ババクルビデンスの飼育を始めました。
ババクルビデンスは
ベトナムの中~南部に分布するオオクワガタで
この種は、Dorcus不明種とか、南ベトナムクルビデンスとか、クルビデンスssp.など
様々な呼び名で市場に流通しました(現在でもたまに)。
そして、2010年「世界のクワガタムシ大図鑑」で
クルビデンスオオクワガタ Dorcus curvidens の亜種
Dorcus curvidens babai Fujita, 2010として記載されましたが
実際に「ババクルビデンス」と呼ばれることが多くなったのは
ここ数年のことです(以下ババクルビ)。
↓ ババクルビ オス (ベトナムダラッド近郊産飼育個体71mm)
↓ ババクルビ メス(ベトナムダラッド近郊産飼育個体43mm)
当初からババクルビには非常に興味があったのですが
買い渋りというか、なんというか
ようやく飼育を始めることができました。
初めてババクルビを手に取った感想は
クルビデンス Dorcus curvidens (以下クルビ)というよりも
グランディスオオクワガタ Dorcus grandis (以下グランディス)か
パリーオオクワガタ Dorcus ritsemae に近い種のように思え
また、メスも違って見えるのに
なぜこれをcurvidensとしたのだろう? でした。
ババクルビの産地ラベルは
Dalat(ダラット)近郊のほかに、 Kon-Tumc・Near・Bao Lacなどもあり
標準亜種とされる curvidens との混生が認められたら
今より、すっきりすると思います。
↓ ババクルビ
以下に比較用画像①②③を掲載しますが(飼育個体)
飼育個体は野外個体の地域差以上に差が出ることもあるので
本当は野外個体で比べるべきです。
しかしながら、サンプルを持っていないので
ここでは飼育個体を種として扱い
また、大きさも揃っていません、悪しからず。
①ババクルビ (ベトナムダラッド近郊産)オス71mm メス43mm
②クルビ (ブータンチュカ産 ) オス71mm メス45mm
③グランディス(インドマニプール産) オス69mm メス44mm
↓ 左から①ババクルビ・②クルビ・③グランディス
↓ 左:①ババクルビ 右:③グランディス サイズの影響もあってかよく似ている
↓ 左:①ババクルビ 右:③グランディス
↓ 左:①ババクルビ 右:③グランディス
↓ 左:①ババクルビ 右:③グランディス
↓ 左:①ババクルビ 右:②クルビ 両種の混棲はないのか?
↑ ババクルビは頭を下方に向けたがる
↓ 左から①ババクルビ ・②クルビ・③グランディス
↓ 上画像のモードを変更 ③グランディスの上翅条溝が最も浅い↕
↑ 注意)上翅の汚れや光のあたり具合は一定ではありません
↓ 左:①ババクルビ 右:②クルビ
産卵セット
セットの方法は、オオクワガタと同じです。
市販のコナラ産卵材を加水し
発酵マットで半分ほど埋めただけの簡単なものです。
↓ 管理温度は22~23度
このペアは、オスは羽化から11ヶ月、メスは9ヶ月経過しており
「即ブリード可能」と聞いていましたが
セット数日で、雌雄ともにマットに潜り込み、出てこなくなりました。
↓ 温度の低い床に置いて来春まで休眠させることに
「Wikipedia」でDalat(ダラット)を見た限りでは
Dalatは標高1500mほどの高原都市らしく
気温は、年間通して20度±5度ほどの範囲で推移し
5月~11月初めあたりまでが雨季で
12月~4月あたりまでが乾季となる温帯夏雨気候です。
この気候からすると
今回入手したペアはこのまま休眠することで
来春に繁殖適期を迎えるのではないかと思われます。
最後に
ババクルビは体長75mmを超える(野外最大個体)大型種です。
これほど特徴的で大きな種が近年に発見されたことは
自然界には
人知れず潜む未知種がいかに多いかを知らしめた一打のように思えました。
参考文献:
藤田宏,2010,世界のクワガタムシ大図鑑6,むし社.