入

 コバエ侵入防止を意識した容器でも開閉時など含め、侵入の可能性は大いにあり

2.外部より入手時に混入

 コバエ排除は難しいので、明日は我が身としてお互い様

3.マット保管時に侵入

 洗濯ネットや冷凍庫保管などで対策可能だが、後者は一般的ではない

4.最初からマットに混入

 商品によっては袋に通気口が設けてあるので致し方ない

↓ 洗濯ネットによる進入防止対策

↓ マット全交換のついでに個別飼育開始(2025.3.30)

巻頭でも書いたようにマット飼育とコバエはつきもので、永久的に排除するのは困難です。

以前、針で開けたプリンカップのフタ通気口に腹部が入っているコバエを見たことがあります。

カップの中には他のコバエは見つからなかったので

通気口直下のマットに産卵をしようとしていたのかもしれません。

↓ プリンカップの通気口も安心はできない・もっと細い針で開けたい

最後に

どこからともなくやってきて、わずかな隙間を見つけ出し、したたかに繁殖するコバエ

振り返ると、これに勝ち目はないと思われ

少しでも長い期間、長い時間排除出来たら「大したもんだ!」とするのが

より現実的なのかもしれません。

↓ 殺虫灯の効果は高いが、蛍光ランプはよく切れる

↓ 殺虫灯の「取説」と、交換用「蛍光ランプ」は心の支え


2024年インセクトトピックス

2024-12-30 23:01:44 | クワガタムシ関連

2024年インセクトトピックス、これが今年最後の記事になります。

 

厳寒期以外はルリクワガタ属

一年のクワガタ関連の活動を振り返ると

積雪・凍結のため入山できないときと夏の高温時以外は

ルリクワガタ属の探索が増えました。

また、5月には静岡のYさんが、11月には東京からWさんが遠征され

ルリクワガタ属の探索を一緒に楽しみました。

↓ ニシコルリ(4月県下にて)

↓ 材に付くキンキコルリのメス(5月県下にて)

↓ ニシコルリ(10月県下にて)

↓ ルリクワガタと思われる産卵痕(11月県下にて)

採集した幼虫は飼育継続中で、いくつかは既に羽化しました。

また、ルリクワガタ属として扱われているオレゴンルリクワガタも

徐々に生態がわかってきたので飼育に少し余裕ができました。

↓ オレゴンルリクワガタ(カルフォニア産)とルリクワガタ(兵庫県産)

↓ オレゴンルリクワガタの産卵痕と産座と材中のオス

 

済州島産アスタコイデスノコの累代飼育

飼育は、一代で終了しようと思っていた済州島のアスタコイデスでしたが

実際に羽化させてみるとこれがなかなかよいもので

もう少し大きな個体で比較してみたく、繁殖を継続しました。

↓ 飼育個体:60㎜超でも一番大きな内歯は大アゴ基部寄り

↓ 右:済州島産飼育個体 左:台湾産野外個体

先代は、500cc程度のプリンカップマット飼育でも60㎜ほどの個体が羽化したので

今代はマット(市販)を選り好みしました、「大きくなる」と評判のマットです。

状況に応じて餌追加、容器Size変更なども予定しており、目標は65㎜。

 

ライトトラップ

今年はできるだけ多くの場所でライトトラップするつもりでしたが

いざ現地に向かうと、昨年の台風7号の影響はとても大きかったようで

複数個所の林道が未だに通行不可になっていました。

そのためライト設営出来たポイントは限られてしまいましたが

ヒメオオクワガタ・オニクワガタなどブナ帯の顔ぶれは揃いました。

↓ 見た目が「the 蛾!」な、カバフキシタバ 

 

また、今年はライトに飛来したチャイロスズメバチにも刺され

久しぶりに毒をくらいました。

↓ チャイロスズメバチには「走光性」がある

↓ 手首まで腫れましたわ!

 

台湾の友人と23年ぶりの再会

台湾の蟲友Wさん家族とタイの方、一行が仕事の関係で京都に滞在。

Sさんの呼びかけで、琵琶湖博物館で再会しました。

再会に向けてすべてのセッティングをしていただいたSさん、ありがとうございました。

蟲友Wさんらとはたまにメールでやり取りはしていましたが、実際に出会うのは23年ぶりでした。

もう懐かしすぎて懐かしすぎて興奮が止まりません!

他の蟲友らの現在や、台湾のクワガタ裏実情など

現地でないと知りえない情報で談笑談議している間に時間はあっという間に過ぎました。

↓ 蟲友一行は京都の宿に戻りました

 

南西諸島のクワガタ・カナブン

アリヤマさんから西表のマルバネ

滋賀のSさんからサキシマアオカナブンをいただきました。

貴重な種をありがとうございました。

↓ サキシマアオカナブン(画像提供:Sさん)

サキシマアオカナブンに関しては模索しながら飼育を続けます。

また、長年使いまわしてきたマルバネ用マットに良くないことが起こっているのか?

たくさん採れたアマミマルバネの幼虫の歩留りがとても悪いので

マットを一から作るべく、赤枯れ等材料を調達しました。

そして、国内南国系ではクロカタゾウムシの羽化シーンも見ることができました。

羽化直後のクロカタはサイボーグのようで衝撃的でした。

↓ 念願の上翅が癒着する虫の羽化を見ることができた!

 

小屋の一大事!

12月13日のこと、いつものように小屋の扉を開けると、寒い!

?・・・これ何度? 温度計を見ると0度、中には-1度を表示する温度計もある。

あわててエアコンのカバーを開けてみると

真っ白に霜が付き、冷たい風が微かに流れています。

棚にある透明の飼育容器はどれも曇っており

霜の付いたエアコン画像すら残せないほど焦りました。

急いで霜をかき取り、あたふたしているうちに温風は出てきましたが

その後も同じトラブルが度々起こるため

今日(30日)、専門の業者さんに点検〜修理・ガス充填などしていただきました。

小屋には、本来氷点下あたりの温度を経験しないであろう種もいます。

一連のエアコントラブルで生体が受けたダメージのほどは、まだ把握できていません。

無事であることを願うばかりです。

 

動画とblog

この goo blog は動画を掲載することができません。

「百聞は一見に如かず」、したためた動画の一部を8月からXにポストしています。

ブログのほうは、採集や生態等に関して何かしら得たり

一つの区切りみたいなことがあれば、UPしているので

下書きのまま眠っている記事も少なくありません。

クルビデンスやヒョウタンクワガタその他、地味に飼育しています。

↓ これは Aegus imitator なのか?(中国産野外個体)

以上、今年のインセクトトピックスでした。

今年もたくさんの方にご訪問いただき、またお世話になり、ありがとうございました。

それではよいお年を        

 *テナガはヤンソニーのフィギュア


台湾からの back to the future!

2024-08-30 01:11:19 | クワガタムシ関連

台湾からの Back to the future !

23年ぶりに台湾の友人Wさんと再開しました。

台湾のWさん家族とタイの学生さん1名一同が、事あって京都に滞在されており

滋賀のSさんが琵琶湖博物館見学〜昼食会をセッティングしてくださいました。

またこの機会で、京都のFさんとも久しぶりに出会え、とても楽しい時間を過ごしてきました。

↓ 琵琶湖博物館にて23年ぶりに再開!(Wさん怪我でも元気) 

↓ 博物館の名前イメージは強いが、水物だけでなく、生物全般の展示がある

Wさんはクワガタ関連の台湾の友人で

私の中では訪台した2000・2001年のことはそのまま脳裏に焼き付いており

Wさんの顔を見るなり一気に23年前の扉が開きました。

↓ 2001年、拉拉山にて

↓ 2001年、霧の松崗 ここでクロサワネブト・ツノボソ・モチズキなど採集

↓ 倒木洞に溜まったフレークからクロサワネブトがたくさん出てきた!

↓ カラオケの聞こえる神社の境内にてタカサゴノコギリ

↓ ヒメミヤマ・クリイロミヤマ

↓ 台中の同定困難種と、クリイロミヤマ

↓ 巨大ミワ

↓ 現地飼育の大型トサカホソアカ

↓ 当時話題の「口水」看板!(ラーメン店)

↓ 琵琶湖のほとりで昼食

↓ 神戸のKさんからの預かりものは、日本の虫屋さんにお届けしました!

昼食会では、お世話になった現地友人らのことや、現在の台湾鍬形事情などに話が弾み

過去と現在を行ったり来たり、楽しい時間はアッという間に過ぎてゆきました。

そして、Wさんから台湾のお土産に2024年3月に発行されたクワガタ図鑑と

name入りのキーホルダーを頂きました。謝謝

この図鑑には近年に記載された

承遠深山鍬形蟲 Lucanus chengyuani Wang &Ko,2018

鄭氏肥角鍬形蟲 Aegus jenji Huang &Chen.2016

鍾氏熱帯班紋鍬形蟲 Echinoaesalus chunji Huang &Chen.2015

など含む58種が掲載されています。

↓ 張永仁著,  鍬形蟲58 野外観察超図鑑 2024.3. 1.遠流出版,

最後になりましたが、今回の楽しい集いと、ご馳走まで頂いた滋賀のSさん

台湾のWさんご家族、タイの学生さん、京都のFさん、ありがとうございました。 

カマキリ名人Kさん運転お疲れ様でした。

以上、台湾からの Back to the future でした。

謝謝 Khxbkhun


クワガタ飼育失敗特集

2024-02-11 17:09:58 | クワガタムシ関連

クワガタ飼育失敗特集

いろいろと思いがあって飼育するクワガタムシですが

ここ最近は、特集できるほど飼育失敗が蓄積しています。

今回はここ数年失敗ばかりの種や、あっけなく撃沈した種

うっかり産んでしまった種などの記事です。

 

カツラオオクワガタ〜空の産座ばっかり

野外個体を購入して必死で繁殖を試みましたが✖です。

埋め戻した産卵痕は20か所以上! 見た目は大成功でしたがすべて空の産座でした。

↓ カツラオオクワガタ(雲南省)

野外で産み終えたのでしょうか? オスメスともに死亡しました。

過去に同様の空産座を見せてくれたラマヒラタを思い出します。

現在は、産地の異なる野外個体を常温休眠させており「季節適応」の効果に期待しています。

 

ノセオオクワガタ〜羽化から17カ月

こちらもうまくいってません。

羽化から17カ月経過してやっと産んだ卵は2個、しかも腐りました。

前出のカツラ同様の埋め戻しはあるが空の産座が目立ちました。

2メス体制で現在屋外休眠中です。

私にとってカツラオオクワガタやノセオオクワガタはとてもめでたい種であり

どうしても繁殖させたいのですが、いまのところ難しいです。

 

マクレイコクワガタ〜地味にきれい

野外材割個体1ペアを飼育しました。

昨年春にセットを組みましたがメスは産まずに死亡しました。

何がいけなかったのかわかりません。

このペアは、飼育を通して気になることが一つありました。

それは、夏場でも足を硬直し、冬季休眠中のクワガタみたいになることです。

ただ、雌雄同様の状態になるため、そういう種(防衛行動の一つ?)なのかもしれませんが

カツラやスキッドなど地上性の強い種ならともかく

脚の長い樹上性のクワガタでこれをされると少し戸惑います。

その後、同産地のメス(野外個体)を入手してペアを復活させ、現在は休眠中です。

前出のカツラとかノセとかマクレイとか、とにかくめでたすぎるやつらは

私の中では「中国の産まないDorcus」として現在ひとくくりになっており

気が付けば「貢山」に行けるくらい使いました。

それでもめげず、これらは飼育により体内時計に狂いが生じているのではないかと勝手に想像し

この冬は、季節適応を意識した常温で休眠させています。

↓ 夏でも越冬中のような動き 疑死?

 

ツヤハダクワガタ〜材の塊

野外個体を入手して2代まではなんとか成功しましたが、全滅しました。

管理温度と赤枯れの質は1代目から変わらないので全滅の主原因ではないと思いますが

ツヤハダの喜ぶ赤枯れの塊を補充していなかったのが良くなかったような気がしています。

↓ 2セットとも死滅

↓ 終齢幼虫時に死亡

↓ 死亡後にカビなどの細菌類が付いたと思われる

↓ こうなると成長した幼虫の居場所がなくなる?

 

チリハネナシクワガタ〜普通種でしょ?

もともと後翅の状態を確かめたいがために入手したチリハネナシ。

死亡確認後に解体して後翅の退化度合いを調べることができ、一応の満足を得ました。

私の解体では上翅は硬くて開きませんでしたが

昨年見たYouTube動画では上翅が開いていました。

繁殖に関しては2回もトライしてますが失敗しています。

現地ではさほど珍しくない種のようですが、私には難しい。

野外個体で符節欠けや、元気のない個体でも容赦なく値下げされないのは残念残念。

 

ホラサビクワガタ〜手ごわい相手

観察することが難しいクワガタNo.1です!

動きが少なく「朝見た場所に昼もいる」そんなイメージです。

4メスほど飼育してきましたが、ほとんど産んでおらず

割り出しでは死亡した幼虫が出てくるありさま。

頭部のホール・突起の役割を知ろうと焦がれて入手してきましたが

繁殖すらできていない状態です。

かと言ってあきらめたわけではありません。

現在も飼育中です、手ごわい相手No,1かも。

 

クロサワネブト〜産卵済か?

何せ現地で採集経験があるため、これは自信があったのですが

掘り出しでは幼虫が2頭出てきただけでした。

とりあえず「野外個体につき、産卵済」ということにしときます。

 

ヒメオオクワガタ〜早すぎた春?

去年のこと、屋外管理していた個体を春早く小屋に移したら

まもなく死亡しました、雌雄ともです。

昨年の夏、ライトトラップに飛来した2メスを屋外で休眠させており

今年は盛夏まで常温で管理してみます。

↓ 小屋下で休眠中

 

うっかり産んでしまったインビタビリス

昨年のこと、今年で飼育終了しようと呑気に構えていたら自力脱出して卵を産んでしまいました。

自分たちが生まれ育ったマットのため気に入らないわけがありません。

↓ ゼリーと一体化した団子(産卵床)

↓ 崩すと卵が出てきた(2023.10.9)

↓ ゼリー付き団子には2卵確認できた(2023.10.9)

飼育を楽しませてくれたインビタですが、予定通り飼育は終了しました。

 

アマミマルバネ〜全滅

初齢の段階で50以上確認できていたアマミマルバネですが

そろそろ個別飼育に移そうと生存確認したところ、終齢の段階で全滅していました。

使用マットはオキマル産卵に使っていたやつで、何がいけなかったかよくわかりません。

他のマルバネはまずまず育っています。

アマミマルバネは今年再チャレンジしますが、マルバネの失敗は精神的ダメージ大きいです。

↓ 他のマルバネは無事に育っている(2023.10.餌追加時撮影)

コツヤクワガタ〜飼育断念!

羽化ズレのため繁殖できませんでした。

その後、野外メスも購入したのですが産まずに死んでしまいました。

飼育終了です。

 

ゲンシミヤマ〜ペアならず

幼虫5頭飼育していたのですが、得られた成虫は1メスのみです。

最近は成虫・幼虫ともにそこそこ出回っており、価格も以前より下がっています。

もう一度飼育したいので購入のタイミングを計っています。

↓ 蛹室内で幼虫死亡

↓ 2024年2月9日羽化確認 メス

 

最後に 

ここ数年の飼育失敗はこの特集がすべてではありません。

他にもいろいろあります。

本気の観察をもってしてもうまくいかない種とか、相性の悪い種とかいたりします。

また、失敗ではないけど鳴かず飛ばずで記事にはしていない種や

地味に繁殖継続している種もいます。

例えば「赤いクルビデンス」は、記事にするほど赤いのが出てません!

以上、今回は「飼育失敗」と、鳴かず飛ばずのアラカルトでした。

↓ 少し赤いクルビデンス(ブータンチュカ産)

↓ 西表の野外個体は産んでくれなかった!


2023年インセクトトピックス

2023-12-31 15:52:18 | クワガタムシ関連

2023年インセクトトピックス

今年最後の記事になります。

今年もたくさんの方にご訪問いただき、ありがとうございました。

また、DMでの交流や、新たな出会いなどもあり

今回は、充実した一年の一部をトピックしました。

 

兵庫県でルリクワガタ属2種採集

今年は、県下で新たに2種のクワガタムシを確認しました。

一つはルリクワガタ、もう一つはキンキコルリクワガタです。

↓ 兵庫県産ルリクワガタ

↓ 兵庫県産キンキコルリクワガタ

当地のルリクワガタに関しては

教科書片手に探すと、発見に時間がかかることもわかりました。

また、コルリクワガタに関してはブナ帯でなくとも

植林の中に残された小規模な二次林にでも棲息していることを知り

私の中の、コルリ=ブナ帯というイメージが完全に崩壊した年でした。

これで、兵庫県に分布するクワガタムシ17種を確認しました。

マグソクワガタ・マダラクワガタ・ルリクワガタ・ニシコルリクワガタ

キンキコルリクワガタ・ミヤマクワガタ・オニクワガタ・ノコギリクワガタ

アカアシクワガタ・ヒメオオクワガタ・スジクワガタ・コクワガタ・オオクワガタ

ヒラタクワガタ・ネブトクワガタ・チビクワガタ・マメクワガタ

以上17種、県下全種コンプリートと言いたいところですが

もう一種、消極的な情報で構成される「ツヤハダクワガタ」というのがあるので

来年も探索は継続します。

東北でオオクワガタ

神戸のKさんの案内で東北遠征し、ライトトラップでオオクワガタを採りました。

野生のオオクワガタです。やっぱりいるんですね!

東北でのライトトラップでは、オオクワガタをはじめとする沢山のクワガタが飛来しました。

2日目には、ヨコヤマヒゲナガカミキリも採れました。

ルリボシカミキリを初めて見ました。

ミヤマクワガタは、標高200mほどでも、やはりエゾ型が混ざりました。

基本型・フジ型・エゾ型など、ミヤマクワガタのタイプの異なる歯型出現には

「環境温度が関係している」というのがクワガタ屋界隈の与論かと思いますが

私は、遺伝的要素が強いのではないかと感じています。

↓ 参考画像:標高約1070mで飛来した歯型各種(兵庫県)

東北現地は、植林だらけの関西とはかなり違って見え

ヤナギの木が巨大、ミズナラが巨大

そして、関西では主役の「クヌギ」は少ないように感じました。

オレゴンルリクワガタ

生態に関しては、学名で検索してもほとんどヒットのないオレゴンルリクワガタでしたが

今回の飼育で生態のあらましはつかみかけており、現在も飼育中です。

脚部の棘や硬い外骨格、生態など

アジアに分布する一般的なルリクワガタ属とは一線を画す種であることは間違いないです。

仮に、それらと属が違っていても違和感を覚えません。

来年にはオレゴンルリクワガタの追加記事が書けますように・・・

本土ヒラタの悲劇

むし社の企画「飼育レコード(BE KUWA.89)」から本土ヒラタが排除されました。

理由は「交雑」だとか・・・今頃になって生き虫界に暗い影が落ちました。

それからすると「超大きいスジブトヒラタ」とか、「超太い角のヘラクレス」みたいに

混ぜるものが見当たらない系は、わかりやすく、素直に驚けてよい。

 

昨日、キナバル山からダイレクト

12月30日、「今夜キナバル山でライトトラップするから来ないか?」とラインがありました。

キナバル山? 今頃? どこどこ? 調べたら・・・「ボルネオ」でした!

「車を飛ばしていくけど、間に合うか微妙」と返信して、自宅で夜を待ちました。

ボルネオのキナバル山でライトトラップをしたのは

「エアブラシのやっさん」です!

現地からカマキリや、クワガタなどの画像や動画がリアルタイムで送られてきて

興奮したりして、ちょっと電話したりして、まるで自分が現地にいる気分になりました。

「やっぱりやっさん、すごいな!」と思いながらこの記事を書きました。

なお、画像使用許可は承諾済です。

最後に

今年は、兵庫のコルリクワガタ分布境界探しで

年の瀬までクワガタ関連が詰まる珍しい年になりました。

この調子では来年も多くの方にお世話になること必須です。

来年も、どうぞもよろしくお願いいたします。

それでは、奈良の美味しいおかきを食べながら失礼します。

よいお年を


ワンランク変態の採集用品

2023-12-10 21:58:48 | クワガタムシ関連

クワガタ採取や飼育の用品は、ブログやYouTubeなどでたくさん紹介されています。

ここではほとんど一般的ではない「変態(体)的クワガタ採集用品」の紹介です。

持っていて妙に役立つ「ワンランク変態」の採集用品と、その周辺です。

ブロアー

ライトトラップの撤収時に使います。

機材や衣服等に付いた虫を吹き飛ばし、落とすのです。

「現地の虫は現地で!」人による分布拡大が防げることもあります。

ライトトラップの後かたずけは結構面倒で、特に沢山集まったときの撤収は憂鬱になります。

ブロアーがあればカメムシなんかもおもしろいように吹き飛びます。

小型なのでさほど荷物にもならず、一度使えばもう手放せません!

機種にもよりますが、フル充電で3回ほどのライトトラップに使えます。

コンパクト掃除機

ブロアで吹き飛ばしたつもりでも、帰りの車内を飛び回る虫もいくつかいます。

それらを一瞬で吸い取るアイテムです。

普段は小屋で使用してますが、ライトトラップ帰りにも使います。

フロントガラスや目の前を飛び交うウザイ小虫をさっと吸いとり、帰りも快適!

↓ ホームセンターで買ったアイリスオーヤマの掃除機

↓ 充電中

「日本野鳥の会」の長靴

「日本野鳥の会」の製品です。

柔らかい素材でできており、地下足袋感のある長靴です。

ちょっとした斜面で踏ん張りが効き

軽いので足への負担も少なく、慣れると癖になります。

通常の野山ではこれを使っています。

たまに同じ長靴を履いた人も見かけます。

ただ、登山めいたことするときや、積雪時には薄すぎて厳しく感じるので

そういう時は、トレッキングシューズに切り替えます。

↓ コンパクトに収納

捕虫網

志賀昆虫のアルミ製くりだし竿500cmと、ジュラルミン製くりだし竿250cm

どちらも任意の長さで固定できるのが特徴です。

「任意の長さで固定できる」これがミソです。

採りたい虫はまあまあ近くにいるのに竿のせいで5m離れて採集する?

採集距離は竿が決めるのではなく、人が決めるのです。

好きな長さで固定できるため竿が長すぎてもてあそぶことはありませんが

500cmのほうは、重量はそこそこあるので大人向き。

ジュラルミン250cmは軽くて扱いやすく、かなりお気に入りです。

高度計 

高度は、スマホの「高度計アプリ」や「位置情報」なんかも利用できますが

ロケの良くない深い山中でのアプリは現実的ではありません。

リアルタイムで高度を知りたいわけです。

私が使っているのは「SEIKOプロスペック アルピニスト」というやつ

防水で、高度・気圧・方位・温度など測れますが

実際に使用するのは高度と時間を見るくらいです。

ヒメオオクワガタのようにある程度標高を意識して探すときに役立つ必需品です。

材採集道具

虫研の「タコ採れ君」、いつ購入したかは忘れましたが今も現役です。

購入当時は19000円ほどしたとうる覚えがあります。

材割中に斧の部分が飛び、何度か「ひやっ」としています、怖い思いをしました。

ホームセンターでクサビを買って打ち込んでからは外れることなく使えています。

柄は一度替えたような記憶があります。

今ではあまり見かけないので、まあまあ変態です。

今峰ライト

「あっ! そうそう、変態で思い出したけど」、確かに、これもワンランク変態!

Monsterイマミネ、来年もお世話になります。

「Monster」シールは、カバー外し忘れ対策

誘因トラップ用の虫かご

実際の使用は来春からとなりますが、現時点で期待は「大」です。

来春、メスを使用した誘因トラップに使う予定です。

匂いが放出され、観察もしやすい虫かごをAmazonで見つけ購入しました。

やわらか素材でカブトムシなどを入れるには不向きですが

折り畳みができ、収納しやすいです。価格は1000円しなかったです。

発注から実際に届くまで一週間ほどかかりました(発送元中国)

ブランド:JETKOUGEI 20x20x20

熊よけ系

おもちゃのピストル・スプレー・鈴・ホイッスル

ピストルは、1000円未満のおもちゃで、そのもの自体は違法ではありませんが

取り扱い次第では迷惑行為につながるので、本当に嫌な予感がしたときだけ使います。

「熊は臆病」と聞きますが、私には「臆病」として映らないので遭遇したくありません。

ポイズン リムーバー

毒のある生物に咬まれたり、刺されたとき用です。

まだ一度も使用したことはありませんが

オオスズメバチ・キイロスズメバチ・ムカデに何度も刺されたことのある者として

痛さを知るものとして、リュックに忍ばせています。

経験者曰く、これを使うのと使わないのとではだいぶ違うそうです。

価格は、1000円しませんでした。

以上、どうでしたか?

今回は独断と偏見で「ワンランク変態(体)の採集用品と、その周辺」を紹介しました。


難関種マットの作り方

2023-04-10 20:16:07 | クワガタムシ関連

はじめに

現在、ヤエヤママルバネやオキナワマルバネ等の

国産大型マルバネの飼育方法はほぼ確立されており、愛好家に広く知れ渡っています。

一方で小型種であるチャイロマルバネの飼育方法については知れ渡りが狭く

SNS等で得られる漠然とした情報を基に適合するマットを作り出すことは難しく

高額な生体と努力の結果、自分が攻略されるのは悲しいものです。

↓ 飼育方法が確立されている国産大型マルバネ(オキナワマルバネ)

↓ 国産小型マルバネ(チャイロマルバネ)

今回の記事は、チャイロマルバネ・ブルークツヤ・コツヤ・インビタビリス等の

所謂「難関種」と呼ばれるクワガタに私が使っているマット

「妄想マット(便宜上の名前)」の作り方を説明させていただきます。

↓ 妄想のマット関連記事

 

ブルークツヤクワガタ・4-体内バクテリアは本当に必要か? - クワガタ~スズメバチ等の覚書き

*カテゴリーから入ると産卵〜羽化〜考察につながります(8記事)。先々週、ブルークツヤクワガタの単独飼育を開始しました(以下ブルーク)。前記事では初齢~終齢幼虫まで...

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このマットで産卵〜羽化までを保証するものではありませんが

私のところではチャイロマルバネはもとより

インビタビリス・コツヤ・ブルークツヤなども飼育できました(汎用性)。

注)光の加減によりマットの色合いが実物とは異なって見える画像もあります 

↓ 妄想マットで羽化したブルークツヤクワガタ(メス)  

↓ マットが合えば飼育は楽なブルークツヤ

 

材料と作り方

材料:山土(基マット)・赤枯れ・水 

比率:山土(基マット)約50〜70%・赤枯れ約50〜30%・水適宜

作り方:材料を混ぜる

以上、いたってシンプルです。

材料がすべて自己調達できる場合は趣味を前提に0円マット。

皮肉なことに他種飼育のほうがお金はかかります。

コバエが湧いたり、雑虫が喜ぶマットは当該種にとって分解(腐食)が浅すぎ

特定の共生酵母に頼らない系(?)の種には消化が困難・栄養価が高すぎるように思われ

「産卵しない・幼虫が育たない」というのはこの辺りが原因の一つかもしれません。

例えば「完熟マット・Nマット・カブトマット」などがそれにあたります。

これらのような分解の浅いマットをメイン(基マット)に使うのはリスクが高いように思います。

仮に、きめの細かいふるいにかけ、パウダー状にしてもにわかに腐食度合いは変わりません。

また、赤枯れのみで飼育するのも難易度は高いかもしれません。

↓ 「妄想マット」の完成!  ブルークツヤ・インビタビリス・コツヤ等にも適合

↑ 温度合わせをして即日使用することもある(醗酵しない・雑虫はほぼ湧かない)

↓ pHは6.5〜7.0=弱酸性〜中性(今回はたまたま機器があったので計測) 

↓ 左:山土(基マット)  右:赤枯れ追加で妄想マット

↑ 土壌系のため比重が重く、乾燥しやすいのが欠点

↓ 妄想マットで育ったインビタビリス 2021.8撮影

↓ 妄想マットで育ったコツヤクワガタ

 

補足:山土について(基マット)

採土は所有者の許可が必要です。

場所は広葉樹の群生する自然林が好ましく

松やスギなどの針葉樹林下はできるだけ避けたほうが良いと思います。

区域によっては害虫駆除のために薬剤を空中散布しているところがあり

薬品が残留している可能性もあるので注意が必要です。

私はこれまでに3か所の土(100%で)をチャイロマルバネに試し、すべて採卵可能でしたが

場所によって地質は異なるため、どこのどれが適合範囲の中央なのかは試してなんぼになります。

チャイロマルバネに適合する山土であれば

ブルークや、インビタビリスなどの他種にも適合すると実感しています。

因みに私はシイの群生する林床土(黄土色系)を主に使用しています。

↓ 海に近いシイの森

山土使用のきっかけは、数年前にマルバネ用の赤枯れを採取しているとき

ふとこんなことを思いました。

「石垣島ならこういうところを掘ったらチャマルが出てくるのかな?」

まさかその辺の山土で・・・と思いながら実際にチャイロマルバネに使ってみると

翌日には容器底部に卵らしきものが・・・

その後は産むわ産むわでびっくり仰天でした!

古くからミヤマクワガタの飼育に黒土を用いることや

チャイロマルバネの幼虫は現地林床土から発見されることは知られていましたが

経験がないため実感はなく

私にとってクワガタムシの幼虫飼育=植物由来に、鉱物が入り込む出来事でした。

この山土は太古の火山由来の赤土で、火山列島日本には普遍的に存在するわけで

目視で「赤枯れ(植物)が少し混ざる程度の鉱物」と呼んでしまいそうなものです。

使用している土の質は、沿岸部のせいか砂色交じりの色をしており

粘度は通常の赤土に比べ遥かに低く、どちらかというとサラッとした印象です。

これをふるいにかけ異物を取り除き(ふるいを通る砂粒・石はそのまま使用)

赤枯れを混ぜてインビタ・コツヤ・ブルーク等の採卵や幼虫飼育に使用しているのです。

↓ 鉱物由来(?)の層では目に見える雑虫はほぼ出てこない

↓ さらさらした砂交じりの赤土系 表層部は赤枯れ交じり

↓ 採取した土は必ずふるいにかけて異物を取り除く

ふるいを通らないものは主に葉・根・樹皮・枝・石等ですが

極まれにオサムシの成体、ムカデなどが出てきますが土を餌としている生物ではありません。

通常はその土を食べて成長していると思える昆虫類はほぼ出てきません。

つまり、多くの昆虫にとって餌として魅力がないのでしょう。

↓ マットに粒状や白くに見える異物は山土の小石(ブルークツヤ羽化)

↓ 水は汲み置き、加水はアバウト 軽く握って団子が崩れそうな程度

種によってはふるいがけを終えた基マット(山土)を加水するだけで採卵にも使います。

これまでに基マット(山土)だけでチャイロマルバネ12メスの採卵を試したところ

全ての個体で産卵が認められました(1メスの最多産卵数は126卵)

また、私の使用する基マット(山土)は粘度が低いため扱いやすく

掘出しがとても楽ですし、何より鉱物由来?なため

発酵(腐敗)することがないので毎年使いまわしが可能です。

ただし、孵化~羽化までは赤枯れを入れた「妄想マット」を使います。

理由は基マット(山土)だけの場合、若齢期の死亡率が非常に高いため

採取した場所の基マット(山土)だけでは生育に必要な栄養分が足りないのか

或いは使用している基マット(山土)自体が幼虫の餌としてはあっていないのかもしれません。

↓ チャマルは基マットだけで採卵

↓ 幼虫は、妄想マットで飼育 チャイロマルバネ 

 

補足:山土の代替え

山土の代替えとして赤土のみでチャイロマルバネの採卵したこともあります。

実はこの時、一日あたりの産卵指数がこれまでで一番多かったのですが

粘度が高すぎて卵が取り出せず、結果として大大大失敗に終わり、最悪でした。

この他にも山土の代替えとしてホームセンターにある「赤玉土」や「黒土」なども

基マットとして試してみるのもよいかもしれません。

おそらく「難関種用」とされるマットで重量が重く感じるときは

赤玉土・黒土の含まれるものが多々あると勝手に想像しています。

赤玉土については粉砕した(レンコン栽培用)商品もあるようで

自家で粉砕する手間は省けそうです。

↓ 左:山土 右:園芸用赤玉土

↓ 乾燥に注意! 湿らすとその分深い色になる

今回記事にした妄想マットの適合性(羽化までの生存率)は

種によって多少差があること、大型は出にくいなどといったことがあり

山土の質や管理方法含め、不安定で完成度は高くないのですが

基本的な部分では外してはいないと考えており

飼育が難しいとされているサラシンツヤや、カズヒサツヤ(入手困難)などにも

通じるマットレシピではないかと思っています。

現在は、少しでも大きな個体を羽化させるべく

栄養添加という意味で、市販のマットを少量混ぜたりして様子を見ています。

↓ マットと融合しにくいペレット状の糞が妄想マットの原点

↓ 妄想マットで死亡する個体もある(チャイロマルバネ)

↓ 過去に何度も失敗したカズヒサも、妄想マットで飼育できそうな気がする

 

最後に

実は、この記事は長らく眠っていた下書きを起こしたものになります。

マットの素材や作り方、飼育方法についての考え方は人によって異なると思いますので

参考の一つとしてお考え下さい。

野生生物の保護に関して何らかの規制が検討されるとき

「飼育方法の確立」というのが規制の強弱に影響を与えることもあります。

全国に普遍的に存在するであろう基マット(山土)や、園芸用品の利用で

より身近で完成度の高いマットが作り出され、難関種の飼育方法が確立されることを願います。

 


2022年インセクトトピックス

2022-12-30 19:47:32 | クワガタムシ関連

2022年インセクトトピックス

今年も沢山の方にご訪問いただき、ありがとうございました。

今年最後の記事はこの1年の振り返りです。

 

コルリクワガタ・ゲニ調査

気になっていたコルリクワガタのゲニタリアの形状がわかりました。

といっても調べたのは私ではなく、瓢箪坊主さんが調べてくださいました。

このコルリは異なる二つの山塊で採集した個体で

調査の結果は、どちらもニシコルリの特徴を有するということでした。

以前から少し違うように感じていたのですが

どちらも同じということがわかってすっきりしました。

↓  Platycerus viridicuprus viridicuprus Kubota,2008に相当

 

モンスター今峰

今年は、ライトトラップで初めてヒメオオクワガタが飛来しました。

Tさんも初めてヒメオオクワガタをHIDで採集しました。

↓ 7・8月ヒメオオクワガタ飛来

 

夏の夜は、紫外線透過ガラスの強さを感じながら過ぎていきましたが

問題が一つ、それはライトカバーの外し忘れ。

途中で気づく度にそれまでの照射時間を惜しむこと度々・・・

そこで対策、来年からはカバーの外し忘れなし!

今峰ライトは強いので「Monster」を貼りました!

 

ルリクワガタ?(・)マーク発見!

長年探し続けてきた兵庫県のルリクワガタ。

夏のブナ帯でそれらしき産卵マーク(・)を発見し、現在幼虫飼育中です。

日当たりの悪くないブナ倒木表面での発見時は2齢初期の段階で

比較的遅い時期に産卵されたものと想像できました。

現在幼虫は終齢で、正体を現すのは来年になります。

↓ 2齢初期と思われる 不明種

 

ブナ帯のクロカナブン

8月に標高約1070mのブナ帯で楓の樹液に付くクロカナブンを採集しました。

県下ではただでさえ発見が難しくなったクロカナブンが

1000mを超える高山帯で棲息しているとは思ってもみませんでした。

ほとんど人の手が入らない場所で暮らすクロカナブンは

将来的には、県下最後の砦になるかもしれません。

また、同所でチャイロスズメバチも複数発見し

灯火では早い時間帯にヨコヤマヒゲナガカミキリも飛来するという

それはそれは見事な1日がありました!

 

ヤフーオークション出品規制

環境省の絶滅危惧種に該当する種と予備軍のヤフオク出品規制で

施行間際にちょっとしたクワガタ売り買いブームが起こりました。

巷では、この規制により放虫(オオクワガタ)を懸念する声ばかりあふれていますが

放虫は、これまでとさほど変わらない程度にあると私は考えており

むしろ、この規制によって”種としてのオオクワガタ”が減ると思っています。

それともう一つ、

8月にヤフオクでオキナワマルバネ(?)が出品され、ある意味今年一番驚きました!

ただ、商品のタイトルは「オキナワマルバネ」でしたが

その特徴を確認できるまでの画質ではありませんでした。

最終的には出品は取り消されましたが、数日間出品された状態でしたので

オークション運営サイトのアンテナの感度がうかがえる一幕でした。

 ↓ 2022年8月24日現在

↓ オキナワマルバネ(国内希少野生動植物種)

 

飼育種の増減

毎年晩秋になると小屋のスペースに空きが出てきます。

特に好きなクルビデンスやマルバネ類等は継続して飼育していますが

産卵〜羽化までのサイクルを通して知りたかったことがある程度わかった種は

ひとまず飼育終了が、私のスタイルです。

例えば、ブルークツヤやルイスツノヒョウタン、マグソクワガタ等は飼育を終えています。

ドウイロクワガタは特別大きな幼虫1頭だけを残していますが、羽化したら飼育は終了します。

逆に、ホラサビクワガタやイッカククワガタなどのように

生態がよくわからない種では失敗と入手を繰り返しており、一向に凝りません。

↓ 秋にはチャイロマルバネの採卵も終えました

↓ こちらはチャイロマルバネ終齢幼虫

↓ 1頭だけ残したドウイロクワガタ


また、長らく望んでいたおめでたい種も手元に届きました。

狭い飼育スペースはそれでも隙間が多く、管理しやすさだけは抜群です。

↓ D.nosei

↓ D.katsurai

 

この他のもチリハネナシの解体や、テヌイサビ、済州島のアスタコイデスなどなど

中味の濃い1年となり、また、今年は近年になく多くの方と知り合うこともでき

次の年への期待は膨らんでいます。

 

それでは皆様よいお年を


2名様に差し上げます。

2022-11-20 00:03:26 | クワガタムシ関連

*追記2023年1月9日:企画は終了しました。

 

いつもたくさんのご訪問ありがとうございます。

興味本位でブログ記事の一部を書籍化しました。

需要があるかわかりませんが、この本を2名様に差し上げます(送料元払い)

本のタイトルは「兵庫県のクワガタムシーガチ概説」です。

ガチ概説は9ページです。

それ以降は、過去の記事から香ばしそうなものをpickupして60記事以上掲載しましたので

もしかしたら飼育や採集の参考になる部分があるかもしれません。

スズメバチやコガネムシ系の記事も含みます。

本の仕様はB5(雑誌Size)カラーで、300p以上ありますので厚みはあります。

嗜好・誌風の伝わる画像を添付しましたのでご参考ください。

  

 

だいたいこんな感じです。

暇なときにでも「読んでやろう!」という方がありましたら

スマホPC版・PC画面のプロフィール下にある「メッセージを送る」からご応募ください。

公開されることなく直接私に届きますので

応募が確認でき次第「受け付けました」の返信をいたします。

「コメント欄」からは受け付けることはできませんのでご注意ください。

 

⇩のところから応募してください(スマホPC版・PC画面)

 

応募資格は以下の通りです。

 1.参考画像と各記事タイトルから嗜好・誌風をくみ取ってくださる方

 2.本は実名になっていますので名前を晒さない方

 3.応募はお一人様一回のみ

以上3点です。

 

応募方法は、上記⇩の箇所から件名に「本希望」と書いて

本文にはページ数を予想してください。

 例)件名⇒本希望 本文⇒蟲太郎 333 

これだけでかまいません。

数字の入る匿名はややこしいのでNGです。

必ず匿名でお願いします。実名・住所・電話番号・挨拶文等は必要ありません。

また、このブログをフォローする必要もありません。

数字のヒントは、300〜400pの範囲です。

応募期間は、この記事PU〜11月30日(水曜)21時まで

応募が2名様以上の時は

予想ページ数が実際のページ数に近かった方(前後含む2名様となります。

ドローの時は、応募の早かった方を優先させていただきます。

当選された方には12月1日(木曜)にお知らせいたしますので

48時間以内に発送先などのやり取りをお願いいたします(送料元払い)。

48時間以内に返信がなければ無効として、次点の方にご連絡差し上げます。

*コンピューターによる書籍化のため、改行・段落等に一部見づらい個所があります。

 こともあろうか学名が斜体になりませんでした。ご了承ください。

それでは、よろしくお願いいたします。


クワガタ関連の書物・4

2022-10-20 23:50:45 | クワガタムシ関連

クワガタ関連の書物・4です。

↓ クワガタ関連の書物・1

 

クワガタ関連の書物 - クワガタ~スズメバチ等の覚書き

いよいよGWも終盤にかかりました。今日はクワガタ関連の本を取り上げてみます。順位は綴りごとに本の大きい順にしてありますので後尾ほど小さな本ということになります。...

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↓ クワガタ関連の書物・2

 

クワガタ関連の書物・2 - クワガタ~スズメバチ等の覚書き

以前にも「クワガタ関連の書物」の記事を書きましたが今回はその2になります。↓「クワガタ関連の書物」過去記事クワガタ関連の書物-クワガタ~スズメバチ等の覚書きい...

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↓ クワガタ関連の書物・3

 

クワガタ関連の書物・3 - クワガタ~スズメバチ等の覚書き

クワガタ関連の書物・3です。今回はスズメバチ等の本も併せて紹介していますので興味のある方はご参考ください。↓過去の書物紹介記事1.クワガタ関連の書物-クワガタ~...

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クワガタ関連の書物・4

今回は、今年発行された4冊を紹介させていただきます。

毎回ではありますが主観を入れて綴っていますので

いずれもご参考程度にお考え下さい。

 

学研の図鑑LIVE昆虫

  (総監修)丸山宗利 (副監修)中島聖大・中峰空,

              2022年7月5日. 株式会社 学研プラス. 2200円+税. 

315ページオールカラーで、クワガタムシからクモまで

身近な昆虫類2800種以上が収録されているので

沢山の図鑑を持たずしてちょっとした同定が可能です。

より専門的で詳しく知るには物足りないかもしれませんが

子供から大人まで楽しめる一押し図鑑で、価格を遥かに超えた内容です。

66分のDVDも付属して税込み2420円也! 

一家に一冊!、そんな図鑑です。

 

刺された!噛まれた! 危険・有毒虫図鑑.

  平坂寛, 2022年7月28日.  株式会社カンゼン. 1400円+税.

141ページでカラーイラストと写真掲載で、手のひらサイズ

テレビやYouTubeでもおなじみの、”あの人” の本です。

オオスズメバチやダイオウサソリに刺されてみたり

オオヒラタに挟まれてみたりと「刺された、挟まれた、噛まれた」の連続で

患部の写真も掲載されています。

結果は、痛み・持続性・凶暴性・パワー・遭遇しやすさ・かゆみ等

それぞれにレベル分けされており、また種の解説も詳しく丁寧です。

読んでいて緊張と緩和をもたらす妙な一冊ですが

随所に著者の生物に対する思いがあふれており、実は温かい本。

 

奥西表採集記 梅田晴行・波多野幸稀, 2022年9月.

西表島でのマルバネクワガタ採集記ですが、場所が・・・

29ページのうち、2ページは大変貴重な野外個体のカラープレートで

その後、採集記へと入っていきます。

表紙を見たらマルバネファンでなくともそそられてしまいます。

 

クワガタムシの生物学 若手研究者が大解説!クワガタの未知の世界

 荒谷邦雄, 後藤寛貴, 鈴木良芽, 土肥聖知, 三島達也, 棚橋薫彦, 田中良尚 ,星野光之介,

   2022年10月22日(既に発売中)株式会社エヌ・ティー・エス. 1600円+税.

生き虫界ではほとんど話題に上らないクワガタムシの菌嚢と酵母・窒素のことや

幼虫の栄養生理学など10のパートからなる最新の研究本。

飼育が難しいとされる小型のツヤクワガタやマルバネ・ネブトクワガタ等の秘密など

飼育するものとして知っておきたいことがぎっしり詰まっています。

少し話はずれますが

以前、台湾でオオマルバネ(マキシムス)の幼虫を探したとき

フレークの中から植物の極細い根がいくつか出てきました。

現地友人は「ここにはオオマルバネはいない!」と言って探すのをやめました。

その時は信じることができず後ろ髪を惹かれながら移動しましたが

今思うと、その植物の根に共生する窒素固定菌と

オオマルバネに共生する窒素固定菌との相性が良くないということだったのか?

この本は、そんな空想?まで抱かせてしまいます。

また、韓国では既にクワガタムシと窒素固定に着目している愛好家が複数存在します。

外国の昆虫飼育が許されるクワガタ飼育の先進国日本より

ある部分では台湾や韓国の飼育者のほうが先進しているのかもしれません。

この本は以前ご紹介した

「生物の科学遺伝 特集Ⅰクワガタムシ研究最前線」をさらに掘り下げた内容で

発行は同じく、株式会社エヌ・ティー・エス. 税込み1760円也! 

読んで損することはありません。

 

以上、今年発売されたオススメ4冊でした。


兵庫県のクワガタムシーガチ概説

2022-10-09 15:56:48 | クワガタムシ関連

はじめに (*投稿2022.10.9 更新:2024.7.27)

私のクワガタ採集は

県下に分布するクワガタムシ全種の居場所を突き止めることを目標にしてきました。

きっかけは1986年、南西部の雑木林でオオクワガタのメスを採集したことです。

この採集によってオオクワガタなるものが身近にいることを知りました。

オオクワガタの次に探したのは、ヒメオオクワガタやコルリクワガタ

マダラクワガタなどといった所謂高山系クワガタムシです。

そして、河原でマグソクワガタ、離島でマメクワガタを探し

残すはルリクワガタの居場所となったのですが

その壁は厚く、なかなか突き止めることができませんでした。

今回は県下で分布を確認したクワガタムシを私見で概説しました。

*この記事は更新することがあります

 

兵庫県のクワガタムシ ー ガチ概説 

県下で以下のクワガタムシを確認した(〜2023.11.23)

分類と和名は、2023年むし社「カレンダー」に倣った。

分布は棲息圏で表し、体長は割愛した。当ブログ「カテゴリー」に各種参考記事あり。

 

マグソクワガタ Nicagus japonicus Nagel,1928

分布:山間部の河原  灯火飛来:未知(昼行性が強い) 

古いタイプのクワガタムシで、分布の確認は県下で1か所のみ(2022.6.現在)

初めての探索で昼食のため降りた河原で発見したのは今でも奇跡と思う。

他にもめぼしい河原を何か所も探してきたが

発生期・好天気であったにも関わらず、発見するには至らない。

探せば新産地はあるように思うが、そこまで物好きなクワガタ屋はほぼいない。

県のレッドリストでは「要調査(2012)」とあるが

絶滅危惧種に指定されてもおかしくない、それほど見つからないのである。

成虫の活動は天候に大きく左右され、曇り空ではほとんど飛ばなくなる。

観察では、地表より水面のほうが飛翔高度が高かったことから

降り注がれる紫外線の反射量を頼りに地表と水面を見極めているものと思われた。

水面での着地は命取りになる。   

飼育では砂の中にでも蛹室を作ることが確認できた。成虫の後食はない。

 

マダラクワガタ Aesalus asiaticus asiaticus Lewis,1883

分布:ブナ帯  灯火飛来:未知(日中は飛翔するが) 

ブナ帯の赤枯れで発見できるが現在までに確認した棲息地は2つの山で計数ヵ所。

本種の好む赤枯れそのものが多くないため

普通種ではないと思ってよいし、絶滅を危惧しても間違いではないと思う。

運よく発見してもそっとしておいたら数年間は見ることができ

新たな場所を探すとなるとすぐには見つからないかもしれない。

過去に発見した最低標高は約380m(河原のため流木由来か?)

初齢幼虫は恐ろしく小さいが、終齢幼虫は成虫より大きい。

成虫は5㎜前後で、慣れるまでは注意して探さないと見逃してしまう。

意外とよく飛び、飼育では乾燥に注意するとある程度まで累代が進んだ。

成虫の後食は確認できない。

 

ルリクワガタ Platycerus delicatulus delicatulus Lewis,1883

分布:ブナ帯  灯火飛来:未知

県下に分布するが採集例はあまりにも少なく、頼れる資料はほとんどない。

2022年9月に標高約1100mのブナ帯で大きな倒木表面に産卵痕をみつけ

周辺部位を持ち帰り現在管理中(同年10月)だが、ルリクワガタが出てくる保証はなく

県下で発見がこれほど難しいとは正直思っていなかった。

ルリクワガタのメスは腹面が黒いのでコルリクワガタとの区別はたやすい。

オスは、大アゴや前胸背板の形状が異なるが、見慣れないと区別は難しく感じる。 

色形からすると次概説のコルリクワガタと似たような生態であることは想像できるが

春の新芽採集ではコルリクワガタしか見たことがない。

成虫の生態が判明すれば一気に見つかるかもしれないが

記載から141年たった今でも成虫の活動実態を知る人はおそらくいない。

*追記:2023.10.7:

2022年9月に採集した1幼虫は蛹で死亡した。

2023年8月13日、標高約1050mの倒木にて採集した1幼虫が

ルリクワガタ(オス)に羽化した(撮影:2023.10.6)

                        

これにより兵庫県で16種のクワガタムシを確認した。

母虫は、浮いた樹皮の隙間に入り込み産卵していたことがわかった。

この場合、樹皮を剝がさなければ産卵マーク(・)を見つけることはできない。

当地では、教科書片手に探すと、発見に時間がかかることを知った。

      

ニシコルリクワガタ  Platycerus viridicuprus viridicuprus Kubota,2008

分布:ブナ帯・山地帯 灯火飛来:未知(早春の夜間は低温)

時期・天候などタイミングが合えば発見できる。

2つの山の数か所を21年通った感想として、減っている認識はなく、良好である。

少なくとも上記2つの山では自然環境が維持される限り、良好は継続されると思え

絶滅を危惧するような状態ではない。

むしろ、押し寄せる規制の波にうっかり乗せられてしまうことを危惧する種。 

成虫は春の雪解けとともに順次発生していき

ブナなどのひこばえを齧って染み出る樹液を吸汁する。

本種のようによく飛び、複数のオスと多回交尾する種は遺伝子交流も盛んと思われ

累代飼育のような近親繁殖には向いていないのかもしれない。

ニシコルリは中部地方のブナのない林にも分布し

産地によって体の色にやや偏りがあるように思う。 

 

キンキコルリクワガタ  Platycerus takakuwai akitai  Fujita,1987

分布:山地帯  灯火飛来:不明 

トウカイコルリクワガタの北陸近畿亜種で、兵庫県には中部地方に分布する。

外見でニシコルリクワガタと区別するのは難しいが、オスの交尾器形状に違いがある。

画像の2オスは、標高1020m前後の植林された斜面に残る狭い広葉樹の林で

落ち葉に埋もれた黒ずんだ細い朽ち木から出てきた。

ニシコルリとの分布境界付近と思った山で採集した個体は、キンキコルリであった。

因みに、現地は北部のようなブナ帯ではない。

交尾器画像は、上が北部のニシコルリ、下が中部のキンキコルリ(調査・画像提供:E氏)

これにより兵庫県で17種目のクワガタムシを確認した。


 

ミヤマクワガタ Lucanus maculifemoratus maculifemoratus Motschulsky,1861 

分布:里山〜ブナ帯  灯火飛来:多い 

里山では少なくなってきた感がある。

灯火にもよく飛来する普通種だが、大きいと思っても60㎜後半で

70㎜を超える大型個体はそう簡単には採れない。

県下ブナ帯では個体数が多く、エゾ型も2割くらい混ざる。

過去に南部の猪名川変電所沿いの山中でエゾ型を採集したことがあり

また、知人は南あわじの内陸部で灯火によりエゾ型1頭の飛来を確認している。

大アゴ形状の出現型には温度が関係するという説は、どこまで本当なのだろうか?

オスの大アゴ出現型をメスの形態からうかがい知ることはできない。

 

オニクワガタ Prismognathus angularis  angularis Waterhouse,1874

分布:ブナ帯  灯火飛来:有り(辺りがいっそう暗くなってから)

8月上〜9月下旬くらいまで発見できるが昼間見つけるのは慣れないと難しい。

ブナ帯の立ち枯れや倒木などに付いていることがあり

林道を下向いて歩くと見つかることもある。

灯火にも飛来するが、小さいので見つけずらい。

成虫の寿命は1ヶ月前後で、後食は確認できない。

産卵から孵化までの日数は2週間前後とかなり早いため

母虫とその子供が重複して生存する期間があり、初期の成長の早さは興味深い。

「兵庫県版レッドリスト2022(昆虫類)」では「要注目」とあるが

棲息環境はほぼ維持されており、採集圧を唱えるのもナンセンス。

「発生期間が短いため把握しずらい・人目に付きにくい」程度に理解すればよい。

それが現状である。

 

ノコギリクワガタ prosopocoilus inclinatus inclinatus (Motschulsky,1857)

分布:低地〜ブナ帯  灯火飛来:多い

県下に広く分布し、標高1000m以上にも棲息するが

高標高ではミヤマクワガタが優先する。

また、場所によって個体数にムラがあるように思う。

県下では60㎜後半が採れたらかなり大きいと思ってよい。70㎜あれば化け物クラス。

カブトムシと活動が重なり、体色の変異もよく似ている。

灯火にもよく飛来し、色を付けてくれる普通種。

 

オオクワガタ Dorcus hopei binodulosus Waterhouse,1874 

分布:里山周辺  灯火飛来:有り(過去事例から) 

南部の猪名川地方では、探して探して初採りまでに1年半かかった。

今となっては養殖物の心配あり。

中部地方の記録地周辺には「亀岡タイプ」のあぜ木がたくさんあり

台場クヌギも見られたが、それは40年ほど前の話。現在ではほんの少し残る程度。

もしかしたら周辺の里山でひっそり生き続けているのかもしれない。

北部では、同一地域で10年に一度程度の割合で発見されていたようだが

近年では発見の話を聞かない。

オオクワガタは、国の絶滅危惧種に指定されているが

飼育技術の発達で「種としてのオオクワガタ」は溢れるほど維持されてきた。

2022年9月29日、ヤフーオークションで出品が規制されたことにより

「種としてのオオクワガタ」は減るはずである。

      

コクワガタ Dorcus rectus rectus  (Motschulsky,1857)

分布:低地〜ブナ帯  灯火飛来:有り 

どこにでもいる適応能力抜群の日本産クワガタムシ超勝ち組。

小型で複数年生存、そして多様な朽ち木に産卵し、育つという

いい加減さが勝利につながった。

和名に反して大型も稀に発見されるが、50㎜の壁は厚い。

また、標高1000mを超えるようなブナ帯にも生息するが

ブナ帯では、里山のような派手な樹液場がほとんどないので

活動個体は意外と見つけにくく、灯火による飛来で棲息を確認することの方が多い。

 

スジクワガタ Dorcus striatipennis  striatipennis (Motschulsky,1861)

分布:里山周辺〜ブナ帯  灯火飛来:少ない・晩夏に少し増える 

身を隠す樹皮めくれや、洞に乏しいブナ帯の個体群は総じて小型で

条件の良い洞や樹皮めくれでは二桁近い雌雄がまとまって見つかることがある。

また、それらの群をまとめ飼いしても喧嘩による致命的な傷は負いにくい。

ブナ帯と里山の個体群では後者の方が明らかに雌雄の体長差が大きく

両群は系統が違うように思え、追及すると面白いかもしれない。

昼夜問わず活動するが、同一木に定着する傾向が強いせいか

灯火に飛来することは少ない。

スジクワガタはコクワガタとよく比較されるが、よく見るとかなり違う。


ヒラタクワガタ Dorcus titanus pilifer Vollenhoven,1861

 

分布:低地〜里山  灯火飛来:少ない

個体数は多くはないが少なくもない、言わば「準普通種」的存在。

潜洞性が強く、条件の良い場所から大きな個体が優先する。

オスは小型になるにつれ体の光沢が増す傾向にあり、きれいに見える。  

60㎜を超えるような個体は少ないが、毎年のように60㎜超えの採れる林があった。

今思うと、狭い範囲で近親繁殖を繰り返していた可能性があり

飼育で感じたことが自然界でも起こっていたように思う。

子供のころ、片方の大アゴが折れ洞に逃げられてしまった個体を翌年に捕まえた。

1年越しの採集でクワガタの成虫が越冬することを知った。

灯火にもときどき飛来する。

 

ヒメオオクワガタ Dorcus montivagus montivagus (Lewis,1883)

分布:ブナ帯  灯火飛来:有り(メスのほうが多い)  

これまでに異なる3つの山塊で分布を確認したが

本種は雑木林のクワガタとは違い、ボクトウ蛾などの穿孔による樹液に頼らず

自らの大アゴで樹皮を傷つけ、樹液を自給するせいか

発生消長は独断的で、今だにミステリアスな部分を感じる。

灯火飛来は、概ね6月中頃から10月頃まであるが

盛夏のルッキングではあまり姿を見ないため、高温休眠(夏休眠)する習性があるのかもしれない。

発生のピークはおおよそ9月上〜中旬で

天候次第では10月に入っても活動する個体を見ることができる。

また、夜間も活動し、昼行性伝説は消えつつある。

林道開発のために切り倒されたブナが発生源となり、林道沿いで沢山発見できたのは過去の話。

残念ながら、リリースが無いに等しい現在では林道沿いでの繁栄はないが

奥めいた場所のめぼしい朽ち木からはそれなりの確率で成・幼虫が確認されているため

山中にはまばらに広く棲息しているものと思われる。

よってルッキングだけで個体数を推し量るには無理がある。

2002年6月、飼育下で初めて産卵を確認したとき

ヒメオオクワガタと出会って既に10年が過ぎていた。

この時の経験から、ヒメオオクワガタの活動サイクルは

「発生〜摂食・交尾〜越冬〜産卵(盛夏以前)」と仮説を立てた。

 (2003.1.LUCANUS  WORLD(34);株式会社環境調査研究所)

  

アカアシクワガタ Dorcus rubrofemoratus rubrofemoratus (Vollenhoven,1865)

分布:里山〜ブナ帯  灯火飛来:多い 

南部の里山では多くなく、北部のブナ帯ではヤナギに付く普通種だが

場所によってはヤナギが群生していても全く発見できないことも多い。

逆に、それまで全く発見できなかったヤナギに多数の個体が付く年もあり

樹液の匂いだけでなく、成虫由来の匂いに反応して集まるのではないかと思う。

雌雄ともに裏返すと足が赤いので(アカアシ)メスの同定も容易であり

オスは50㎜あれば大きいと思ってよい。

ヒメオオクワガタ同様に樹液を自足でき、天候次第では10月でも活動するが

夜間に気温が10度ほどになり、樹上で動けなくなっている個体を見たことがある。

標高1000m前後のルッキングではヒメオオクワガタへのリーチ的存在で

灯火飛来の1番バッターとしても活躍するアカアシは、かなりえらい。

 

ネブトクワガタ Aegus subnitidus subnitidus Waterhouse,1873

分布:低地〜里山  灯火飛来:極稀 

南部から北部まで広く分布し、生活圏はヒラタクワガタと重なるが

樹液場ではより低い場所や、木の根元で発見することが多い。 

樹液がしみ込んだ土中でまとまった数が発見されたりもする。

ある行政区間内では30㎜を超える大型個体の現れる場所が複数あり  

地域の天候(環境)が大型を育てる一因になっているのではないかと考えている。

樹液につくメスは産卵を経験している可能性は高いが

飼育に移しても産卵することはあるので、野外で産み終えたとは言い切れない。

幼虫は、腐食が進んだ朽ち木下の土中からも出てきたりする。

9月に入って他のクワガタが姿を消しても発見できることがある。

 

チビクワガタ Figulus binodulus Waterhouse,1873 

分布:低地〜里山  灯火飛来:稀に有り 

県下には広く分布するようだが、探すとなると簡単とは言い難く

どちらかというと、偶然発見することの方が多い。

冬季に朽ち木樹皮下付近で黒味の強い個体や赤みがかった個体が

数頭まとまった状態で出てきたことがある。

5月の天気の良い日に朽ち木から出てきたと思われる複数の成虫を見たこともあり

また、シロアリのコロニーから発見したこともある。

生涯の殆どを朽ち木の中で暮らし、配偶行動以外は雌雄同じような役割を果たす。

こういったクワガタは、性差が少なくなるので雌雄の判別が難しい。

 

マメクワガタ Figulus punctaus Waterhouse,1873

分布:瀬戸内島嶼  灯火飛来:未知 

簡単には見つからなかったし、飼育でも思うようには増えていない。

チビクワガタ同様に生涯の殆どを朽ち木の中で暮らす雌雄判別の困難な種。

親虫は幼虫がある程度成長すると養育を終えて朽ち木から出ていくようだ。

成虫は肉食性が強いが、共食いを好む様子はない。

ペット用のジャーキーなどを与えると

大アゴと小アゴひげとオレンジの舌を使って削り取るようにしてよく食べる。

分布の理由は黒潮に乗り漂着したとされるが、今でも移入はあるのだろうか? 

それとも島で近親繁殖を繰り返しているのだろうか?

いずれにせよ県下ではもっとも特殊な種であることには違いない。

累代飼育では、幼虫の成長に合わせて親虫を隔離しないと

親子の区別がつかなくなり、何代目かわからなくなってしまう。

渡し船の時刻表とにらめっこしながら探した県下の珍品。 

 

*このほかにあいまいな記録として、ツヤハダクワガタがある。

参考画像(静岡県産):ツヤハダクワガタ Ceruchus lignarius Lewis,1883

:他県の生息地ではマダラクワガタと同じ朽ち木(赤枯れ)で発見されたりするが

探すブナ帯の赤枯れからはマダラクワガタしか出てこない。

本種の国内分布状況からして、県下で発見されてもおかしくないはずで

むしろ確実な記録がないことの方が不思議であり、探索は止まない。

 

以上、生き虫屋が見た「兵庫県のクワガタムシーガチ概説」でした。

最後になりましたが

探索に幾度となくご協力いただいたTさん、カマキリ名人Kさん

ルリクワガタ属では神戸のSさん、関東のEさんのお力を借りしました。

ありがとうございました。

*更新:2023年10月7日:「ルリクワガタ」分布を確認したため追記した。

*更新:2023年11月23日:「コルリクワガタ」を

 「ニシコルリクワガタ」と「キンキコルリクワガタ」に区別した。

*更新:2024年7月27日:「ヒメオオクワガタ」

 

参考文献:

高橋寿郎,2000. 兵庫県のクワガタムシ1・2. きべりはむし(28-1・2).

藤井弘,2003.1.野外と飼育から見たヒメオオクワガタ.LUCANUS  WORLD(34).

 株式会社環境調査研究所.

藤井弘,2003.7 .扇ノ山のクワガタムシ.LUCANUS  WORLD(36). 

 株式会社環境調査研究所.

藤井弘,2005.春のもう一つのクワガタムシ.KUWAGATA MAGAZINE(24).

 東海メディア.

藤田宏,2010. 世界のクワガタムシ大図鑑・6.むし社.

参考URL:   

佐藤邦夫・永幡嘉之,1994. 兵庫県におけるルリクワガタ属の分布について

 iratsume_18_52-55.pdf (konchukan.net)

谷角素彦(監修)・山本勝也(編集・執筆),2010.

 兵庫のカブトクワガタ配布資料.indd (konchukan.net)

  兵庫県のカブトムシ・クワガタムシ.発行:NPO 法人こどもとむしの会

 ひょうごの環境 :: 兵庫県版レッドリスト2012(昆虫類) (hyogo.lg.jp)


人工蛹室で羽化したメスからのお願いー共生酵母

2022-06-04 11:53:37 | クワガタムシ関連

近年はクワガタムシを羽化させるのに「人工蛹室」を使う方が増えたように感じます。

確かに「人工蛹室」は羽化の様子がわかるだけでなく

羽化不全防止や新成虫の管理にも役立ちますが

メスを「人工蛹室」に移すのはちょっと待ってください!

今回の記事は、メスを「人工蛹室」で羽化させるといったい何が起こるのか?

ということについて簡単にまとめてみました。

クワガタムシのメスは

腹部末端に「菌嚢」と呼ばれる共生酵母の伝達器官を持っており

産卵時に共生酵母を卵殻に付着させて次世代に伝搬します。

孵化した幼虫は、母虫から伝搬された共生酵母の力を借りて育っていきます。

幼虫は、蛹室作成時に糞とともに母虫由来の共生酵母を排出し、蛹室内壁に付着させます。

羽化した新成虫は、羽化後数時間の間に腹部末端から露出した「菌嚢」を蛹室内壁にあてがい

振り子のように左右運動をして内壁に付着した共生酵母を「菌嚢」に再び取り込みます。

この行動によって母虫由来の共生酵母は次世代へと受け継がれます。

そのため「人工蛹室」で羽化したメスは

本来受け継がれるべき母虫由来の共生酵母を蛹室内壁から取り込めなくなるのです。

↓ 下羽をたたんでから取り込みは行われた(ノセオオクワガタ D.nosei

↓ D.nosei(メス)の共生酵母取り込み行動(2022.4.18)

↑ 腹部末端を大きく左右させて内壁に付着する共生酵母を取り込む様子

共生酵母の取り込み行動は、非常に派手でわかりやすい動きです。

羽化後、ある一定の時間に行なわれる奇妙な行動を是非観察してください。

「自然蛹室」の重要性について考えさせられます。

↓ オスは「菌嚢」を持たない。メスと同様の動きをするらしいが(?)

私は、オークションなどで気になる種を発見した時

「メスは自然蛹室で羽化しましたか?それとも人工蛹室ですか?」

などと質問することもしばしばで

「人工蛹室」で羽化したメスには抵抗があり、避けるようにしています。

↓ 「自然蛹室」で羽化した D.nosei のメス

過去にもクワガタムシの共生酵母に関する同じような内容の記事を書いていますが

羽化を観察・撮影したいとか、雌雄判別したいといった特別な理由がない限り

メスは「自然蛹室」で羽化させるべきと私は考えています。

クワガタムシの菌嚢・共生酵母については検索でたくさんヒットします。

商品としての「人工蛹室」は広く普及していますが

共生酵母の取り込みについてはほとんど認知されていないのが現状です。

クワガタムシのメスへの使用について「注意書き」などあれば

より自然で、健全な母虫誕生につながるのではないかと思います。

以上、「人工蛹室で羽化したメスからのお願い」でした。

参考文献・URL

棚橋薫彦,2018.クワガタムシの菌嚢と共生酵母

 「生物の科学 遺伝vol.72  2018 No.4 [特集Ⅰ]クワガタムシ研究最前線」

    発行:株式会社エヌ・ティー・エス.

クワガタムシ・コガネムシ類における昆虫ー菌類の共生関係の解明と保全生物額応用

https://kaken.nii.ac.jp/report/KAKENHI-PROJECT-14J09621/14J096212014jisseki/


クワガタ関連の書物・3

2022-04-16 18:14:22 | クワガタムシ関連

クワガタ関連の書物・3です。

今回はスズメバチ等の本も併せて紹介していますので興味のある方はご参考ください。

↓ 過去の書物紹介記事 1.

 

クワガタ関連の書物 - クワガタ~スズメバチ等の覚書き

いよいよGWも終盤にかかりました。今日はクワガタ関連の本を取り上げてみます。順位は綴りごとに本の大きい順にしてありますので後尾ほど小さな本ということになります。...

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↓ 過去の書物紹介記事2.

 

クワガタ関連の書物・2 - クワガタ~スズメバチ等の覚書き

以前にも「クワガタ関連の書物」の記事を書きましたが今回はその2になります。↓「クワガタ関連の書物」過去記事クワガタ関連の書物-クワガタ~スズメバチ等の覚書きい...

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クワガタ関連の書物・3

Stag Beetles of China Ⅰ 中華鍬甲(B5 288ページ)

 Authors : Huang Hao & Chen Chang Chin, 2010.    

  Publisher : Formosa Ecological Company.

Stag Beetles of Chinaシリーズ最初の巻です。

深山属(Lucanus)・似深山属(Eolucanus) ・古深山属(Noseolicanus)の54種で288ページ!

巻頭には検索表があり、そこから216pまで白黒ほぼ英文。

古深山属にはデンティクルスゲンシミヤマdenticulus がいます。

各種頭循〜交尾器まで特徴を示す部位の図示もあり、プレートは64あります。

次のシリーズⅡともに新・古書の流通は少ないです。

 

Stag Beetles of China Ⅱ 中華鍬甲(B5 716ページ)

 Authors : Huang Hao & Chen Chang Chin, 2013. 

  Publisher : Formosa Ecological Company.

Stag Beetles of ChinaシリーズⅡです。

カラープレート140pに加え、白黒で随所にサンプルの図示があります。

内容は、深山系〜Dorcusメインで、流行のコクワガタ系も多数掲載されています。

この図鑑ではD.chayuと思える個体D.noseiとして図示されています。

D.noseiメスの図示はⅢにもありませんので

昨年多く流通したD.nosei野外メスとされる個体も飼育結果などを頼りに

同定は慎重にならざるを得ません(「世界のクワガタG」メスの図示はおそらく違う種)

また、最近オークションでよく見かける中国生体の同定と

本書の同定に違いがあったりもします。

オークションでは産地が違う的な理由で ssp.として出品され

ssp.で価値を付けた(?)個体が他者へと受け継がれてしまったり

インドのアルナーチャル地方の一部が

チベット自治区として扱われていることも多々あります。

そのあたりの実情は「アルナーチャル」で検索すれば知ることができ

Google earthで見れば自然の様子も大方うかがい知ることも可能です。

 

沖縄のクワガタムシ(ポスター付属)

 下地幸夫著,2005年.新星出版株式会社. 1143円+税

ページ数(55p)は多くありませんが

沖縄のクワガタムシの生態解説と、写真が多く載っており

本の最後にはクワガタムシの飼育方法も書かれています。

ヨナグニマルバネの規制に著者の論文が影響したことは有名です。

 

虫や鳥が見ている世界

 浅間茂著,2019.中央公論新社. 1000円+税

紫外線写真がたくさん掲載されており

虫や鳥が見ている世界がわかりやすく解説されています。

紫外線領域で捕食者と捕食される側との攻防が繰り広げられています。

ニホントカゲやオカダトカゲの幼体の尾が青い理由や

昆虫が花に集まる仕組みなどとても興味深い内容の1冊です。

 

危険生物 外来生物大図鑑

 岡本光晴,2017年. 株式会社あかね書房. 3500円+税

95ページにわたり綺麗な写真でわかりやすく丁寧に解説された図鑑です。

内容は、子供から大人まで対応しており

クワガタ・カブトのことはコラムにあります。

一時期は品薄のため価格が高騰しましたが、現在は落ち着いているようです。

持っていて損のないオススメ図鑑です。 

     

日本有剣ハチ類図鑑

 寺山守・須田博久 編著,2016.東海大学出版部,24000円+税.

日本の有剣ハチ類515種が載っています。

解説と図版の2巻からなる重厚な図鑑です。

実物大でないのが残念ですが、蜂に興味ある方ならだれもが知る有名図鑑です。

 

スズメバチ  都市進出と生き残り戦略

 中村雅雄著,2012年増補改訂新版第1刷発行. (株)八坂書房.2000円+税

スズメバチの生態が詳しく解説されています。

刺されたときのダメージまで写真付きで書かれており

人との共存などについても考えさせられる内容です。

以上、今回はハチ関連も掲載させていただきました。


クワガタ関連の書物・2

2022-01-19 22:56:25 | クワガタムシ関連

以前にも「クワガタ関連の書物」の記事を書きましたが

今回はその2になります。

 

↓ 「クワガタ関連の書物」過去記事

クワガタ関連の書物 - クワガタ~スズメバチ等の覚書き

いよいよGWも終盤にかかりました。今日はクワガタ関連の本を取り上げてみます。順位は綴りごとに本の大きい順にしてありますので後尾ほど小さな本と...

クワガタ関連の書物 - クワガタ~スズメバチ等の覚書き

 

 

GPイseibutuse 生物の科学  遺伝  vol.72  2018  No.4

 [特集Ⅰ]クワガタムシ研究最前線

 

   株式会社エヌ・ティー・エス. (B5/フルカラー/定価1600円+税)

 

この本は他記事でも紹介しましたが

巻頭から50ページに渡り「クワガタムシ研究最前線」と題して特集が組まれており

クワガタムシの進化発生・行動・自然分散・幼虫の栄養・共生酵母菌類などについて

詳しく報告されています。

特に共生酵母菌類に関する記事はクワガタ飼育に直結する内容で

自然蛹室と共生酵母菌類とのつながりがわかり

人工蛹室がもたらす不都合も見えてきます。

また、繁殖の難しい系統種飼育のヒントにつながりそうな内容もあり

そこには飼育者の間ではあまり語られない世界があります。

価格もさほど高くなく、飼育者ならぜひ持ちたい1冊です。

 

Stag Beetles of China III 中華鍬甲(B5 524ページ)

 Authors : Huang Hao & Chen Chang Chin, 2017.  

 Publisher : Formosa Ecological Company.

 

2017年に発刊された中国のクワガタムシ図鑑シリーズのⅢ(524p)です。

台湾のクワガタムシも含め掲載されています。

英語と中国語で記述されており私には読みこなすことはできませんが

同定の要となるような交尾器・脚部・頭部等に加え

小型種では必要に応じて拡大図があり、わかりやすくしてあります(尺度有)。

各種図は、実物大ではないので実際の大きさは感じ取りにくいですが

詳しく解説されていることが伝わります。

体長の記載有無や、ごちゃごちゃして見える部分もありますが

そこは、お国柄なのかな?と思います。

台湾のクワガタムシ図鑑もそうですが

各種の細かな違いや小型種の超拡大図などは

日本の図鑑よりわかりやすく、工夫されています。

 

↓ わかりやすく見やすい台湾の図鑑 臺灣鍬形蟲

 

現在、Stag Beetles of Chinaシリーズは入手困難になっていますが

古書で探すと見つかるときもあり、たまに流通があるようです。

 

LUCANUS WORLD No.16〜29 

 連載:おこぜあいご/オオクワガタその系統と分類  株式会社環境調査研究所

 

こちらは雑誌の中の連載記事の紹介です。

今も昔もクワガタ愛好家に絶大な人気を誇るDorcus

近年では和名でいうコクワガタ系がちょっとしたブームにもなっています。

LUCANUS WORLDのNo.16〜29には

おこぜあいごさんによる「オオクワガタその系統と分類」という連載があります。

連載は1999年10月発行のNo.16から始まり

2001年12月のNo.29まで計14回、総ページ数は82ページに及びます。

毎回、各種解説と専門的なことがわかりやすく書かれており

ヤマトサビクワガタがなぜDorcus属なのか?

大図鑑でネパールコクワガタがDorcus属になったわけなど

素朴な疑問にも触れられたりしています。

この連載を読めばDorcus属に対する基本的な考え方の一つがわかり

私は今でも読み返しています。

古くからクワガタムシをされている方には懐かしい雑誌で

比較的入手しやすいバックナンバーです。

Dorcus属に興味のある方にはおすすめの連載記事。

 

休眠の昆虫学 季節適応の謎

 田中誠二・槍垣守男・小滝豊美著, 2004年3月5日 東海大学出版会(3200円) 

 

タイトル通り、昆虫の休眠について書かれた1冊です。

直接クワガタムシに関する記述はありませんが

昆虫のもつ体内時計の秘密や、休眠時の体内の状態など詳しく書かれており

読み込んでいくと冬季低温休眠中のクワガタムシが

温度を上げても覚醒しない理由なんかもわかるような気がします。

クワガタムシの飼育繁殖にも参考になる一冊です。

 

ダニのはなしⅡ 江原昭三編著  1990.技法堂出版株式会社.

 

野生のクワガタムシにはダニが付着していることがあります。

このダニはクワガタムシの体表でいったい何をしているのか?

そのあたりについての記述があります。

これを読んでからは

在来の野外個体に付着するダニ(クワガタナカセ)に対する考えが変わりました。

クワガタムシとは切っても切れない関係の「クワガタナカセ」の話があります。

 

以上、今回は直接・間接・連載記事含め、五つ紹介させていただきました。