クワガタ~スズメバチ等の覚書

   Photo & Text by こよみ

PC版テンプレート画像は
朽木屑を運ぶオレゴンルリクワガタ♂

ラマの羽化

2017-03-12 18:51:47 | ラマ Dorcus

ドルクスラマ Dorcus rama 野外個体の

当たりメスから得られた幼虫3頭(全てメス)が羽化しました。

*カテゴリーのラマから入ると飼育過程などが繋がります。


スマトラ島クリンチ産


↑↓ 親





過去記事にも書きましたが

ラマのブリードに成功したのはこれが初めてで

加えて、くすんだリサイクル容器は中味がよく見合ないため

マットの掘り出しはいつもより慎重になりました。

・・・

あれっ? 変な色・・・

上翅が見当たりません。
 






腹部背面がもろに露出。

羽化時に脚部で傷を付け、体液が出てしまったのでしょうか。

よく見ると、肩のあたりに上翅らしき黒い塊がありました。

あとの2頭が気になり恐る恐る掘っていくと

こちらは正常に羽化していました。



↑↓2017年2月23日羽化

↓2017年3月上旬羽化





↓ どちらも28mm台





私の管理では2016年4月に初齢だった幼虫が

10か月前後かけて羽化しました。


見かけることの少ない限りなく当たりのラマ(新成虫メス)です。

そのうち出回るであろう野外オスを得てしまえば

ハズレを引いたとは言えなくなってしまいました。



ラマの幼虫

2016-11-06 23:29:59 | ラマ Dorcus

ドルクスラマ Dorcus rama (Boileau,1897)の記事はこれで2回目になり

今回は、少しさかのぼってはじめます。

野外個体の産卵セットを組んだのは今年の2月です。

5月には幼虫1頭を確認したので朽ち木を埋戻し

最終的な割り出しは7月2日に行いました。

↓ クリンチ産 左:種親





↑↓2016年5月

↓2016年7月







結果は、2齢2頭と茶色実味がかった卵4個で

すべて朽ち木から出てきました。

↓朽ち木下部に齧り後あり、木くず詰め込み


また、茶色い卵は繊維質のカビのようなもので覆われ

腐敗している様子でした。




そして、母虫は残念ながら6月下旬に死亡を確認しましたので

最終的に得られた数は5月の幼虫1頭と今回の2頭、計3頭!

産んだだけでもラッキーと思うしかありません。

得られた幼虫3頭のうち2頭は菌床プリンカップ500ccに

1頭は添加マットに投入し、成長を待ちましたが

どれも大して大きくなりません。

2016年11月6日、3頭を取り出してみたところ

全部メス、やっぱりか・・・






800ccのボトルに添加マットを詰め、餌交換。

このまま無事に羽化したら、素性の判るメスが得られます。

”未交尾のメス” それはそれで珍しい。

来期に野外個体を購入し、ペアにしたら

多分、普通に産むんでしょうね!




余談

前記事で少し書いた物置が届き組み立て~設置を終えました。





幅150cmx高さ150cmx奥行75cmのスペースは

想像以上の収容能力で

マットや容器、その他の生活備品など余裕で納まりました。



どこに何があるか?

見てわかるのは久しぶりのことです。


ラマの不思議 ・Dorcus rama

2016-05-02 09:13:22 | ラマ Dorcus

一昨日、ラマの産卵を確認しました。


インドネシアのスマトラ島にはドルクスラマDorcus rama (Boileau,1897)という

ヒラタの類(たぐい)ような、オオクワガタの類のような種が分布しています。

このドルクスラマ(以下ラマ)はスマトラ島特産種とされ

他の地域ではアフニスティティウスなど

近縁種ではないかと思えるものが幾つか見つかっています。

また、ラマは大陸に広く分布するライヒラタDorcus reichei Hope,1842にも似るのですが

ライヒラタはスマトラ島にも分布しているためそれではないようです。


大アゴの不思議

ラマの大きな特徴の一つにオスの大アゴ裏面に微毛が帯状に生えているということが上げられます。

ところが、書物等ではこのことはあまり語られていません。

こういった形態の特徴は日本のオキノエラブヒラタ

中国・台湾のライヒラタなどにも見られますが、クワガタムシ全体からすれば少数派で

特別な理由あってのものかと思い観察するも、真相に迫ることはできませんでした。

微毛は、湿っているときや標本ではわかりづらいのですが

生体時には乾燥するとオレンジ系になり、良く目立ちます↓↓標本

↓ 生体

↓メス腹面

また、ラマ(オス)の大アゴの変異は大きく大型なるにつれ2本の内歯の間隔は狭まります。


↓クリンチ産:左70mm台・右69mm

更に特大個体ではその内歯が一つのようになり、先端が二又になって見えます。


オスの発音

クワガタムシの成虫には発音する種がいます。

例えば、ヒョウタンクワガタは通信(?)的な発音をします↓

アフリカのタランドスオオツヤクワガタは威嚇と思える発音です。

そして、ラマのオスもまた発音します。

その音量は結構大きく、意識しなくても聞こえるくらいです。

音質はキチン質の弾けるような音でどちらかというと

人の爪先を合わせて弾いた時のような音です。

観察と試みでは発音は交尾前に認められ、オス同士の争いや、威嚇時には発音しませんでした。

このことからオスの発音はメスに対する何らかの信号ではないかと思っています。
↓↑発音した後の状態



↓争うときは発音しない


鈴木知之著「外国産クワガタ・カブトムシ飼育大図鑑」によると

ラマは、「樹洞占有性で~樹液が出た空間に潜り込み

大型で強い♂は~複数の♀とともにハーレム生活を営む。」とあり、

そういった場所で発せられる音はメスによく伝わるものと推察します。


また、オスはメスを挟んだりしますが発音した時はメスを傷つけるほどを強くは挟みません。

観察では発音源の特定はできませんでしたが、上翅あたりから発せられるように感じました。


空の卵座

ラマ(野外品)の採卵は、過去3回トライしたことがあるのですが

いずれも採卵できませんでした。

産卵セットの方法は、市販の産卵木を加水してマットで埋めるという

オーソドックスな方法で最初の2回は2000年前半のことです。

↓加水中の朽ち木

そのときも22度前後で温度管理していました。

割り出し時にはあたかも産卵したかのような痕跡はいくつか見られたのですが

2回とも埋め戻された産座に卵の姿はありませんでした。

そして、産卵することなく☆になっていきました。

また、知人も似たような経験をしているため、セットした環境は間違ってはいなかったが

いずれも未蔵卵(産卵済)の野外個体であったと判断しています。


3度目はアクシデント

昨年、野外個体1ペアを入手して3回目のトライをしました。

野外個体ということで既に交尾済ではあると思われましたが

念のため追い掛けをしようと2頭を近づけたときいきなりオスがメスを挟んでしまい

前胸に体液が滲むほどの傷をつけてしまいました。

どうやらメスを認識していなったようです。


↓離さないので仕方なく画像を残す

「しまった!!」

こうなると追い掛けどころではありません。

☆にならないことを祈りながらそのまま産卵セットにメスを投入しました。

2週間後、マットを掘ってみるとメスは☆になっており

朽ち木にはそれらしき痕跡も見当たりませんでした。




ついに産卵

2016年2月に再び野外個体を入手し、同月19日に産卵セットを組みました。

セットの方法は毎回同じで、朽ち木をマットで埋めるだけです。

温度管理は19~23度の範囲になります。

セットから2か月半が経過した一昨日、容器内を確認してみました。

↓追い掛けしたオス スマトラ島クリンチ産 野外個体
 
↓メスは、31mmほどです


朽ち木底部のところに埋戻しらしき小さな痕跡が・・・

慎重に削っていくと食痕が走っています。

やっと産んでくれました! 初齢幼虫1頭が浅いところにいました。


確認できた幼虫の生育状態からすると

産卵されたのは3月中旬あたりではないかと思われます。

また、固めにつめたマットからは幼虫や卵は出てきませんでした。

朽ち木には他にも食痕が2つほどありましたが、出てきた幼虫1頭をプリンカップに移して

朽ち木はそのままもとに戻しました。


母虫は現在もゼリーをよく食べておりまだ産卵する可能性はあります。


ラマの産卵形態は、朽ち木だけでなく「マットにも産む」と聞いたことがあります。

確かにメスの上翅点刻とその列はうっすら目立たずマットに産んでもよさそうな風貌です。

条件によってはそうなのかもしれません。


ラマは、ヒラタかオオクワか?

多くの生物には学名が付いています。

学名は、「国際動物命名規約」というルールに従って付けられています。

日本では学名のほかに和名というのがあり、例えばVespa mandarinia Smith これは学名で

和名はオオスズメバチです。

和名は学名と違って付け方に拘束力のある決まりがありませんので

命名者の主観や思いが強く入り込みます。

また、同じ種類でも地方特有の呼び名があったりもします。

Dorcus rama ラマは少し前まではラマオオクワガタと呼ばれた時期もありましたが

最近ではラマヒラタと呼ばれることが多くなりました。

このほかにも

Dorcus tityus Hope,1842 ティティウス

Dorcus affinis (Pouillaude,1913) アフィニス

Dorcus miwai Benesh,1936 ミワ ↓

Dorcus hyperion Boileau,1899 ヒペリオン↓


‥などといった それっぽいけど、それっぽくない種がいます。

そもそも それらの和名にヒラタやオオクワガタをあてがうには無理があるのかもしれません。

マは、ヒラタか、オオクワガタか

ここでは、ラマラマとしました。悪しからず・・・

 

最後に

今回はじめてラマの幼虫がとれました。

これまでの経験からするとラマの野外個体は産卵済のものや、その途中にあるものがおり

当たりはずれがあるように思います。

今回のメスは後者の方と思われ、今しばらく摂食と産卵を繰り返すのではないかと感じています。

温度管理につては22度前後で産卵は可能。

セットの方法はオオクワガタ等と同じでよいと思います。

また、18度くらいではオスメス共に動きがやや緩慢になりましたので

これからしばらくの間はラマにとってよい温度帯になるのではないかと期待しています。

参考引用文献:
鈴木知之 著,2005.6.20.外国産クワガタ・カブトムシ飼育大図鑑,
   株式会社 世界文化社.