*タイトルに№がある記事は
「カテゴリー」から入ると飼育・観察過程等が繋がります。
昨年産卵したキベリハムシの卵は
今年3月下旬ころから孵化が始まり
何度か脱皮を繰り返した後
6月24日に新成虫が出てきました。
↓ 孵化・脱出痕(2018年4月9日)
キベリハムシの飼育場所は物置ですが
せっかくのチャンスですから
一部を室内に置き
蛹化・羽化の様子を見たかったのですが
なかなかそのタイミングに出くわさず
とうとう蛹化・羽化の様子を見ることなく
新成虫の出現となりました。
↓ 室内ではPカップに入れて観察
↓ 2018年4月9日
孵化した幼虫は、柔らかい新葉を好んで食すようで
複数の個体がそれに付いていました。
また、成長した葉を食べるときは
裏側に付いていることがよくありました。
↓ 新葉を食べる(2018年4月10日)
↓ 2日で完食
↓ 葉の裏側に集まる(2018年4月10日)
幼虫のお尻の先は吸盤のようになっているみたいで
葉などから全足が離れても落下することはありません。
↓ 脱走中
↓ 2018年4月20日
↓ 2齢へと脱皮中(2018年4月24日)
↓ 2齢幼虫(2018年4月28日)
↓ 軟らかいところを好んで食べる
↓ 初齢幼虫(2018年4月28日)
↓ 脱皮の準備か?(2018年4月28日)
↓ 週に1回餌補充
天敵はアマガエル
幼虫の天敵は「アマガエル」でした。
屋外では、幼虫が逃げ出さないよう
容器をネットで覆ってはいたのですが
わずかな隙間からアマガエルが2度も入り込み
殆どの幼虫が食べられてしまいました。
急いでネットの改良を行い対応した結果
その後アマガエルの浸入はなくなりました。
↓ 脱走・保護ネット
何度か脱皮を繰り返した幼虫は
やがて姿を消します。
それは、蛹化のために土に潜っていくのです。
気が付けば葉に付く幼虫は全くおらず
不安な一時期がありましたが
6月のある日
突然成虫が葉に付くようになります。
↓ 容器底は蛹化のための土
↓ 終齢幼虫はやがて土に潜っていく
↓ 新成虫の出現!
6月30日現在、3頭の新成虫が現れています。
あと何頭出てくるのかはわかりませんが
活動を開始した新成虫は
メス単独で
今年も産卵を始めるものと思います。
キベリハムシの孵化
*タイトルに№がある記事は
「カテゴリー」から入ると飼育・観察過程等が繋がります。
先日、Kさん宅のキベリハムシが孵化したとの連絡がありました。
それは、昨年隣町で偶然発見された野外個体からの卵で
我家にも同じ由来の卵塊が沢山あり
翌日確認してみると
枝や容器の蓋、側壁に幼虫がうじゃうじゃいました。
孵化した幼虫は体長2~3ミリ程度で
よく見ないとただのゴミ、よく見ると幼虫です。
↓ 黄色い幼虫(中央枝先)
↓ 中央の黒いのが幼虫
↓ 容器蓋に付く幼虫
これらの幼虫は
恐らく3月下~4月始めにかけて孵化したものと思われますが
まだ孵化していないであろう卵塊も沢山あります。
卵塊の管理は自然温で
気が付いたときに水をかける程度のことしかしておらず
一時期はかなり乾燥させたこともありましたが
それでも孵化は始まりました。
↓ 孵化が近いと思われる卵塊
↑↓ 卵が浮き出ている
↓ 孵化後と思われる卵塊
成虫の寿命
キベリハムシの寿命は長く
飼育下では5か月以上生きます。
2017年7月12日に採集された親虫は
秋になっても活動を続けます。
そして、気温の低下とともに動きは鈍くなり
最後を迎えます。
それでも自然温で年末まで生存する個体がいたため
温度管理をすればもっと活動を続けられたように思います。
また、餌となるビナンカズラは冬でもあります。
↓ 2017年9月
↓ 最短で死亡した個体:2017年11月1日
↓ 2017年12月末の姿
生涯同じ食べ物
孵化した幼虫は食べ物がなかったせいか
容器から出ている個体がいくつもいました。
キベリハムシは完全変態の昆虫ですが
生涯同じものを食べます。
既知されているのはマツブサと
「ビナンカズラ」というツル系の植物です。
幸い近所にビナンカズラの群生地があるため
早速に食料を確保しました。
↓ 近所のビナンカズラ群生地
↓ 庭に植えたビナンカズラ(昨年大胆な剪定)
食料も確保できたので飼育環境を作り直します。
卵塊の付いた枝を適当な長さにカットして土に刺し
羽化した幼虫の餌となるビナンカズラを近くに置きました。
↓ 卵塊の付いた枝を立てて孵化を待つ
↓ ビンに水を入れ切り花状にしたビナンカズラ
遺伝子交流のない世界
多くの生物は雌雄がおり、接合によって次の子どもが生まれます。
キベリハムシは、今から100年以上前に
貨物とともに神戸の港にやってきたといわれていますが
これはあくまでも推察で
本当のことは誰にもわかりません。
大陸原産のキベリハムシは本来雌雄がおり
有性生殖(接合)によって子孫を残しています。
ところが日本のキベリハムシはメスしか見つかっておらず
また、飼育でもメスだけで子孫を残すことがわかっています。
日本(兵庫県中心)に分布するキベリハムシの先祖となった個体の
その時の数や成長ステージを知ることは困難ですが
仮に1系統だけの先祖からはじまり
自分だけの遺伝子を100年以上も残してきたのなら
どの地域に分布する個体も
減数分裂をスキップして発生した「クローン」なのかもしれません。
そうなると、異なる地域の個体であっても
遺伝子的には何ら変わらないわけで
皆同じということもありえます。
遺伝子交流のない世界と、限られた食性と
低い飛翔能力で生きる日本のキベリハムシにとって
分布拡大はそう簡単なことではないように思えます。
今年の7月上旬から飼育しているキベリハムシが
沢山卵を産んでいます。
*「キベリハムシ・1」の続きです
産卵
↓ 産卵中 泡状の物を出しながらその中に卵を産む(10月2日)
↓ 産卵場所は、枝の分岐箇所を好む傾向が強い
卵塊はやや硬く、外見が褐色で木の枝と同化しており
注意して探さなければ見逃してしまいます。
卵塊の中は更に褐色で
崩すと「ししとう」のような匂いがしました。
↓ 容器の蓋にも産みつけている
↓ 枯葉にも
↓ 生体・卵塊、大きさ比較
↓ 薄青色は、ま新しい卵塊
↓ 半日経過 色が変わってきた
↓ 5頭のメスから22個の卵塊を確認(10月7日現在)
防衛手段
キベリハムシは、比攻撃的で、飛翔が下手で
体も柔らかい大型のハムシですが
外敵から身を守るための手段はいくつか身に着けています。
↓ あまり動かない、動きも遅い
容器内での成虫は相対的に高所にいることが多く
枝先に近い葉っぱをよく食べており
容器のフタをそっと開けても落下することがあります。
高所(枝先近く)にいることで振動(異変)を感じやすく
外敵から最短で遠くに離れる(落下)
ということでしょうか?
キベリハムシを意図的に高所から落下させると
飛翔はしますが下手くそで、鳥類に例えると「ニワトリ」レベルです。
↓ 夜間はフタに付いていることがよくある
↓ 贅沢な食べ方
また、成虫は触ったり刺激を与えると
黄色い体液を出します。
この体液は青臭く、嫌な臭いで防衛します。
↓ 黄色く青臭い液を出す
↓ 落下したときは偽死状態
↓ しばらくすると動き始める
↓ 起き上がれないときは羽を使う
↓ ツルツルした垂直面でも容易に登る
紫外線照射
キベリハムシは金属的な光沢のある濃紺色に
黄色の縁取りをあしらった綺麗なハムシです。
緑の葉に付く黄色い縁取りは、人の目には目立って見えます。
紫外線領域で情報のやり取りをしている同種異種からは
どのように見えているのでしょうか?
太陽光は紫外線を降り注いでいます。
そこで、紫外線を照射してみました。
*照射機器:MANASLUーLIGHT(LONG WAVE 3650Å)
↓ 可視光
↓ 紫外線照射
機器による紫外線照射では
照射体に接近するとほぼ黒に見えましたが
照射距離を離すと
紺色の部分は黒っぽく目立ちませんが
上翅や胸部の側縁縁取り・脚部・触覚等が
可視光で見る黄色より薄く鮮やかに見えました。
もしかしたら外敵等には
その姿が木々の隙間や枝、或いは葉脈のように
見えているのかもしれません。
一見、ひ弱に見えるキベリハムシですが
神戸に入って以来、メスだけで子孫を残し
落下・偽死・体液などの防衛手段をもって
したたかに、ひそかに、*分水界を超えました。
*分水界=異なる水系の境界線
今日、Kさんから画像が届きました。
「これ、キベリハムシ?」
「あっ! どこにおったん?」
「〇〇〇、けどこの周辺は数日の間に整備されるんです。
消えてしまう前に発見できた個体を回収しておきます」
私は、急いでビナンカズラを採りに行き
受け入れ準備を済ませました。
キベリハムシは、100年ほど前に中国南部から
神戸港に貨物と共に上陸し
メスだけで子孫を残してきたました。
そして、ゆっくりゆっくり時間をかけて
県内を中心に分布を広げた外来種です。
↓ 体調13~15mm程度で青藍色に輝く
↓ 総勢11頭
↓ 日本ではメスしか発見されていない
↓ 飛翔能力は低い
間違いなくキベリハムシです。
Kさんによると
その周辺は明日にでも整備される予定だそうで
ぎりぎりの確保だったようです。
また、キベリハムシが食べていたと思われる葉は
ビナンカズラではなく↓の葉でした。
↓ ビナンカズラ(北斜面自生物)
↓ 早速食事
↓ これだけ食べました
Kさんは、キベリハムシと相性がよく
過去にも違う場所で発見されたことがあります。
偶然にも私は食草の確保がしやすいので
久しぶりに飼育をすることにしました。
驚きのキベリハムシ
Kさん 今回もありがとうございました。