クワガタ~スズメバチ等の覚書

   Photo & Text by こよみ

オニクワガタ・2-キュウシュウの落とし穴

2023-06-04 11:05:03 | オニクワガタ

キュウシュウの落とし穴

本州(兵庫県産)と、九州(熊本県産)のオニクワガタが羽化しました。

どちらの個体群も野外個体からの子供です。

↓ 左:熊本県産 右:兵庫県産

 

現在、オニクワガタは2つの亜種に整理されています。

オニクワガタ Prismognathus angularis angularis Waterhouse,1874

 分布:北海道・利尻島・本州・四国・九州(中北部)・佐渡・サハリン

キュウシュウオニクワガタ Prismognathus angularis morimotoi Y.Kurosawa,1975

 分布:九州(南部)

原名亜種と九州南部亜種との違い

オス:大アゴの先端の向き・頭部側縁前方の角ばりや側方のくびれ・前胸背板後角の形状など

メス:九州南部亜種のほうが上翅の縦線はより強い

*屋久島の個体群は大図鑑(1994)でオニクワガタの亜種に降格したが

 大図鑑(2010)で原記載時の扱い(独立種)に戻された

 ヤクシマオニクワガタ Prismognathus tokui Y.Kurosawa,1975,stat.rev.

 

今回私が飼育した九州のオニクワガタは熊本県産で

「キュウシュウオニ」として幼虫販売(野外個体からの子供)されていたものですが

羽化した新成虫は、本州と同じオニクワガタ原名亜種でした。

↓ オニクワガタ 左:熊本県産 右:兵庫県産

九州中部に位置する熊本県地方は

原名亜種の分布域とされるためこの結果は妥当でしたが

原名亜種(オニクワガタ)が、九州亜種(キュウシュウオニ)として

流通していた事実は問題です。

九州で採れたオニクワだから「キュウシュウオニ」というわけではないのです。

2亜種が分布する九州では分布の境界線がよくわかっておらず

更に大アゴの個体変異という絡みもあり、単純ではありません。

↓ 白抜き部が熊本県の産地    出典:Googleマップ

↓ どちらも熊本県産のメス

↓ オニクワガタ 左:熊本県産 右:兵庫県産

 

オニクワ羽化までの期間

管理温度:夏期24度前後〜冬季15度前後

昨年の8月16日に産卵セットを組み(野外個体)

2週間後(9月4日)には初齢幼虫を確認しました。

そして、今年の5月24日にマット上に静止する2オスを発見。

卵から羽化して活動を始めるまでに要した時間はおおよそ9ヶ月でした。

 

↓ 採集〜飼育過程の記事

 

オニクワガタ - クワガタ~スズメバチ等の覚書き

オニクワガタPrismognathusangularisangularisWaterhouse,1874オニクワガタは発生期になるとブナ帯の立ち枯れや切り株、倒木などに付いていることがあります。マルバネクワ...

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↓ 容器底部に見える蛹室(兵庫県産 2023.5.30)

↓ 兵庫県産 2023.5.24

↓ マット内で羽化していた熊本県産メス 2023.6.2

↓ 熊本県産

 

蛹室から出てきたオニクワガタのオスはマット上でメスを待ち伏せします。

複数のオスによるメスの争奪戦となると、さながらオニクワ団子のように見えます。 

活動は昼間より、夜間が活発です。

↓ 間隔をあけて待機?する新成虫のオス(兵庫県産)

↓ メスの争奪戦

↓ オニクワ団子

 

最後に

野外での生態観察は難しいオニクワガタですが、飼育することで少し知見が広がりました。

また、タイトルにした「キュウシュウ」については、産地と形に注意が必要です。

今年は可能な限り南の個体を手にしたいです。

 

参考文献

 黒澤良彦監修・岡島秀治・山口進共著,1988,検索入門クワガタムシ,株式会社保育者.

 藤田宏,2010.世界のクワガタムシ大図鑑6,むし社.


オニクワガタ

2022-11-04 00:54:55 | オニクワガタ

オニクワガタ Prismognathus angularis  angularis Waterhouse,1874

オニクワガタは発生期になると

ブナ帯の立ち枯れや切り株、倒木などに付いていることがあります。

マルバネクワガタのようにメスを待ち受けているのでしょうか?

人気の立ち枯れでは毎回同じ場所付近にオスがいたりします。

また、オニクワガタの幼虫は比較的湿度の高い朽ち木で見つかるイメージがありますが

人気の立ち枯れは、多湿ではありません。

↓ 灯火では、あたりがいっそう暗くなってから飛来した(2022.8.15.21:11撮影)

↓ メスの飛来(2022.8.15.20:49撮影)

 

割り出し

8月15日にライトトラップで飛来したオニクワガタから幼虫が採れました。

飼育下でオニクワガタの幼虫を見るのは久しぶりで新鮮です。

 

↓ 種オスには大きく茶色いほうを選んだ

↓ 種オス22㎜程度  メス16㎜程度

↓ 交尾時間は5分程度で複数回

↓ 交尾中オスは頭部を震わす

↓ 2回目の交尾で精嚢かき出しか?

 

産卵セットは、バクテリア材とマット「産卵一番」を用い

底部8cmほどはマットを硬く詰めました。

オニクワガタは後食しない種ですが、確認のためゼリーも入れておきました。

 

↓ 8月16日 産卵セット 産卵一番とバクテリア材

↓ ゼリーを食べた様子はない

 

灯火に飛来した雌雄を持ち帰り、産卵セットを組んで3週間も経たないうちに

容器底部で初齢幼虫2頭を発見しました。

発見した幼虫は頭の色からして、孵化直後の個体ではないと思われ

初期の成長速度の速さに驚かされました。

また、オスは2週間で死亡しましたが、母虫は1ヶ月近く生存していました。

 

↓ セットから16日後 初齢幼虫発見!

↓ 11月3日、割り出し

↓ 息絶えた母虫

↓ 朽ち木はぼろぼろ、こぼれ落ちる幼虫

↓ 2齢~終齢幼虫 計49頭

↓ ほとんどが終齢幼虫

 

灯火に飛来した1頭のメスからとてもたくさんの幼虫が採れました。

加水した朽ち木を基マットと「ヒラタ・ノコ」でがっつり埋め

二つの容器に分けて幼虫飼育を開始しました。

 

↓ 基マットとヒラタ・ノコ1番のMIX

↓ 密飼いの時は朽ち木を利用するのもよい

 

中には若齢幼虫も少しいますが、来春には幼虫の成長ステージがそろい(終齢)

飼育下でも成虫の発生はある一時期に集約されることと思います。

 

↓ 2ケースに分けて飼育開始

↓ 管理温度は年通15〜26度あたり