*この記事には昆虫を解体した画像が多く含まれます。
閲覧にはご注意ください。
チリハネナシクワガタ
Apterodorcus bacchus(Hope et Westwood,1845)
チリハネナシクワガタは、チリ・アルゼンチンに分布する1属1種のクワガタムシで
後翅が退化して飛ぶことができないとされ
日中は砂礫(されき)の下に潜む普通種です。
和名では「ハネナシ(羽無し)」と言い切っています。
果たして後翅はどんなものか? 実際にメスを解体して確かめてみました。
↓ 体表は艶消し状 左:メス 右:オス (撮影:2022.6.5野外個体ペア)
↓ 7月上旬、野外メスの死亡を確認
↓ オス
↓ メスの解体乾燥
結果
上翅は、会合線で癒着して開くことができませんでした。
後翅は、ないわけではなく、画像の通り存在しましたが非常に小さなものでした。
「ハネナシ」とは少し大げさではありますが
飛べないことを表現するにはこのくらいがよいのかもしれません。
↓ 上翅表面と内面 会合線は癒着しているようで開くことができなかった
*追記(2023年10月):YouTube動画で上翅を簡単に開く動画を見ました。
↓ 飛べない系のなで肩
↓ 上翅と盾板と後翅
↓ ⇩が後翅
後翅は、たたまれた状態では翅脈が目立ち、申し訳程度に広がりました。
↓ ⇩部が後翅、右は広げた状態
↓ 後翅 1メモリ1㎜
↓ 飛べるクワガタの後翅(ミヤマクワガタ)
飛べないクワガタムシの実際を確認してみたく入手した「チリハネナシクワガタ」。
「ハネ」はありました。
あわよくば幼虫が得られ、羽化までの様子や生態を観察するつもりでした。
それを飛び越えて解体となったのは残念です。
おまけ
今回入手した野外個体ペアはチリのビオビオ州産で
データを基に採集地周辺の標高を調べてみると
おおよそ1200〜2000mくらいの高地でした。
チリの季節は日本のほぼ逆で、日本が夏季のときチリは冬季に当たります。
符節欠損の目立つ野外メスではありましたが
何とか冬まで持ってくれないものかと思い入手早々に産卵セット組んでいましたが
メスは入手から3週間ほどで息絶え、材を齧った痕跡は残していません。
↓ メスの大アゴ形状は材を齧りそうで、前脚脛節は先端にかけて広がる
↓ 上翅はサメ肌状で、強靭に見える(これはオス)
↓ オスの大アゴ各部先端は、鋭くは尖っていない
↓ オスの交尾欲は強い
↓ 雌雄ともに厚みがある
↓ 交尾時間は10分前後 (2022.6.5)
↓ 産卵セットはバクテリア材やや硬め・ヒラタ・ノコ1番水分多め
↓ 2022年9月1日現在 オスは生存中
参考文献:
西山保典,2000.7.10.世界のクワガタG.有限会社木曜社.
藤田宏,2010.世界のクワガタムシ大図鑑・6.むし社.