その昔、山で採ったオオクワガタは
疑いもなく野生のオオクワガタとして飼育をしました。
↓ 新潟県産野外個体

ところが時代は変わり、今では野外で発見したオオクワガタは成虫、幼虫問わず
養殖物・人由来の心配をするようになりました。
そして、飼育オオクワガタが80mmを軽く超え始めたころからその人気とは逆行し
私のオオクワガタへの関心は急速に薄れていきました。
東北の山間部
今年の7月に東北の山間部で
ライトトラップに飛来したというオオクワガタのペアがいます。
オスとメス、飛来日時は異なります。
先述のとおり、長らく距離を置いてきたオオクワガタでしたが
灯火に飛来したという場所は養殖物の心配が少ないと考えていた地域であり
心動かされる代物でした。
↓ めったにない大型


↓ 前胸背板



↓ メスも大きめ



クワガタナカセを見る
このペアが届いたのは8月で、荷物を開封するや否や
「クワガタナカセ」を探しました。

「クワガタナカセ」というのは野生のクワガタムシに付く野生のダニで
クワガタムシ(宿主)の種ごとに異なる「クワガタナカセ(宿者)」が付きます。
この「クワガタナカセ」は特定の種の宿主の体表で
クワガタムシとともに進化しました。
例えば、コクワガタには「コクワガタナカセ」が
ヒラタクワガタには「ヒラタクワガタナカセ」が
そして、オオクワガタには「オオクワガタナカセ」が付きます(便宜上のダニ名)
↓ *ヒメオオクワガタナカセ

↓ *ヤマトサビクワガタナカセ

クワガタナカセは宿主と共生関係にあると考えられており
宿主の体表に付いた菌類や老廃物などを食べ家族で暮らしています。
そして、宿主の体表に口器を差し込み体液を吸汁する性質のものではありません。
↓ *宿主転換実験(ヤマトサビクワガタナカセ→ダイトウヒラタへ)

↑ 異なる種には定着しないようだ(他種数パターン検証の結果)
↓ *タランドスオオツヤクワガタナカセ(卵時から付着している共生個体)

また、野外において付着の有無はその個体の活動状況や期間
付着した他の個体との接触経験などが関係していると思われますので
必ずしも野外個体=クワガタナカセ付着とういわけではありません。
それではダニの確認、まずオスから

↓ 2019年9月2日画像追加

なにやら白くうごめくものがいます。
これまでの経験から判断すると
これは粉ダニの類(たぐい)ではなく、クワガタナカセです。
次はメスです。

メスも体表を入念に探しましたがクワガタナカセの存在は確認できませんでした。
↓ メスの体表ではクワガタナカセは見つからない

このオオクワガタペアは針葉樹マットに詰められ送られてきました。
採集者宅でも針葉樹が使われていたとするなら
クワガタナカセにとっては厳しい環境だったかもしれません。
幸いオスには大小のクワガタナカセが付着していましたので
そこにクワガタナカセの暮らしがうかがえました。
”クワガタナカセ込みのオオクワガタ”という考えのもと
早々にマットを取り替えました。
↓ 針葉樹マットと野外個体

送られてきたペアはしばらく一つのケースに入れ
追い掛けしてからメスは産卵セットに移します。
↓ ♂♀ともにすばしっこい



私は野外でクワガタムシを採集した時ダニの付着を見ます。
そして、衛生的・精神的に有害と感じた時以外は
クワガタナカセの排除はしません。
*画像追加(アナログ写真複写)8月17日
参考文献:
江原昭三編著,1990,ダニのはなしⅠ,技法堂出版株式会社.
江原昭三編著,1990,吉田利夫,ダニのはなしⅡ「昆虫とダニ」,
技法堂出版株式会社.
藤井弘,2006,クワガタムシに付くダニについて(1・2).
KUWAGATA MAGAZINE(27・28), (有)東海メディア.